オープンより10余年、地域とともに発展する/釡竹 平岡良浩さん


東京メトロ千代田線「根津」駅より徒歩3分。閑静な住宅地に位置し、歴史と風情を感じる佇まいが印象的な「釡竹(かまちく)」。各種メディアの取材や『ミシュランガイド』のピグブルマンでも取り上げられている“うどんと日本酒の専門店”。ジャズの流れる和モダンの空間でいただくうどんは逸品だ。昨今は外国から訪れた観光客や谷根千を散策する女性も多く訪れ、東京観光のスポットのひとつとして知られている。今回は「釡竹」店主の平岡良浩さんを訪ね、お店の特色やこだわりについてお話を伺った。

店主の平岡さん
店主の平岡さん

2005年10月にオープンした“うどんと日本酒の専門店”

――お店の歴史や特色について教えてください。

平岡さん:「釡竹」は、2005(平成17)年10月にオープンした“うどんと日本酒の専門店”です。もともとは大阪の羽曳野市で親が営んでいた釜揚げうどんの専門店で修行していて、出店の話をいただいたのと同時に東京にやってきました。
偶然ですが、縁あって根津でお店を始めることとなりました。
明治時代に建てられた石蔵を移築して改装したお店は建築家の隈研吾氏の設計で、レンガ造りの堂々とした佇まいと店内は、和モダンの落ち着いた雰囲気になっています。

和モダンな雰囲気の店内
和モダンな雰囲気の店内

様々なお客さんのお目当てとなっている「釜竹」のうどん

――お客様はどういった方が多いですか?

平岡さん:昼と夜で客層はまったく違います。お昼は観光客が多く、谷根千の散策や上野の美術館や博物館の観光がてらにいらっしゃる方、浅草観光から足を伸ばして来てくれる外国からのお客様も多いです。また夜は接待のご利用がほとんどで、一ヶ月前から予約で埋まっているような状態です。

ご近所の方はガラス越しに外から見て「空いてるな…」と思ったらふらっと立ち寄ってくれる方がほとんどで、家族連れで来てくださるのも土日が中心ですね。小さいお子さん専用の椅子もあるので、店内も広いのでゆっくりお過ごしいただけると思います。

様々なお客さんが目当てに訪れるうどん
様々なお客さんが目当てに訪れるうどん

広々とした店内
広々とした店内

うどんの大衆的なイメージと石蔵のおしゃれな雰囲気が心地良い

――現在のような人気店として広く知られるようになったきっかけは?

平岡さん:オープンして3年目くらいですかね。テレビの取材を受けたのがきっかけですね。お店の外観と店内の雰囲気をご覧いただいて、それから火がついて、いろんな方がきてくれるようにななりました。

うどん屋さんって、お昼はうどんだけを提供しているイメージが強いですが、うちはお昼からでもお酒が飲めるし、天ぷらの職人もいれば、日本料理の料理人もいるので一品料理も提供しています。

あと、東京では美味しいそばを食べようと思うと高級なイメージがあるのに比べて、うどんは大衆的なイメージがあるのか、気軽に来ていただけているようです。
大衆的と言っても、石蔵だったり和モダンな店内や、人通りも少なく静かに食事を心地よく楽しめる落ち着いた雰囲気から、女性お一人でも来ていただきやすいのだと思います。

うどん以外にも、一品料理が
うどん以外にも、一品料理が

うどんは切りたて、作りたてを提供できるかが重要

――料理のこだわりについて教えてください。

平岡さん:料理の味は大阪のものが基本ですが、こっちに来てから食べ歩きで覚えた料理もたくさんあって、料理人さんと一緒に試行錯誤しながら味付けや盛り付けなどを工夫しています。

