スペシャルインタビュー

“子どもたちのために”という思いを地域、保護者とともに共有する地域に根ざした学校/練馬区立立野小学校(東京都)


1962(昭和37)年の開校より60周年を迎えた「練馬区立立野(たての)小学校」。閑静な住宅地に囲まれた落ち着きのある校風で、地域や保護者と連携した教育活動も盛んに行われている。2023(令和5)年度は「地域連携」をテーマにした研究を実施し、よりいっそう地域交流や地域資源を生かした学びの機会に力を入れている。

今回は「立野小学校」を実際に訪れ、学校の沿革や概要、特色ある取り組みなどについてお話を伺った。

「練馬区立立野小学校」校舎
「練馬区立立野小学校」校舎

1962(昭和37)年開校、創立60周年を迎えた歴史ある学校

――「立野小学校」の沿革や概要についてご紹介いただけますでしょうか?

「練馬区立立野小学校」は1962(昭和37)年に開校しました。昨年は開校60周年を迎え、記念行事や式典などが行われました。児童数は2023(令和5)年4月時点で約530名、各学年3クラス編成の計18学級で運営しています。

――校舎や施設・設備に関して特色はございますか?

ひとつは図書室です。60周年の節目に、練馬区やPTAにもご協力をいただいて、図書室の充実した環境を整えることができました。現在の蔵書数は1万200冊にのぼり、それに伴い新たな書棚も増えました。本を読む子どもも増えているように思います。

開校60周年を機に蔵書を増やし充実した図書室
開校60周年を機に蔵書を増やし充実した図書室

また本校は自校給食のため給食室があります。大きなガラス窓を通して調理している様子などが見られるのも特色のひとつだと思います。他にも校舎の北側にある畑は日当たりが良く、子どもたちの育てている植物や作物がぐんぐん育ちます。

子どもたちが育てている植物
子どもたちが育てている植物

さまざまな地域資源を活かした「地域連携」で、子どもたちの学びを豊かに

――貴校の教育目標や、力を入れている取り組みをお聞かせいただけますでしょうか?

本校では「あたたかい心をもつ」「すすんで学ぶ」「つよい体をつくる」を教育目標に掲げています。広く国際社会に生きる日本人としての自覚をもち、主体的で創意に富んだ心豊かな児童の育成を目指しています。

また目指す学校像として「児童が、学ぶ楽しさと成長する喜びを味わえる学校」「保護者・地域から信頼される学校」「教職員が、誇りとやりがいを感じる学校」を目指し、誰も置き去りにすることなく、全員が生きる力を発揮してその力を伸ばすことができる学校づくりを進めています。

「つよい体をつくる」も教育目標のひとつ
「つよい体をつくる」も教育目標のひとつ

今年度の取り組みとしては、練馬区教育委員会教育課題研究指定校として「地域連携」をテーマに研究を進めることになりました。

今日も3年生が練馬区内にある農園を訪ねて農家の方から直接お話を伺ってきたところですが、学校周辺には今も畑が残っている場所があり、命の育つ様子を間近に見られる恵まれた環境があります。また地域の方も子どもたちのために何かできないかということをいつも考えてくださっていて、こうした地域環境を生かすのがこの「地域連携」の取り組みです。

地域の農地や緑豊かな環境が教育の場に
地域の農地や緑豊かな環境が教育の場に

「地域連携」を進める上で3つの柱を立てまして、ひとつは「家庭・地域・学校の教育力の融合」、もうひとつは「都市型農業を生かした命の教育の推進」、そして3つ目の「防災対策・連携による地域との確かな信頼関係の構築」を目指した教育活動を進めています。

3年生の取り組みは「都市型農業を生かした命の教育の推進」に当たるもので、地域の方との交流や体験を通して農業は命の産業であることを知り、命の尊さや郷土を愛する心を養うことにつながると考えます。

――他の2つの柱についても詳しくお聞かせいただけますでしょうか?

「教育力の融合」とは、地域連携コーディネーターや民生児童委員、学校応援団や保護者ボランティアといった方々との連携を深めることを目指しています。また地域行事に参加できるよう子どもたちに働きかけたり、学校行事に地域の方々をお招きしたりして、おたがい顔の見える関係づくりを進めながら家庭・地域・学校の教育力の融合を図ろうと考えています。

3つ目の「防災対策・連携」については、学校周辺は町会がしっかりしているため、例年、防災訓練も積極的に行われています。参加されているのはご年配の方が中心で、本校の子どもたちやその保護者など若い世代も参加できるよう連携することにしました。学校の防災教育と地域の防災対策の連携を図ることは、おたがいに命を守り支え合う確かな信頼関係を築くことにもつながり、子どもたちの見守りや地域の防犯などにも役立つと考えています。

地域町会と学校で協力・連携して防災に取りくむ
地域町会と学校で協力・連携して防災に取りくむ

今年度はコロナによる制限等も無くなってくるので、地域の方との交流や体験を通して学ぶことの意義を感じる、そういう学習場面を増やして行きたいと思っています。

読み聞かせや、アートなど保護者ボランティアも活躍

――特色ある教育活動や取り組みについてご紹介いただけますでしょうか?

