ICTを活用し、協働的な学びと個別最適な学びの構築に取り組む/戸田市立戸田第一小学校(埼玉県)
地域の課題解決を目的としたPBL型授業の実際
――「PBL」とはどういったものなのでしょうか?
髙橋校長先生:「PBL」というのは「Project Based Learning」の略で「課題解決型学習」と呼ばれるもので、具体的には地域の課題を子どもたち自身が見つけて、子どもたちなりに解決して成果物を通して地域に貢献する学びです。
本校では、去年の6年生は戸田市の花である「サクラソウ」をテーマにした取り組みを行いました。絶滅危惧種となっているこの花の再生事業が戸田市で行われていることを知り、プロジェクトを通じてより多くの人に「サクラソウ」を知ってもらおうとクラスやグループごとにさまざまな取り組みを行いました。
例えば育て方をパンフレットにしようとか、採取したタネを配ろうとか、なかには「サクラソウの実態を知りたい」とアンケート調査をしたグループもありました。QRコード入りのポスターを作って、通学路にあるお店を一軒一軒訪ねて貼らせてもらっていました。他にもサクラソウプロジェクトのCMを作ろうと提案したグループもあり、実際にCMを作って流してもらうのはお金がかかるからとケーブルテレビに交渉して授業をしている様子を取材してもらいました。また市内を走るコミュニティバス「toco(トコ)バス」にポスターを貼ってもらったこともありますし、地域の課題解決のために新しいものを創って地域社会に貢献していくということを子どもたちはよくやってくれたと思います。
なかでも私が一番記憶に残っているのは「サクラソウかるた」を作ったグループのことです。サクラソウの特徴、育て方、大切にしたい思いなどを読み込んだ「読み札」と「絵札」をすべて子どもたちがつくりあげて、1セットだけ印刷して作りました。しかし多くの人に知ってもらうには大量生産が必要で、そのことを戸田市のプレゼンテーション大会で発表したんです。そうしたら地域の方がクラウドファンディングのお手伝いをしてくれることになって、プロジェクトが終わって卒業した今もその子たちはかるたづくりを継続しています。私たちにとっても予想外の展開でしたが、本来目指している地域の課題解決が実際の事業につながった貴重な経験でした。
また、去年の5年生はコロナ禍をテーマにした取り組みをしました。コロナ禍で困っているお店が多くあることを知り、地域のお店を取材しながらお店のPRポスターを作ったり、お店のマップを作って貼り出してもらったりといった活動をしました。また電車好きの子供たちはJRの感染対策を調べて安心して利用できますといった動画を作ったり、クラスターが発生して大変な思いをした病院にポスターと手紙を送って「私たちも感染対策をして頑張っています」とメッセージを伝えたりしたグループもありました。JRに関する取り組みはJR「戸田公園」駅にポスターを貼り出してもらおうということになりましたし、病院とのつながりも今回の件がきっかけで戸田市教育委員会と病院の相互連携というかたちに発展して、病院のソフトボールチームの選手が学校に来てソフトボールの指導をしてくれることになりました。少しずつではありますが、授業を通じて地域や外部とのつながり、ホンモノの学びができつつある状況です。
『戸一プライド』を掲げ、教職員も意識改革
――特に力を入れている取り組みや大切にしていることについて教えてください。
髙橋校長先生:私が着任してまず取り組んだことは、教育目標を具現化するために教職員が一丸となって取り組めるような意識改革を進めることでした。誇りを持って働きましょうと。本校ではそれを『戸一プライド』と謳っていますが、歴史と伝統を重んじるなかで何か新しいことをやってみようとか変えていこうというよりは、今までのものを守っていかなきゃという前年踏襲の考え方が体質としてあったように感じたんですね。 そこで取り組んだのが学校経営の重点のひとつとしても掲げている「働き方改革の推進」です。戸田市としてもICTの導入や留守番電話を設置して電話対応の時間を定めるなど取り組みを進めていますが、本校でも勤務時間外や土曜日、日曜日といった休日対応のあり方をはじめ、定時退勤日の設定、教科担任制・教科入替え制の実施、通知表の見直し等、今までの当たり前を見直しています。
