課長 雨谷(あまがい)周治さんインタビュー

“共働き世帯が子育てしやすい街” 多面的な子育て支援策とは。/板橋区役所 子ども家庭部(東京都)


『赤ちゃんの駅』発祥の地であるなど、板橋区は日経DUALによる「共働き子育てしやすい街ランキング2018」で全国6位という共働き子育て家庭に優しい自治体です。令和2年(2020年)4月には区内に新たな認可保育園も5ヶ所開園する予定で、待機児童対策にも力を入れています。そんな板橋区の子育て支援体制や子育て応援事業などについて、板橋区役所子ども家庭部のご担当者に詳しくお話を伺いました。

板橋区役所子ども家庭部子ども政策課長の雨谷さん
板橋区役所子ども家庭部子ども政策課長の雨谷さん

未来を担う子どもたちを、切れ目なく支援できる行政を目指す

――板橋区の子どもの数の現状について教えてください。

雨谷さん:板橋区の未就学児の人口は、平成28年(2016年)に2万6,000人を超え、翌平成29年(2017年)には2万6,452人とピークを迎えました。それ以降、平成31年(2019年)4には2万6,066人と自然減の範囲で減少しており、令和6年(2024年)には2万5,000人程度に落ち着くだろうと予測しています。ただ、今後も区内に高層マンションなどが建設される予定もあり、どの程度の子育て家庭が転入するかなどは予測できないのが現状です。

――板橋区の子育て環境は外部からも評価されていると伺いました。

雨谷さん:日経DUALによる「共働き子育てしやすい街ランキング2018」で全国6位という評価をいただきました。これは保育所への入りやすさや子育て世代向けのサービスや助成、学童保育の整備状況など、複数の評価ポイントの総合点で決まるようです。私たちはこれらのランキングを意識して整備を行っている訳ではありませんが、結果としてこのように評価していただけると大変励みになります。
子育てという観点だけでなく、板橋区では「住み続けたい街ナンバーワン」を目指して、長らく取り組んできましたし、平成27年(2015年)からは30〜44歳の女性をターゲットに魅力発信をする広報戦略も立ててきました。これらのさまざまな取り組みが複合的・効果的に作用して、良い印象を持っていただけたのかなと思っています。

『いたばし子ども未来応援宣言2025』
『いたばし子ども未来応援宣言2025』

――『いたばし子ども未来応援宣言2025』のビジョンについても教えてください。

雨谷さん:『いたばし子ども未来応援宣言2025』は、これまで長らく取り組んできた「次世代育成推進行動計画」の後継にあたる計画で、平成27年(2015年)に策定されました。計画自体は平成28年(2016年)から10年間を対象にしたものです。
板橋区ではこの10カ年を3期間に分けて、現在は第2期目。「誰一人取り残さず、未来を担うすべての子どもたちを応援する」という宣言のもと、実施計画を推進しています。
ちなみに板橋区はSDGs(持続可能な開発目標)の先進度調査でも全国8位、都内1位という評価をいただいています。このSDGsの概念にも“誰一人取り残さない”という考え方があり、子育て支援はもちろん、ひとり親家庭、病後児、生活困窮者なども含め、より強固なサポートを実施計画に組み込みました。
また、出産直後は「健康生きがい部」の管轄、お子さんが生まれた後は「子ども家庭部」、学校に入ると「教育委員会」と、お子さんが成長にするにつれ支援部署が変わるのが通常ですが、それを横断的に支援し、手薄な部分や切れ目のない支援を目指す、というのが板橋区の実施計画の柱でもあります。その点で、私たち「子ども家庭部」が事務局になっていますので、積極的に各部署を繋げていきたいと思っています。

板橋区独自の放課後対策事業「あいキッズ」とリニューアルした児童館「CAP’S(キャップス)」

――平成28年(2016年)、「子育て応援児童館CAP’S」が26館オープンされたそうですね。

雨谷さん:前段として、平成27年(2015年)から板橋区内にある全51の小学校ですべての小学生を対象とした、放課後対策事業「あいキッズ」がスタートしました。こちらは、放課後の子どもたちの居場所として午後5時まで学校にいられる機能と、学童保育の2つの機能を持たせた事業です。
これによって、児童館は、より小さなお子さん向けに役割転換をし、平成28年(2016年)から「子育て応援児童館CAP’S(Children and Parents’ Station)」として生まれ変わりました。乳幼児の親子が遊んだり、学んだり、交流ができる施設になっています。平成30年度(2018年)は、区内全26館の「CAP’S」で延べ約65万人の利用者がありました。
月曜日~金曜日は区の職員が年齢別に手遊びや絵本の読み聞かせ、ボールプール、体操、親子ヨガなど充実したプログラムを行なっています。季節の行事に合わせたイベントや創作活動、夏休みは中学生と乳幼児のふれあいの会など、ユニークな内容のものもあります。土日祝日にプログラムはありませんが、施設開放をしていますので親子で自由に遊んでいただけます。

「CAP’Sなります」
「CAP’Sなります」

―― 「CAP’S」は利用されるお母さんやお父さんたちにとってどんな施設ですか?

