独自の学習活動に力を入れる伝統校

伝統と歴史、そして新しい未来が混ざり合う日本橋育つ/東京都中央区立久松小学校 植村洋司校長先生

開校147年という伝統ある「久松小学校」は、“粋でいなせな江戸文化”を残す地域にある。明治座の裏舞台体験などの地域の特性を活かした授業や、「小集団活動」「保育園・幼稚園・小学校の連携」など特徴ある教育活動に取り組んでいる。今回は、そんな「久松小学校」の植村校長先生に日々の取り組みや街の魅力についてお話を伺った。

全学年・全授業で取り組む「小集団活動」で、学び合い教え合う双方向教育

今回取材にご協力頂いた植村校長先生
今回取材にご協力頂いた植村校長先生

――学校の沿革と概要について教えてください。

植村校長先生:本校は1873(明治6)年3月9日開校で、今年で147年周年を迎える伝統のある学校です。「強く・正しく・豊かに」「楽しさのある学校・厳しさのある学校・信頼感のある学校」を中長期目標に掲げ、日々特徴のある教育活動を行なっています。現在、1~3年生は各4クラス、4~6年生は各3クラスあり、児童数は1年生140名、2年生129名、3年生121名、4年生102名、5年生114名、6年生93名で合計699名の子どもたちが在籍しています。ここ数年、毎年50名ずつ児童が増えている状況です。

小学校の校門
小学校の校門

児童の遊び場の確保も大きなテーマで、昨年度二学期に屋上に新たなネットを設置し、屋上でも安心してボール遊びができるようになりました。都心の学校ではありますが、「健康増進・体力向上」も重点目標の一つになっていますので、朝遊び・中休み・昼休み・放課後遊びの時間を有効に活用し、子どもたちが体を動かせるように屋上やアリーナ、校庭などに割り振っています。運動の日常化や、遊びを通した仲間づくりのきっかけにもなっていますし、低学年では教職員も放課後遊びに参加しますので、子どもとのコミュニケーションの一助になっているようです。

屋上に新しく設置されたネット
屋上に新しく設置されたネット

――特徴的な施設や設備などはありますか?

植村校長先生:最も特徴的なのは新棟の6階にあるプールです。天井が電動で開閉するので、天気の良い時は開いて使用し、雨の時でもプールの授業を行うことができます。また、プールの底が可動式になっているので、6年生が使用する時は底を下げ、低学年の時は底を上げるなど深さの調整ができます。温水ではないのでプール授業を行うのは6~9月までですが、非常に明るくてきれいな設備となっています。夏が終われば可動床を一番上まで上げて人工芝を敷き、アリーナという第二の体育館として使っています。また、校舎の屋上にはビオトープを作ってあり、小さな池もあります。ここではヤゴからトンボも育っているんですよ。低学年では生活科、中高学年になると理科や総合的な学習の時間で授業に活用しています。

プールは夏が終われば上に人工芝を敷き、第二の体育館として使われる
プールは夏が終われば上に人工芝を敷き、第二の体育館として使われる

このほかにも、「久松小学校」の歴史を展示している「久松資料館」もあります。自分たちの通う学校がどのように生まれ、これまでどんな歴史を辿ってきたのかを、児童や保護者、訪問者の方々も見ることができるようになっています。147年という長い学校の歩みを子どもたちが実際に目にすることで、愛校心や地域愛が育まれればとても嬉しいですね。

――力を入れている教育活動などはありますか?

植村校長先生:本校では「小集団活動」と呼んでいる、グループ学習活動に最も力を入れています。全学年・全授業で行なっているもので、少人数でグループを作り、話し合い・聞き合う時間を必ず取っています。学習には1人でじっくり考える時間も大切ですが、教え合い、励まし合って学ぶことも非常に重要です。教師が一斉に進める授業では、なかなか全員平等に発言してもらうことは難しいですが、小集団であれば全員が意見を言い、アドバイスを受ける双方向のやり取りが生まれます。
また、小集団活動を活性化させるためのICT活用も行なっています。例えば、跳び箱の授業で3人ずつのグループにタブレット端末を配布し、お互いの跳び方を録画して、その場で検証するといった授業など。「もっと踏切をこの位置でやってみたら?」「手はこの辺りにつくと高く跳べるよ!」など、仲間からアドバイスをもらうことで跳べるようになる子もいます。
「久松小学校」では以前からこの「小集団活動」に取り組んでいますが、話し合いの進め方、意見の聞き方、そして最終的に意見をまとめる方法などは、やはり高学年になるほど成長していきます。周囲の人と意見を交換し、議論を進めるスキルは社会に出てからも最も求められる力だと思いますので、久松小で育った子はその力がついていて心強いですね。

トップアスリートとの交流も
トップアスリートとの交流も

近年は特徴のある公立中学への進学も増加傾向

――英語の授業にも力を入れていらっしゃると聞きました。

植村校長先生:5、6年生は週2時間、3、4年生は週1時間、ALTのネイティブ教師と担任による授業が実施されているほか、1、2年生も週1時間ほど日本人教師による英語の授業があります。中央区ではALT教師に加えて、日本人教師も各学校に派遣されていますので、低学年を担当してもらっています。「英語のシャワーを浴びる」ことをテーマに、歌やゲームといった楽しみながら英語に親しめるような授業からはじめて、英語に慣れたら単語数を増やしていったり、6年生になると短いスピーチを英語で行なったりと、少しずつスキルアップできるようなプログラムを心がけています。

――区外から入学されるお子さんもいらっしゃるのでしょうか?