例えば子どもたちが参加する地域の行事やお祭りに教職員も参加することが慣例として行われていたのですが、今は管理職だけ参加するようにしています。 はじめの頃は学校の対応にさまざまなご意見もいただきましたが、勤務時間外の仕事が多くあることによって授業の質に関わる教材研究の時間が確保できないといった問題もあり、学校運営協議会とも話しを重ねることで少しずつ地域の方たちにもご理解いただけるようになりました。 145年の歴史と伝統の良さというのは大切にしながら、『戸一プライド』を持って新しいことをやりましょうと教職員には伝えています。
ちなみに今年度の目標としては、働き方改革をさらに推し進めて教職員が楽しく生き生きと働くことによって、理想としては子どもたちにとっての“将来なりたい職業ナンバーワン”になることです。「なんで学校の先生になりたいの?」って聞いたら、「だって先生いつも楽しそうに仕事やっているんだもん」と返ってくるような、子どもたちにとって良きロールモデルになって欲しいと伝えています。いつも「大変だ、大変だ」と朝から夜遅くまでイライラしているような先生では子どもたちは魅力を感じないでしょうし、良い影響を与えないと思うので、教職員のワークライフバランスを重視した取り組みを進めていきます。
地域や保護者と連携しながら学校づくりを進めるコミュニティ・スクール
――地域や保護者とのつながり、交流の実際についてお聞かせください。
髙橋校長先生:本校はコミュニティ・スクールとして運営されているので、日頃から地域や保護者の方と連携しながら学校づくりを進めています。例えば学校の取り組みは学校だよりやHP、facebook等で情報発信をしていますし、保護者や地域のチカラを子どもたちのために使ってもらえるように開かれた学校づくりをしています。地域の方を中心に構成された「学校応援団」や保護者が自発的に結成してくれた「戸一っ子サポーター」といった組織もあり、去年のコロナ禍にはじまった取り組みだけでも、毎朝校門で行われる健康チェックやトイレ清掃、清掃時の消毒作業や校外にある体育の代替地への引率など、さまざまな場面で学校運営を支えてくださっています。
トイレ清掃と消毒はいまでも毎日掃除の時間になると保護者のボランティアの方が集まってくださって、いろんな場所を消毒してもらっています。学校運営に対して協力的な保護者が多いので本当に助かっています。地域とのつながりは他にも、「学校応援団」による読み聞かせや学校運営協議会の委員のひとりに「あいパル」という地域交流センターの代表の方がいるのですが、「あいパル」主催で夏休み作品展をやっていただいています。また下校時の見守りもピンクのベストを着て横断歩道に立ってくださるシルバーボランティアさんがいて、毎週月曜日に実施していただいています。
利便性と落ち着いた雰囲気を兼ね備えた子育てしやすい魅力的な環境
――学校のある上戸田地区の地域や、戸田公園エリアの子育て・教育環境の魅力についてお聞かせください。
髙橋校長先生:上戸田地区の魅力は、やっぱり学校や地域を大事にしてくれる人が多いということですね。町会もしっかりしていますし、3代にわたって戸田第一小学校に通っているというご家庭もあるので、学校運営に対して皆さん協力的です。あとは公園が多いのも特徴だと思います。町会ごとに公園が1つ以上ありますし、落ち着いた地域なのでいたずら書きがあったり、大勢の人が集まって騒いだりといったようなことも一切ありません。
また、JR「戸田公園」駅まで徒歩10分程の利便性も魅力ですし、市役所や文化会館といった公共施設も徒歩圏にあります。近隣には大型の商業施設もありますし、総合病院があるのもいざというときに安心だと思います。利便性と落ち着いた雰囲気を兼ね備え、子育てもしやすい環境だと思います。
戸田市立戸田第一小学校
校長 髙橋博美先生
所在地:埼玉県戸田市上戸田3-7-5
電話番号:048-442-2268
URL:http://www.toda-c.ed.jp/site/toda1-e/
※この情報は2021(令和3)年7月時点のものです。
ICTを活用し、協働的な学びと個別最適な学びの構築に取り組む/戸田市立戸田第一小学校(埼玉県)
所在地:埼玉県戸田市上戸田3-7-5
電話番号:048-442-2268
http://www.toda-c.ed.jp/site/toda1-e/