災害に強く、より安心・快適に暮らせるまちへ 糀谷のさらなる発展に向けて/糀谷再開発組合 藤田建男さん
理事長 藤田建男さん
災害に強く、より安心・快適に暮らせるまちへ
糀谷のさらなる発展に向けて
京急線の高架化工事が終わった「糀谷」駅で、駅周辺の再開発計画が本格稼働し始めている。計画の正式名称は「糀谷駅前地区第一種市街地再開発事業」、駅と環八通りに挟まれた地区に2棟のマンションと駅前広場を造り、下層階に店舗と公共施設が入るというものだ。
事業の計画自体は1999(平成11)年頃からはじまり、以来地権者との話し合い権利変換交渉などが進められていたが、15年を経た2014(平成26)年に着工する予定で、その2年後、2016(平成28)年の竣工を目指して各方面で調整が進んでいる。
今回は再開発計画地域内に事務所を構える、「糀谷駅前地区市街地再開発組合」にお伺いし、理事長の藤田建男さんにお話をうかがった。
まず、この再開発を行うことになった経緯について教えてください。
糀谷のあたりは古くからの住宅地で、狭い道路に木造住宅が密集していますので、何か災害があったときには相当の被害が予想されていました。ですので、その対応という部分がまず第一ですね。大田区の方から14年前にお話がきまして、最初は駅前広場を作って、それに付随してこのまちを再開発しようということでした。とにかく防災の面に力を入れないといけない、ということから始まったんです。
この地域では、環状八号線が防災の骨格軸になっていまして、緊急時には緊急輸送道路にも指定されているんです。ですので、それに隣接しているこの地域を高層化、耐火、不燃化することで、例えば火災が起こったときなどに延焼防止帯として機能するんじゃないかと、まずはそういうことから考え始めました。もちろん住まわれる方が快適に住まわれるということが大前提でありますので、これを充実させたうえで、再開発を進めていこうと考えております。
現在の再開発の進捗状況について教えてください。
当組合は昨年(2012年)の7月に再開発組合の設立の認可を東京都からいただきました。わたしはその時点から理事長を拝命いたしました。現在、権利変換については約95%の進捗状態です。今年(2013年)の10月には東京都に権利変換計画を認可申請致しまして、これから権利変換と明け渡しの段取りを始めて、来年春頃から建物の除去工事、夏頃から工事着工となります。竣工は2年後の2016(平成28)年の予定です。
2つの建物と駅前広場ができるそうですが、それぞれの概要と、利用の構想について教えてください。
建物については、19階建てと18階建ての2つのビルが、駅前広場を挟んで建つ計画となっています。ここは「羽田空港」の近くですので、高さ制限というものがありまして、これ以上の高さにはできないということなんですね。
第1街区の1階は全て商業施設で、2階は公益施設が入る予定です。2階の部分には、子育て支援施設や、高齢者支援施設などが入ることになっています。
3階から上は全て住宅になります。この中には、権利者さんが権利変換のために所有している部分もございまして、残っている部分は参加組合員が取得して一般向けに販売される形となります。
地下については、施設専用の駐車場が入るほか、一部が公共駐輪場になります。公共駐輪場は駅を使う皆さんに広く活用していただけるものになります。
開発全体のスローガンとしては、「未来に安全を約束する災害に強い街」、「子供からお年寄りまで安心して暮らせる便利な街」、「放置自転車が無く安全で快適な駅前空間」という3つの柱を掲げておりますので、これに沿って進めていきたいと考えております。
1階部分に入居する店舗は、すでに決まっているのでしょうか。
出店したいという希望はありますが、具体的にはどのような店舗が入るかはまだ決まっておりません。
権利者さんが入る部分については決まっているんですけれども、その他の部分は組合で希望者を公募をして決める手続きとなっています。
出店に関する希望はありますが、決定はできていないという状況です。
出店する店舗の決定に関しては、近隣の商店街さんとの調整も必要となってきます。話し合いも重ねていかなければならないので、店舗の決定はまだまだ先になるかと思います。
ただ、私の考えとしましては、これだけの規模の建物を建てるわけですから、上に住まわれる方が、天気の悪い日に買い物をビルの中で済ませられるとか、日常の生活が便利になることが理想だなと私は考えています。
「地域にどれだけ貢献できるのか」ということを目指しながら、入居する施設については検討しております。「子供からお年寄りまで安心して暮らせる便利な街」というスローガンもありますから、これに沿って決めていければ良いと思っております。
新設される駅前広場については、どのような利用が想定されているのでしょうか?
