総支配人 中峯宏さんインタビュー

東京からのビジネス利用が急増加!観光地で知られる白浜町が目指す新たなビジョンとは。/SHIRAHAMA KEY TERRACE HOTEL SEAMORE(和歌山県)

和歌山県は現在、バケーションとワークを組み合わせた「ワーケーション」という働き方を推進しています。「羽田空港」から飛行機で1時間という立地を生かした白浜町の取り組みに、今注目が集まっています。近い将来を見据えた白浜町では、今何が起きているのでしょうか。今回は、NECとともに顔認証によるキャッシュレス決済「IoTおもてなしサービス」という実証実験に参加している「ホテルシーモア」の総支配人、中峯宏さんにお話を伺いました。

「ホテルシーモア」総支配人の中峯宏さん
「ホテルシーモア」総支配人の中峯宏さん

和歌山県白浜町のワーケーション状況

――白浜町が誘致する「ワーケーション」についての現状を教えてください。

中峯さん:2016(平成28)年から「白浜町役場」が運営する「白浜町ITビジネスオフィス」にはNECソリューションイノベータ株式会社をはじめとする9社の企業が入居しており、すぐに満室状態になったため、2018(平成30)年に「白浜町第2 ITビジネスオフィス」がオープンしました。現在、そちらもほぼ埋まった状態で、12社の企業が入居しています。本社機能が東京にある企業が主で、若い方が多く見受けられます。

中峯さん:「海を見ながら仕事ができる」という白浜のロケーションが大きなアドバンテージになったのだと思います。いつもは高層ビルの中で仕事をしている人が、窓の外に美しい太平洋が広がるオフィスで仕事をし、オフは温泉で疲れをとることにより、作業効率が10%以上も上がったそうなんです。オフィスが手狭になったので、白浜町内のもう少し広いオフィスに移転された企業もあります。

2018年に大規模リニューアルし、スタリッシュなホテルへと生まれ変わった「ホテルシーモア」
2018年に大規模リニューアルし、スタリッシュなホテルへと生まれ変わった「ホテルシーモア」

――そのビジネスオフィスには宿泊はできるのですか?

中峯さん:ビジネスオフィスは完全にオフィスだけの利用なので宿泊はできません。今までリゾート地にビジネスホテルという需要はなかったので、働いている方々はマンスリーやウィークリーという形でマンションを借りて、宿泊場所を確保しなければなりませんでした。そこで2019(令和元)年7月に「ワーケーション」を見込んだ、ビジネス客対象のホテル「シーモアレジデンス」をオープンさせました。ビジネス客のメリットは「ホテルシーモア」のサービスを自由に利用できることです。仕事終わりに温泉に入り、ラウンジでくつろぐことはもちろん、海と一体となるインフィニティ足湯を利用し、夜は満天の星空を見上げることもできます。素泊りプランもあるので、オーシャンビューのお部屋にリーズナブルな価格で宿泊できるのも魅力です。

――「シーモアレジデンス」にはビジネスマン以外の方も宿泊できるのですか。

中峯さん:もちろんです。「シーモアレジデンス」を拠点に紀伊半島を周遊する海外の方が増えています。5~9泊というように、長期滞在される方も多いですね。

――「ホテルシーモア」内にも仕事ができるスペースはあるのでしょうか。

中峯さん:パソコン、プリンター、WiFi、電源を完備した、だれでも無料で利用可能なビジネスルームが本館1階にあります。オーシャンビューのラウンジではスーツを着たビジネスマンが商談をする姿も見られます。観光地にある昔ながらの旅館では考えられない光景だと思います。

ホテルシーモアにあるビジネスルーム
ホテルシーモアにあるビジネスルーム

「ホテルシーモア」1階にある海が見渡せるラウンジ
「ホテルシーモア」1階にある海が見渡せるラウンジ

首都圏からは羽田空港から約1時間で到着

――「ホテルシーモア」は「南紀白浜空港」からのアクセスもとても良く、立地条件も最高ですね。

中峯さん:「羽田空港」から約1時間で「南紀白浜空港」に着きます。さらには空港からホテルはタクシーで約10分とアクセスがとても良いことから、ここ数年ビジネス関連の利用客が急増しています。南紀白浜空港・民営化プロジェクトチームには、「ホテルシーモア」を運営する株式会社白浜館も入っています。現在は、羽田間を1日3往復便が就航しているだけですが、2年以内に国際線ターミナルを新設し、羽田や成田からの乗り換え客や、チャーター便・ビジネスジェットの誘致などでアジア圏を中心としたお客様を呼び込もうと計画中です。

