時代に寄り添う商店街を作る 八王子を見守り続けてきた「荒井呉服店」/荒井呉服店 常務取締役 橋本孝さん


荒井呉服店 常務取締役
橋本孝さん

時代に寄り添う商店街を作る
八王子を見守り続けてきた「荒井呉服店」

八王子市・甲州街道沿いにある老舗の呉服屋「荒井呉服店」は、街道沿いに連なる老舗の中でもひときわ歴史の深い店のひとつ。八王子界隈に住む多くの人々がここで人生の節目に呉服を買い求め、晴れの日に彩りを添えてきた。また、いっぽうでは「ユーミン」こと松任谷由実さんのご実家としても有名な店である。

今回はここ「荒井呉服店」の常務を務めながら、店の入り口で日々お客さんに接し続けている、橋本孝さんにお話をうかがった。

「荒井呉服店」さんは商店街の中でもひときわ歴史の長いお店とお聞きしましたが、商店街の歴史、お店の歴史について教えてください。

荒井呉服店インタビュー
荒井呉服店インタビュー

私がこのお店に入ったのはもう60年近くも前のことですが、その頃は駅前に今のような街並みはなくて、街道筋のこの辺りが、街の中心になっていたんですよ。歴史的には大久保長安さん江戸時代に街を開いたということで、400年ほどの歴史があるそうなんですね。

八王子宿の中には横山宿、八日市宿、八幡宿というものがあったそうでして、そのうち横山宿と八日市宿が商店街に成長して、当時から「八王子に来れば何でも揃う」ということで、近在の方々でにぎわっていたということです。荒井呉服店が創業したのは1914(大正3)年ですので、すでに100年以上もこの場所で呉服店を続けております。

荒井呉服店インタビュー
荒井呉服店インタビュー

1931(昭和20)年の八王子空襲で、商店街もほとんどが焼けてしまいましたが、戦後はいち早く復興しまして、私もこのすぐそばに住んでいましたが、いちばん最初に「八日町商店街」が復活しましたね。その中でも「荒井呉服店」は最初に営業を再開したそうです。それから、1950(昭和25)~1951(昭和26)年ぐらいからでしょうか、大規模な区画整理が始まりまして。店の前の歩道が5メートルの立派な歩道になったんですよ。工事は1953(昭和28)年に完成して、いまの商店街の原型になっています。

橋本常務は「八日町商店街」の代表理事をされており、市内の数々の商店街のとりまとめもなさっているそうですが、最近の商店街の動向についてお教えください。

荒井呉服店インタビュー
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八王子には合計で15の商店街がありますが、やはり、ここ数年はだんだんと元気がなくなってきてしまっているんです。「後継者がいないためにやむなく」と言われる方も多いのですが、私はそれはちょっと違うと思うんですね。商店街に魅力がなくなってきてしまったから、「親のやっている店を継ぎたくない」っていう子どもさんが増えてきたのだと思います。

そこで私どもはこういうのを何とかしなきゃと思いまして、2012(平成24)年の7月に一般社団法人「まちづくり八王子」というものを立ち上げました。これは市内の14の商店街のうち9つの商店街が集まりまして、一緒に商店街を盛り上げていこうというものです。今後は残りの5つの商店街にも参加してもらえればと思っています。

荒井呉服店インタビュー
荒井呉服店インタビュー

「まちづくり八王子」では、まず「空き店舗対策」というものをやっています。この中では八王子市の産業政策部の方の協力も得まして、空き店舗への出店店舗に対して、内装工事の補助金を出してもらえることになるなど、成果を上げ始めています。今年の4月には、早速その成果で生まれた1店舗目が開店しました。大正琴の教室ということでしたね。

そもそも商店街というものは、「人が集まる場所」があればいいわけで、必ずしも物販でなければいけない、というわけじゃないんですよ。店舗を空けておくことがもったいないわけですから、とにかく店を開いて、人を集めてもらうことが良いことなんです。「まちづくり八王子」では2013(平成25)年から専従のスタッフを入れましたので、これからより一層活動していきますし、街づくりにもいろんな形で関わっていきたいと思います。

「まちづくり八王子」の活動で、将来的に街はどのように変わっていくのでしょう?

荒井呉服店インタビュー
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これからは専従スタッフが活動しますので、個人のお店もいろんなアドバイスをいただきながら、時代に見合ったお店に変わっていけると思います。商店街というのは店の数を減らさないようにしなきゃいけないんですが、立場が近いと、たとえ私が代表理事であっても、人の店の経営には口出ししにくいんですよ。

それが「まちづくり八王子」の立場からであれば、たとえば「ここは改装したほうがいいんじゃないか」とか、「こういう風にすれば負担が少なくなる」などと、的確なアドバイスができるんですね。古い商店街にはそういった外部からの刺激が必要だと思っていまして、八王子はいま、これをやり始めているところです。

商店街に幾つものマンションが建つような時代になりましたが、商店街としてはどのように関わっていきたいと思われますか?

