校長 井上正彦先生インタビュー

樹齢およそ150年の「百年桜」に見守られ、地域とともに子どもたちを育む/八王子市立第八小学校(東京都)


1908(明治41)年に開校した「八王子市立第八小学校」。寺子屋を前身とする歴史ある学校で、地域とともに魅力ある学校づくりが行われている。校庭の中央には「百年桜」と呼ばれる樹齢およそ150年の桜の木が植えられ、学校の歴史をいまに伝えるシンボルとして親しまれている。

今回は2021(令和3)年より校長を務める井上正彦校長先生を訪ね、「八王子市立第八小学校」の歴史や特色ある取り組み、地域とのつながりについてお話を伺った。

「八王子市立第八小学校」井上正彦校長先生
「八王子市立第八小学校」井上正彦校長先生

1908(明治41)年の開校より114年目を迎える歴史ある学校

――まず、学校の歴史・概要についてお聞かせください。

井上先生 「八王子市立第八小学校」の歴史ですが、現在の八王子市石川町のあたりに「西蓮寺」というお寺があり、その敷地内に寺子屋があったようですが、1873(明治6)年に学制が発布され、三和学校として開校したのが本校の始まりとされています。

現在の場所に校舎ができたのは1908(明治41)年のことで、10月11日を開校記念日と定め、現在114年目を迎える歴史ある学校です。

正門前
正門前

2022(令和4)年4月1日現在の児童数は216名で、1〜4年生までが各学年1クラスずつ、5年生と6年生はそれぞれ2クラスあり計8学級で運営しています。また本校は特別支援教室(コミュニケーションの教室さくら)の拠点校に指定され、高倉小、大和田小とともに巡回で指導を行っています。

長い歴史の中で児童数が800名を超えていた時期もあるようですが、近年は少子化の影響もあり減少が続いています。

広々と開放感のある校庭
広々と開放感のある校庭

樹齢150年を超える「百年桜」とともに子どもたちを見守って来た学校

――学校の特色についてお聞かせください。

井上先生 本校の校庭には「百年桜」として知られるソメイヨシノの樹が植えられています。もともと西蓮寺の境内に植えられていた桜で、明治41年に校舎を竣工する際に移植したそうです。実際の樹齢は150年を超えているようで、今も定期的に樹木医による手当をしていただきながら大切にしています。

春には満開の桜が新1年生を迎え、夏には日陰になって子どもたちを強い日差しから守ってくれます。秋そして冬と一年を通して子どもたちと一緒に時を過ごし、季節がめぐりまた春を迎えると旅立つ卒業生たちを見送ってくれます。「百年桜」は八小の宝であり特色になっていますね。

春には満開となる「百年桜」
春には満開となる「百年桜」

もうひとつは「青い目の人形」です。1927(昭和2)年、宣教師のシドニー・ルイス・ギューリック博士の呼びかけにより、両国間の親善を目的としてアメリカの子どもたちから日本に12,739体もの人形が贈られました。

その多くは第二次世界大戦の戦時下において敵国のものとして扱われ、焼かれたり壊されたりして失われましたが、そのうちの1体が1978(昭和53)年に本校の倉庫で発見され、今も大切に保管されています。人形の名前はメアリーと言いまして、当時、子どもたちから募集して名づけられたものです。また本校にはもう1体ベッキーという人形もいるのですが、1987(昭和62)年にギューリック博士のお孫さんから贈っていただいたものです。

本校では4年生になると総合的な学習の時間で「青い目の人形」について学習します。人形が贈られた当時の暮らしや考え方、また戦争の悲惨さや平和教育について学ぶ教材として生かされています。

「青い目の親善大使」についての校内掲示
「青い目の親善大使」についての校内掲示

1人1台のタブレット端末を活用したICT教育の取り組み

――教育活動において、どのような点に力をいれているか教えてください。

井上先生 ひとつは昨年度から1人1台のタブレット端末が配布されて、情報活用能力を育成するための学習に力を入れています。各クラスには電子黒板もありますので、タブレットとつないで画面に表示したり、画面に直接触れて文字を書いたり、外国語では画面に表示されたボタンを押すと英語の発音が流れるなど、情報機器と連動した学習を進めています。

またタブレットは毎日自宅に持ち帰らせていますので、担任から宿題の連絡をしたり、持ち物の確認をしたり、1年生から日常的に使うようにしています。タブレット端末の持ち帰りに関しては市内でも学校によって運用の仕方は異なるのですが、本校では職員と話し合いを重ねた結果、授業で使うだけではなく普段の使い方も含めてきちんと教えていこうということになりました。

大型ディスプレイのある教室
大型ディスプレイのある教室

日本遺産に認定された「高尾山」を学習に生かす

――八王子の歴史や文化など、地域の特色を生かした教育活動について教えてください。

井上先生 八王子の良さを学ぶ郷土学習の一環として、総合的な学習の時間の中で「高尾山」について学んでいます。2020(令和2)年に「高尾山」が日本遺産として東京都で初めて認定されたのですが、本校の教育活動においても様々な場面で生かされています。

八王子を代表する「高尾山」について学べる
八王子を代表する「高尾山」について学べる

例えば3年生と4年生は合同で高尾山に遠足に行きます。事前に高尾山の自然について学んだり、専門家よる出前授業を通して環境問題について学んだりしています。また日本遺産の認定を記念して制作された「桑都(そうと)八王子かるた」を各クラスに配り、八王子の歴史や文化についても学んでいます。

