計画部 部長 村上明さん、計画部計画課 課長 田中淳寛さんインタビュー

いよいよ2023(令和5)年3月に開業。沿線民大注目の「相鉄・東急直通線」とは/JRTT東京支社(神奈川県)


以前からJRTT(鉄道建設・運輸施設整備支援機構)が整備主体として工事を行い、相模鉄道と東急電鉄が営業主体として事業を進めてきた「都心直通プロジェクト」は、相鉄線とJR東海道貨物線を結ぶ「相鉄・JR直通線(SJ線)」と、相鉄線と東急線を結ぶ「相鉄・東急直通線(ST線)」の2つの路線を新たに開業することで、相鉄線の街と東京都心を直通運転で結ぶという事業です。このうち「相鉄・JR直通線」は2019(令和元)年11月に開業し、速達性の向上など多くのメリットをもたらしています。

そして、2023(令和5)年の3月にはプロジェクトの第2弾であり、核心部でもある「相鉄・東急直通線(ST線)」の開業が控えており、工事も佳境に入りつつあるといいます。

JRTT 村上明さん(左)/田中淳寛さん(右)
JRTT 村上明さん(左)/田中淳寛さん(右)

そこで今回は、事業完成によって期待される沿線地域への効果、工事の進捗状況、新駅のデザイン上の見どころなどについて、2つの新線(正式名は「神奈川東部方面線」)工事全体を管理している、JRTT(独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構)の計画部長・村上明さんと、計画部計画課長・田中淳寛さんのお二人にお話を聞きました。

横浜市西部、神奈川県県央部から都心への速達性が向上

――まずは、JRTTで現在手掛けられている、「相鉄・ JR直通線」と「相鉄・東急直通線」について、それぞれどのような事業なのか教えてください。

村上さん:まず、「相鉄・JR直通線」については、相鉄本線の「西谷」駅から、JR東海道貨物線の「横浜羽沢」駅までの連絡線、約2.7キロを新設しまして、相鉄線から貨物線を通ってJR線への直通運転を行うというものになります。要するに、相鉄の「西谷」駅からJR線につながる「バイパス」を作ったという形になりますね。こちらはすでに、2019(令和元)年の11月30日に開業しています。

「相鉄・東急直通線」については、JR東海道貨物線の「横浜羽沢」駅(現在は「羽沢横浜国大」駅)の付近から、「新横浜」駅を経由して東急東横線・目黒線の「日吉」駅まで、およそ10キロにおよぶ連絡線を新設して、相鉄線と東急線が相互直通運転を行うというものになります。また、この2つの路線は、いわゆる「上下分離方式」(施設の管理と運行を別の組織で行うこと)による鉄道整備などが盛り込まれた、「都市鉄道等利便増進法」にもとづく、速達性向上事業として施行されている事業になりまして、私どもが整備部分を担当しております。

「相鉄・ JR直通線」と「相鉄・東急直通線」について語る村上さん
「相鉄・ JR直通線」と「相鉄・東急直通線」について語る村上さん

――いろいろな鉄道事業者や地権者が関係するので、公的な機関がインフラ部分を整備しているというわけですね。

村上さん:そうですね。この上下分離方式によって、既存ストック、つまり先ほど申し上げた、JRの貨物線の部分なども有効に利用することができまして、横浜市の西部と、神奈川県の県央部(海老名・厚木・大和といった辺り)と、東京都心部が直結される新しいルートができますので、両地域間の速達性が向上し、広域鉄道ネットワークの形成と機能の高度化が図れます。

今まで、相鉄線沿線の方が東京方面に行く場合、「横浜」駅に1回出る必要がありまして、そうすると「横浜」駅に人が集中してしまうわけですね。それが、この2つの直通ルートによって緩和されるのではないかとも考えています。もちろん、所要時間の短縮、乗り換え回数の減少といったメリットもありますので、利便性が向上しますし、地域の活性化にも寄与するものと考えています。

――このうち「相鉄・JR直通線」の部分はすでに開業しているわけですが、これによる変化や効果など、感じられるところがあれば教えてください。

村上さん:やはり横浜市西部、神奈川県県央部から東京都心への速達性が格段に向上したということと、「横浜」駅を通らずに直接都心に行ける「シームレス化」という面では、多くの方にメリットを感じていただけているのかなと思います。

約15分の短縮が実現
約15分の短縮が実現

――具体的には、どのくらいの時短効果が生じたのでしょうか?

