「甘味処 こまめ」店主 石坂かえさん、「cafe cococara」店主 樋口八也さんインタビュー

地域が繋がれば、暮らしが楽しくなる。新たな“街の風物詩”/鎌倉佐助のさんぽ市(神奈川県)


鎌倉市佐助地区で2010(平成22)年からスタートした「鎌倉佐助のさんぽ市」。佐助エリアのランドマークともいえる「佐助稲荷神社」や「銭洗弁財天 宇賀福神社」や地元店舗を回遊しながら楽しめるこのイベントは、地域の中で少しずつ育まれ、2019(令和元)年には23店が参加し、盛況のうちに第10回目を終えた。2020(令和2)、2021(令和3)年はコロナ禍で残念ながら中止となってしまったが、新たな“佐助の風物詩”として根付きつつある。

今回は「鎌倉佐助のさんぽ市」の発起人である、「甘味処 こまめ」の店主・石坂かえさんと、1回目開催時から広報役として活躍されている、「cafe cococara(カフェ ココカラ)」の樋口八也さんに、これまでの経緯とイベントの魅力、今後の展望についてお話を伺った。

漠然とした思いから活動をはじめた「鎌倉佐助のさんぽ市」

第1回開催から「鎌倉佐助のさんぽ市」に関わる石坂かえさん(左)と、樋口八也さん(右)
第1回開催から「鎌倉佐助のさんぽ市」に関わる石坂かえさん(左)と、樋口八也さん(右)

――まずは、「鎌倉佐助のさんぽ市」を始めたきっかけを教えてください。

石坂さん:実は、当初はあまり明確な目的まで考えておらず、「周辺のお店で一緒になって、みんなで何かできないかな」という思いだけがありました。それが、2010(平成22)年のことです。このお店(「甘味処 こまめ」)から見えるくらいの範囲でお声がけし、「何か一緒にやりませんか」とお話をして、開催しました。それが第1回目で、参加は私たちも含めて6店舗、当初は秋に開催していました。

それからは声を掛ける範囲もだんだん広くなり、2019(令和元)年の10回目の時には、23店舗の参加がありました。 ここ数年は、夏休み中の子どもたちに来てもらいやすいように、開催時期を7月末か8月初旬の週末に変え、2日間の日程で、各店舗でお客様をおもてなしするという形で開催しています。例えば、飲食だったらスペシャルメニューを用意したり、飲食以外では参加型のイベントを企画したりと、それぞれが趣向を凝らして開催しています。

「鎌倉市佐助のさんぽ市」イベント開催時の参加店の様子
「鎌倉市佐助のさんぽ市」イベント開催時の参加店の様子

顔なじみが増えれば、暮らしも街も楽しくなる

――全店で共有している、企画のテーマなどはありますか? 

石坂さん:最初の数回は、「うつわ」や「かき氷」といったテーマを決めて開催していました。ですが、徐々に参加してくれるお店が増え、業種も多岐にわたってきたため「各お店でオリジナリティを発揮していただこう」という事で、最近は特にテーマは設けていません。

ただ、根底には、「お客様に喜んでもらえること」という思いがあり、特にお子さんが喜ぶような内容を考えてほしい、ということはお伝えしています。全体としては、スタンプラリーを行っており、お店を回ってスタンプを集めると、景品がもらえます。4回目から実施していますが、好評ですね。

スタンプラリー開催時、4回目のイベント開催チラシ
スタンプラリー開催時、4回目のイベント開催チラシ

樋口さん:もともと、「地域の方にお店を知っていただきたい」という思いがありました。通りの奥の方に在るお店だと、地元の方にも意外と知られておらず、「せっかくご近所にあるのに、もったいないなあ」と日頃から思っていたので、スタンプラリーをそのきっかけにできればと思い、続けています。地元に顔なじみが増えると暮らしも楽しくなり、街も楽しくなる。そういった思いも企画の中にありますね。

――毎年恒例・人気の企画などがあれば教えてください。

樋口さん:たとえば石坂さんの「こまめ」では縁日のようなイメージで企画されてらっしゃいますし、ほかでは、様々なテーマのワークショップを開催したり、スペシャルメニューを出したりと、本当にお店によって、その年によって、いろいろですね。今までの中で特に話題になったのは、スタンプラリーの景品です。「さんぽ市」の仲間のデザイナーさんのオリジナルデザインのトートバッグを、スタンプを集めた全員にプレゼントしています。

