5つの商店街が織りなすさまざまな取り組み 世代を越えて愛され続ける魅力とは/成増商店街振興組合 理事長 柴崎栄さん
成増商店街振興組合 理事長
柴崎栄さん
5つの商店街が織りなすさまざまな取り組み
世代を越えて愛され続ける魅力とは
「成増」駅周辺には、南口側に4つ、北口側に1つの商店街があり、「ダイエー成増店」や「西友 成増店」といった大規模店舗とともに、徒歩や自転車で気軽に買い物ができる街として、古くから親しまれている。この5つの商店街のうち、もっとも有名なものと言えば、南口を出て右手に伸びる、「なりますスキップ村(成増商店街)」だろう。
今回は「成増商店街振興組合」の理事長である柴崎栄さんに、商店街それぞれの特徴と魅力についてお話を伺った。
「成増」駅周辺には、北と南を合わせて5つの商店街があるということですが、それぞれの概要について教えて下さい。
もともとこの辺りは、東武東上線が走り、「成増」駅ができて、そこにだんだんと店が集まってきた、という歴史があります。江戸時代からある街道に沿っていますが、大正時代から発展してきた街です。もっと古い頃には「白子」に街並みの中心がありました。
「成増」にある5つの商店街のうち、歴史的に最も古い商店街は「なりますスキップ村(成増商店街)」だと思います。
いま、成増の商店街は「なりますスキップ村」「成増すずらん通り商店街」「成増南商店街」「兎月園通り商店会」「成増北口通り商店会」という具合に正式には5つに分かれていますが、実際来られるお客様にとっては、成増商店街一体として捉えていただいているかと思います。
それぞれの商店街の特徴について教えてください。
通行者数が多いということから、「なりますスキップ村」が成増を代表する商店街と言えると思います。「成増」駅の南口を出て右手側に、川越街道まで続いている商店街ですね。その途中で、左に伸びる商店街がありまして、それが「すずらん通り商店街」です。
「なりますスキップ村」については、飲食店やチェーン店(全国展開の店)が多いという点が特徴になっています。通行者が比較的多いですので、空いた場所にはすぐに新しいお店が入るような状況です。時代の流れに合わせて、地元のニーズに合わせて、店が入れ替わっているというのが現状ですね。
成増はここ数年で交通の便が非常に良くなりましたから、例えば衣料品や家電製品などについては、今は銀座や新宿、渋谷に行って買うという人が多いですね。そういった変化を受けて、成増の商店街では、食品や日用品、外食関連の店舗の割合が増えています。
「すずらん通り商店街」については、お客様から見ると「なりますスキップ村」と一体になっている商店街と感じられて、全体的な傾向は同じですが、「すずらん通り商店街」は個人店が多めです。
店舗数最大の「南商店街」については、比較的ユニークなお店が多いという印象がありますね。
「スキップ村」周辺にチェーン店が集中していますから、他の商店街では、個人店の割合が高くなっています。特に、店舗数が最も多い「南商店街」については、広いエリアに店が点在していますから、業態も雰囲気もいろいろでして、その分、個性的なお店が多いかと思います。一言で言えば、「バラエティに富む商店街」という感じですね。
「南商店街」は、南口側駅前通り、川越街道沿い、その南側という広い範囲に広がっているわけですが、実は「兎月園通り商店会」とも隣り合っていまして、「兎月園通り商店会」は小規模な飲食店を中心に、十数店という規模の商店会ですので、近いうちに「南商店街」と合併するという方向で話が進んでいます。
「北口通り商店会」についてはいかがでしょうか?
「北口通り商店会」については、駅から商店街の入り口への距離が少し離れているので、駅の利用者というよりは、周辺にお住まいの方が普段の買い物によく使われている商店街ですね。
北口側については、昔は今のようにたくさんの方が住んでいるわけではなかったので、工場や事業所などが多く、地形的にも段差があって、駅からわざわざ行くには少々行きづらい場所になっていたんですね。
ただ、最近になって、北口通り商店街の近くにマンションが建ったこともあり、新しい住民の方が増え、通行者数も増えてきました。現状では空き店舗もありますが、今後は若い店主さんの店など、新しい個性的な個人店が増えてくるということは考えられますね。
商店街が主体になって行うイベントには、どのようなものがあるのでしょうか?