駅前広場は災害時に避難場所となります。施設の中には防災用の備蓄倉庫も設けております。
今までは駅前の広場がありませんでしたから、地域の皆さんにも、商店街をはじめ周辺の方にも多目的に使ってほしいと考えています。例えば、この地域では毎年阿波踊りの行事があるんですが、そのための集合場所に使ってもらってはどうかなど、そういった考えもあります。
「羽田空港」国際化にともなう、糀谷エリアの今後の発展と、糀谷エリアへの期待についてお聞かせください。
今回の開発で造る建物については、華美でなく、実用的なものを造っていきたいと思っております。しかし派手なものではない分、糀谷という地域に魅力がなければ、ただの通過駅になってしまう可能性もあります。ですので、今まで通過していた方にも、新たに興味をもってもらえるビル、まちになれれば、と思っております。
この再開発で糀谷というまちがガラッと大きく変わるわけではないですけれど、これがきっかけになって、さらなる発展につながっていけば良いと思っております。
そういった意味では、この再開発はあくまでも、「糀谷の発展の第一段階」だと思っております。結局これからの舵取りについては、次世代に委ねるしかないんです。
ただ、せっかく「羽田空港」が近いわけですから、新たに出店する方についても、外人さんが立ち寄ってもらえるような商品を扱っていただくとか、そのへんをうまくアピールして、この駅で降りてもらうということも、将来的には必要かと思います。
「京急蒲田」駅周辺でも再開発が進んでいますが、それと比較して、糀谷の特徴とは何でしょう?
そもそも乗降客に関しましても、蒲田と糀谷では全然違いますし、性質が違う街なので、単純比較は難しいです。
ただ糀谷地区は年々人口が増えておりますし、商店街も他と比べて物価が安いですから、それが地区の魅力なのかな、と思います。「糀谷で降りてもらうと、商店街で安く買い物ができる」ということですね。
糀谷の場合は、どんな店舗が入るかは未定なんです。どんな方が入るのか分からない。ですからこちらとしては、周辺の方やマンションの居住者の利便性が高まるものを計画したいです。それが糀谷の特徴付けや、将来の発展にもつながるかなと思います。
2棟のビルには330邸の住居が入るということですが、この内訳はどうなっていますか?
細かい部分までは確定できていませんが、小さな住宅から大きな世帯向けの住宅まで、いろいろな形があります。半分ほどは権利変換で、地権者さんが取得されていますが、その中にも権利者ご自身が住む住宅もありますし、資産運用として、お貸しする住戸もあるかと思います。この物件の良いところは、駅前という立地条件はとても希少なものですから、将来的に資産価値が上がる可能性が高いということですね。それが駅から離れたところの再開発と比べてだいぶ異なるところです。
最後に、糀谷エリアの魅力について教えてください。
何より、交通至便であることが大きいですね。都心へのアクセスの他、成田や羽田、横浜にも直通の電車がありますから、ここに住まわれる方は、どんどん行動範囲が広がってくると思います。ですので、これからもっともっとマンションなどもできるでしょうし、さらに便利になって、発展していくのだと思いますよ。
今回、話をお伺いした人糀谷駅前地区市街地再開発組合
|
災害に強く、より安心・快適に暮らせるまちへ 糀谷のさらなる発展に向けて/糀谷再開発組合 藤田建男さん
所在地:東京都大田区南蒲田3-12-10 山一ビル 3階