創業100年、日本酒やワインを通じて豊かな食卓を提案する「青沼酒店」
「長野」駅から徒歩15分、「国宝 善光寺」の近くにある「青沼酒店」は、南県町で100余年、3代ににわたり酒販店を営んでこられました。この街で育ち、地域に愛される酒屋を継ぎ、店主として活躍する青沼晴子さんにお話をお聞きしました。
街の移り変わりとともに歩んだ1世紀
――創業1917(大正6)年と、大変歴史のあるお店ですね。創業からの流れを教えてください。
青沼さん: 初代である私の祖父は、長野県一の歓楽街である権堂町を得意先として酒店を創業しました。戦後に戦地から戻った父が名古屋市での修行を経て家業を継ぎ、業務先を開拓して宴会場やホテルとの取引を始めました。私は四姉妹の末っ子なのですが、このお店をなんとか繋いでいきたい、という思いがあったので、会社員をしていた主人に社長になってもらい、現在は私たち夫婦とスタッフとで経営しています。1998(平成10)年の長野オリンピック以降は、地域の経済活動に変化があったり、消費者の方のアルコール嗜好が変化したことで、より特徴あるお店づくりを心がけてきました。長野県産の日本酒やワイン、フランス産のヴィンテージワインのほか、和の食材や甘酒、最近人気の地ウイスキーなど、取り扱う商品は多岐にわたります。
つくり手、お客さま、酒店との繋がりを大切に
――ご主人の社長の基夫さんはワインアドバイザーの資格をお持ちとお聞きしましたが、お店づくりで大切にされていることを教えてください。
青沼さん:昔は酒屋といえば運送業的な面が大きかったと思いますが、今は専門店としての知識を持って、つくり手の方の思いを含めてお酒をご紹介できる酒屋になりたいと思っています。先代の父も蔵元やワイナリーに自ら足を運び、「造り手の思いやお酒が生まれた風土も含めて商品を選ぶ」ということを大切にしてきたので、社長もワインの資格をとったり、県内外の蔵元さんや醸造家さんのところに勉強に行ったりと、一生懸命やってきました。
――長野県の日本酒も豊富ですね。
青沼さん:長野県諏訪市にある日本酒の蔵元「真澄」さんとのつながりが深く、社長ご夫妻とは地酒ブームの前から日本酒の会を開催するなど、日本酒の魅力をたくさんの方に知っていただくため、一緒に切磋琢磨してきました。長野県内には、たくさんの蔵がありますので、他の酒屋さんとも協力して、これからもそれぞれのお酒の良さを勉強し、お客さまにお伝えしていきたいと思っています。
食事と楽しめる「ちょっといいお酒」を提案
――創業以来、地元の方から長く愛されていると拝見しました。普段はどのようなお客さまがご利用されていますか。
青沼さん:客層は20代からシニア世代まで幅広いのですが、最近は食に興味があるという女性のお客さまが増えています。いまの若い方は、お酒ひとつにしても丁寧な買い方をなさいますね。商品のストーリーについても興味を持ってくださる方が多く、ワインでいうとテロワールと言いますが、そのお酒ができあがるまでにどんな背景があるのかーー地域の環境、減農薬米などの原材料のこだわりなどもお伝えするようにしています。日本酒はお食事と一緒に楽しんでいただきたいので、秋ならサンマに合うお酒といったように、旬の食材に合わせたお酒や、ご家族で週末に楽しむ「ちょっといいお酒」をご提案しています。お酒はおいしいだけではなく、食生活や心を豊かにしてくれるもの。お酒を飲みながら語らう時間も大切にしたいですね。
まち歩きが楽しく、暮らしやすい南県町
――長きにわたり南県町で暮らしてこられて、街はどのように変化しているように感じますか?
青沼さん:昔ながらの専門店も残る南県町は、長野県庁が近くにあり、もともとは役人の方をお客さまとするお蕎麦屋さんやスーツを仕立てる洋服屋さんが多い街だったんです。後継者がおられず、閉店したり駐車場になる場所も増えていましたが、最近は若い方が中古物件を改修して、新しく飲食店などを開業することもありますし、集合住宅が増えて新しい住民の方が増えています。近所をまち歩きされていて、ふらっと立ち寄ってくださる方が、当店でも増えたように感じています。
――南県町は「住む場所」としてはいかがでしょうか?
青沼さん:暮らしやすい街だと思いますよ。長野駅まで歩いていくことができて、病院も多いので、生活に必要なものがぎゅっと詰まっている感じですね。当店から徒歩数分のところにある大黒神社(大國主神社)では、春と夏にお祭りを開催しています。夏祭りには屋台や福引、お神輿もあり、氏子さんを中心に地域一帯となって盛り上げています(※)。お神輿は4年に一度ですが、信州大学の学生さんも手伝ってくれるので、とてもにぎやかですよ。 ※2020、21年は新型コロナウイルスの影響で中止
「お客さまとの繋がりを大切にしていきたい」
――今後挑戦したいことや、展望などございましたらお聞かせください。
青沼さん:2021(令和3)年2月にオンラインショップをオープンしました。オンラインショップとともに実際のお店も知っていただきたいと「あおぬま便り」というフリーペーパーも、常連さんでこういうのが得意な方の力を借りながら発行しています。SNSもやっているけれどあまり向いていないみたい(笑)。それでも、新しいお客さまと出会う機会を積極的につくれるように続けていこうと思っています。当店ならではの「買い物プラスα」を楽しんでいただけるよう、これからもお客さまとの繋がりを大切にしていきたいと思っています。
――最後に、これから新しく街に住まわれる方々に向けて一言お願いいたします!
青沼さん:蔵元さんやお客さまをはじめ、いろいろな方と情報交換しながら、長く楽しくおいしいお酒をお届けしていけたらと思っています。住民の方もいれば、観光で訪れる方もいる南県町では、さまざまな方との出会いがあり、それがこの街に暮らす魅力であり、醍醐味でもあります。当店にも気軽にお立ち寄りくださいね。
青沼酒店
店主 青沼晴子さん
所在地: 長野県長野市南長野653
電話番号: 026-234-2086
URL: https://aonumasaketen.jp/
※この情報は2021(令和3)年9月時点のものです。
創業100年、日本酒やワインを通じて豊かな食卓を提案する「青沼酒店」
所在地:長野県長野市南長野653
電話番号:026-234-2086
営業時間:8:00~19:00
定休日:1月1日
https://aonumasaketen.jp/