生徒一人ひとりが「マイ一輪車」を持つ、木のぬくもりが心地よい学校/中央区立中央小学校 小久保秀雄校長先生
中央区立中央小学校
校長インタビュー
中央区の鉄砲洲公園のすぐ隣、「鉄砲洲小学校」から続いた中央小旧校舎を、全面建て替えの形で新築し、2012(平成24)年9月に竣工した「中央小学校」。壁面緑化で覆われた近代的な建物には、可動床採用の温水プールや開閉ドーム屋根付き屋上校庭など、公立小学校としては日本でも屈指のレベルの設備を備えており、近隣の人々からも新しい「地域のシンボル」として親しまれている。 今回はこちらで2013(平成25)年から校長を務める、小久保秀雄先生にお話を聞くことができた。
まず、中央小学校の歴史について教えてください
「中央小学校」というのは、1993(平成5)年にできた比較的新しい学校なんですね。実はその前に、「鉄砲洲(てっぽうず)小学校」と「京華小学校」のふたつの小学校がありまして、ふたつを統合して「中央小学校」となりました。
鉄砲洲小は明治10年の開校、京華小は明治34年からの学校でして、2校の大きな歴史はそのまま受け継いでおりますので、今でも、行事のたびに来てくださる方々や、保護者の方々にも、鉄砲洲出身、京華出身という方が多いです。長く住まわれている方が多くて、2代、3代と続いて通われている方が多いということですね。
経済が発展する中で、小学校の子どもの数が減少した時期が長かったものですから、平成5年から一つの学校になって、鉄砲洲小の校舎をそのまま中央小ということで使っていましたが、たくさんの方々から「子どもたちに広い校庭を、よりよい環境を」という思いもありまして、今回新しい校舎に生まれ変わったわけです。
なお、京華小の建物については、2001(平成13)年から「京華スクエア」ということで、区民の方々に広く使っていただいておりまして、八丁堀の地域のお祭りや、運動会などもそこで行われています。
現在、同じ建物の中に中央幼稚園、明正小、明正幼稚園も入っているのですね
現在この中央小に明正(めいしょう)小学校が入っていますけれども、中央小も昨年までは明正小の校舎の一部を借りる形で入っていまして、今度は明正小が建て直しになったので、工事の間だけ、中央小の校舎に入っているという形になっています。
2014(平成26)年の8月には明正小の新校舎も完成しますので、その後は明正小と明正幼稚園はそちらに引っ越して、こちらは中央小と中央幼稚園という本来の形に戻ります。
中央幼稚園については、以前から小学校に併設する形で入っていまして、それは中央区の多くが同じ仕組みになっております。私は小学校の校長ですが、幼稚園の園長でもあるんですね。
新校舎の特徴について教えてください
まずひとつは、ふんだんに木を使っていますので、新しい建物ではあるのですが、日本文化の良さ、木のぬくもりを感じられるような造りになっているかと思います。子どもたちもここで生活をして、いつも木に囲まれていますから、穏やかで優しい心の子が多いと思います。
施設の目玉としては、1階にある温水プールがひとつそうかと思います。こちらは夜間と休日には一般開放もしていまして、近隣の方にも広くお使いいただいている施設ですね。
プールの床は「可動床」という上がり下がりするものになっていますので、学年によって深さを変えて効果的に指導ができますし、水を抜いて調整する方法に比べると、水も時間も無駄が無くなりますので、非常に素晴らしいものかと思います。
もうひとつの目玉は、校庭でしょう。以前の学校では校庭を囲むように校舎が建っていましたが、今回は敷地いっぱいに建物を建てて、校庭を屋上に配置する構造になりましたから、非常に効率よくスペースを使えまして、その結果、広々とした環境になっていると思います。
それからこの校庭にはドーム型の屋根もありまして、この屋根が開閉式ですから、雨が降っても屋根を閉じてそのまま授業を続けられるんです。開校最初の年の運動会でも、途中で雨に降られてしまったんですが、屋根を閉じてそのまま続行できたということで、保護者の方や近隣の方はとても驚かれたそうです。おそらく、公立の小学校で可動式の屋根というのは大変珍しいと思いますので、本当に素晴らしい設備ですね。
こちらのグラウンドも夜間と休日には開放を行っていまして、グラウンドは基本的に団体での利用となりますが、プールについては個人の貸し出しが主体ですので、お近くの方はぜひご利用いただければと思います。
現在の児童数と今後の見込みについてお聞かせください
2014(平成26)年6月現在、小学校は103名、幼稚園は42名です。本校の学区は、湊、入船のそれぞれ2丁目までと、八丁堀地区になりますが、この辺りには2016(平成28)年から2017(平成29)年にかけて多くのマンションが竣工する予定ということですから、児童の数は大幅に増えると見込まれています。
ただ、これから新しい方が増えたとしても、現時点で明正小が入っているほどですから、十分な余裕があります。各学年2クラスまで増やせる余裕がありますので、現在の倍以上になってもまだまだ大丈夫ですね。
実際、今年度も児童数は大幅に増えていまして、幼稚園の3歳児が(1993(平成5)年の開園以来)初めて20名以上の入園者がありましたし、小学校も、今年は1年生が27名入学しました。中央小学校の歴史の中では、今が最も児童数が増えてきている時でして、今後もそれは続くかと思います。幼稚園の園児についても、ほとんどの方が、そのまま小学校に入学してきます。
校外学習が盛んとお聞きしたましたが、どのようなことを行っていらっしゃいますか?
