地域の特徴を活かした荒川区のまちづくり/荒川区役所 産業経済部(東京都)
下町の風情はそのままに、新しいまちづくりが進められている東京都荒川区。南千住や荒川、町屋、尾久、日暮里など、地域ごとに特色の異なる多彩な魅力を併せ持っているのが特徴で、都心部への交通利便性を兼ね備えた住みやすい街としても注目を集めています。なかでも、JR「日暮里」駅南口の日暮里中央通り沿道では、平成31年(2019年)4月1日より地区計画が導入され、『繊維の街・ファッションの街』を活かした独自のまちづくり取り組みも進められている。
今回は、地域産業の振興や商店街の活性化に取り組む荒川区役所産業経済部を訪ね、日暮里エリアのまちづくりや『日暮里繊維街』の特徴、2020年度に誕生する新施設についてもお話を伺いました。
モノづくりの街として発展してきた荒川区の産業振興の取り組み
――産業経済部の事業、取り組みについて簡単にご紹介ください。
荒川区にはかつて隅田川沿いに大きな工場が林立し、それに関連する金属加工や印刷関連、自転車、鉛筆、家具等の町工場が集積したモノづくりの街として発展してきました。またそこで働く人々の生活を支える商店街も発展して、区内には今もなお約40もの商店街があります。
荒川区にとって地域産業の振興は区民の暮らしの基盤となる大切な課題のひとつであり、区としても地域産業の活性化に向けた取り組みを進めています。主な取り組みとしては「モノづくりの振興」と「商店街の活性化」という大きく2つあり、大学や研究機関と地域の事業所が連携して新製品・新技術の開発を行う「荒川区モノづくりクラスター(MACC)プロジェクト」や、個店の魅力向上を目的とした通称「LANP(ランプ)」をはじめとする各種支援事業、店主が自分のお店を会場にしてミニ講座を行う「街なか商店塾」など、新しい事業にも積極的に取り組んでいます。
さらに荒川区には都電荒川線や『あらかわ遊園』といった地域資源もあるため、それらを最大限に活用したにぎわいの創出にも努め、魅力あるまちづくりに取り組んでいます。
約100年の歴史を有する全国でも有数の繊維問屋街『日暮里繊維街』
――『日暮里繊維街』の概要について教えてください。
JR日暮里駅の東口には、約1キロメートルにわたって生地織物の店舗が軒を連ねる『日暮里繊維街』があります。ひとつの地域で90軒以上ものお店が集まる繊維問屋街は全国的にも珍しく、約100年前の大正初期から、古繊維・裁落業者が集積をはじめた歴史のある地域でもあります。繊維街を歩くと、和装、洋装、紳士服・婦人服地、子供服、繊維製品、服飾関連の小物や付属品に至るまで、生地織物に関するあらゆるものが揃い、プロ・アマ問わず、学生から若者、年配の方まで幅広い層の買い物客でにぎわっています。
荒川区のホームページでは、区内の魅力や観光情報などを紹介する専用サイトがあり、本日お話しする『日暮里繊維街』の情報も掲載していますのでぜひご覧ください。
昨今は、アジアをはじめ欧米からの旅行客も多く、観光スポットのひとつとしても注目を集めています。また個人で洋服を作って楽しむ方の中には、コスプレをされる方やあるいはハロウィンのようなイベントに合わせて買い物に来る方も多く、「繊維の街・ファッションの街」として独自の発展をしています。
2020年度に日暮里の新たな街のシンボル「日暮里地域活性化施設」が誕生
――2020年度に誕生する『日暮里地域活性化施設』についてご紹介ください。
『日暮里繊維街』に、『日暮里地域活性化施設』という新しい施設の整備を進めています。日暮里区民事務所の建替と同時に地上5階建の施設として新たな街のシンボルが誕生します。これは、令和2年(2020年)1月31日にメディア向けにリリースした資料の一部ですが、PRのポイントとしては、ファッション関連の起業や創業を支援するためのインキュベーション施設や、誘客・賑わい創出等のためのシェア工房等の複合施設として運営し、地場産業の振興と日暮里地域の活性化を目指します。
5階のインキュベーション施設は、区内で創業を志す人等が入居できる場所となっています。また、経営相談から販路開拓まで入居者を支援するインキュベーションマネージャー(IM)というコーディネータを配置して、人材を育てていけるような仕組みを作ります。また2階は創作コーナー(ミシンメーカーの「ベビーロック」が運営)では、専門的な工業用のミシンなどの機器を貸し出して、日暮里繊維街等で買って来た生地をその場で縫うことができます。新しい施設を整備するにあたって、地元の方の意見にも耳を傾けた結果、買い物をした方の多くが、買ってきた生地をもう一回広げて見てみたいとか、ちょっとした休憩場所が欲しいといった声が多くあることを知りました。
