「Bacaro FERRO(バーカロ フェッロ)」で聞く、富士見ヶ丘の魅力/Bacaro FERRO 店主 河合麻希さん
京王井の頭線「富士見ヶ丘」駅の南口を出て、通りを挟んだすぐ向かい側の建物に入ると在る「Bacaro FERRO(バーカロ フェッロ)」。2011(平成23)年に富士見ヶ丘にオープンし、地元の常連さんに愛されている店である。イタリアを代表する観光地であるヴェネツィアで、地元の人々が日常的に愛用している「バーカロ」を再現し、料理も雰囲気も「現地のまま」にこだわっており、ワインもヴェネチアのあるヴェネト州のものを多く揃えている。
店主は、笑顔の素敵な河合麻希さん。常連さんからは“マキちゃん”の愛称で呼ばれているそうだ。今回はお店のこと、彼女がこの地に惚れ込んだ理由などについて、いろいろとお話を伺った。
人の“つながり”が感じられる街に惹かれてこの地で独立
――河合さんがお店を出す場所として、富士見ヶ丘を選んだのはなぜですか?
もともと、2つ隣の「三鷹台」駅前にあった「三鷹バル」の支店として、6年ほど前にこの店の向かいのビルの2階でオープンしたのが始まりです。私も昔は三鷹台のお店で働いていたのですが、開店にあたり初めて富士見ヶ丘を訪れました。
「三鷹バル」のオーナーと私で、井の頭沿線で次のお店を出そうと色々と探した中で見つけた場所です。そこで6年間営業をして、私もそろそろ独立しようかな、と考えていた時に、現在の店舗位置で営業していたベーカリーがお店を閉められるという話を聞いて、少しだけ引っ越しをすることになりました。
――河合さんは練馬の出身ということですが、なぜ、独立してもなお、富士見ヶ丘でお店を続けようと思われたのですか?
富士見ヶ丘で営業を続けていくうちに、この街が大好きになっていきました。「もう自分は富士見ヶ丘でしかお店をやれないんだろうな」とすら思いました。富士見ヶ丘が自分にすごく合っているし、自分がやりたいことと、街との相性が、すごく合っていると感じたんです。
――この街のどのような点が魅力的に感じられたのですか?
良い意味での“田舎っぽさ”が残っているところです。富士見丘商店会の先輩たちがやっているお祭りを見ていても、自由度が高くのびのびとしていますし、リーダー的な存在の方のひと声で、周りの人たちが自主的に動く。形式ばっている感じが無くて、「人のつながり」で街が動いているんです。そういうところが、なんか良いな、と思いました。
「Bacaro FERRO」に来てくださるお客さんも、そうした雰囲気を楽しんでくれる方が多いですね。新しいお店が出来たら「まずは行ってみよう!」とか、この街にすごく愛着があり、興味を持ってくれている方が多いと感じます。また、商店街沿いにいろいろなものがぎゅっと集約されているので、歩いていても楽しい街です。
本場ヴェネツィアにあるような「気軽さ」を大切に
――お店のこだわりについてお聞かせください。
イタリアのヴェネツィア地方にある、気軽に飲める居酒屋「バーカロ」をイメージしています。バーカロの基本スタイルは、入ってすぐのところに立ち飲みができるカウンター、奥にはテーブル席があり、さっと飲みたい時は立ち飲みで、ゆっくりしたい時には座ってというように選べる形式です。本場ヴェネツィアでは、観光客などももちろん利用するのですが、住んでいる人はそれぞれに自分の行きつけのバーカロを幾つか持っていて、日常的に“はしご”をして楽しむ。毎日スーパーマーケットに買い物に行くような感覚で、バーカロに飲みに行くんです。
だからこの店でも大切にしているのは、まずは「気軽に行ける雰囲気」です。自分の時間を静かに楽しんでもいいし、会話を楽しんでもいい。そうした自由にくつろげる空間を作りたいな、と思っています。
「立ち飲みのお店」と聞くと、なんとなく「何かを喋らないといけない」と思って、遠慮してしまう人もいると思いますが、そうした固定観念を変えていきたいです。仕事の帰りにふらっと寄って一人で飲んだり、本を読んだりして、気軽にリフレッシュしてもらえればと思います。
――料理の特徴についても教えていただけますでしょうか?