宿泊を伴う校外学習については、基本的には中央区の小学校はどこも行き先が同じなのですが、4年生では中央区が持っている柏市のセカンドスクールに行きまして、そこで2泊3日の自然体験をします。ただ、内容はそれぞれの学校で異なってきますので、中央小は中央小独自のカリキュラムを組んでいます。
5年生については館山へ、民宿を借りての2泊3日の臨海学校に行きまして、こちらでも同様にさまざまな活動をします。
6年生では、山梨県の本栖に中央区が出資している宿泊施設がありますので、そちらに滞在して、富士山に登ったり、乳搾り体験をしたり、バター作りをしたり、ということを行います。
その他にも遠足などが何度かありまして、高尾山に行ったり、鎌倉に行ったりということもあります。
一輪車が学校を象徴するスポーツになっていると聞きました
本校は一輪車が「マイスクールスポーツ」となっていまして、中央小学校ができた当初から、「ひとり1台の一輪車」を持ちまして、子どもたちの巧緻(こうち)性や調整能力を鍛えることをしています。
一輪車は校内発表会を1年に2回行っていまして、ひとつは「団体技」ということで、友達と一緒に組んで技を発表します。これとは別に「個人技」の発表会もありまして、毎年3月なのですが、全員がそこで1年間の成果を発表します。4年生以上になると、大きな一輪車にも挑戦できるようになりますので、非常に見応えがあります。一輪車というのは、体幹を鍛えるために非常に有効と言われていますので、運動能力の基礎となる部分が鍛えられているかと思います。
また、本年度に関しては東京都の「オリンピック教育推進校」に指定されましたので、オリンピアン(オリンピック出場経験者)を招いてお話を聞いたり、コーディネーショントレーニングという、体の動きを結びつけるトレーニングを実施する予定で、体力づくりにも力を入れております。
校長先生が考案されて「チーム中央」という言葉があるそうですが、どのような思いを込めているのでしょうか
これは私が、昨年この学校に来たところで作った言葉ですが、私が作ったというよりは、その時あった地域の状況に、言葉を当てはめてみたらしっくりときた、というものなんですね。
中央小学校の良いところは、保護者や学校、地域の方々が、非常によく協力し合っているところだと思うわけですね。何をやるにも、つねにこの三者がチームとなって協力しているんです。
私は先生方に対しても「チーム中央」という言い方をしますが、これはひとりひとりの先生方が、自分の学級、自分の学年の子だけを見るのではなくて、学校中のいろんな先生方と情報をやりとりして、いろんな目で子どもたちを見て、教職員全員が「チーム」の意識で子どもたちを見ていこうというものです。
もちろん保護者の方、地域の方もについても同様です。自分の子どもだけではなくて、ほかの子どもであっても、街で見かければ気軽に挨拶をしてくださいますし、町会の方も皆さんとても優しく接してくださいます。情にも厚いし、他人を他人と考えずに、自分と同じように考えてくれる、そんな地域です。
子どもたちも地域に対して積極的に関わっていまして、たとえば「京華スクエア」で行っている、八丁堀の「町ぐるみ運動会」の時に本校の子どもたちが、一輪車でアトラクションで出場していますし、夏には盆踊りにも参加します。こういったこと全部をちょうどよく表す言葉として「チーム中央」という言葉がピタリとはまったんですね。
学習面で特徴的な部分があれば教えてください
昨年は国語の校内研究をしていましたので、「ことばの集会」といって、言葉のスキルを高めるための集会を定期的に開いて、縦割りの班で6年生が1年生に「そこはこうやって話すんだよ」などと教えてあげたり、自分の好きなことをいろいろな言葉でアピールしたりという機会を持って、人前で発表する力、語彙、話し方などを鍛えてきました。せっかくの良い流れですので、それは今後も、精選しながら継続したいと考えています。
昨年度で国語については大分整いましたので、今年度は算数について、より力を入れ始めて、改善を進めています。3年生以上については、算数の少人数授業ために講師が当てはめられていますので、ランチルームなども使いながら少人数授業に取り組んでいますし、1、2年生についても、本校は学級数が少ないですから、空いている音楽や図工の先生が入って、チームティーチングの形をとっております。
人数が少ない学校ならではのメリットとは、どのような点なのでしょうか?