植村校長先生:過去には区外からお子さんを受け入れていることが多かった時期もあったようですが、先ほども申し上げたとおり、毎年児童数も50名ずつ増えているような現状ですので、今は区外から受け入れる余裕がないというのが正直なところです。また、かつては中学受験をする児童が多かったですが、近年は一番近くにある「中央区立日本橋中学校」の吹奏楽部が数々の大会で優秀な成績を残したり、ダブルダッチ部が世界一になったりと特徴のある教育活動が注目されていることから、「日本橋中」に進路を決める児童も増えてきています。本校でも課外活動でブラスバンド部があり、引き続き中学でも活動したいという児童もいますね。そのようなこともあり、昨年度の卒業生は例年よりも多くの児童が日本橋中に進学しました。特徴のある地域の中学校に進学する、という選択肢が増えることは子どもや保護者にとっても良いことだと思いますね。

「日本橋中学校」の校庭
「日本橋中学校」の校庭

明治座の舞台裏体験や老舗店舗見学など、ここでしかできない授業も

――東京都心のこの立地や周辺地域の特徴を生かした活動などはありますか?

植村校長先生:2、3年生で行う地域めぐりの授業では、地域の問屋さんや商店街の方々にご協力いただいています。老舗の飲食店では調理場を見せていただいたり、「明治座」では舞台裏や舞台装置を生で体験させてもらったりと、地域の方々にはまさにここでしかできない教育活動にご協力いただいています。また、地域の特徴を詠んだ「日本橋かるた」は、毎年地域の方々からプレゼントしていただいています。毎年1月には「日本橋かるた大会」が開かれ、3年生以上の児童がたくさん参加させてもらっています。毎年上位には本校の子どもたちがランクインしていて、優勝をする児童もいます。中央区では毎年1月は「羽根つき大会」も開催されていますので、冬休みなどを使って練習をし、張り切って参加しています。

日本橋かるた
日本橋かるた

また、子どもたちは同じ地区の1年生から6年生までで登校班を組んで通学するのですが、それを地域のボランティアの方々が登下校時に見守ってくださっています。登下校の際に顔を合わせるので、地域の方々とも顔見知りになっていて、そういう意味でも安全・安心な地域ですね。勤労感謝の集会には、この見守りの方々をご招待して、歌を発表したりお手紙を書いて渡したりと、日頃の感謝の気持ちをお伝えするようにしています。

日本橋かるた
日本橋かるた

――「久松幼稚園」をはじめとした近隣の幼稚園・保育園との連携はいかがでしょうか?

植村校長先生:「久松幼稚園」は同じ敷地内にありますので、日常的な交流も多いです。例えば、幼稚園生と3年生が一緒に「柏学園」に行って芋掘りをしたり、5年生が「久まつり」というお祭りで出店の準備し、幼稚園生を招待する行事もあります。水風船釣りや割り箸鉄砲の射的、手品などバラエティに富んだお店の数々で、園児たちはとても楽しそうに過ごしています。もてなすだけでなく、半分ずつに分かれて自分たちも楽しめるようになっているこの「久まつり」は、「久松小学校」ならではの行事だと思います。

敷地内に幼稚園が併設されている
敷地内に幼稚園が併設されている

これに加えて、近隣の幼稚園・保育園の年長さんを対象に、久松小学校の1年生体験をする日も設けています。椅子に座って授業を体験させてあげたり、上着や帽子を着せてあげてランドセルを背負わせてあげたり、その日は給食も一緒に食べて、「小学校はこんな毎日なんだよ」ということを実際に体験してもらっています。
また、先ほどお話したプールは、夏休みの間は近隣の保育園に貸し出しをしています。可動式の床を高く調整して、保育園の子どもたちにも安心な設定にして利用してもらっています。この他にも展覧会や音楽会のリハーサルを見学してもらったり、とにかく小学校の敷居を低くして小学校入学への不安を払拭してもらえるように、小学校を身近に感じてもらえるように心がけています。

――学校周辺の地域の魅力を教えてください。

植村校長先生:この周辺は問屋街や日本有数の老舗、劇場もあり、ここにしかない施設やユニークな環境が揃っている街です。この辺りは浜町に代表される“粋でいなせな江戸文化”を残す地域で、お客様を大切にする商売の街でもあることから、昔ながらの品の良い礼儀や立ち振る舞いが大切にされている場所でもあります。商店街などが未だに残っている一方、新たなマンションが建つ地域もあり、古き良き時代と新しさが混在した街だと思います。授業などでお店めぐりをさせてもらっても、非常に快く引き受けてくださり、下町の人情がまだまだ残っている地域だと実感します。また、本校では代々PTAの方々に非常にご協力いただいており、お父さんたちもお仕事の合間をみて力を貸してくださるのですごくありがたいですね。

植村洋司校長先生
植村洋司校長先生

東京都中央区立久松小学校

校長 植村洋司先生
所在地 :東京都中央区久松町7-2
電話番号:03-3661-6016
URL:https://www.chuo-tky.ed.jp/~hisamatu-es/
※この情報は2019(平成31)年4月時点のものです。

伝統と歴史、そして新しい未来が混ざり合う日本橋育つ/東京都中央区立久松小学校 植村洋司校長先生
所在地:東京都中央区日本橋久松町7-2
電話番号:03-3661-6016
https://www.chuo-tky.ed.jp/~hisamatu-es/..