ビストロ エンドロール

「千歳船橋」駅の南側、徒歩1分ほどの裏道角にある「ビストロエンドロール」は、若い店主が営む小さなフランス料理店。たたずまいはカウンターバーにも見える雰囲気だが、「ビストロ」と冠しているだけあり、料理はかなり本格的。「レストランと同様の料理をカジュアルな雰囲気で楽しめる」と、特に30~40代の人々から厚い支持を得ている店である。

オーナーシェフである田中誠之(まさゆき)氏はもともとイタリアンから料理の道に入り、ワインバー、グランドメゾン(フレンチの最高級店)と渡り歩き、腕に磨きをかけてきた人物。そんな田中氏が独立にあたって目指したのは、「週に何度も来てもらえるような、カジュアルスタイルのビストロ」。グランドメゾンの技を日常的に楽しんでもらえるような、地元密着型の店だった。物件探しは小田急線沿線に求めたが、その中でも一目惚れしたのが千歳船橋の街。この物件に出会い、即決で契約したという。

もともと洋品店だったというこの物件は、ビストロにしては角が丸ごと窓になっていたりと、少々珍しい形をしている。しかしシェフは「そこがまた入りやすくていい」とすっかり気に入っている。店を一緒に切り盛りしている女性はシェフの婚約者。美大出身ということもあって、店内を楽しく、彩り豊かな空間に仕立ててくれている。お二人の軽妙なトークも楽しく、同年代の人々を中心に人気というのも頷ける。

若手シェフとはいえ、料理は非常に手が込んだものばかりで、レパートリーも豊富だ。グランドメニュー以外に日々の仕入れでさまざまな黒板メニューも登場するが、中でも特にこだわっているのは、野菜を使った料理。野菜は山梨県小淵沢で有機栽培を手掛ける富岡農園から大半を仕入れており、サラダやバーニャカウダなど、シンプルな形で味わうメニューだと特に美味しいという。中でもシェフのスペシャリテである「人参のムース 甘海老添え」(650円)は多くのお客さんがオーダーする大定番。丹念にソテーした人参に生クリームを加え、塩とコショウで味を整えたもので、ふんわりと甘じょっぱい。のご越しの柔らかなムースで、ワインとの相性が最高だ。

魚についても「できるだけ身近な、顔を知る人から仕入れたい」ということで、愛媛県で漁業を営む叔父から仕入れているものが多い。魚にも旬があるので仕入れは日々変わるそうだが、叔父さんが養殖しているアワビは季節を問わず入荷しており、これを使ったリゾットも定番人気となっている。このほか「サザエときのこの香草バター焼き」や、日々入荷する鮮魚を使ったカルパッチョやポワレなど、魚のメニューはどれも人気が高い。

この店の場合、ビストロとは言ってもメニューのオーダーは基本的にアラカルトとなる。色々な新メニューが日々登場しているので、仲間と一緒に訪れてあれこれとオーダーし、シェアしながら楽しむのがおすすめのスタイルだ。一人あたりの平均予算はだいたい3~4千円程度とのこと。コースは予約のみでの対応しているそうだ。

人参のムースとともに常連の定番人気となっているのが、「燻製全種盛り合わせ」(1,300円)。もちろんすべて自家燻製の品で、中でもチーズはシェフも太鼓判を押すお薦めの品。三宿のチーズ専門店「ランマス」から仕入れているという。また、最近の隠れた人気商品が自家製のパン。こちらはライ麦を使ったカンパーニュと、全粒粉のパンの2種のみだが、自家製ならではの素朴な味わいが人気を詰めているそうだ。中にはパンだけを予約して、持ち帰る常連さんもいるのだという。

ワインは料理に合うものを仕入れているそうだが、結果として、フランス産のものが大半となっているという。グラスでも赤・白それぞれ4種類以上を出しているそうなので、一人飲みでも色々なワインを楽しむことができる。グラスの銘柄も頻繁に変えているので、毎週訪れても、違ったグラスワインを楽しめるそうだ。

料理もワインもとても美味しい店だが、もうひとつ注目したいのがこのインテリア。カウンターはよく見ればヨーロッパのアンティークテーブルと、日本伝統のちゃぶ台をうまく組み合わせて作られている。天井に目をやれば、一面にイラストが描かれていたり、ドライフラワーが吊られていたり、目を引く素敵な絵が一等地に飾られていたり。角にあるスピーカーも、さりげなく置かれているが高級なピュアオーディオ用スピーカーだ。あくまでも料理が主役ながら、脇役たちもそれぞれに色濃い魅力を発している。

「エンドロール」という店名は、この店がシェフ達以外にも、お客さん、生産者、納品業者、内装業者など、色々な人達の“おかげさま”をもって成り立っていることに、感謝の気持ちを込めて付けたものだという。

人と人とが縁あって出会い、結びつき、美味しい料理が生まれる。そんな当たり前のような、見逃しがちなことを、しっかりと胸に刻みながら頑張っている若きお二人。この店の料理は、だからこそ美味しく感じられるのだろう。





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