浦和の魅力を物語る創業50余年の名店/酒蔵力(埼玉県)
埼玉県さいたま市浦和区仲町一丁目、「浦和」駅東口にあり、1969(昭和44)年の創業より50年以上もの歴史を有する「酒蔵力(リキ)浦和本店」。浦和レッズのサポーターが集うお店としても知られ、“サッカーのまち浦和”の魅力を物語るお店のひとつ。 現在、コロナ禍の感染防止対策や緊急事態宣言下における営業時間の短縮など、飲食店にとっても厳しい状況が続いているなか、同店では「URAWA街Tプロジェクト」という新たな試みに挑戦し、苦境に立ち向かう地元の飲食店と協力し合うその取り組みにも注目が集まっています。 今回は、「酒蔵力 浦和本店」の店長を務める今井俊博さんに、お店の特色や街への思い、先述のプロジェクトについてもお話を伺いました。
1969(昭和44)年の創業、50年以上もの歴史と共に地域に愛される名店
――「酒蔵力 浦和本店」の歴史や特色について教えてください。
今井さん:「酒蔵力」は、1969(昭和44)年に創業しました。先代の神宮字明夫が伊勢丹の裏にあるさくら草通りにオープンした6坪のお店がはじまりで、現在はさいたま市内を中心に12店舗を運営しています。本店が現在の場所に移転したのは1999(平成11)年12月のことで、サッカーのまち浦和の発展とともに歩み続けてきました。
プロサッカーチーム「浦和レッズ」のサポーターが集まるお店として知っていただいている方も多いかと思いますが、店内には大型のテレビが設置されているのでサッカー観戦をしながら食事をお楽しみいただけます。実は私自身もはじめはサポーターのひとりとしてこのお店を訪れ、「人手が足りないからアルバイトしてみない?」と誘われたのがきっかけで、かれこれ20年以上になりますが、今では店長をやらせてもらっています。
産地直送の新鮮なお肉を提供できるのが最大の強み
――おすすめのメニューやこだわりについて教えてください。
今井さん:まず“力(リキ)の3大原則”というのがありまして、「素材の力」「出会いの力」「笑顔の力」を全店共通で大切にしています。ひとつ目の「素材の力」ですが、創業者の神宮字はもともと肉屋の卸をやっていて、産地直送の新鮮なお肉を提供できるのが最大の強みですね。
今井さん:おすすめのメニューはたくさんあるのですが、店頭で販売している「串焼き」をはじめ、卸直営だからこそ提供できる新鮮なお肉の「刺身」も人気ですし、「モツ煮込み」や「メンチカツ」、「豚足」もファンの多いひと品です。「串焼き」の中でも皆さんよく注文されるのが「骨ボール」ですね。軟骨が入っているのでコリコリとした食感が楽しくてお子さまにも人気です。
またドリンクで言うと、「浦和レッズ」にちなんだ真っ赤な「レッズサワー」というのがあります。北海道産の赤シソを絞って作ったお酒なんですが、後味がスッキリしているので女性にもおすすめです。
従業員とお客様との距離が近く、家族ぐるみのお付き合いも
――「浦和本店」ならではの楽しみ方というのはありますか?
