楽しく働き、夢を見つける、叶える/キッザニア東京 スーパーバイザー 佐藤早苗さん
楽しく働き、夢を見つける、叶える
2006年、「アーバンドック ららぽーと豊洲」の開業と同時に誕生した「キッザニア東京」は、子どもが主役の、職業・社会体験型テーマパーク。「仕事を体験する」、「サービスを受ける」など、リアルな社会体験を子どもたちが体験できるという新しいテーマ性が評価され、連日多くの人々でにぎわい続けている。 日々全国から多くの人々が訪れる「キッザニア東京」であるが、実は、豊洲や東雲など近隣に住む子どもたちのリピーターも相当数あるという。「何度でも訪れたい」と思わせる魅力とは、何なのだろうか。 そこで、今回は衰えを知らない「キッザニア東京」の魅力についてご紹介するとともに、「スーパーバイザー」(子どもたちの体験をサポートするスタッフ)として子どもたちと直接関わっているひとり、佐藤早苗さんにお話をお聞きしてみることにした。
まずは施設を見学
「キッザニア東京」があるのは、ららぽーとの本館「NORTH PORT」の3階部分。およそ6,000平米の館内に約60のパビリオンが建ち並び、その中では90以上のアクティビティが展開されている。 「キッザニア」のコンセプトは「エディテイメント(エンターテイメント+エデュケーション)」ということ。エントランスをくぐれば、その先には現実社会の約3分の2サイズの“子どもが主役の街”が広がっている。夕暮れぐらいの暗さになっているのも、ちょっと大人びた空間を味わうための演出のひとつ。この空間で、子どもたちは自分の興味のある職業や社会経験を選び、それを体験する。 パビリオンには警察署、裁判所、新聞社、消防署、建設現場、ガソリンスタンド、テレビ局、ベーカリー、銀行、ハンバーガーショップ、病院、出版社などあらゆる業種が揃っており、その中においても、たとえばテレビ局であれば出演者、ディレクター、カメラマン、音響エンジニアなどの職種に分かれ、それぞれに応じた役割をロールプレイングしていく。子どもたちはこのように楽しみながら働くことの意味や社会の成り立ちなどを学んでいくという仕組みだ。
しかもこれらの体験にあたっては、多くの場合実在する企業がスポンサーとなっており、各企業のノウハウを提供してもらっている。そして子どもたちの体験をサポートする「スーパーバイザー」も実際にスポンサー企業の社員から研修を受けることもある。設備についても、実際に空を飛んでいた本物の飛行機があったり、キッザニア専用の電子マネーが使えたりと、とにかく“リアルさ”を追求しており、そこが子どもの琴線に触れるようだ。 社会における各職業の位置づけも明確に表現されている。火事が起これば消防署から消防車に乗った消防士の子どもたちが急行し、また、救急車には救急救命士が乗り込み現場に向かい、心配蘇生をし、人命救助を行う。館内を循環するバスに乗車すれば、バスガイドが街の案内をしてくれる。こうした光景が、数十分ごとにメンバーを替え、何度も繰り返されていくというのが、キッザニアの日常風景だ。言ってみれば、究極の「ごっこ遊び」である。
館内に入れるのは、3歳から15歳までの子どもたちと、その同伴者である大人のみ。大人だけの入場ができないので、保護者がちょっとくらい子どもから目を離しても大丈夫。子どもたちがアクティビティに参加している間、大人たちは一緒にパビリオンに入ることはできず、ガラスやモニター越しに静かに見守ったり、大人専用のラウンジでくつろいだりする。そのことがまた、子どもたちの自立心を刺激している。 キッザニアの入場は基本的に予約制で、事前にインターネットや携帯サイトから予約する利用者が多い。週末の予約は早めに埋まることも多いが、枠に限りがあるが、当日券を購入することもできる。営業時間は完全入替え制の2部制となっており、第1部が9時から15時までの6時間、第2部が16時から21時の5時間となっている。平日の昼間は学校単位での団体利用が多く、平日夕方は都心エリアの子どもが、長期休暇の時は遠方からの子どもも多いということだ。
もうひとつ面白いのは、施設内でのみ利用できる「キッゾ」という独自通貨が流通している点だろう。キッゾは職業体験をするたびに報酬としてもらえ、サービスを受ける際にはキッゾを支払う。もらったキッゾは銀行で口座を作って預金することもでき、キャッシュカードを使ってATMから引き出すこともできる。こんな点も、継続して何度も通いたくなる仕掛けのひとつと言える。キッゾを使うサービスにも、レンタカー、スポーツクラブ、クライミング体験など、ユニークなものが目白押しだ。 とにかく「キッザニア」の施設内には、さまざまな仕掛けや楽しさの要素が散りばめられており、何度訪れても、新しい体験や刺激が得られるようになっている。見回せばどこかで何かが起きていて、バスや車も走っていて、どこを見ても子どもたちの本気の表情がある。まさに、「大人の世界の縮図」という表現がピッタリとハマる空間である。 そして、キッザニアの魅力を支えている一番の屋台骨は、施設でもシステムでもなく、笑顔で子どもたちと接するスタッフたち。子どもたちに直接応対するスタッフは「スーパーバイザー」と呼ばれ、訪れる子どもの年齢や体験回数、それぞれの個性や性格に応じて臨機応変な対応をしていく。このきめ細やかな接客こそが、キッザニアの人気を不動のものとしたのだろう。 そんな「スーパーバイザー」のひとりとして、病院パビリオンで活躍されている佐藤早苗さんにお話を伺った。
佐藤さんが担当しているアクティビティはどちらでしょうか?
