自分の力で未来を切り拓く子どもたちに「流山市立小山小学校」の取り組みとは/流山市立小山小学校 校長 大舘昭彦先生
「流山おおたかの森」駅の東口側、美しく整備された街並みと新興住宅地が印象的な閑静な地域にある「流山市立小山小学校」は、1978(昭和53)年に開校し、2009(平成21)年に新しい校舎に建て替えられた小学校。今回は2015(平成27)年度より小山小学校の校長を務める大舘昭彦先生を訪ね、教育活動の特色や学校の設備、周辺地域の魅力などについてお話を伺った。
新たな校舎で教育活動をスタート
まず本校の今日までの歩みですが、1978(昭和53)年の4月に、「流山市立八木北小学校」から分離し、当時、496人の子どもたちを迎えて開校しました。その後、1981(昭和56)年には約600人まで子どもが増えたのですが、2003(平成15)年頃には児童総数200名・各学年単学級の体制まで、一時は児童数が非常に減っていた時期もありました。
ところが、2005(平成17)年につくばエクスプレスが開通したことにより、その後再び右肩上がりに児童数が増加。2014(平成26)年には968 名、全29クラスという大規模小学校になりました。その児童数の増加を受けて、2015(平成27)年度の春から一部の生徒たちは「流山おおたかの森小・中学校」に転入するかたちになり、 本校は現在664名、20学級という新たな体制で日々学習に努めています。
本校も2009(平成21)年から新校舎に移転し、新しい校舎で教育活動を続けてきましたが、今後もさらに子どもたちの増加が見込まれているので、現在校舎の増築を計画しています。まだ詳しい部分は決まっていませんが、4階建ての校舎を新しく、アリーナの脇に建てるという計画です。
体験授業を通して、未来を創る力をはぐくむ
本校の学校教育目標としては、『未来を創る力をはぐくむ』という言葉を掲げています。その中で、『やる気、げん気、こん気』という合言葉のもと、自らの手で未来を拓くことができるような、今を大切に生きる児童の育成を目標にし、日々、教育活動に取り組んでいます。
ひとつ重視していることとして、「体験」ということがあります。先日も、午前中に子どもたちが稲刈りを体験し、午後からは和菓子店の方に来ていただいて、和菓子作りの体験授業も行いました。こういった体験活動を活かした取り組みや授業というのは、頻繁に取り入れています。
子どもたちの立場で考え、寄り添う教育
私が本校の教職員と日々分かち合い、共有していることは「すべては子どもたちのために」ということです。本校の学区には全国各地、あるいは海外からも、たくさんの子どもたちが転入されています。ですから当然、文化も違い、いろいろな教育的な課題も生じてきますが、とにかく、どんなことに対しても「迷ったら子どもの立場に立って考えよう」、それが一番であると、職員に日々話をしています。
他にも力を入れていることは、丁寧な生徒指導です。一人一人の子どもたちに対して、スピード感をもって対応する、個々の事案に対して丁寧に、子どもたちに寄り添って考え、解決する、そういった職員でありたいと思っています。
ただ、そうは言っても担任だけでは十分なケアができない時も当然あります。そういった時のために、流山市ではサポート教員など、色々な人的な配置をしてくださっていますので、そういった職員とともに、担任が一人で抱えることなく、チームで、または学校全体で、問題等に対して取り組むようにしています。
多目的に利用でき、のびのびと学習できる校内設備
校舎の一番の特徴としては、教室の横に「オープンスペース」があるということです。つまり、「教室に壁がない」ということでもあり、非常に空間にゆとりがあります。例えば、グループ学習の時に、廊下等、余裕のあるスペースを存分に使って授業ができるという点は、特長のひとつに挙げられます。
また、高学年など学級数が少ない学年では、アリーナに移動しなくても、オープンスペースに集まり、ディスカッションなどができる環境もあるので、そういった意味でもオープンスペースを使って、特徴のある授業ができていると思います。
学年ごとの教室棟の造りに関しては、少し異なっています。例えば、高学年の教室の横には「ゼミ室」というものも準備されていて、班会議をしたり、テーマごとに集まって話し合いをしたりなど、こちらも有効に活用しています。
