問題解決学習を通じて“わかる楽しさ”を 算数科の研究にまい進する地域の伝統校/鎌ケ谷市立鎌ケ谷小学校 校長 松岡康太郎先生


鎌ケ谷市立鎌ケ谷小学校
松岡康太郎 校長先生

問題解決学習を通じて“わかる楽しさ”を
算数科の研究にまい進する地域の伝統校

開発著しい新鎌ケ谷エリアで、1874(明治7)年創立の伝統校として長らく地域で親しまれてきた「鎌ケ谷市立鎌ケ谷小学校」。「生きる力を身につける児童の育成」を学校教育目標に掲げ、心身ともに健やかな子どもの育成に力を注いできた。とりわけ、2012(平成24)年度から始まった算数科の研究で、子どもたちが「算数の楽しさ」を実感できるような授業づくりを追求していることに注目したい。1年生を迎える会でにぎわう同校を訪ね、鎌ケ谷市教育委員会時代から算数科の研究に携わってこられた松岡校長先生に、研究成果を交えて学校の特色を伺った。

伝統校として、地域とのつながりをどのように感じていらっしゃいますか?

鎌ケ谷市立鎌ケ谷小学校
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本校は1874(明治7)年に鎌ケ谷市で最初に開校した小学校です。その後しばらく鎌ケ谷の小学校は本校だけでしたから、保護者をはじめ、この地域には「祖父母も鎌ケ谷小出身」という方がとても多いです。母校を大事に思ってくださる方が多く、非常に伝統のある学校だなと感じています。登校時には通学路に立って見守ってくださる地域の方もいらっしゃいます。 PTAも熱心で、大規模校ということもありますが、昨年末に集めたベルマークが500万点になり、ベルマーク教育育成財団から表彰されました。

現在の児童数や今後の見込みを教えてください。

鎌ケ谷市立鎌ケ谷小学校
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現在(2015年4月時点)の児童数は1,042人で、特別支援学級を含めて全34クラスあります。2008(平成20)年度からずっと1,000人を超えていて、ここ数年は毎年、新入生が170人ぐらい入ってくるという状況が続いています。本校の学区は新鎌ケ谷から初富にかけてとても広く、北初富から電車通学している子どもが20数名ほどいます。また、新鎌ケ谷地区は宅地開発がとても盛んな地域で、開発が進むにつれてそちらの方面から通ってくる子どもがかなり増えてきました。今も周辺に100戸近い新築の戸建てが分譲中のようですから、今後も児童数が増えると見込んでいます。

子どもたちをどのように指導していらっしゃいますか?

鎌ケ谷市立鎌ケ谷小学校
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入学式や全校集会でいつも話すのは、“元気なあいさつ”と“友達と仲良くすること”、“交通ルールを守る”ということ。本校の児童は遊ぶときは遊ぶ、話を聞くときは真剣に聞くというメリハリがしっかりとできています。校内に掲げているように、「元気なあいさつ・輝け鎌小っ子」を目指し、わたしも毎朝校門に立って元気なあいさつを子どもたちと交わしています。

2012~2014(平成24~26)年度の3カ年、鎌ケ谷市教育委員会から算数科の研究指定を受けていらっしゃいましたね。研究の内容や成果、今後の目標についてお聞かせください。

鎌ケ谷市立鎌ケ谷小学校
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研究主題は「算数の楽しさを実感できる授業」で、副主題が「子どもの『なぜ』『どうして』を引き出す授業づくり」です。2年目からは「筑波大学」の清水美憲教授にご指導をいただいています。昨年は、北は岩手県から南は岡山県といった、県内外から約150名もの先生方に授業を参観していただきました。

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「算数の楽しさ」とは、計算ができるといった“できる楽しさ”と、課題に関心を持ち自分で問題を解決していける“わかる楽しさ”があります。本校では“わかる楽しさ”に重点を置き、主に思考力・表現力の向上を目指しました。そして、「思考が動き出す問題解決学習を重ねていけば、算数の楽しさを実感できるだろう」という研究仮説を立て、「思考を動かすための導入や発問の工夫」「子どもが主体的に問題解決できる場の工夫」「『算数の楽しさ』を評価する『振り返りカード』の活用」という3つの手立で取り組んできました。

鎌ケ谷市立鎌ケ谷小学校
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問題解決学習では、ある問題に対して単に答えを出すだけでなく、どう解くのか自分の考えを書いて明らかにしていきます。また、振り返りカードとは授業後に子どもたちに満足度を表してもらうカードで、1~3年はマークから選んでもらい、4~6年は満足度のパーセンテージと感想を書いてもらいます。「算数の楽しさ」という気持ちを評価するのはとても難しいことです。そこで、子どもたちに自己判断してもらい、評価の基準を探っていくためにこのカードを設けました。カードの感想は、教師が自分の授業を見直す反省材料としても活用できます。そのほか、学習の流れの作成、ノート作り、朝15分のモジュールの時間の活用などでも工夫しました。また、長さや大きさが実感できるように壁に動物の絵を描いたり、階段やフロアに単位換算や図形を描くなどして、発見や気づきが生まれる環境を整えました。

