代表 石塚よしまささんインタビュー

100年つづく老舗酒屋がリニューアル。新スタイルの異空間で人と人をつなぐ/関町セラー(東京都)


青梅街道沿いの一角にあるモダンな外観が目を引く「関町セラー」は、この街で100年以上続く酒屋「石塚商店」がリニューアルして生まれた新スタイルの酒専門店。2017(平成29)年に改装した店内には、買ったお酒をその場で楽しめる「角打ちカウンター」と「関町テラス」を設置。販売だけでなく、コミュニケーションの場としての機能も備わっている。
老舗ならではのこだわりに抜いたお酒のセレクトや、“酒屋”の枠からはみでた個性的なお店にした思いなど、代表の石塚よしまささんを訪ねお話をうかがった。

「関町セラー」代表 石塚よしまささん
「関町セラー」代表 石塚よしまささん

創業から100年以上、練馬区関町と共に歩む店の歴史

――「石塚商店」としては、1916(大正5)年に創業されたそうで大変歴史がありますね。お店のこれまでの歩みを教えてください。

石塚さん:「石塚商店」を創業したのは私の曽祖父で、私は4代目になります。創業当時この一帯は雑木林がひろがり、そのなかを青梅街道がのびているといった光景だったそうです。その青梅街道に面して掘立小屋があり、そこを曽祖父が借りて荒物屋、今でいうところの日用雑貨を売り始め、時代に合わせて荒物屋から酒屋に鞍替えしました。
青梅街道の拡幅により少しだけ場所を移動したものの、当時と今と、お店の場所はほとんど変わっていません。

創業者である石塚さんの曽祖父母と2代目の祖父母の写る家族写真
創業者である石塚さんの曽祖父母と2代目の祖父母の写る家族写真

――当然、そのような歴史とともに家業を継ぐ心づもりだったのですか?

石塚さん:いえ、父も好きにしたらいいと言ってくれたので、一度は家業とは関係なく、店舗の内装を手がける会社に就職しました。しかし店が古くなったため、集客のために棚や陳列を工夫していたら、酒の販売に携わること自体が楽しくなっていき、家業を継ごうと思ったきっかけになりました。

厳選された日本酒、本格焼酎、国内外のクラフトビール、世界のワインなどがずらりと並ぶ店内
厳選された日本酒、本格焼酎、国内外のクラフトビール、世界のワインなどがずらりと並ぶ店内

店舗建て替えを機に、新しいコンセプトでリニューアル

――2018(平成30)年に、「関町セラー」として現在の新しいスタイルのお店にされました。なぜリニューアルされたのでしょう?

石塚さん:店の建物が古くなってきたので建て直す必要があり、そのタイミングでリニューアルを考えました。まずは、“お客様と触れ合える酒屋”をコンセプトにしようと考え、さらに“自宅にお酒を置かない人のための、お酒の収納庫のような存在になりたい”との思いから、「関町セラー(=cellarは貯蔵室の意)」という店名にしました。

2018(平成30)年のリニューアルで新しいスタイルになった「関町セラー」外観
2018(平成30)年のリニューアルで新しいスタイルになった「関町セラー」外観

――「関町セラー」お酒のラインナップと、店内に設置された「角打ちカウンター」と「関町テラス」についてご紹介ください。

石塚さん:日本酒に関しては、小さな酒蔵が丁寧につくっているものに特化しています。どんな材料を使い、どんな人がつくっているのか――。それを伝えるためにも、コミュニケーションができる空間が必要でした。

1階のバースタイルの「角打ちカウンター」は、8種類のクラフトビールを楽しむことができます。一方2階の「関町テラス」は、家族、友だちなど複数人での利用に最適で、土・日曜日はフードを提供するお店も出ます。こうしたスペースがあると、お客様とお酒以外の話もできますし、お客様同士が仲良くなり、そこから新たなコミュニティが生まれることもあります。

2階にある「関町テラス」では楽しい会話も弾みそうだ
2階にある「関町テラス」では楽しい会話も弾みそうだ

――お客さんは、どのあたりからいらっしゃいますか?