音楽室についてはミニホールのような設計になっているので、映写機等の視聴覚設備も充実しています。地域の交響楽団などの演奏の練習などにも利用されており、将来的にはもっと活用の幅を広げていきたいです。
多目的室については、小規模での集会や保護者会の場として活用しています。アリーナについてもかなり広く設計されているので、教育活動をする環境としては非常に充実していると思います。プールは多目的室の上、2階部分に設計されており、これも防犯上、安心感が高い部分かと思います。
特徴的な造りということでは、階段状になっている中庭や、ウッドデッキなども該当すると思います。こちらに関しても、理科の授業で植物を育てたり、観察をしたりする場所として活用しています。昇降口を低中高学年毎に分けて利用している点も、比較的珍しいかと思います。
内外ともに非常に贅沢なスペースを取って設計をしているので、子どもたちは非常にのびのびと、活動が出来る環境だと思います。
子どもたちの転入もサポート
新たに設計を予定している新校舎については、2017(平成29)年の4月から使用できるように、ということで現在設計が進んでいるところです。新しい校舎は、子どもたちの増加に合わせて、「普通教室を増やす」ということが主な目的なので、授業に使用する普通教室が入るかと思います。ただ、児童数の変動というのは当然あると思うので、色々と多目的に転用できる工夫がされてくるかと思います。
地域の方々の協力が、魅力ある体験へと生まれ変わる
特色ある教育活動としては、委員会活動が挙げられると思います。特に5・6年生については、従来45分だった活動時間を2015(平成27)年から60分の枠に拡大しました。高学年の子どもたちは、自分たちで切り拓いていく力を付けてもらうための活動ということで、取り組んでいます。また、昼休みを長く取る日を週に1回設けて、その中で「さわやか学級」という、異年齢交流の時間を取っています。給食を一緒に食べて、上級生たちがその後の時間、低学年の子どもたちの面倒を見ながら、一緒に遊ぶというものです。
他にも、先ほども申し上げた通り、体験活動が多いということです。地域の方々にお力添えをいただいて、稲を育てたり、さつまいもを育てたり、ヒラメを養殖したりと、いろいろな飼育・栽培体験も行っています。夏は「流山おおたかの森S・C」の中にあるスポーツクラブの方が来てくださって、着衣泳の体験なども行いました。
また、校内にある建物「十太夫福祉会館」は、基本的には会議室や和室などを完備した、地域の公民館のような場所として活用されていますが、本校との交流では、年に数回、社会福祉協議会さんを中心とした行事を一緒に持たせていただいています。
地域の方々が学校の隣に来て活動されていることについては、教育活動を身近に見て頂けている、また、いつも大人の励ましの目を頂いている、ということなので、とても励みになります。
また、本校は部活動も盛んで、特にバスケットボールと陸上については、優れた成績を残しています。他にも県内でも珍しい「タグラグビー」は、参加する子どもたちも多いです。これはより安全に、でも、本物のラグビーに近いルールで行う競技で、毎年幾つかの大会にも出場しています。
文化系でユニークなものでは、和太鼓のクラブです。これは外部の先生に教えていただいているものですが、敬老会など、さまざまな機会で披露させて頂いています。吹奏楽部も地域の色々なイベントに出演し、活躍していますし、「スナッグゴルフ」や「バドミントンクラブ」などといった部活動も、地域の方に教えていただきながら、活動しています。
地域の方々が色々な形で関わってくださり、さまざまな体験を子どもたちに提供してくださっている。それが、この学校の特徴ではないかと思います。
進学先との連携で、交流を深める
本校では生徒たちの進学先である「常盤松中学校」や「おおたかの森中学校」との連携も強く意識しています。「流山市立常盤松中学校」とは、既に互いの生徒会同士で色々な交流を行っているところです。部活動についても、例えば今度開催される小学校でのミニバスケットボール大会では、中学校のミニバスケットボール部の子どもたちに指導に来てもらったりと、そういった形で連携を始めています。