商店街主催で大きなものとしては、「ハッピーアニバーサリー」というイベントを、毎年5月の土曜日に行っています。「スキップ村」を開村した月が5月だったので、アニバーサリーなんですね。この時には、「すずらん通り」のイベントである「すずらん祭り」も組み合わせて開催していまして、一応お祭りとしては別々なのですが、お昼ぐらいから「すずらん祭り」が始まり、その後に続くようにアニバーサリーが開催されています。
子ども向けのイベントとして、輪投げ、すごろくなどの昔ながらの遊びに参加できる場所をいっぱい作り、景品も用意しています。大人向けには、富くじを寄付という形で買ってもらって、抽選で商品が当たるという特典もついています。「高円寺」から阿波おどりの連を呼んで踊ってもらったり、「すずらん通り」では、和太鼓の演奏もやっています。これもすごく盛り上がりますね。
また、7月は「ヤンマスよみせまつり」というイベントがあり、「スキップ村」の中に、お店の方が店とは別に夜店を開いて、そこで子どもたちに遊んでもらっています。金魚すくいとか、わたあめのお店などが出ますね。
8月の初旬になると、第一木曜日には「成増阿波おどり大会」があり、これもまた大きなイベントになっていますね。今度は「高円寺」だけじゃなくて、いろいろな所から連が参加します。地元からも複数出て、毎年15連ぐらいが踊るでしょうか。これはスキップ村だけではなく、それぞれの商店街でも踊って、最後にスキップ村でも流すということでやっています。これは30年以上続くお祭りで、「板橋の3大まつり」のひとつになっています。
北口側は再開発が行われ、人の流れも変わったかと思いますが、開発が各商店街に及ぼした影響については、どのようにお感じでしょうか?
再開発の際に、図書館などもできましたから、確かに南北の行き来も増えて、新しい人も北口側に来るようになったと思います。
成増の商店街の変化については、再開発の影響というよりも、時代の流れの影響が大きいですね。昔は成増がこの辺りでは一番大きな街でしたから、バスに乗って遠くから来るという方も多くて、今の「ダイエー成増店」の場所には、「成増名店街」というショッピングビルがあったほどでした。
でも、今は各地域にそれぞれの街並みやショッピングセンターができましたから、成増の商圏としては昔よりも狭くなっていると思います。その反面で、地域全体で人口は増え、商店数も増えていますから、「より地元の方に向けたお店が増えている」とも言えるかと思います。
最近はマンションが増えて、ファミリー層が増えましたから、商店街にもファミリー層を対象にしたお店が増えているという傾向はあります。特に「なりますスキップ村」については、昔ながらの小さな店舗がどんどん建て替えられて、5階建てぐらいのビルになって、2階や3階にも新しい店が入る場所が生まれましたから、そこに新しい店が入ることが多いですね。
成増の商店街は、いずれも「地域密着型」の商店街として地元の方に愛され続けていると感じます。その秘密はどこにあるとお考えでしょうか?
すごく基本的なことなんですが、「きちんと整備されていて、安全に歩ける」ということが第一だと思いますね。街路灯があって、防犯カメラがあって、歩行者の安全が確保されているということですね。
もうひとつは、成増の商店街では昔から子どもを対象にしたイベントを数多く行っていて、地域の親子連れの方にたくさん来ていただいているわけですが、その子ども達が大きくなって、お子さんを連れてまた来てくれる、という循環ができているのかと思います。地味ですが、「ずっとやり続ける」というのも大切なことですね。
商店街の今後の展望や課題についてお聞かせください。
当面の課題は、後継者問題だと思います。後継者が無くなった商店がテナントを募集すると、今はだいたいの場合、チェーン店が入るんですね。そうすると、チェーン店は会社組織ですから、商店街に入ってもらえないところが多い。そうすると、商店街の活動もだんだん難しくなってきます。そういった状況の中で、お客さんからは5つの商店街も「成増の商店街」という1つのものに見えるわけですから、「成増全体を盛り上げないと、お客さんに振り向いてもらえない」という意識を持って、5つの商店会が一丸となって、みんなでこの街を盛り上げようという方向で動いています。2013(平成25)年からは「ホットなりますプロジェクト」もスタートしましたし、商店街のホームページも、5つの商店街を紹介するページとして作っています。今後もそういった取り組みは増えてくるかと思います。
最後に、成増エリアの魅力について教えてください。
「とにかく交通の便がいい」という点が、一番の魅力だと思います。商店街も日常的なものはすべて揃っていますし、低価格で質が良いものが多いですね。個性的な店もありますので、是非地元の商店街を見つめ直して欲しいですね。
それから、散策も楽しい街だと思います。川越街道沿いということで歴史もいろいろありますから、道端にふと道祖神があったり、「白子」のほうに行けば湧き水が湧いていたりと、調べてみると奥が深い地域です。そういった歴史的な場所を休日に巡ってみるというのも、楽しいと思いますよ。
今回、話を聞いた人
成増商店街振興組合 理事長
柴崎栄さん
5つの商店街が織りなすさまざまな取り組み 世代を越えて愛され続ける魅力とは/成増商店街振興組合 理事長 柴崎栄さん
所在地:東京都板橋区成増2 ほか
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