スタンプラリー景品のオリジナルトートバッグを手に持つ、石坂さん
スタンプラリー景品のオリジナルトートバッグを手に持つ、石坂さん

石坂さん:2019(令和元)年開催の第10回の時には、特別なデザインでしたね。トンネル(佐助隧道)や、「佐助稲荷」など佐助のさまざまな魅力がイラストになって、とってもかわいいですよ。このトートバックについては、お客さんからも「今年は何色?」と聞かれたり、楽しみにしてくださっているようです。

街のみんなを楽しませたい、「佐助のさんぽ市」の変わらない思い

チラシのデザインも、回を重ねるごとに変わってきた
チラシのデザインも、回を重ねるごとに変わってきた

――2020(令和2)、2021(令和3)年と2回連続で中止となってしまいましたが、今後の予定はいかがですか?

樋口さん:社会が今後どうなるか分からないので、今までのような形で開催できるのか、というところから、意見を出し合いながら考えていきたいと思っています。明確なことは決まっていませんが、開催するならもちろん、これまで通り「みんなが楽しいことをしたい」と思っていますので、期待していてください。

――これまで10回の「さんぽ市」を開催してきた中で、街の変化は感じていますか?

石坂さん:そもそも、なぜ10回も続いているかと考えると、やはり1回目を終えた時に多くの反応をいただいたからですね。「来年は何するの?」、「今度はどんなバッグ?」と、地域の方が反応してくださったのが嬉しくて、今まで続けてこれたと思っています。その中で、住民の方々との距離感は、この10年で縮めることができたのかなと思います。

樋口さん:私は、佐助は鎌倉の中でも、落ち着いた静かな街だと思っていました。そのため、イベントを開いてもどうなるか少し不安だったのですが、いざ開催すると、皆さん、わぁっ、と喜んでもらえました。佐助は地域の方が一緒に楽しめる街なんだ、としみじみ感じていますね。地域に新しいお祭りができたんだ、楽しみだな、そんな風に思ってもらえたら嬉しいです。

石坂さん:まずはお店と住民の方が繋がり、お店同士が繋がり、というところからのスタートだったのですが、やはり、回を重ねるごとに新しい課題と欲も出てきまして。「地域の外の方もお招きしよう」、「観光客の方も佐助に呼んで楽しんでもらおう」とも思うようになりましたね。

樋口さん:回を重ねるごとに、自分たちの欲望が出てきた感じですよね(笑)。

「佐助のさんぽ市」広報担当を担う樋口さん
「佐助のさんぽ市」広報担当を担う樋口さん

――今までは、主に地元の方に向けたイベントだったのですね。

石坂さん:そうですね。第一歩は地元からだと思いスタートしました。最初の頃は外への告知はしておらず、佐助自治会のご協力で地元にチラシの全戸配布をさせていただいていました。それが、回を重ねるごとに少しずつ外にもアピールするようになり、最近ではSNSも使っていますし、テレビやラジオを通じて紹介していただいたりと、少しずつですが、外から来る方も増えています。

――今後の「鎌倉佐助のさんぽ市」のビジョンをお聞かせください。

石坂さん:今は先のことは何も考えられない状態になってしまいましたが、これまで着実に参加してくださるお店は増えてきたので、もっともっと「さんぽ市」も大きいものにできたらいいな、と思っています。

樋口さん:私も同じですね。参加するお店が増えれば、新しいことも、違うこともできるかもしれないですから。

人の暖かみが感じられる、鎌倉市佐助エリア

――佐助エリアの魅力については、どのように感じられていますか?

樋口さん:佐助のお店で仕事をしている中で思うのは、みなさん、本当に「いい人」ということですね。「なんでこんなにいい人が多いんだろう?」と思うくらいに、思いやりが感じられる街です。

石坂さん:私は自宅も佐助ですが、本当の意味での「鎌倉らしさ」がある街だと思います。私自身、こちらに住み始めて何年かしてから気が付いたことですが。最初の頃は「小町通り」辺りの店を見て、正直、うらやましいなと思っていたんです。でも、数年も棲んでいると、ここで暮らしている皆さんの人の良さ、おっとりさというか・・・そういったものを感じるようになりました。

地元の方に向かって仕事をできていることがすごく幸せで、佐助に来て良かったな、と思うようになりました。少し歩けば寺社にお参りできる街!というのも外せません。あとは、とにかく空気がいいんです。1つトンネルと抜けると、空気が変わりますよね。

トンネルをくぐれば、空気の変わる瞬間が感じられる
トンネルをくぐれば、空気の変わる瞬間が感じられる

――おふたりにとって、佐助のいちばん好きな場所はどこですか?