冒頭でお話しした図書室とも関連することですが、本校では読書に力を入れています。保護者の方もボランティアとして本の読み聞かせや図書室の整備、飾り付けなどをしてくださっています。去年は蔵書の数が一気に増えたので、分類ごとに仕分けをしたり、掃除をしてくださったりと様々な場面でご協力いただきました。

毎週金曜日の朝は全学級で読み聞かせの活動がありまして、“よみママ”と呼ばれる保護者のボランティアの方々が子どもたちの前で読み聞かせをしてくださいます。“よみママ”は現在15名前後の方にご登録いただいており、今後はママに限らずパパや地域のおじいちゃん、おばあちゃんにもお越しいただけるよう活動の輪を広げていく予定です。

保護者の協力もあり、読書が活発に
保護者の協力もあり、読書が活発に

――階段や廊下に飾られている図工の作品も見事ですね。

これは本校の卒業生であり保護者の方でアーティストがいまして、図工の先生と一緒に取り組んでくださっているものです。また60周年の記念事業でもご協力いただきまして、子どもたちが自由に描いた絵とともに体育倉庫が生まれ変わりました。

保護者のアーティストと共に、子どもたちが描いた絵で華やぐ体育倉庫
保護者のアーティストと共に、子どもたちが描いた絵で華やぐ体育倉庫

小中一貫教育、保幼小連携の取り組み

――練馬区の小中一貫教育の取り組みについて教えていただけますでしょうか?

本校は2017(平成29)年度より「練馬区立石神井西中学校」区において、同中学校と「練馬区立石神井西小学校」、「練馬区立関町小学校」とともに小中一貫教育に取り組んでいます。

ここ数年は学力向上、体力向上、不登校・心の教育、児童・生徒の交流の4つの部会に分かれて取り組みを進めています。去年まではコロナの影響で児童・生徒の交流がほとんどできていなかったため、今年度は先生方の交流も含めて活動を再開させていく予定です。

――保幼小連携についてはいかがでしょうか?

保育園、幼稚園の園児が本校に来たり、1年生がそれを迎えたりといった交流は去年から徐々に活動を再開させています。また各園の園長先生と校長との交流もそうですし、今後は保育園、幼稚園の先生方に来ていただいて、1年生の様子をご覧いただいたり、担任と情報交換する会なども設ける予定です。

広々とした校庭
広々とした校庭

“子どもたちのために”という思いをみんなで共有しているあったかい地域

――地域との関わりについて具体的なエピソードなどを教えていただけますか?

本校の経営理念として「学校は地域と共に、子どものためにある」と掲げているのですが、まさにその通りで、子どものためという部分を地域の方も共有してくださっているんです。本当にあったかい地域ですよ。

こうしたら子どもたちが喜ぶのではないかとか、子どもたちのために何かできることはないかといったことをいつも考えてくださっています。町会の方も学校応援団も、青少年委員もPTAもみなさん同じ思いなのです。

コロナ禍で迎えた60周年も子どもたちの思い出に残るようにと「ボッチャ(ボールを使ったパラスポーツ)大会」やさまざまなイベントを主催してくださいました。今年度の予定についてはまだ検討中ですが、毎年校庭で行われていた「夏祭り」も再開されると思いますし、恒例の「餅つき」も復活させようといった話が挙がっています。

子どもたちを一緒に見守り育むあたたかな地域
子どもたちを一緒に見守り育むあたたかな地域

千川の潤いや広々とした「立野公園」、自然豊かな環境で子どもの健やかに育つ

――学校周辺の魅力として感じることを教えてください。

学校周辺は千川上水が清らかに流れる閑静な住宅街で、子どもたちも落ち着いた雰囲気です。30年ほど前に本校で教員をしていた副校長先生によると、子どもたちの様子が当時と変わっていないそうです。おだやかで素直、地域の方々の子どもを思う気持ちも当時のままだそうです。

近くを流れる千川上水
近くを流れる千川上水

学校から歩いてすぐのところに「立野公園」があります。行政と地域の住民とが一緒にアイデアを出して一から作った公園だそうです。今から30年ほど前に作られたそうですが、公園のある環境を魅力に感じて地域に移り住んできた方もいらっしゃったそうです。

遊具や砂場など小さな子どもが遊べる場所があるほか園内中央には広場もあり、本校の教育活動でも活用させてもらっています。1年生が生活科の学習で自然観察をしたり、たてわり班の活動でお弁当集会をしたりしています。

広々とした広場や遊具などがある「立野公園」
広々とした広場や遊具などがある「立野公園」

――最後に、今後の学校運営・教育活動への思いをお聞かせください。

教育課程に命を吹き込むものとして地域の環境、また人材をよりいっそう活かしながら子どもたちにとって有意義な学びを提供できればと思っています。

「練馬区立立野小学校」
「練馬区立立野小学校」

練馬区立立野小学校

所在地:東京都練馬区立野町17-13
電話番号:03-3920-9101
URL:https://www.nerima-tky.ed.jp/tateno-e/
※この情報は2023(令和5)年6月時点のものです。

“子どもたちのために”という思いを地域、保護者とともに共有する地域に根ざした学校/練馬区立立野小学校(東京都)
所在地:東京都練馬区立野町17-13
電話番号:03-3920-9101
https://www.nerima-tky.ed.jp/tateno-e/