地域と連携して子どもの「学ぶ意欲」を育てる、創立143年の歴史を誇る小学校/茨木市立茨木小学校 校長 松木嘉英さん
茨木市立茨木小学校
校長 松木 嘉英さん
地域と連携して子どもの「学ぶ意欲」を育てる
創立143年の歴史を誇る「茨木市立茨木小学校」
豊臣秀吉の家臣として知られる片桐且元が城主だった茨木城の跡地に建てられた歴史ある伝統校。2014(平成26)年に就任した松木校長先生は、教師、教頭としても同校と関わってきた。児童にとって「先生は味方」という考えを大切にしながら、子どもたちの成長を見守っている。茨木市の教育プラン、さまざまな行事、そして独自に取り組む「茨木ワンダーランド編」とは何か。松木校長先生にお話を伺った。
明治6年に創立された伝統ある茨木小学校の沿革について教えてください。
2015(平成27)年3月18日に創立記念日を迎えた143年目の歴史ある学校になります。かつて茨木城があった場所に「茨木市立茨木小学校」が建てられました。お城の名残などは学校の中に残っていませんが、櫓門(やぐらもん)の横には、小さな石碑があり、体育館の西側には、「茨木城」の城主だった片桐且元の碑があります。
奈良県の大和郡山のほうに「茨木城」が移設され、その大和郡山にあった櫓門を復元したのが、校門です。櫓門ができたのは創立120周年のときで、観光の名所にもなっていました(笑)。現在、子どもは718名。当校は茨木市内で一番面積の小さい学校になるのですが、子どもの人数的には上から数えて10番目くらいに入ると思います。
143年の歴史の中で、生徒数の増減はどのようになっていますか。
かなり昔にはなりますが、児童数が2,500名くらいの頃もあったようですね。そのときは午前の部、午後の部と分けて授業をしていたようです。1980(昭和55)年に、私は大学を卒業して講師として茨木小学校に就任しましたが、そのときでも1,200名おりました。1999(平成11)年くらいに、約550名に減りましたが、2006(平成18)年頃から校区にマンションが建ち始め、2015(平成27)年は718名になっています。
今後も270世帯ほど入居できるマンションが建てられる予定になっていますので、小さいお子さんを連れた家庭が入ってくるかもしれないですね。それを考えると、保護者の方の雰囲気も少しずつ変わってきた面はあるかもしれません。伝統的に地域の学校を応援するという面を引き継ぎながら育んでいます。
学校の教育目標について教えてください。
「至誠」という言葉、これを教室の黒板の上などに掲げています。目指す子ども像は、「たくましい子」「よく考える子」「思いやりのある子」です。そういった子どもを育てるために今、何ができるのか、どうすればいいのか、そういうものに取り組んでいるところですね。
私は1980(昭和55)年に講師として茨木小学校に来て、その後違う小学校に勤めた後、また担任として12年勤めました。その後、また別の小学校に行き、教頭としてこの学校に3年勤務した後、2014(平成26)年に校長として就任しましたので、ずっとこの学校を見ています。児童の雰囲気の特徴としては、人懐っこい、明るい子どもたちが多いです。地域も学校にとても協力的ですし、学校も地域にできることを積極的に行っています。
「学力・体力向上ジャンプアッププラン」というものを実践しているようですが、内容について具体的に教えてください。
茨木市の教育委員会が2008(平成20)年から学力を向上させるために進めているプランです。3年計画で行われ、最初は「学力向上いばらぎっ子プラン」というもので、2011(平成23)~2013(平成25)年の3年間は、「学力向上ステップアッププラン」となり、2014(平成26)年からの3年間は学力に体力も入り、「学力・体力向上茨木っ子ジャンプアッププラン28」になりました。
このプランには、28の施策があります。小中学校の場合、「専門支援員を派遣」というのがあります。これは各校に1名以上を配置しています。担任とは別に、クラス全体の学力の底上げを目的に、学習に困っている児童がいれば「こうすれば良いよ」などのヒントを与えたりといった活動を行っています。
また、「学校図書館支援員」も配置されました。これは、教育委員会が支援員をそれぞれの学校に配置し、さまざまな取り組みをして、茨木市の小中の子どもたちの学力を向上させていこうという取り組みです。1日4時間、図書館に来ていただいています。2014(平成26)年からの「ジャンプアッププラン」には、小学校・中学校と保育所や幼稚園も含めた連携、つながりをつくっていこうという取り組みを行っています。
この取り組みがもたらす効果をどのようにお考えでしょうか。
まず必要なのは、先生の意識ですね。学力・体力を向上させるために先生たちが創意工夫をし、わかりやすい授業に取り組んでいくことが必要です。茨木市が、支援員の派遣やさまざまな取り組みのサポートをしてくれているので、先生にも気持ちは入ると思いますね。
また、そのような先生方の意識が、授業にも影響してくると考えています。何に置いても、子どもたちに「学んでみよう」という意欲を持たせてあげることが最も大切です。そのためには、先生が45分間の授業の中で児童を引きつけたりするなどの工夫が必要になります。教室の中で「本当に学んでいる」という環境をつくることで、その結果、子どもたちが意欲をもって学び、必然的に学力は向上します。テストで取る点数はあくまで結果です。何よりも「学ぶ意欲」は、子どもたちの今後にも大きく影響してくる要素です。