うどんは、はじめの頃は大阪とこっちの水の違いに苦労しました。水の硬さですかね、大阪で教わったうどんとは分量の配分も変えてイチから作りました。

材料とか作り方は、どこのお店もこだわっていますので、むしろ一番大切なのは、切りたて、作りたての良い状態でうどんを提供できるかが重要なことだと思うんですよね。

うどんは持ち上げず、スライドさせて食べるもの

――おすすめのメニューや食べ方がありましたら教えてください。

平岡さん:うどんは「釜揚げうどん」と「ざるうどん」があって、太打ちと細打ちの2種類からお好みをお選びいただけます。

食べ方については、こちらに来てはじめて気がついたんですけど、東京はそば文化があるからか、うどんを持ち上げて食べますよね。冷たいうどんだと持ち上げてつゆにつけて食べるんでしょうけど、あたたかいうどんで持ち上げすぎると途中で切れてしまうし、つゆが服にはねて汚れてしまいます。

そこでメニューの最後のページに、食べ方を知らない方や、外国人のお客様向けに英語とイラストで食べ方のご案内を用意しました。うどんは持ち上げずにスライドさせて召し上がってみてください。

釜揚げのつゆは若干濃いめにしてあります。うどんをスライドさせることによってお湯も一緒に流れていき、うどんを食べ終えるころには、ちょうど良い感じで薄まっているはずです。無添加なので飲んでいただいても喉は乾かないですし、最後まで飲み干してもらえればす。

うどんはスライドさせて食べる
うどんはスライドさせて食べる

女性目線の楽しみ方。シャンパングラスに注いだ日本酒で乾杯

――女性のお客様向けに、おすすめの楽しみ方などあれば教えてください。

平岡さん:当店は女性のお客様も多くいらっしゃいますが、日本酒も枡の中におちょこがある枡酒スタイルではなく、シャンパングラスで乾杯するスタイルにしているので、日本酒もちょっとおしゃれな感じでお楽しみいただけると思います。

また女性向けに白ワインのように飲みやすい日本酒や、微発泡したものも取り揃えていて、気軽に楽しんでいただけるようにしています。

シャンパングラスに注いだ日本酒で乾杯
シャンパングラスに注いだ日本酒で乾杯

――今後の目標について、どのようなお店でありたいとお考えですか?

平岡さん:オープンして14年になるのですが、2015(平成27)年12月に日本酒バーの「慶 (ヨロコビ)」、2017(平成29)年7月にオムライス専門店の「洋食 タケル」を姉妹店としてオープンしました。

「慶」は夜中の3時まで営業しているうえ、うどんを茹でる釜もあるので、〆のうどんもお楽しみいただけます。また根津にはフレンチやイタリアン、中華はあるけど、オムライスやハンバーグが気軽に食べられる洋食屋さんが無いなと思って、「洋食タケル」をオープンしました。

どちらも地域のニーズを汲み取って動きました。今後の目標としては、できるだけ長くお店を続けることが地域に対して僕たちができることで、一番の信用にもつながると思っています。
「釜竹」でいつでも美味しいうどんが食べられるというのを大事にしていきたいですね。

石蔵の店内は地域に開かれるレンタルスペース

――最後に、地域の方へお知らせやメッセージをお願いします。

平岡さん:HPにも載せているんですけど、お店が休みになる日曜日の夜と月曜日はレンタルスペースとして使っていただいています。 「東京芸術大学」の学生さんの演奏会とか、俳句の会、尺八、生け花、ワインの会など、イベントや勉強会が行われています。 僕も生け花教室とかに参加していたことがありますよ。これも地域のニーズからはじめたことなので、興味がある方は気軽にお問い合わせください。

今回、お話を聞いた人

釡竹

店主 平岡良浩さん

※掲載の情報は2019(令和元)年7月のものになります。

オープンより10余年、地域とともに発展する/釡竹 平岡良浩さん
所在地:東京都文京区根津2-14-18 
電話番号:03-5815-4675
営業時間:11:30~14:30(L.O.14:00)、17:30~21:30(L.O.20:30)※うどんがなくなり次第終了
定休日:日・月曜日
http://www.kamachiku.com/