「八王子カルタ」
「八王子カルタ」

学校運営協議会の協力による放課後の見守りや学力向上の取り組み

――保護者や地域の方と連携して行われている活動があればお聞かせください。

井上先生 本校は2020(令和元)年に学校運営協議会が設置され、地域運営学校(コミュニティスクール)として運営されています。学校運営協議会の方々はとても協力的で、例えば、毎週火曜日の放課後は「わくわくスタディ」が行われ、地域の方が学校に来てくださって算数や国語の補習学習をしてくださいます。

また夏休みに入るとすぐに「わくわくワーク」という取り組みもあり、今年度は7月26日から29日までの4日間にわたり、午前9〜11時まで、地域の学習ボランティアの方が子どもたちの学習をみてくださいました。

他にも「放課後子ども教室」は学校運営協議会が中心になって動いてくださっていて、毎週水曜日と金曜日の放課後になると地域の方が学校に来てさまざまな活動をしてくれます。地域と学校との結びつきを感じる取り組みです。

地域密着型の校外学習
地域密着型の校外学習

第八小、大和田小、高倉小、第一中学校が連携して取り組む小中一貫教育

――小中一貫教育の取り組みや、保育園・幼稚園との連携についても教えてください。

井上先生 まず小中一貫教育に関しては、本校と大和田小、高倉小、第一中学校が連携して取り組みを進めています。具体的な取り組みとしては、年3回、各校の教員が授業の様子を見学し、子どもたちの様子や指導法などについて意見交換をしています。去年はコロナ禍の影響でオンラインでの実施となりましたが、今年度に入ってからは先生たちが直接行き来して取り組みを進めています。

一方、子どもたちの交流については、先ほど「わくわくワーク」についてお話ししましたが、「第一中学校」の生徒さんたちも来てくれて子どもたちの学習のお手伝いをしてくれました。参加してくれた生徒さんに話を聞いてみると、実際にやってみて教えることの難しさに気づいたとか、自分もこういうところで悩んでいたからこうやって伝えれば良いかなと工夫ができたとか、良い経験になったと感想を伝えてくれました。

また保幼小の連携については、学校の向かいに「八王子市立石川保育園」があり、本校の職員が保育の様子を見学に行ったり、保育園の先生も学校の様子を見に来たりして、卒園児が入学後に小学校にスムーズに適応するための情報交換や連携を進めています。

理路整然とした図書室
理路整然とした図書室

人・物・時間の3つのあたりまえができるように

――校長先生が子どもたちと関わる中で、大切にしていることがありましたら教えてください。

井上先生 教育における不易流行という言葉がありますが、不易なものの根幹に「人・物・時間に対するあたりまえをあたりまえにする」ことの大切さを子どもたちに伝えています。

人に対しては、相手を思いやる気持ちであったり、相手の立場に立って理解したりすることもそうですし、一番大切なのはあいさつだと思っています。

物に対しては勉強道具や机、椅子など身の回りのものを大切にしましょうと。給食に使われている食材も農家の方が一生懸命手をかけて作ってくれたものなので、残さないで食べるということも物を大切にすることにつながっているのかなと思います。

時間については、時間を大切に使って欲しいと思います。ゲームや遊びだけに使うんじゃなくて、勉強もそうですがやるべきことをちゃんとやりましょうと。時間を守るということも大切ですね。チャイムが鳴ってもいつまでも遊んでしまうことが無いように、時間を守ることの大切さを伝えています。

ユニークで注目されやすい校内掲示
ユニークで注目されやすい校内掲示

校長先生のアイデアで取り組みをはじめた「あいさつカード」

――校長室の前にある「あいさつチャレンジ表」とは?

井上先生 昨年、本校に着任した際、子どもたちのあいさつが少ないかなと感じて「あいさつチャレンジ表」を始めることにしました。A4の半分くらいの大きさで、裏にはシールが貼れるようになっています。

シールが○個集まると“あいさつ名人”に認定して賞状を渡すようにしていますが、取り組みをはじめて約一年半、最近はあいさつする子が多くなってきたと感じています。

「あいさつチャレンジ表」を持つ、井上校長先生
「あいさつチャレンジ表」を持つ、井上校長先生

代々続く農家との交流や、学校運営に協力的な地域が魅力

――学校周辺エリアの魅力についてお聞かせください。

井上先生 本校の学区域は非常に広く、西は「小宮公園」のあたりから東は日野市との市境のあたりまであります。北八王子は戦後になって工業団地が形成され、都営団地など宅地の開発によって発展してきた街の歴史がありますが、駅から少し離れると代々続く農地が今も残っています。1941(昭和16)年に八王子市に編入される前は小宮町と言って、農業や養蚕が盛んに行われていた地域のようです。

本校では3年生になると農家さんのところに見学に行かせていただき地域のことについて学びます。また八王子は織物のまちとしても知られていますが、学校でも蚕を育てて養蚕について学ぶ機会があり、蚕を育てるのに必要な桑の葉を地域の農家さんが学校に持ってきてくださるんです。

本校は学校の歴史が古く、親子2代、3代で本校出身というご家庭もいらっしゃって、学校運営に協力的なのを大変有り難く感じています。

「八王子市立第八小学校」前の街並み
「八王子市立第八小学校」前の街並み

井上 正彦校長先生
井上 正彦校長先生

八王子市立第八小学校

井上 正彦 校長先生
所在地:東京都八王子市石川町2065
電話番号:042-642-0937
URL:https://hachioji-school.ed.jp/dai8e/
※この情報は2022(令和4)年9月時点のものです。

樹齢およそ150年の「百年桜」に見守られ、地域とともに子どもたちを育む/八王子市立第八小学校(東京都)
所在地:東京都八王子市石川町2065 
電話番号:042-642-0937
https://hachioji-school.ed.jp/dai8e/