今井さん:メニューに関しては全店共通で新鮮なお肉を食べていただけますし、3大原則の「出会いの力」「笑顔の力」に関しても接客やサービスを大切にしているので、どこのお店でも気持ち良く過ごしていただけると思います。「浦和本店」ならではとなると、個人的な印象もありますが従業員とお客様との距離が近いのかなと思います。
今井さん:また、お客様同士も仲が良かったり、ときにはお客様同士でご結婚されたりということもありましたね。よくあるのはサポーターの方がはじめはふたりで来ていたのに、お店で他のサポーターの方と出会って仲良くなるうちに4人、8人、10人…とだんだん人数が増えて、いつしかグループで全国の試合を観に行ったりするようなことも。
地元の方で3世代にわたってずっと力を愛してくださっている常連のお客様も多く、家族ぐるみのお付き合いというのもありますね。
営業時間の変更やテイクアウトの販売…厳しいコロナ禍も生き残るため
――コロナ禍の取り組みの現状ついてお聞かせください。
今井さん:まず営業時間については、通常16時から23時迄の営業を、非常事態宣言下の要請に応じて11時から20時迄の営業にしています(※取材時2021年2月時点の情報です)。もちろん手指消毒液の設置など感染防止対策も実施してはいますが、店内での飲食を自粛するムードもあって以前のようにはなかなか戻らないというのが現状です。
今井さん:お弁当やお惣菜等、テイクアウト用の商品も店頭で販売してはいますが厳しい状況に変わりはなく、十分な補償の無い休業要請にはどこのお店でも頭を悩ませています。サッカーの試合も昨年は無観客で行われるリモートマッチや観客数を減らしての開催となり、サポーターにとってもサッカーのある日常が失われてしまった我慢の一年でしたね。
当店はこれまで「サポーターのサポーター」として、サポーターが困っていることがあれば何かできることはないかと常にサポーターの皆さまを支援する側だったのですが、今回ばかりはそのサポーターの皆さまから背中を押していただいて今があるように感じています。
みんなの想いがカタチになった「URAWA街Tプロジェクト」
――「URAWA街Tプロジェクト」についてお聞かせください。
今井さん:昨年4月に緊急事態宣言が出される以前、外出自粛や休業要請等がニュースで報道されると街全体がパニックのような状態になっていて、自分たちにできることはないかとサポーターのひとりに相談したのがはじまりです。いつもは賑やかな浦和の街も夜になるとゴーストタウンのように人の姿が見えなくなり、うちのお店も売上が半減していたのですが、同じように困っている飲食店やお店と協力して何かできないかと。
相談にのってくれたのがアパレルを扱っているデザイン会社の社長なんですが、Tシャツを制作してその売上を協賛店に配分するというアイデアでした。まずはうち以外にも「浦和レッズ」のサポーターが集まるお店に声をかけて、それから「浦和」駅界隈のお店や「埼玉スタジアム」の近くのお店にも声をかけました。その際、協賛店にお願いしたのはTシャツを着てお店に来てくれた人にはお店の負担にならない程度で何かしらのサービスをお願いしますと。
今井さん:最終的に協賛店は40店舗ほど集まり、総数としては約2,000枚売れました。市内に営業所を持つ企業からも一部製作費をサポートしていただき、協賛店には7万円弱ですが分配することができました。ささやかではありますが消毒液をはじめ色々と出費もかさむので、有効に使っていただけると良いなと思います。
その後、9月末には「URAWA街Tプロジェクト」の第2弾として、同じデザインのエコバッグを配布することもできました。もともと浦和の飲食店は横のつながりというのを大切にしながらお店をやっているところが多く、こういった取り組みを通じてあらためてそのつながりを感じることができたんじゃないかと思います。私も大好きな浦和の街が一日も早く元どおりになるよう頑張っていかなきゃいけないなと思っています。
一瞬にしてファンにしてしまうような魅力ある浦和の街
――最後に浦和エリアなかでもお店のある浦和区仲町周辺の地域の魅力について教えてください。
今井さん:住みやすい街として広く知られるようになったのもそうですが、ここ数年、駅周辺の街の変化として感じるのは高層マンションが増えていることですね。それに伴って他の地域から引越して来た若いご夫婦も増えているとは聞いていますが、昔ながらの商店街のある街の風情だったり、実際に生活していて何かが大きく変わったというような印象はありません。
今井さん:それはきっと文教都市という地域性もあって、そこの魅力を感じて転居して来られる方が多いので、良い意味で修正されるというか自然と馴染んでいく。それが街全体の住みやすさになっているのかもしれないですね。
今井さん:去年、今年とお祭りはすべて中止になってしまったのですが、浦和まつりに初めて参加されたというご家族から「浦和おどりって楽しい♪」なんて声をいただくと、良いんじゃないかなと思います。
他にも浦和に来たばかりで、「埼玉スタジアムに行って浦和レッズの試合を見てみたい」と言っていた方がいたんですが、次にお店に来た時にはもう早速ユニフォームを着ていらっしゃいました。一瞬にしてファンにしてしまうような、浦和にはそういう魅力があるのかなと思います!
酒蔵力 浦和本店
店長 今井俊博さん
所在地 :埼玉県さいたま市浦和区仲町1丁目3−7
電話番号:048-822-9443
URL:https://twitter.com/riki_urawa
※この情報は2021(令和3)年2月時点のものです。
※感染症予防対策のうえ、取材を実施しております。
浦和の魅力を物語る創業50余年の名店/酒蔵力(埼玉県)
所在地:埼玉県さいたま市浦和区仲町1-3-7
電話番号:048-822-9443
営業時間:15:00~23:30(土・日曜日、祝日は13:00〜、金・土曜日は24:00まで)
定休日:年中無休
http://www.ri-ki.co.jp/