「ホテルシーモア」の入り口
「ホテルシーモア」の入り口

――顔認証によるキャッシュレス決済の「IoTおもてなしサービス」という実証実験にも参加されているそうですね。

中峯さん:NECさんや「南紀白浜空港」「ホテルシーモア」がタッグを組んで行っているのが、顔認証によるキャッシュレス決済の実証実験「IoTおもてなしサービス」です。この実験には、「アドベンチャーワールド」をはじめ、ゴルフ場やバス会社などさまざまな業態の地元施設が参加しています。 まず、スマホか空港にある専用の端末で、名前やID、顔写真、決済に利用するクレジットカード情報などをあらかじめ登録していただきます。これだけの作業で、あとは顔パスでホテル客室扉の鍵が連動するシステムです。2019(令和元)年の2月から8月までの予定で実証実験を行ったのですが、お客様にとても好評だったので2020年2月まで延長することになりました。 白浜町という地域として顔認証を広げることで、サービスが「点」から「面」になると考えました。今は、単なる温泉リゾート地では継続的にお客様に来ていただくのは難しい時代です。そんななかでも「ワーケーション」の事業は集客を目指す施策の一つです。

――民営ロケット発射場の建設場所が串本町に決まったことも話題になっていますね。

中峯さん:白浜町からもう少し南にある串本町には、民営ロケット発射場「スペースポート紀伊」を建設中です。2021(令和3)年12月には第1号のロケットを打ち上げる予定と聞いております。「南紀白浜空港」は、ロケット発射場建設に関わる方々の利用も大幅に増えていますね。週末は観光客、平日はビジネスとして利用するという理想的な形を目指しています。

「人が増え、白浜はさらに魅力的な街へと発展していくでしょう。」と語る中峯さん
「人が増え、白浜はさらに魅力的な街へと発展していくでしょう。」と語る中峯さん

――さらにアクセスが良くなる可能性もあるそうですね。

中峯さん:高速道路が延伸しており、紀伊半島が高速道路でつながる日も近いでしょう。アクセスが良くなることで、大阪や京都などの関西圏の人もさらに増えると予想されます。世界最大のホテルチェーン「マリオットホテル」が、道の駅「すさみ」の隣接地と道の駅「くしもと橋杭岩(はしぐいいわ)」の正面にホテルを建設中です。いずれも2021(令和2)年上旬のオープンを予定しているので、紀伊半島は大きく変化すると思います。

――ホテルの建設に伴い、海外からの注目度もさらにアップするでしょう。

中峯さん:あるリサーチ会社の発表によると、海外のお客様へ「2020年日本で一番訪れるべき観光地は?」というアンケートを実施したところ、2位の東京を抑えて1位が熊野だったんです。東京オリンピックが開催されるのにも関わらず、熊野が1位になったことに私たちも大変驚きました。
私どもはホテルを経営しておりますが、民間企業1社だけで和歌山のさまざまな観光資源、財産をPRするのには限界があります。点から線、そして面となって、地域全体の情報を発信し、魅力をアピールしていくことが必要です。「ホテルシーモア」の取り組みは、そのモデルケースとなればと考えています。ビジネスに対応した施設を作りましたが、これはあくまでもハード面です。ソフト面やその動線、どのように情報を発信していくのかなど、いろんな切り口が必要だと思っています。

観光資源が豊富な白浜町
観光資源が豊富な白浜町

――実証実験中の顔認証サービスには、日本全国の多くの自治体、企業から視察の問い合わせが相次いでいるそうですね。実証実験を通じて、感じていることを教えてください。

中峯さん:最近では、コンビニの無人化への取り組みで、大手コンビニチェーンが顔認証実証実験を視察に来られました。ただ、昨今急激に利用者を増やしているPayサービス同様、問題はまだまだあります。まずガラケーの方はご利用いただくことができません。そのため、高齢者の方の利用を広げていくのは難しいと感じます。加えて、1社だけのサービスでは利用者にメリットを感じていただくことができません。どこかのレストランで食事をして、ホテルでチェックイン、白浜では現金を持ち歩く必要がない。すべてキャッシュレスになれば、それが白浜のブランドになります。 新規事業に取り組む際には、「前例がない」「お金がない」「やる人がいない」といった問題が必ず前面に出てきます。それでは何も始まらないので、まずやってみようというのが私たちの考え方です。30年前に白浜に新婚旅行に来られた方が「景色も風景も変わらないね」と言ってくださった言葉は本当に誉め言葉なのでしょうか。長い歴史を全否定するのではなく、良いものは残して、時代の流れに添った新しいこともどんどん取り入れていく。そうありたいと思っています。