私はいま、病院パビリオンにおりまして、ふだんは新生児室、外科手術、眼科手術、救命救急室、薬局の5種類のアクティビティを担当しています。実はそのほかにも、さっきまで消防士の担当もしてきましたし…いろいろな役をやっているんです。
佐藤さんは約600名いる「スーパーバイザー」でもベテランにあたるとお聞きしましたが、なぜ、キッザニアに入られたのでしょうか?
私はオープンから半年後ぐらいに入りましたが、キッザニアのコンセプトと私のやりたいことにすごくマッチしていたんですね。子どもが大好きで、子どもの教育にかかわりたい、夢を持っている子を応援したい、という思いがつねにありましたので、キッザニアに応募しました。他のスーパーバイザーも、気持ちは同じだと思います。 キッザニアは「子どもの視点」を大切にしてコンテンツを組み立てているので、私たちもこどものちょっとした感想や意見にしっかり耳を傾けています。中には思いもよらない感想もあり、子どもたちから日々勉強させてもらっています。
佐藤さんが子どもと接するとき、心がけていることは何でしょうか?
そうですね、「先入観」を持たないことでしょうか。大きい子だからとか、何度も参加しているからとかではなく、「どんな気持ちで来ているのかな?」ということを考えて接するようにしています。 子どもは素直ですから、目を見るだけで、「初めてで動揺しているのかな?」とか、「何度も参加して自信満々なのかな?」ということが、すごく分かるんですね。ですから、子どもの目を見ながら「こういう風に役割を与えたほうがいいかな?」とか、「こういうペースで話したら良いのかな?」などと毎回考えながら、キャッチボールするように言葉を交わしています。
何度も来られているお子さんの場合、内容も重複するかと思いますが、その点で何か対応はなさっているのでしょうか?
近くにお住まいの方などですと、1週間に何度も来てくださる方もいらっしゃいますね。キッザニアには“年間パスポート”のようなものは無いのですが、「キッザニアクラブ東京」という会員制度がありまして、会員になると、より難易度の高いお仕事を体験できたりします。 具体的には、特定のパビリオンで3回以上アクティビティを体験して、知識とスキルを十分身につけたと認定された場合に、そのパビリオンの「アクティビティ認定証」を取得できまして、この認定証を提示すると通常よりも難易度の高い「会員用アクティビティ」にチャレンジすることができるんです。体験後には給料(キッゾ)が増額される点も、子どものやる気をかきたてる要素の1つかもしれませんね。
ここに来られる子どもさんの成長について、気づいたところを教えてください
初めて来られるお子さんは、年齢に関わらずドキドキしていて、少し硬い表情をされているんです。でもそのお子さんも、2回目に来た時にはすごく柔らかい表情になっているんですね。そしてそのうち、「僕、これがやりたい!」などと積極的にお仕事に取り組む姿が見られるようになります。 キッザニアは、初めて会うお友達と一緒でドキドキする環境だと思うのですが、やっているうちに「どんな人がいるのかな?」と楽しみになってくるみたいです。参加するたびにだんだん自信が出てきて、積極的に出てくるようになるんでしょうね。
保護者からはどんな感想が聞かれるでしょうか?
「今までできないと思っていたことが、こんなにできるなんて思わなかった」という意見はよく聞きますね。キッザニア内では子どもが保護者の方に頼ることはできず、保護者様にはガラス越しやモニター越しで見守っていただくことになります。だから、いつもは手伝ってしまう場面でも手伝えませんし、子どもたちは自分で頑張らないといけないんです。そんな環境の中だからこそ、「今までできないと思っていたけど、この子はこんなにできたんだ」ということを引き出してもらえた、という意見は多いです。 それに、子どもたちが「できた」と思ったところで私たちスーパーバイザーも「よく出来たね!」と声を掛けるので、子どもたちは喜びますし、褒められているお子さんを見て、保護者の方も嬉しいのだと思います。帰る時にはみなさん本当にいい笑顔で帰られるんですよ。この三者の関わりというのは、すごく素敵だと思います。ですから、お近くの方も、ぜひ何度でも、キッザニアに足を運んでいただければと思います。
最後に、豊洲・東雲エリアの魅力について、佐藤さんが考えられるところを教えてください
私はキッザニアも大好きですが、豊洲のことも本当に大好きでなんですね。仕事で来るから「オン」に切り替えないといけないんですけど、オンなのに「オフ」のような感覚になってしまいます。東京なんですけど、向かい側には海があって、レインボーブリッジがあって、広い公園があって…。「都会のオアシス」のような場所ですよね。こんな素敵なところは、都内にはほかに無いのではないでしょうか。
今回、話を聞いた人キッザニア東京 スーパーバイザー 佐藤早苗さんキッザニア東京 ※記事内容は2013(平成25)年3月時点の情報です。 |
楽しく働き、夢を見つける、叶える/キッザニア東京 スーパーバイザー 佐藤早苗さん
所在地:東京都江東区豊洲2-4-9 アーバンドック ららぽーと豊洲1 ノースポート3F
電話番号:0570-06-4646
営業時間:第1部 9:00~15:00、第2部 16:00~21:00 ※完全入替制、開場は営業開始時間の30分前
https://www.kidzania.jp/tokyo/