交換授業などの特徴ある教育を行う公立小学校

家庭や地域の教育力、静かで落ち着いた環境が子どもたちを育てる/調布市立上ノ原小学校 濵松章洋校長先生 


「調布市立上ノ原小学校」は静かな住宅街の中にあり、子どもたちは落ち着いた環境で勉強やスポーツに励んでいる。市内で最も児童数が多い学校のため、学年の先生全員がスクラムを組み、自分の学年は全員担当するという気持ちで学級運営に当たっているという。また、豊かな食生活を送ることが生涯の幸せに繋がるという思いで、給食にも力を入れている。そんな「調布市立上ノ原小学校」について校長の濵松章洋先生にお話を伺いました。

子どもの数は命の数、そして心の数

濵松章洋校長先生
濵松章洋校長先生

調布市全体で子どもたち一人一人を大切にしていこうという方針を決めています。子どもの数は命の数、同時に心の数だから、本当に一人一人を大切にしていくとはどういうことなのかを考えていこうといつも言っています。子どもたちには、意欲を高めて学習に取り組んでもらいたいのと、あいさつなど、感謝の心を持つような子どもになってほしいと思っています。

小学校の校舎
小学校の校舎

学年全員が自分の担当

授業の様子
授業の様子

1年生から4年生までが5クラス、5年生と6年生が4クラスずつの計28学級全924人の児童が通っています。お預かりしているお子さんの人数が多いので、事故やけががないようにということに気をつけています。先生たちには、学年を一つの単位として見て、力を発揮する場は自分の学級だけではなく、どの学級も自分の学級だと思っていましょう、自分の学年は全員担当する、自分が守っていくんだという意識をもちましょうと言っています。

読書に励む子どもたち
読書に励む子どもたち

豊かな食生活は豊かな人生に繋がっていきます

食育に力を入れている
食育に力を入れている

特徴的な行事としては、11月下旬に行う持久走大会があります。学校を出て近くの公園まで行って戻ってきます。1年生は学校の中だけですが、学年に応じて距離が伸びていきます。また、食育週間を設定するなど給食に力を入れているんです。1日3食を一生食べていくわけですから、楽しい食事、豊かな食生活をおくれば幸せになれると思うんです。生涯にわたって食に関心が持てるような人になってもらいたいんです。そのために、栄養士さんが献立の工夫を書いた給食の紹介を毎日作ってくれたり、行事ごと、季節ごと、節句ごとに工夫された給食が出てきたリ、子どもたちが給食をリクエストしたりしています。

栄養士さんが書いた献立紹介
栄養士さんが書いた献立紹介

和食が世界文化遺産に登録された時から、「話食(わしょく)」というものを心がけています。教室や家庭で子どもたちが給食の事を話す、その遠い先には楽しい食生活が待っていると思っています。話をしてもらうには提供する話題、工夫されている意外性などが必要になってきますので、栄養士さんが給食の紹介を書いたり、先生が自分が食べた物の経験を話したり、私が学級に行ってその日の給食の工夫を話したりしています。それを聞いて子どもたちが驚いたとか嫌いだったけどなんかおいしそうだと思ったとかを、友達同士で話したり、家庭で話したりしてほしいんです。

工夫たっぷりのトマト坦坦麺
工夫たっぷりのトマト坦坦麺

例を挙げると、例えばトマト担担麺というメニューがあったんですが、ひき肉がのっていて食べたらとてもジューシーだったんです。なんだろうと思ってレシピを見たら、実は高野豆腐を細かくしたのが入っていました。旨味を吸い込んでいてお肉だと思って食べていたものが実は、食物繊維も摂れていたという話を子どもたちにしたところ、「えーそうなんだ!」と驚いて、さっきまでと料理を見る目が変わりました。それをホームページに載せることで保護者の方も見てくださっています。ホームページには「話食」の取り組みとして、食育週間の給食の写真と私の食レポを載せています。先生の価値観によって給食指導は変わってしまいがちですが、本校ではそれを同一歩調でやっています。好き嫌いがあったら嫌いな物でも食べろ!と言うのではなく、「話食」を通して、一口食べてみようかなという気持ちになってもらう、そういう指導をしています。

先生の得意科目を活かした交換授業を行っています

社会科の勉強中
社会科の勉強中

日本の子どもたちは学習意欲が低いと言われています。本校では学習意欲をもっと高めていくために、各学年で交換授業というものに取り組んでいます。一部教科担任制です。例えば社会科に力を入れて勉強している教員がいたら、1組も2組も3組もその教員が教えるといった、得意科目を生かした取り組みです。高学年の理科や社会では頻繁に行っています。生活科を合同でやったりもしていて、それが質の高い授業になっていきます。

「オリンピック教育推進校」としてどのようなことをされていらっしゃいますか?

オリンピック教育に取り組んでいる
オリンピック教育に取り組んでいる

「オリンピック教育推進校」に指定されたことから体育の用具を充実してもらっています。今年度はFC東京の選手に来て頂いて講演をして頂きスポーツに対する興味を高めますが、来年度もアスリートの方を呼ぶイベントを行いたいと思っています。オリンピックやパラリンピックは単なるスポーツの大会というわけではないですよね。本校は昨年度まで2年間東京都の「人権尊重教育推進校」でしたので、オリンピックやパラリンピックを通じて人権について考え、人権週間や人権標語に取り組んでいきます。障害者に対する偏見や差別をしない、させない、ゆるさないということを子どもたちに考えさせています。また、国際理解として各国の特徴など、図書を充実させるために予算を使っています。

礼儀正しい子が多い印象です

しっかりあいさつをできる子が多い
しっかりあいさつをできる子が多い

学校の帰りに「さよなら、気を付けて帰るんだよ」っていうと、「ありがとうございます」と返事をしてくれるんです。誰がしつけた訳でもなく自然に出てくるんです。また、放課後にプリントを忘れたなど、電話で問い合わせてくる子がいるんですが「~先生いらっしゃいますか?」や「わかりました。ありがとうございました」という丁寧な言葉づかいなんです。これは家庭や地域の教育力がすばらしいということだと思います。そういう子がたくさんいるから、聞いていた子も同じようにやるんでしょうね。

地域の方も子どもたちを見守ってくれています

一緒に子どもたちを見守ってくれる「上ノ原まちづくりの会」
一緒に子どもたちを見守ってくれる「上ノ原まちづくりの会」

地域には「上ノ原まちづくりの会」という団体があって、学校の清掃活動をしてくださったり、地域のごみを集めて学校で分別して処分したり、盆踊り大会を開催してくださっています。登下校時には会の方が薄黄緑のジャンパーを着て通学路に立って見守りをしてくれています。本当にありがたいです。会の皆さまは、学校の外では地域の人が子どもたちを守るから、学校は学校の中の事に集中してやってくれと仰ってくれています。毎年入学式には新入生にそのジャンパーを見せて、薄黄緑のジャンパーを着た人がいたら、みんなの事を守ってくれる人だから元気にあいさつしましょうと言っています。終業式の直前になると全校集会で「雨の日も風の日もまちづくりの会の方々は立ってくださった。みんなはどういう風にあいさつしたらいいかな」って私はそこまでしか言わない。すると子どもたちが「1学期ありがとうございました。来学期もよろしくお願いします」って言ってくれたと、校長室に報告に来られたんです。その時はとてもうれしかったし誇らしかったですね。

調布市立上ノ原小学校
調布市立上ノ原小学校

調布市立上ノ原小学校

濵松章洋校長先生
東京都調布市柴崎2-26-1
TEL:042-485-1271
※この情報は2015(平成27)年9月時点のものです。