世界最大のスポーツサイクルブランド「GIANT・Liv」のレンタサイクル店を1階にオープン。まさに「ホテルシーモア」が観光拠点となっている。
世界最大のスポーツサイクルブランド「GIANT・Liv」のレンタサイクル店を1階にオープン。まさに「ホテルシーモア」が観光拠点となっている。

――スタッフの教育などはどのようにされているのでしょうか。

中峯さん:「ホテルシーモア」では英語だけでなく、多くの国の言語に対応すべく、ロシアやベトナム、インドネシア、台湾出身のスタッフを採用しています。白浜は、有馬や城崎と並ぶ奥座敷と呼ばれる温泉地です。以前は、国際色豊かなスタッフがいることを喜ばしく思わない傾向もありましたが、今はそんな時代ではありません。それでも海外のお客様のシェアは全体の15%ほどです。環境を整えて、今後多くのお客様を受け入れていきたいと考えています。

白浜町への訪問者誘致の取り組み

――これからの白浜町の目指す方向について、どのようにお考えでしょうか。

中峯さん:「ワーケーション」や海外からのお客様などを増やしていきたいですね。今までとは違う目的のお客様が一人でも多く、白浜を訪れてくれることが目標です。これまでアジアからの団体客が多かったのですが、近頃は欧米からの個人客が多くなっています。以前は高野山を訪れて、そのまま奈良や京都を観光するというルートが中心でした。奈良や京都ではなく、和歌山に目を向けていただくためには、やはりそこに行く意味が必要になります。
ツアーでハワイを訪れた人が、2度目、3度目の訪問で個人旅行に切り替えるように、日本を訪れる人も個々に旅行をセッティングする人が増えています。そうすると、旅の目的も当然それぞれに違ってくるはず。世界遺産を訪れる人、食を楽しみに来る人、ゴルフなどのスポーツを目的とする人などさまざまです。運賃は安い飛行機を選んで安く抑えて、レンタカーで移動する人も多くなるでしょう。多くのニーズに応えられることは、白浜町にとっての大きな武器になります。

近い距離に観光資源が集中していることも白浜の大きなメリット
近い距離に観光資源が集中していることも白浜の大きなメリット

――「関西国際空港」ではなく、「南紀白浜空港」を拠点に考えられたところが素晴らしいですね。

中峯さん:一番近い都会は東京という、逆転の発想です。地方空港でありながら、5分でゴルフ場に行けて、「アドベンチャーワールド」ではパンダも見ることができる。10分で海水浴やマリンスポーツにも行ける。こんな場所はなかなかないと思いませんか?
温暖化に伴い、冬のマリンスポーツでもじわじわと人気を集めています。以前は沖縄でしか見られなかった美しいサンゴ礁が見られることからスキューバダイビングが目的で訪れる人も。このあたりをもっとうまく、首都圏に向けて発信していきたいですね。 また、海外の方の目の付け所は、我々には想像がつかない部分があります。アンケートで熊野が1位になったのもまったくの想定外でした。どんなニーズにも応えられるように準備して、来るべきときに備える、今はその初期段階かなと思っています。

――人はもちろん、物流の面でも「南紀白浜空港」の近さは魅力的ですね。

中峯さん:物流の面でも空港の近さは大きな魅力です。例えば、白浜の人が蟹を食べに行くなら、城崎より北海道のほうが短時間で目的地に到着できます。双方にメリットがあれば、季節運航便を飛ばすことも可能かもしれません。特に、宅配料金がとても高くなっています。北海道や沖縄など海を越えると料金はぐんと上がるし、時間もかかる。発想を変えれば、遠いと思っていた場所が想像以上に近いことに気付きます。そういう意味で、白浜に秘められたポテンシャルは計り知れないと思います。白浜がさらに魅力的な街になるように我々も尽力したいと考えています。

SHIRAHAMA KEY TERRACE HOTEL SEAMORE

総支配人 中峯宏さん
所在地:和歌山県西牟婁郡白浜町1821
電話番号:0739-43-1000
URL:https://www.keyterrace.co.jp/
※この情報は2019(令和元)年12月時点のものです。

東京からのビジネス利用が急増加!観光地で知られる白浜町が目指す新たなビジョンとは。/SHIRAHAMA KEY TERRACE HOTEL SEAMORE(和歌山県)
所在地:和歌山県西牟婁郡白浜町1821 
電話番号:0739-43-1000
https://www.keyterrace.co.jp/