村上さん:たとえば「二俣川」駅から「新宿」駅に行こうという場合、従前ですと【約59分】かかっていたわけですが、それが、「相鉄・JR直通線」を利用すると最短【約44分】ということになりまして、約15分の短縮が実現できています。

また、地域への波及効果も生じてきておりまして、特に、「羽沢横浜国大」駅の付近などは施設の開発計画などが促進されていますし、一概には言えないのですが、県内の住宅地の基準地価も上昇していると聞いています。そういった意味では、相鉄線沿線地域の活性化には、寄与できているのかなと思います。

2023(令和5)年3月には「相鉄・東急直通線」開業

――「相鉄・東急直通線」については、2023(令和5)年の3月にいよいよ開業予定ですね。現在はどのような工事をされているのでしょうか?また今後どのように進められていくのでしょうか。

村上さん:2023(令和5)年3月開業ということを今年の1月にプレス発表させて頂きまして、現在は「土木工事」、つまりトンネルや駅の箱の形を作るような工事がおおむね完了して、その先の工事に入っています。具体的には、掘ったトンネルの中にレールを敷く軌道工事や、信号や駅の中の配電などの電気関連工事といったものになりますね。行先の表示板を付けたり、空調を作ったり、といった部分になります。

相鉄・東急直通線の工事状況
相鉄・東急直通線の工事状況

その後には、実際に列車を走らせる前に行うさまざまなチェック(監査)が控えていまして、監査を行う中で、実際に列車を走らせて、信号などが間違いなく機能しているかなどの確認を行います。それができた段階でようやく、鉄道事業者さん側に管理を引き渡して、その後は相鉄さん、東急さんがそれぞれ乗務員の訓練運転を行いまして、最後に国土交通省による「完成検査」というものを行って、ようやく開業を迎えるという流れになります。

――いろいろなチェックを経て、安全な鉄道が生まれているんですね!「相鉄・東急直通線」の開業後、沿線に期待される変化や効果にはどのようなものがありますか?

村上さん:相鉄・JR直通線の時と同様に、やはり、所要時間の短縮、乗り換え回数の減少といった効果は非常に期待されるところですし、今回はさらに、新幹線へのアクセス性が向上しますので、ここが大きなメリットになるかと思います。

――どれくらいの時間短縮が実現されますか?

村上さん:速達性に関しては、たとえば、「二俣川」駅から「目黒」駅までの所要時間は【約16分】、「海老名」駅から「目黒」駅は【約15分】、「大和」駅から「新横浜」駅は【約23分】、「湘南台」駅から「新横浜」駅は【約26分】、それぞれ時間が短縮されますので、都心にも東海道新幹線(「新横浜」駅)へも、アクセスが格段に良くなるかと思います。

また、「新横浜」駅へのアクセスに関しては、今まで、「横浜」駅や「菊名」駅などで乗り換えをする必要があったわけですが、今後は相鉄線沿線、東急線沿線からは乗り換えなしでアクセスできるようになりますので、そちらもメリットとして大きいと思います。

交通利便性がますます向上する
交通利便性がますます向上する

――新幹線利用の時には大荷物になりがちなので、相鉄線・東急線沿線の方には朗報ですね!

村上さん:そうですね。それ以外にも、乗り換えなしで移動できる範囲はかなり広くなる予定です。たとえば、相鉄本線、いずみ野線、東急東横線、目黒線からは、すでに相互乗り入れしている東京メトロの南北線、副都心線、都営三田線、埼玉高速埼玉スタジアム線、東武東上線まで直通する広域の鉄道ネットワークが形成されますので、こういった地域へのアクセス性も向上すると思います。

2つの新駅「新横浜」駅(仮称)・「新綱島」駅(仮称)

――「相鉄・東急直通線」の開業にあたって、新横浜と綱島には新しい地下駅が生まれるということですが、どのような駅になる予定でしょうか?