もちろん、子どもたちだけではなく、教員の交流を深めることも大切で、研究授業や合同での研修会を行ったり、中学校は教科担任制なので、それに慣れてもらうために、5・6年生については一人の先生が複数のクラスで授業を行う、教科担任制風の授業も一部で取り入れて行っています。
子どもたちから地域の方々へ「感謝の集い」
昔から流山の十太夫を中心にした地域にお住まいの方は少なく、本校の子どもたちも、保護者の方も、大半は引っ越して来られた方が多いですね。出身地も本当に全国各地で、色々な方が集まってくださっている地域です。皆さん、それぞれいろんな形で積極的に学校の取り組みに関わってくださり、本当に有り難いことだと思っています。
昔からお住まいの方についても、敬老会などで、子どもたちを呼んでくださったりと、交流の機会も多いですし、時には竹馬などの昔あそびを教えに、学校まで来てくださったりなど、日々温かく見守ってくださっています。
一つ大きなものでは、朝の「登校班」の集団登校というものがあります。これは地域の方々が中心となって、地域ごとに分けられた「登校班」の登校に、毎朝、保護者の方や地域の方が必ず付き添ってくださるというものです。特に働いている保護者の方々は、本当にお忙しい中、学校の門のところまで、当番で送り届けてくださいます。通学路でも、交通安全指導員ということでお世話をいただいている方もいらっしゃって、本当に有り難い限りです。
こういったいろんな場面での協力に対して、「感謝の集い」というものを毎年計画しており、お世話になった方々を学校にお呼びして、子どもたちから感謝の気持ちを伝えさせていただく、ということも行っています。
新しいコミュニティの輪も広がる、未来型の街
街の魅力は何と言ってもやはり、秋葉原まで電車で二十数分という利便性ですね。また緑が多いことも魅力の一つです。
これは市としても、「流山グリーンチェーン戦略」ということで、緑を残しながらの開発をしてくださったお陰かと思いますが、「おおたかの森」の存在はもちろん、他にも本校近くの「大堀川」には「大堀川水辺公園」という自然豊かな公園が、非常にきれいな形で整備していただいているので、子どもたちもそこで元気に遊んでいます。都心に近いですが、緑があって、とにかく静かな環境です。そういった環境の中で子育てができるというのは、本当に素晴らしいと思います。
地域の方々についても、先ほど申し上げた通り比較的新しい方が多いですが、学校に協力的なご家庭が多く、新しいコミュニティの輪も広がりつつあるようです。これからさらに発展する、未来型の街といった点でも魅力です。
地域の方々と協力しながら、一歩ずつ確実に
今後の本校の展望としては、この地域はこれからまだまだ、子どもたちの数が増えていくので、職員一丸となって、日々、出来る限りの努力を怠らず、子どもたちが毎朝学校に来て、帰る時には“いい顔”になって帰れるような、そんな学校にしていきたいと思っています。
また、これからの世代は、「自分の力で未来を切り拓く」という力が必要であると思っています。そういった意味でも、これまで以上に「体験活動」を大切にしながら、本当の意味での「力」を付けていってもらえるような学校教育を目指していきたいと思います。
どのような目標も、言うことは簡単ですが、実際に実現していくのはとても難しいことかもしれません。ですが、本校周辺の地域の皆様のご協力のもと、一歩ずつ、確実に積み上げていき、この与えられた素晴らしい環境の中で、子どもたちの力を伸ばしていければ、と思います。
今回お話を聞いた人
千葉県流山市立小山小学校
校長 大舘 昭彦 先生
住所:千葉県流山市十太夫97-1
TEL : 04-7154-6937
http://www.nagareyama.ed.jp/oyamasyou/index.html
※この情報は2015(平成27)年11月時点のものです。
自分の力で未来を切り拓く子どもたちに「流山市立小山小学校」の取り組みとは/流山市立小山小学校 校長 大舘昭彦先生
所在地:千葉県流山市十太夫97-1
電話番号:04-7154-6937
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