そこで1階部分には、買い物をした方が気軽に休憩できるようなおもてなしスペースを作ります。またWi-Fi環境も整え、令和2年(2020年)3月1日から配信が始まった荒川区観光アプリ『あらかわさんぽ』なども使っていただきながら周辺の観光を楽しんでいただこうと考えています。時期はまだ正確に決まっていませんが、7〜8月あたりには入居者の募集も始まる予定ですので、今後のリリースにもご注目ください。また、施設の愛称も「ふらっとにっぽり」に決定しました。
商店街としての魅力や賑わいの維持を目的とした地区計画を導入
――日暮里のまちづくりについて、『日暮里中央通り沿道地区地区計画』の導入の背景についても教えてください。
日暮里エリアは「繊維の街・ファッションの街」として、区内はもとより海外からも買い物客や観光客が訪れる街で、商業地と市街地が共存する区内でも珍しい特色のある地区としてまちづくりが進められてきました。地区計画が導入された背景としては、平成26年(2014年)『日暮里繊維街』のメインとなる日暮里中央通り沿道の1階部分に店舗を持たないマンションが計画され、連続性を持った商店街としての魅力や賑わいを維持するのが難しくなっていくことを懸念する声が高りました。
そこで、『日暮里繊維街』の組合の方や沿道の商店街・町会の役員が中心となって、平成28年(2016年)11月28日に「日暮里中央通りまちづくり協議会」が設立され、地区計画の策定に向けた議論が精力的に進められました。そして、平成31年(2019年)4月1日に「日暮里中央通り沿道地区地区計画」が決定されました。
地区計画の詳しい内容は区のHPからもご覧いただけますが、沿道の建物の1階部分には通りに面して店舗を設ける必要があります。各自治体でさまざまな地区計画があるかと思いますが、1階に店舗がなきゃダメというのは特筆すべきところかと思います。
「日暮里地域活性化施設」を核にして、おしゃれな街・日暮里の発展に期待
――最後に、これから日暮里エリアに移り住む方へ向けてメッセージをお願いいたします。
まず荒川区は、下町風情があって住み心地の良い地域です。犯罪件数も少なくて治安も良いですし、都心部へのアクセスもしやすいので住むという視点からも良い環境だと思います。
日暮里エリアについては、新たな「日暮里地域活性化施設」を核にして、さらに賑わいのあるおしゃれな街になっていけばと願っています。昨今は訪日外国人の方なども増えていますが、より多くの方に訪れていただけるようにぎわいのある街づくりを支援していきたいと思っております。
まとめ
いかがでしたでしょうか。東京の下町の風情をそのまま残しながらも新たなまちづくりが進む荒川区日暮里エリア。地域産業の活性化にともなう、『日暮里繊維街』など、「モノづくりの振興」と「商店街の活性化」に取り組み区の姿勢は、これから住まう人たちへの興味や関心だけでなく、多くの人々から注目を集めていることでしょう。東京は、区や市によって特徴が異なり、趣も雰囲気もまた異なり、荒川区では、本記事のようなファッションとともに歩んできた歴史のある町です。ふとした東京観光のタイミングや、これから、荒川区への転居や移住をお考えの方の参考になれば幸いです。
荒川区役所産業経済部
所在地:東京都荒川区荒川2-2-3
電話番号:03-3802-3111(代表)
URL:https://www.city.arakawa.tokyo.jp/
※この情報は2020(令和2年)年3月時点のものです。
地域の特徴を活かした荒川区のまちづくり/荒川区役所 産業経済部(東京都)
所在地:東京都荒川区荒川2-2-3
電話番号:03-3802-3111(代)
開庁時間:8:30~17:15
※水曜日は一部窓口の延長あり(祝日を除く〜19:00)
※第2・第4日曜日は9:00~12:00まで一部窓口を開設
休庁日:土・日曜日、祝日、年末年始
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