田中さん:まず、「新横浜」駅(仮称)については地下4階の駅になりまして、最下層の地下4階が、実際に電車が走る「ホーム階」となっています。また、地下2階のところで横浜市営地下鉄のブルーラインと交差する点も大きな特徴になっています。こちらもトンネル内と同様に、現在は軌道、電気、機械などの工事に着手しているという状況です。

「新綱島」駅(仮称)に関しても、「新横浜」駅(仮称)同様に地下4階の駅になりまして、現在、土木の躯体工事はおおむね完了し、建築、電気、機械等の工事に着手しているという状況です。

新横浜駅(仮称)について語る田中さん
新横浜駅(仮称)について語る田中さん

駅のデザインについては、「新横浜」駅(仮称)、「新綱島」駅(仮称)ともに、私ども鉄道・運輸機構が地域の特徴を踏まえてデザインコンセプトを策定いたしまして、関係者の方々と相談しながら検討を進めているところです。

このうち、「新横浜」駅(仮称)のコンセプトについては、今回の開業が東海道新幹線、横浜市営地下鉄に続く、鉄道開通による変革の第3弾になりますので、「新横浜 Ver3.0 ― 未来に向けて発展を続ける駅」といたしました。

デザインテーマについては、「自然と調和した温もりと潤いの地下駅」をテーマにいたしまして、「新横浜」駅(仮称)の歴史、発展の積み重ねを表現するため、「新横浜」駅(仮称)付近の「地層」に着想を得たデザインウォールを設置する予定です。また、ホーム階では天井部に木目調のデザインを採用いたしまして、利用される方が温かみを感じられるようなデザインとしています。

新横浜駅(仮称)の改札階イメージ
新横浜駅(仮称)の改札階イメージ

――「地層」という発想は新しいですね。完成が楽しみです。「新綱島」駅(仮称)のデザインに関してはいかがでしょうか?

田中さん:「新綱島」駅(仮称)のコンセプトは、「綱島の街の移り変わりを感じる駅」としておりまして、「川の町、桃の町、温泉の町」と言われる、歴史深い綱島の街の移ろいを表現するようなデザインを目指しています。具体的には、地下1Fのコンコース階の壁面に、発光するガラスパネルを設置いたしまして、淡いピンクの色で「綱島の桃」を表現したり、地下4階のホーム階では、「鶴見川の近くで発展してきた街」という歴史を表現するために、ホーム両側の壁に水色のラインを入れたり、他の壁にも青色や水色を散りばめたデザインとする予定です。

相鉄・東急直通線の工事状況を説明する田中さん
相鉄・東急直通線の工事状況を説明する田中さん

「二俣川」駅からもより快適に都心へ

――「二俣川」駅を利用する方々にとって、今回の計画でプラスになる点を教えてください。

村上さん:基本的には今まで申し上げた点になるかと思いますが、より具体的には、「二俣川」駅から「目黒」駅に向かう場合、これまでは「横浜」駅と「大崎」駅で2回乗り換えがあり、所要時間も【約54分】でしたが、今後は乗り換えなしで【約38分】に短縮されますし、「新宿」駅までの間も、同様に【59分】かかっていたものが【約44分】に短縮されました。

こういった速達性の向上は、当然、数字的な短縮効果というものもありますが、乗り換えが減ることで、ベビーカーでお子さんを連れている方やお年寄りの方、身体の不自由な方にとっては特に、心理的な「あ、楽に行けるようになったな」という効果が期待できるのではないかと思います。

――今後、相鉄線沿線の街に期待されることなどがありましたら教えてください。

村上さん:私どもの機構では、基本理念に「交通ネットワークづくりを通じ、人々の生活の向上と経済社会の発展に寄与します」という言葉を掲げておりますが、この理念の通り、今回のSJ線、ST線の開業によって、街の活性化に寄与できればいいなと考えております。私たちの作ったものを活用していただいて、将来「これができたから街が発展していったんだな」と思ってもらえたら嬉しいですね。

この神奈川東部方面線は、沿道の皆様をはじめ、国、自治体、鉄道事業者など、いろいろな方の多大なるご協力により進めてきたものです。今後も、相鉄・東急直通線の開業に向けて安全に工事を進めていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

JRTT 計画部 部長 村上明さん(左)計画部計画課 課長 田中淳寛さん(右)
JRTT 計画部 部長 村上明さん(左)計画部計画課 課長 田中淳寛さん(右)

JRTT(独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構)東京支社

計画部 部長 村上明さん(左)/計画部計画課 課長 田中淳寛さん(右)
URL:https://www.jrtt.go.jp
※この情報は2022(令和4)年5月時点のものです。

いよいよ2023(令和5)年3月に開業。沿線民大注目の「相鉄・東急直通線」とは/JRTT東京支社(神奈川県)
所在地:神奈川県横浜市旭区