本校では高学年の子が下の子の面倒をよく見ますし、下の子もお兄さんお姉さんにとても良く親しみをもっています。それも人数の少ない学校のメリットのひとつかもしれませんね。
もちろん、ひとりひとりの顔が見えて、関われる時間も多くなりますから、きめ細やかなケアもできますし、家庭との情報交流の時間もしっかりと取れるメリットは大きいです。保護者同士でも交流する機会が多いですから、お互いの顔がよく見えるということもありますね。
子どもたちはそういう中で、高学年の行動を下の学年の子がすぐに目標にできますから、何も指示しなくても、自然と学んでいくんですね。これも少人数ならではかと思います。小さい子たちは、「5年生、6年生になったらああなるんだ」という目標を持ちやすいんですね。そしてその子たちが高学年になると、今度はしっかりと高学年らしくなって、低学年の子にすごく一生懸命に教えるんです。その循環がしっかりできていると思います。
小学校と幼稚園の連携にはどのようなものがありますか?
運動会、音楽会、学芸会などは幼稚園と小学校で共同で行っていますし、高学年の子については、総合的な学習の時間を使って幼稚園の子に読み聞かせをしたりもしています。
あとは、一輪車を通しての交流は本校ならではの光景かと思います。本校では昨年度の1年生、現在の2年生以上の全員が一輪車に乗れますので、それを受けて、幼稚園でも、年長児から一輪車を始めているんですね。その年長児に、5年生が一輪車を教えに行ったりもしていますから、非常に幼稚園とのつながりが密接になっています。実際に、卒園するほとんどの子は、そのまま小学校に進学してきております。
明正小学校との小学校同士の交流について教えて下さい
今は明正小学校さんが同じ校舎内にいるので、小学校同士の交流は非常にしやすい状況にあります。たとえば高学年が学芸会のリハーサルをする時には、明正小学校の高学年の子が見学に来たり、その逆であったり。他の行事の時にも、明正小の子が見に来てくれたりという交流は行っています。幼稚園でも、中央と明正で演劇教室やサッカー教室を共同開催したりしています。 2014年(平成26)年9月で明正小・幼稚園は引っ越しされますが、せっかく生まれた交流ですから、今後もこういった交流は継続できれば良いですね。
最後に、この地域の魅力についてお聞かせください
ひとつはやっぱり、「町会がしっかりしている」という点でしょう。非常に年配の方々も、町会の中では現役として動いていらっしゃいますし、青年部は青年部で、しっかりされていますし、ひとつひとつの町会がしっかりしているので、街全体がしっかりしていると思います。
ですから、新しく引っ越されて来た方もどんどん町会に入っていただきたいと思いますね。そうすれば大人同士もつながりますし、学校ともつながりますし、子どもたちともつながりますし、もっともっと、交流が深まっていくと思います。
この辺りはもともと、生活や防災を含めて「街の基盤」が非常にしっかりしている地域ですので、この良い循環が続くように、どんどん、新しい方にも支えていっていただければ、将来にわたって、本当に素晴らしい地域になるかと思います。もし私がもっと若かったら、ここに住んで子どもを育てたかったと思うくらい、魅力的な地域ですね。
今回、話を聞いた人
中央区立中央小学校
校長 小久保秀雄先生
住所:東京都中央区湊1-4-1
電話:03-3551-0565
HP:http://www.chuo-tky.ed.jp/~chuuou-es/
※記事内容は2014(平成26)年6月時点の情報です。
生徒一人ひとりが「マイ一輪車」を持つ、木のぬくもりが心地よい学校/中央区立中央小学校 小久保秀雄校長先生
所在地:東京都中央区湊1-4-1
電話番号:03-3551-0565
https://www.chuo-tky.ed.jp/~chuuou-es/