石坂さん:私は断然、「佐助稲荷」が好きですね。特に朝の7時半くらいの雰囲気が好きです。誰もいないので、本当に静かです。「銭洗弁財天(宇賀福神社)」から裏の山を通り、「佐助稲荷」に下ってくる道が朝の散歩コースの定番なのですが、とても気持ちがいいんです。

樋口さん:私は敢えて外して、「畑」ですね。ご存知ない方も多いと思いますが、佐助は裏のほうに行くと、広い畑も広がっているんです。その意外性が好きですね。無人の販売所もあったりと、ほのぼのしていて、その雰囲気が好きですね。鎌倉全体で言えば、私は海が大好きなので、自宅の近くにある「材木座」という海岸が気に入っています。有名な「由比ガ浜」よりも人が少ないので、波の音を聞いているだけで、気分がリフレッシュされますね。特に夕方に行くのがお勧めです。

朝の静寂も心地よい「佐助稲荷神社」
朝の静寂も心地よい「佐助稲荷神社」

石坂さん:樋口さんは鎌倉の色々なことに詳しいですよね。「さんぽ市」のチラシにも鎌倉の豆知識のコラムを書いてくださって。お寺にもお詳しくて。

樋口さん:私はお店のオープンのタイミングで埼玉から引っ越してきたので、当時は散歩しつくしました。お寺だと、材木座の「光明寺」、大町の「妙本寺」、長谷寺近くの「御霊(ごりょう)神社」、十二所の「光触寺」の他、近くでは、線路沿いにある「英勝寺」も好きです。お寺って、季節ごとに花が咲いて、見える景色も変わるので好きですね。今でも、お店が休みの日にはよく散歩をしています。

――最後に、佐助エリアに住みたいという方に向けてメッセージをお願いできますか?

樋口さん:鎌倉という街にも、佐助という街にも、本当にいい環境があります。特に佐助は静かで、「鎌倉」駅も近くて、教育の面でも「御成小学校」という素晴らしい学校があって、広い意味で「環境が良い」と思えるので、お勧めできる街ですね。

石坂さん:私は東京から引っ越してきて、最初に「鎌倉」駅に降りた時に「なんて空気がおいしいんだろう」と思った事が、すごく印象に残っています。実際に暮らしても、日々実感していますし、水もなんだか、自分に合う感じがしています。それと、私がいちばん好きなのは、朝鳥のさえずりで目が覚める、ということですね。

樋口さん:そうそう。鳥は多いですよね。私も最初、録音したものを流しているのかと思ったくらいです(笑)。

豊かな緑に囲まれ、にぎやかな鳥たちのさえずりが聞こえる
豊かな緑に囲まれ、にぎやかな鳥たちのさえずりが聞こえる

――せっかくなので、お二人のお店について、少しアピールをお願いします!

石坂さん:私の店は「こまめ」という手作りの甘味処で、開いて14年目になります。お米と豆がメインなので「こまめ」です。米はおむすび、豆はあんこなどですね。人気の商品は、「手亡豆」という白い豆と、黒い寒天を合わせて作った「黒かん」です。生姜と黒糖を使って作っていますので、散策の途中にも、スッキリとのどを潤していただけると思います。

樋口さん:僕は「cococara(ココカラ)」というカフェを営んでいます。肩の力を抜いて、自然体でやっていますので、ゆっくり過ごしていただけると思いますよ。 一番のおすすめはコーヒーですね。有名な「堀口珈琲」さんから豆を仕入れて、美味しいコーヒーを提供しています。手作りのスイーツもあり、ここ数年はフレンチトーストにも力を入れていて好評なので、こちらもぜひ召し上がってみてください!

石坂かえさん(左)と樋口八也さん(右)
石坂かえさん(左)と樋口八也さん(右)

鎌倉佐助のさんぽ市

「甘味処 こまめ」店主 石坂かえさん
(お店所在地:神奈川県鎌倉市鎌倉市佐助1-13-1)
「cafe cococara」店主 樋口八也さん
(お店所在地:神奈川県鎌倉市佐助1-12-3)
▼「鎌倉佐助のさんぽ市」HP:
https://sites.google.com/view/sasukesanpo2019/home
※この情報は2021(令和3)年6月時点のものです。

地域が繋がれば、暮らしが楽しくなる。新たな“街の風物詩”/鎌倉佐助のさんぽ市(神奈川県)
所在地:神奈川県鎌倉市佐助一丁目・二丁目 
電話番号:0467-23-8334 (甘味処 こまめ内)
https://sites.google.com/view/sasukesanp..