鎌ケ谷市立鎌ケ谷小学校
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こうした研究を進めるにつれ、子どもたちの算数への意欲が全体的に高まってきました。教師からみても、「意欲的に学習に取り組むようになった」「問題解決力が身についてきた」など、子どもたちの変化が感じられるようになりました。私も1年生の授業を見せてもらった際に、4月に入学したばかりの子どもたちが自分の考えを文章で書いていたことにたいへん驚きました。一方、教員の側にも、学習の流れが統一され、学習素材を工夫するようになるなど、よい変化が生まれました。

鎌ケ谷市立鎌ケ谷小学校
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指定校は昨年度で終了しましたが、研究は継続し、今後は話し合い活動の充実や、より意欲を高める導入の工夫などに力を入れていきます。本校では6年生の全国学力・学習状況調査に加え、5年生は鎌ケ谷市の学力調査、2~4年生は保護者にご協力いただき学校独自で調査を実施しています。これらの結果もふまえながら子どもたちがさらに力をつけられるよう取り組んでいきたいと思います。

2011(平成23)年度より千葉県の『ちばっ子「学力向上」総合プラン(※)』がスタートしましたが、さまざまなプランがある中で、特に力を入れている項目などはありますか?

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今年度は若手教員育成推進活用授業として、2年目の教員が11月に本校で公開授業を行います。本校は毎年新しく採用した教員が2名以上いて、今年度は5年目以下の教員が14人おりますが、こうした若手育成というのも大規模校で教員数も多い本校の役割かと思っています。もちろん、そうした役目も担いつつ、責任を持ってお子さんをお預かりしています。若い先生方はベテランの先生方と一緒に前向きに頑張ってくれていて、チームワークもとてもいいです。

ちばっ子「学力向上」総合プランについて

行事の特色について教えてください。

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5、6年生で組織する児童会が中心となって、いろいろな行事を行っています。毎週火曜は掃除を短時間にして昼休みを長くしていますが、そうした時間をうまく利用してドッジボール大会やハロウィンパーティー、カラオケ大会などを開いています。自由参加の行事が多いですが、例えば、ドッジボール大会はほとんどの児童が参加してすごく盛り上がります。ハロウィンパーティーでは、凝った衣装を着てくる子が結構います。

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昨年は仮装をしたまま妖怪ウォッチの体操をし、鎌ケ谷のキャラクター“かまたん”も来て一緒に踊りました。本日の「1年生を迎える会」をはじめ、どの行事も子どもたちが企画・運営をしていますが、一生懸命に取り組む姿が本当にいいなと思います。

部活動について、活動内容や参加状況について教えてください。

鎌ケ谷市立鎌ケ谷小学校
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部活動は5、6年生主体で、3学期近くになると4年生が加わります。陸上部、サッカー部、ミニバスケット部、音楽部、美術部があり、陸上部は6月開催の市内陸上大会に向けて4~6月の期間限定です。体力アップも目的に、6年生は全員参加という形で、5年生は30人ぐらい。ほかの部では、サッカー約70人、ミニバス部50人、音楽約40人、美術約100人が参加しています。朝7時半から朝練習をするなどどの部もとても一生懸命で、陸上部は昨年の陸上大会で総合優勝しました。音楽部は例年マーチング大会へ出場していて、昨年金賞を受賞しました。

「きらり先生」「ほほえみ先生」というのはどういった方々なのですか?

鎌ケ谷市立鎌ケ谷小学校
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どちらも鎌ケ谷市から派遣される非常勤講師のことです。「きらり先生」は少人数教育指導教員で、林間学校の引率もします。本校には1名派遣されていて、ふだんは5、6年の算数にTTでついていただいています。 「ほほえみ先生」は特別な支援を必要とする児童に対応する教員です。「ほほえみ先生」は教室でそうしたお子さんに付き添い、場合によっては別室で個別に対応します。1校につき1人のところ、大規模校の本校には2人配置していただいています。担任の先生は安心してクラス経営ができますし、児童本人の困り感も減っているようです。 「ほほえみ先生」は他市の先生方から感心されるような先進的な制度です。鎌ケ谷市では「きらり先生」「ほほえみ先生」だけでなく、先進的に図書館司書も全校に配置しています。

最後に、学校周辺の魅力について教えてください

駅や市役所、ショッピングモールなどが近く、生活するにも子育てするにも良い環境だと思います。住宅街としては緑も多いのではないでしょうか。校庭にやぐらを建てて盆踊り大会が開かれるなど、地域の行事も盛んです。 見学先になるような施設も周辺にたくさんあり、1年生は市川動植物園まで電車で出かけていきます。徒歩圏内には「きらりホール(鎌ケ谷市民会館)」や「郷土資料館」があり、きらりホールでは音楽部が「鎌ケ谷中学校」の吹奏楽部や鎌ケ谷吹奏楽団と連携して毎年秋に演奏会を開いています。

鎌ケ谷市立鎌ケ谷小学校
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今回、話を聞いた人

松岡康太郎 校長先生

※記事の内容は2015(平成26)年4月末に実施した取材をもとに作成しており、今後変わる場合がございます。

問題解決学習を通じて“わかる楽しさ”を 算数科の研究にまい進する地域の伝統校/鎌ケ谷市立鎌ケ谷小学校 校長 松岡康太郎先生
所在地:千葉県鎌ケ谷市中央2-1-1 
電話番号:047-442-1105
http://kamagaya.ed.jp/kamasyo/