自主性を育てる“学び合う教育”を展開する/奈良市立登美ヶ丘中学校(奈良県)
2020(令和2年)年で開校50周年を迎える「奈良市立登美ヶ丘中学校」では「鶴舞小学校」「平城西小学校」と連携した小中一貫教育を展開するだけでなく、10年以上前から「学び合い学習」を取り入れることで「授業で学校を作る教育」に取り組んできました。人の意見を聞く能力やコミュニケーション能力を育む「登美ヶ丘中学校」の歴史や教育活動について、今回は校長の伊藤 雅之先生にお話を伺いました。
登美ヶ丘中学校の教育目標
――まずは「奈良市立登美ヶ丘中学校」の沿革と概要を教えてください
伊藤校長:「登美ヶ丘中学校」は1971(昭和46)年に開校し、2020(令和2年)年に50周年を迎えます。この周辺は鶴舞団地ができた頃に住宅地としての開発が進み、生徒数は開校5年で5倍近く増加しました。昔から教育熱心なご家庭が多く、優秀な生徒が多かったと聞いています。現在、2019年度の生徒数は295名、3学年とも3クラス編成となっています。
小中一貫教育のメリットとしては小学校・中学校が同じ教育目標を掲げ、子どもたちをじっくりと育てられることです。小学校と中学校の教員同士が必要に応じて連携を取り合うことで、教育の向上を図っています。
――貴校での学習の特色や教育活動について教えてください
伊藤校長:本校では「広い視野と豊かな心を育み、みんなの幸せのために、未来を切り拓く意欲と実践力を持つ人間形成をめざす」という教育目標を掲げています。勉強だけでなくスポーツにおいても常に「実践力を持ちましょう」と子どもたちに伝えています。登校から下校まで、学校生活に無駄なものはひとつもないという教えです。
伊藤校長:また、本校では10年以上前から「学び合い学習」の授業研究に取り組んでいます。以前は教員が一方的に話して、生徒は黙って聞いているという一斉授業が主でした。しかし、対話もなく、黙ってノートを写しているだけでは子どもたちの主体性が育まれません。そこで4名の「学びの班」を活用したグループワークや、「コの字型」の席の配置にすることでお互いの考えを共有する環境づくりに取り組み、人の話を聞く力やコミュニケーション能力、協調性を育む教育を行っています。
現代の子どもたちが一番苦手としているのは「他人との関係作り」だと思います。本校は3つの小学校から生徒が集まってくるので、こういった授業を実施することで学力向上だけでなく、子ども同士が仲良くなり、学校の居心地が良くなるという好影響をもたらしていると感じています。
自主性を重んじて主体性を育てる教育
――さらなる貴校の特長について教えてください
伊藤校長:本校の特長としては、自主性を重んじる教育を展開していることです。例えば、生徒会が中心となって行う生徒総会では教員は見守ることに徹します。生徒会本部から提案する議題についてクラスで話し合い、それぞれの意見を総会で発表させるのです。個人の意見を大勢の生徒の前で述べるのは簡単なことではありませんが、クラスの代表の意見には皆しっかり耳を傾けるようで、それが自分たちで考え、行動する自主性につながっています。さらに本校の生徒は行事への参加も積極的で、文化発表会や体育大会は毎年大いに盛り上がります。
また、昼休みに大勢の生徒が校庭に出て遊んでいるというのは中学校は珍しいと思います。本校は20分の昼休みがあるので、みんな率先して外に出ていき、一生懸命遊んでいます。その様子も本校の特長のひとつだと思います。
――地域との交流について教えてください
伊藤校長:本校では「学校運営協議会」と「地域教育協議会」が設置され、学校と地域の方々、保護者の皆さんとともに「どのような子どもたちを育てるのか」「子どもたちにどんな力を身に付けさせたいのか」という目標やビジョンについて話し合う場を設けています。
地域やOBの方が放課後に英語や数学、国語など苦手な科目の勉強を教えてくれる補習もその活動のひとつです。英会話の成果を試すために、「奈良公園」まで出かけて学んだ英語を使ってみるなどの実践的な取り組みも行っています。また、本校は英語検定(英検)・漢字検定(漢検)の受験会場になっており、申し込みから受験日の受付まですべて「登美ヶ丘中学校区地域教育協議会」が取り仕切ってくれています。さらに、部活動では外部指導者を地域の方にお願いしているケースもあります。茶道部や剣道部は20年近く前から指導に来ていただいているので、昔から地域とのつながりが深いと言えます。
困難を自ら解決できる人間に
――今後、力を入れて取り組んでいきたい教育活動について教えてください。
伊藤校長:最近は自己肯定感の低い子どもが多くなっていると感じます。進学塾に通う優秀な友達が側にいることで、その子と自分を比較してそのように思ってしまうことがあるそうです。教育の根底は、将来世の中に出て活躍できる子どもを育てることです。先にご紹介した4人学習では、人の意見をしっかりと聞くことが求められます。私は「コミュニケーション能力=生きる力」だと思っています。そのため、授業やそのほかの学校生活を通じて、その能力を育んでいきたいと思います。
伊藤校長:さらに言えば、最近の子どもたちは危険回避能力が乏しい気がします。親や環境によって安全に守られた生活の影響でしょう。将来、嫌なことがあっても耐えられる、挫折を繰り返しても生き抜くことができるようになるためには、困難を解決する練習は必要です。中学校がそのような練習の場になればと思っています。
――最後に、学園前・登美ヶ丘という街の魅力を教えてください
伊藤校長:大阪・奈良・京都といった都市部へのアクセスが良いだけでなく、自然豊かで静かな環境があります。校内でも鳥や虫を多く見かけるほどですね。生活に必要なものは身近にそろいますし、まさに子育てに適した環境だと思います。
奈良市立登美ヶ丘中学校
伊藤雅之校長先生
所在地 :奈良県奈良市東登美ヶ丘3-1059
電話番号:0742-44-3612
URL:http://www.naracity.ed.jp/tomigaoka-j/
※この情報は2019(令和元)年11月時点のものです。
自主性を育てる“学び合う教育”を展開する/奈良市立登美ヶ丘中学校(奈良県)
所在地:奈良県奈良市東登美ヶ丘3-1059
電話番号:0742-44-3612
http://www.naracity.ed.jp/tomigaoka-j/