雨谷さん:「CAP’S」は乳幼児を家庭で育てているお母さん・お父さんたちのサポートをしたいと生まれた施設でもあります。つい小さいお子さんがいると家に閉じこもりがちですが、「CAP’S」をきっかけに外に出て、お友達を作ったり楽しく過ごしてもらえればと思っています。
スタッフもお母さんたちがリラックスできる雰囲気作りを心がけていますので、お子さんが遊んでいる間のちょっとした時間に、心配ごとなどを相談されることもあるようです。何気ないスタッフとの会話の中で不安が解消できたり、お友だちのお母さんと話したら気持ちがすっきりしたなど、あらたまって「相談」をしなくても解決することってたくさんありますよね。

例:「CAP’S蓮根」の活動の様子
例:「CAP’S蓮根」の活動の様子

話の中から専門家につなげたほうがいいケースなどがあれば、もちろんご相談のうえ紹介もします。最近はお子さんの発達について心配される方が多いこともあり、26館中5館で「ほっとプログラム」という発達がちょっと気になる親子向けのプログラムなども実施しています。
「CAP’S」は区内に26館あるので、ほとんど歩いて行くことができる場所にありますが、自転車などで複数の「CAP’S」に遊びに行ったり、お友達と待ち合わせをされるお母さんたちも多いようです。気分転換や友達づくりに上手に利用していただき、子育てを楽しく感じていただくお手伝いができたら嬉しいですね。

「CAP'S」のイベント紹介パネル
「CAP'S」のイベント紹介パネル

板橋区から全国に広まった「赤ちゃんの駅」

――現在、さまざまな街に設置されている「赤ちゃんの駅」は、実は板橋区が発祥だとお聞きしました!

雨谷さん:板橋区発祥の「赤ちゃんの駅」が全国に広まり、赤ちゃんとその保護者の方々に役立っているということで、こちらも大変光栄です。
現在板橋区内には179施設に「赤ちゃんの駅」があり、乳幼児とその保護者の方が授乳やオムツ替えができるようになっています。やはり小さなお子さん連れのお父さん・お母さんが安心して立ち寄れる場所があると、外出機会も増え便利だと思いますので、これからも広げていきたいと考えています。

区と連携して子育て支援事業を行う「東京家政大学 森のサロン」にも「赤ちゃんの駅」が設置されている
区と連携して子育て支援事業を行う「東京家政大学 森のサロン」にも「赤ちゃんの駅」が設置されている

――このほか、子育て支援に関する施設などはありますでしょうか。

雨谷さん:児童相談所が特別区に設置できるようになったということで、板橋区でも区単独の設置を考えています。児童相談所と子ども家庭支援センターの機能を兼ね備えた「(仮称)板橋区子ども家庭総合支援センター」を2022(令和4)年に開設する予定です。

2020(令和2)年4月にも新たに5つの保育園が開設予定。 進展する板橋区の待機児童対策

――保育環境の課題、またそれに対する対応について教えてください。

子育て支援施設課長 杉山さん:平成31年(2019年)4月1日時点で板橋区の待機児童の数は108名、昨年の185名に比べると大幅に減少しています。0歳~5歳までの年齢別待機児童の昨年比も出していますが、なぜか3歳児の待機児童だけが前年比より増加しています。板橋区では小規模保育所に入っていた方で希望された方は、3歳時に全員認可保育園に入園されていますので、小規模保育のお子さんが待機児童になっている訳ではない。「幼稚園に入園予定だったけれど、やっぱり保育園」となった方が増えたのか…ここはなかなか原因が読めない部分です。国の育児休業の制度が1歳半から2歳に延長されたので、2歳の希望者が増えるかと想定しましたが、こちらは逆に減少するなど予測するのが難しいですね。
実は計画的に増やしてきた小規模保育の欠員数が4月1日時点で177名あります。ここに待機児童を割り振ることができれば、待機児童はゼロになるのですが、そうはならない。恐らく世に言う「3歳の壁問題」を回避するため、小規模保育所は選ばずに認可保育園の入園を待つ方がいるのかなと予想しています。
区はそれらの要望を受け、まずは、令和2年(2020年)4月を目処に、新しい認可保育所を5カ所、開設する予定です。この5園の定員を合計すると350名程度になりますので、待機児童は計算上ではゼロになる想定です。