茨木小学校ならではの行事について教えてください。
「ふれハピまつり」というのがあります。各クラスでお化け屋敷、ゲーム大会などのブースを作って、子どもたちが遊びに行くというものです。4年生から6年生には「ふれあい学年」があり、高学年と低学年の子どもたちが協力してブースを作るなど、子どもたち主体で企画しています。当日は、高学年がブースの当番をしながら、低学年の子どもたちと一緒に遊んでいますね。
また、「茨木神社」というのが校区にあり、祭礼でこども神輿が出るのですが、そこに本校の5、6年生の約半分の児童が参加しています。ハッピを着て、顔に化粧もし、神輿をかつぎます。これまで代々続く、伝統的な行事です。
Jリーグのガンバ大阪との交流もあるとお伺いしました。実際どのような交流をされているのでしょうか。
ガンバ大阪が茨木や高槻に「ふれあい活動」として選手を小学校に送り出してくれています。例えば4年生から6年生に対して、実際にプレーを見せてくれたり、子どもと選手で試合をしたりといった活動をしてくれています。プロの選手にサッカーを見せてもらえますから、子どもたちは喜んでいますね。
「茨木ワンダーランド編」という取り組みについて、詳しく教えてください。
2003(平成15)年頃からスタートしたのですが、地域の方が休耕田を貸してくださり、そこにビオトープを作りました。畑などを作り、近所の方も使えるようになっています。2008(平成20)年頃からは、小学校の職員や公民館、PTAの方々などが集まって、鯉のぼりを立てています。「ワンダーランドに鯉のぼりを」というキャッチフレーズで行っています。
ただ、学校の関係者が平日に手入れをするというのはなかなか難しいのが実情なので、近所の方も手入れをしてくれています。地域の方々のご協力のおかげで、子どもたちが学習の場として使用できるものになっています。この小学校は本当に土地が狭いので、子どもたちが遊んだり、自然とふれあうためにも何かできないか、ということで、当時の校長先生らがビオトープとして作りました。自然を見つけよう、という生活科の学習や5年生の米作り、クラブ活動等で使用したりもしていますね。
「ICT機器」を活用した授業を行われていますが、黒板を使用した学習との違いはどのように感じていますか。
茨木の小学校には、50インチのテレビが各教室に入っています。それに書画カメラがテレビにつながっているので、教科書を置くとそれがテレビに映るようになっています。これは先生方も常に活用しているシステムですね。子どもは視覚的なものに反応しやすいので、先生が書くよりも図形や絵も載っている画面を見せた方が反応はいいですね。
子どもによっては、教科書のどこを見ればいいのかわからないということがあるので、教科書を映すことですぐにわかります。子どもに視覚的な刺激を与えることは学習において大切なことですし、パソコンで算数の問題を映してみるとか、1分間で何かをする時にタイマーを出したりと、いろんな活用をしています。
子どもたちへの指導で大切にしていることは何でしょうか?
「先生は子どもの味方」、これはとても大切だと思います。いたずらをしても、最後は先生は味方になるんだよ、という想いをもって接することが一番大切ですね。入学して来た子どもには、保護者の希望もありますし、我々にもこんな子どもになって欲しいという目標があります。「先生は子どもの味方」という指導法は、最終的には子どものためになると考えています。
周辺環境の変化、新駅や大学の新キャンパスなど大きな開発が進んでいますが、期待されていることはありますか。
JR「総持寺」駅ができますし、「立命館大学」のキャンパスもできています。「立命館大学」は茨木市と提携をして、学生のボランティアなどを小学校に派遣してくれるのではないかと期待していますね。今は「追手門学院大学」の学生さんが4、5名来てくれています。心理学の学生さんが1年間、子どもとふれあいながら、教育活動に参加してくれます。
学生さんが来て学ばれるのはこちらとしてもありがたいですし、将来先生になっていく学生さんもおられるでしょうし、人材が増えることは嬉しいことですね。
最後に、周辺の子育て環境について教えてください。
歴史ある学校ですから、3世代のつながりがあるのは大きいですね。どこの学校にもボランティアの方がいらっしゃいますが、地域の方々の登下校時間に合わせて要所に立ってくださるんです。そういう方々の中には茨木小学校の出身の方もいらっしゃいます。お孫さんがいま通われているなど、そういうつながりは今も残っているので、大切にしていきたいですね。これはひとつの当校の特色ですし、魅力だと思っています。
地域の子どもは地域で見守るという気持ちを持ってくださっていますし、学校もいろんなことに協力できます。持ちつ持たれつの関係を続けることは、子どものためにもつながっていくのだと思っています。
今回、話を聞いた人
茨木市立茨木小学校
校長 松木 嘉英さん
茨木市立茨木小学校
所在地:大阪府茨木市片桐町8-40
電話番号:072-624-3132
URL:http://www.educ.city.ibaraki.osaka.jp/e-ibaraki/
※この情報は2015(平成27)年4月時点のものです。
地域と連携して子どもの「学ぶ意欲」を育てる、創立143年の歴史を誇る小学校/茨木市立茨木小学校 校長 松木嘉英さん
所在地:大阪府茨木市片桐町8-40
電話番号:072-624-3132
http://www.educ.city.ibaraki.osaka.jp/e-..