石塚さん:基本的には、自転車圏内の地元の方が多いですが、駐車場もあるので少し遠くから来てくださる方もいます。リニューアル前は、それこそお酒を買われる近所の方が中心でしたが、「角打ちカウンター」と「関町テラス」のおかげで幅広い方に来店いただけるようになりました。他の居酒屋がまだ開いていない時間帯に、散歩の途中に一杯だけ、と飲んでいくという方もいますよ。

コミュニケーションを生む空間と、好奇心をくすぐる仕掛けで広がる交流

8種類のクラフトビールが楽しめる1階の「角打ちカウンター」
8種類のクラフトビールが楽しめる1階の「角打ちカウンター」

――イベントも開催されるそうですが、地域との交流などは生まれますか?

石塚さん:2階の「関町テラス」を使って、お酒関連や、スポーツ観戦イベントを開いたりしています。不定期ですが、「関町 酒と音楽の夕べ」と題して音楽系イベントを開催することもあります。DJブースも出て、出入り自由のイベントでチャージも不要。若い世代ばかりになりがちなイベントですが、ここでは老若男女が集まり、同じ時間を共有しています。地域のコミュニティスペースづくりに関われるというのは楽しいですし、やりがいもあります。ここ数年はコロナ禍でできなかったことも多いので、その分を取り返すつもりでいろいろなことに挑戦していきたいですね。

地域内での交流でいうと、「関町テラス」と同じ建物の2階にパン屋さん(「焼きたてパンの店WITH」)が入っているのですが、その母体となる「NPO法人ほっとすぺーす」さんが就労支援事業を手がけており、代表とも交流があり、同団体さんが開いた秋祭りと、「関町セラー」のイベントを一緒に開催したこともあります。パンとともにその存在をより地域の方に知っていただけたらなと思っています。

さまざまなイベントを開催することも
さまざまなイベントを開催することも

気負いなく暮らせる関町エリア、新しい風と変化も楽しみに

――石塚さんにとって練馬区関町は、仕事場であり、生まれ育った場所でもありますが、どんな街でしょう?

石塚さん:落ち着いた環境で、気負わずに暮らせるというのが一番の魅力だと思います。買い物に便利な吉祥寺が徒歩圏内にありながら、善福寺公園、武蔵関公園、石神井公園といった池や緑のある大きな公園に囲まれていることも、このエリアの良さです。
「上石神井」駅周辺は、こだわっている飲食店が多いので、いつでも気軽に美味しい料理を楽しむことができます。常連の多い店でも、誰でも優しく受け入れてくれるオープンでアットホームな店ばかりです。

青梅街道 街並み
青梅街道 街並み

――街の未来を思い描いたとき、期待することはありますか?

石塚さん:メディアにあまり取り上げられるエリアではないですが、ここ最近は個人店が増えてきており、それと関係するのか、吉祥寺方面から遊びに来る人も増えています。個人的には、いろいろな意味でこれから伸びていく街だと思っています。

――最後に、これから新たにこの街に住む方にメッセージをお願いします。

石塚さん:こういうことをしたい、してみたいと思うことがあれば、ぜひ当店に来ていただけると嬉しいです。街の歴史をお伝えすることもできますし、何よりこの場所は、いろいろな方が集まってくるコミュニティスペースにもなっています。交流を通じて、ぜひこの街のことを好きになってもらいたいです!

 

「関町セラー」代表 石塚よしまささん
「関町セラー」代表 石塚よしまささん

関町セラー

代表 石塚よしまささん
所在地:東京都練馬区関町東1-1-8
電話番号:03-3920-1124
URL:https://sekimachi-cellar.tokyo
※この情報は2023(令和5)年6月時点のものです。

 

100年つづく老舗酒屋がリニューアル。新スタイルの異空間で人と人をつなぐ/関町セラー(東京都)
所在地:東京都練馬区関町東1-1-8 
電話番号:03-3920-1124
営業時間:関町セラー(酒屋) 10:00~20:00、関町セラー1F角打ちカウンター・2F関町テラス 11:00~20:00
定休日:火曜日
https://sekimachi-cellar.tokyo