自然も文化も、活気ある生活も。板橋区・成増の魅力あふれる環境。

春には花見でにぎわう「赤塚公園」
春には花見でにぎわう「赤塚公園」

――板橋区の子育てを含めた環境の魅力について教えてください。

雨谷さん:板橋区は公園が多い区でもあります。特に都立公園が4カ所、「赤塚公園」・「光が丘公園」・「城北中央公園」・「浮間公園」など、広くて大きな公園が区内や区境にあります。この他にも「板橋区立熱帯環境植物館」や「板橋区立教育科学館」、「こども動物園」などもあって、子どもたちは楽しく学べる場になっていると思います。
また、成増からも近い「板橋区立美術館」は、令和元年(2019年)6月にリニューアルオープンをしまして、子どもが参加できるプログラムなども提供しています。このように文化・芸術の施設も充実しており、小さなお子さんがいるファミリーにも、ずっと長く暮らしてもらえる環境が整っていると自負しています。

――成増エリアの魅力や特徴的な催しなどがあれば教えてください。

雨谷さん:成増では毎年8月に地域と商店街が協同で「成増阿波おどり大会」を開催しています。今年は14連、約700名ほどの参加者が商店街を練り歩き、最後は駅前の成増アクト・イベント広場の輪おどりでフィナーレを飾ります。「CAP’Sなります」の乳幼児親子と、「成増ヶ丘小学校」の放課後対策事業「あいキッズ」の子どもたちで結成された連も毎年参加して大会を盛り上げています。
「成増阿波おどり大会」はなかなか賑やかなお祭りで、「なかいたへそ祭り」「志村銀座まつり」と並んで、板橋夏の三大祭りの一つに数えられています。

成増駅周辺の商店街の様子
成増駅周辺の商店街の様子

――これから板橋区内・成増エリアで子育てを考える方へのメッセージはありますか?

雨谷さん:成増駅は池袋から快速・急行・準急が最初に停まる駅なので、都心へのアクセスも良く、非常に栄えている街です。飲食店なども多く、商店街も活気にあふれた賑わいのある街ですので、子連れでの外食や、日用品や食料品などの買い物など子育てファミリーにも便利だと思います。
また、駅から少し行くと区民農園や「赤塚公園」など、自然も豊かで人口も年々増えている地区ですので、幼いお子さんを育てている同世代のご家族も多いのではないでしょうか。ご近所の「CAP’S」などへ足を運んでいただき、リラックスした環境で子育てを楽しんでいただければと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか。「赤ちゃんの駅」とは、乳幼児を抱える保護者の子育てを支援する取り組みの一環として、外出中にオムツ替えや授乳などで立ち寄ることができる区立施設や民間施設のことを指します。板橋区発祥の、子育て世帯を応援する試みは今や全国区。SDGsにも貢献した街の取り組みは、特に時間の捻出や都合がシビアな共働き世帯には助かります。この街で子育てをする上で重要な判断基準にもなりそうですね。また、板橋区エリアは、練馬区や豊島区に隣接しており、池袋など都市部へのアクセスも良好です。これから板橋区への移住と、子育てを考える際の参考にしていただければ幸いです。

 

板橋区役所
板橋区役所

板橋区 子ども家庭部子ども政策課

課長 雨谷(あまがい)周治さん
子育て支援施設課長 杉山達史さん
所在地 :東京都板橋区板橋2-66-1
電話番号:03-3964-1111(代表)
URL:http://www.city.itabashi.tokyo.jp
※この情報は2019(令和元)年7月時点のものです。

“共働き世帯が子育てしやすい街” 多面的な子育て支援策とは。/板橋区役所 子ども家庭部(東京都)
所在地:東京都板橋区板橋2-66-1 
電話番号:03-3964-1111
開庁時間:8:30~17:00(火曜日 ~19:00、第2日曜日9:00~17:00)
閉庁日:土・日曜日、祝日、年末年始(12/29~1/3) ※休日・夜間サービス窓口を除く
https://www.city.itabashi.tokyo.jp/