格式と伝統を有しながらも、広く開放される自然豊かな国民公園/京都御苑(京都府)
京都府京都市の地図を見ると、寺社や公園など『緑』が多く点在していることがわかります。その中でも群を抜く広さを誇るのが「京都御苑」です。利便性が高い場所にありながら自然に恵まれ、それを惜しむことなく一般に開放していることから、市民や観光客を楽しませる人気スポットとなっています。今回は、そんな「京都御苑」を管理する環境省京都御苑管理事務所を訪ねて、「京都御苑」の魅力や取り組みについて中西甚五郎庭園科長にお話を伺いました。
約65ヘクタールの広さを持つ国民公園
――「京都御苑」の概要について教えて下さい
中西庭園科長:ここは明治時代に都が東京へ遷る以前には、皇居、そして宮家や公家の邸宅が約200軒建ち並んでいた場所です。現在は、環境省が国民公園「京都御苑」として管理しています。周囲4キロメートルのこの範囲には、宮内庁管理の「京都御所」と「仙洞御所」、内閣府が管理する「京都迎賓館」、さらに警察庁が所管する「皇宮警察本部京都護衛署」なども位置しています。
――京都市内にこれほどの自然は贅沢ですね
中西庭園科長:御苑内には約5万本といわれる樹木があり、その中には「巨木」と呼ばれる幹周が3メートル以上ある大きな木も200本以上含まれています。また「母と子の森」や「出水の小川」など自然とふれ合える場所もあれば、九條家の茶室としても利用されていた建物や閑院宮邸跡などの歴史的な遺構、申込みをすれば誰でも利用可能なテニスコートやグラウンドなどもあります。歴史や自然に親しめ、スポーツも楽しめるなど、多種多様な公園が国民公園「京都御苑」の中にはあると想像していただければと思います。
約700年の歴史ある場所
――歴史についても教えていただけますか?
中西庭園科長:この場所の御所としての始まりは、1331年(元弘元)年に、光厳天皇が東洞院土御門殿を里内裏としたことでした。実は皆さんがご存じの794(延暦13)年に桓武天皇により定められた平安京の内裏(皇居)は、現在の「京都御所」からおよそ2キロメートル西に位置していました。このあたりの詳しい話は、京都御苑のホームページや、御苑内にある閑院宮邸跡収納展示館(無料)に来館していただくとご覧いただくことができます。そして、明治天皇が東京へ住まいを遷され、それにともない公家たちも東京へ移住したため、この場所はしばらく放置されていました。その荒れてゆく様を明治天皇がご覧になり哀しまれ、御所保存・旧観維持の御沙汰が出され整備されてきました。1949(昭和24)年からは、厚生省が国民公園として管理運営することになり、環境庁が発足した1971(昭和46)年からは、従来の御所の前庭としての景観維持や都市公園的な役割に加え、都市の中心部の広大な緑地としての自然環境の保全、自然とのふれあいを推進していく新たな役割が重視されるようになりました。
一般の方向けの様々なイベントを開催
――年中行事などを教えてください
中西庭園科長:代表的なものとして、1年に4回「自然教室」を開いています。これは、平地で歩きやすく交通の便も良いので「気軽に身近な自然観察」をコンセプトにしたもので、年間で300人から500人ほどの参加者を迎えて開催を続けています。もちろん「葵祭」や「時代祭」が「京都御苑」を舞台としていることもご存じの通りです。他にも「上御霊神社」の祭りも、「京都御苑」の巡行を再び始めています。
――自然が多く、四季を楽しめそうですね。おすすめの楽しみ方はありますか?
中西庭園科長:春には梅、桃、そして1000本あるという桜の木が咲き乱れ、中でも枝垂れ桜は、その枝のしなやかさは他では見られないと人気があります。また、夏はヤブミョウガの白い花が、ビーズを敷き詰めたように一面に咲く様が圧巻です。秋には紅葉が人気で、50本を数える銀杏の巨木の黄葉や色づきが鮮やかなモミジも多く、隠れた名所となっています。そして、冬になると多くの種類の野鳥が訪れるため、愛鳥家の方が多く来苑されます。夏場には、フクロウの仲間のアオバズクも数ペア飛来して、子育てをします。
――お見えになる方はどこからお越しになりますか?
中西庭園科長:ご近所の方が日課の散歩に来られることもありますし、市内や府内から自転車や自動車でお見えになる家族連れも少なくありません。一方で県外、そして海外の観光客の方も増えています。府民・市民の憩いの場であり、国際的な観光地でもあるというのは「京都御苑」ならではないでしょうか。
潤いあふれる素敵なエリア
――中西庭園科長のお気に入りの場所を教えてください
中西庭園科長:個人的には敷地東側にある「母と子の森」や「コオロギの里」、「バッタが原」といった場所が好きですね。ここは、「京都御苑」内でもっとも自然らしいエリアであり、様々な樹木やきのこ類なども生育し、自然の空気に癒される場所となっています。堺町御門から御所へ通じるところなどは、芝生とマツの樹林が整然としていますが、このエリアは様々な樹木が生育し、自然に親しめる憩いの場所となっています。
――最後にこのエリアのオススメスポット、魅力などをお願いします
中西庭園科長:周辺には、オススメのお店もたくさんあります。そして、地下鉄沿線で利便性が高い都市の中にも関わらず、「京都御苑」には贅沢なほどの自然を残しているうえに、近くには大小の寺社もあり、緑豊かな街だということ。また、鴨川も近くに流れているので、市街地にありながら潤いのある素敵なエリアだと思います。
京都御苑
環境省京都御苑管理事務所
庭園科長 中西甚五郎さん
所在地:京都府京都市上京区京都御苑3
電話番号:075-211-6348
URL:http://www.env.go.jp/garden/kyotogyoen/
※この情報は2016(平成28)年8月取材の記事を基に、2020(令和2)年5月に再校正したものです。
格式と伝統を有しながらも、広く開放される自然豊かな国民公園/京都御苑(京都府)
所在地:京都府京都市上京区京都御苑3
電話番号:075-211-6364
https://fng.or.jp/kyoto/