料理についても、ヴェネツィアにあるそのままを再現するようにこだわっています。そのために実際に現地に行って、ベネト州のお母さん達に郷土料理や家庭料理を教わり、そのレシピだけでやっています。一切日本人向けのアレンジはしていないので、本当に向こうで食べられる、本場のバーカロで出しているようなおつまみと家庭料理を楽しんでいただけます。
なかでも人気があるのは、リゾットとラザニアです。現地では絶対に立ってパスタを食べることは無いので、パスタは出していません。そもそも、ベネト州は米処どころなので、パスタよりもリゾットが多いんです。テイクアウトなどもやっています。
おつまみ系では「FERROの3種盛」が看板メニューです。ゆで卵の黄身にアンチョビやツナを詰め込んだものと、イワシの南蛮漬け、塩ダラで作るペーストをパンに付けて食べるものの3点です。これはヴェネツィアのバーカロでも、代表的なおつまみです。
それから「ポレンタ」もおすすめです。ポレンタはとうもろこしの粉を練ったもので、北イタリアの特有の主食なのですが、現地では蕎麦がきのように練り上げたものに煮込みなどをかけて、いろいろなアレンジで食べています。なのでうちの店でも「本日のポレンタ」として、ソースを頻繁に変えながら提供しています。
商店街や地域のイベントで人の流れが活性化する
――商店街や地域と関わりについて教えてください。
8月に「サンバ祭り」という商店街の大きなお祭りがあり、商店会では自由に屋台を出せるのですが、うちの店では生ハムの切り売りをして毎年参加しています。ワインやビールと一緒に販売して、1本10キロの生ハムが、1日で無くなってしまうくらい、沢山の方にご好評いただいています。
あとは、町内会の秋祭りや、2月の節分祭なども昔からあるお祭りです。また最近では、6月に行われる久我山の「ほたる祭り」で歩行者の交通規制が変わったこともあり、富士見ヶ丘にもたくさんの人の流れが来るようになったので、今後はおそらく、久我山の商店会と共催するような形で、何かをやっていくのではないかと期待しています。
――河合さんが発案したイベントもあるそうですね。
はい、2016(平成28)年から「FUJIMIGAOKA CARNEVALE」というものを始め、今年の2月にも第二回を開催しました。商店街の北側に「フーロ」さんと「ジェンマ」さんというワインバーが2軒あって、そこと協力して開催しています。実は同じ年にオープンしたお店なので、お互い仲良くしています。
このカーニバルの時には、「井の頭公園」駅の前にあるワインショップのソムリエと、ワインのインポーターの社長をお呼びして、そのお二方に、3店舗をツアーガイドして回ってもらっています。これが3つのお店をはしごするきっかけになれば、という狙いから、考えてみたものです。
ヴェネツィアでも、2月ごろにカーニバルが開催され、仮面を着けて楽しみます。なので、本場に倣い、ここでもはしごをする時は、仮面を着けて歩いていただいています。傍から見たら、なかなか異様なんですけれど(笑)。まだ2回目がこの間終わったところですが、沢山の方に参加していただきました。
富士見ヶ丘のお客さんは、優しい方が多いので、どうしても一つのお店の常連になると、ほかのお店に足を運んでくれなくなってしまうんです。その風通しを良くしたいという思いもありました。このイベントを開催してからは、いろいろなお店に足を運ぶお客さんがすごく増えたので、やってみて良かったです。
知れば知るほどに「ほっとする街」
――街の魅力について教えてください。
富士見ヶ丘は、一見地味に見えますけれど、実はいろんなお店があるんです。お客様の中にも「ここはなんにも無い街だ」と自虐される方もいますが、実はいろんな店があるし、いろんな方がいます。それがなかなか見えていないだけなんです。だから1回お店に足を運んで、どんな人がやっているかが分かれば、街の見え方も変わってくると思っています。私がさっきのイベントを始めたのも、そういう思いからなんです。本当に、あったかて世話好きな方が多いので、街に深く関わっていくほどに、「ほっとする街」に感じられてくると思います。
商店街では世代交替も進んでいる最中で、私のように30代、40代の方がけっこうお店を出しているので、これからますます面白くなっていくんじゃないかな、と思っています。これからに期待していただきたいです!
Bacaro FERRO(バーカロ フェッロ)
店主:河合麻希さん
所在地:東京都杉並区高井戸西1-33-12 富士見ケ丘センタービル101
TEL:03-5941-5032
URL:https://ja-jp.facebook.com/BacaroFERRO/
※この情報は2017(平成29)年6月時点のものです。
「Bacaro FERRO(バーカロ フェッロ)」で聞く、富士見ヶ丘の魅力/Bacaro FERRO 店主 河合麻希さん
所在地:東京都杉並区高井戸西1-33-12 富士見ケ丘センタービル101
電話番号:03-5941-5032
営業時間:18:00~24:00
定休日:木・日曜日
https://www.facebook.com/BacaroFERRO/