荒井呉服店インタビュー
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そうですね、私個人としては、マンションを作ることに反対はしていないんですよ。人がいなければ物は売れませんから、新しいマンションの住人の方も大切なお客様です。まず、この八日町を選んで住んでくださるってことが、何よりも嬉しいですよね。

今後の商店街としては、「女性の方が沢山来てくれる街」を意識していきたいと思っています。商店街は昼間だけじゃないんです。夜も商店街なんです。だから夜、シャッターが閉まっていても、「明日ここの店に来たいな」と思えるようでなければいけないんです。
「八日町商店街」では、すでに防犯灯を設置しましたし、これから防犯カメラも付けようと思っています。女性が安心して通れる街、夜が安全な街にしていきたいですね。

「八日町商店街」のアピール、おすすめの店舗などがあればお教えください。

荒井呉服店インタビュー
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八王子の商店街では、買わなくてもいいので、ぜひ気軽に店の中に入ってみてほしいですね。回ってもらえば1日かかってしまうくらいいろんな店がありますし、いろんな出会いがあると思います。歴史が古い店もたくさんありますし、個性的な店もたくさんあります。

食べ物だと、「伊勢屋」さんのお団子、「富士屋」さんのお惣菜なんかはおすすめですね。文具の「ヒノデン」さんもありますし、「イワイ」さんなんかは特殊な額縁屋さんで、オーダーメイドにも対応してくれますしね。そういうのは商店街にしか無いですよ。婦人服の「乙女屋」さんや、帽子屋さん、お茶屋さんなんかでも、百貨店でも扱ってない品を扱っていますし。この八日町ってところには、とにかくいろんな業種があるんです。百年以上の老舗もけっこうありまして、中でもいちばん古いのは「イゲタヤ」さんですかね。創業して200年以上になるかと思います。

荒井呉服店インタビュー
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昔はお茶屋なんて世間話をするところでしたし、呉服屋なんてのはいろんな情報が集まってくるから、何でも聞きに来るお店だったらしいですね。「だれかいい嫁さんを紹介してほしい」とか。そういう商店街ならではの「身近さ」「親しみやすさ」も復活させたいですね。入ってくるときには笑顔でお迎えして、お店を出るときにも、買い物をしてもしなくても、笑顔でお送りする。それが次の来店につながりますし、商店街の将来にもつながると思っています。

「荒井呉服店」さんならではの特徴はどんなところでしょうか。どんな人に来てほしいですか?

荒井呉服店インタビュー
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うちの場合は「ほかに無いものを置いてある」というのが特徴ですかね。「呉服関係で無いものはありません」というのがキャッチフレーズです。他の呉服屋さんに無いようなものも、うちに来てくれればきっとありますよ。値段も柄も幅広く揃えているので、初めての方でも気軽にいらしてください。

荒井呉服店インタビュー
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もちろん接客も大切にしています。今はコンビニもスーパーもお客さんが選んで買う時代ですが、呉服の場合は今でもマンツーマンで接客して、選んで頂くわけですからね。「人」が良くなければ商売にはなりません。あとは、「お客さんに教わる」という姿勢も大事だと思います。お客さんには着物をよく知っている方がたくさんいらっしゃるわけですよ。着物を気軽に着ることができる環境があるのはやはり日本なので、どんどん着てみてほしいですね。

自治会との連携、地域のお祭りとのかかわりなどはありますか?

荒井呉服店インタビュー
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地域との連携という意味では、やっぱり「八王子まつり」は大きいですね。関東の3大まつりのひとつですから。八日町にも「山車」(だし)があるんですよ。2001(平成13)年に5千万円を使って再建しましてね。

新しく来られた方にも、お祭りに是非参加してほしいですね。祭りに参加して山車を引くには「花」、つまりお金が必要なんですが、そんなに沢山じゃなくてもいいんです。だから、今より少しでも参加する人が増えてくれれば嬉しいですね。山車を引く人が増えたら、引く縄を伸ばせばいいんだけなんですから。あと、祭りに参加するには浴衣を着るんですが、八日町の浴衣はうちで仕立てたものだからいいものだと思いますよ。原価のままで売ってるから儲けはないんだけどね。

マンションにどんな人が住んでいるか分かることも、商店街の発展には必要なことなんだよね。だからマンションの方にはどんどん商店街を利用してもらって、仲良くなって、一緒に楽しみながら発展していきたいものですね。

最後に、八王子の魅力について教えてください

荒井呉服店インタビュー
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私は60年近くこの町で仕事をしているけど、「楽しい町」だなって思いますよ。近くに高尾山もあるし、川も流れているし。電車の便がいいのはもちろん、公共交通がしっかりしている点もいいですね。若い方はもちろん、歳をとってもずっと、安心して暮らせる町だと思います。

荒井呉服店インタビュー
荒井呉服店インタビュー

今回、話を聞いた人

荒井呉服店 常務取締役 橋本 孝さん

所在地:東京都八王子市八日町9-8
電話番号:042-625-5291
URL:http://www.araigohukuten.co.jp/

※記事内容は2013(平成25)年4月時点の情報です。

時代に寄り添う商店街を作る 八王子を見守り続けてきた「荒井呉服店」/荒井呉服店 常務取締役 橋本孝さん
所在地:東京都八王子市八日町9-8 
電話番号:042-625-5291
営業時間:10:00~18:00
定休日:水曜日、 第1木曜日
https://www.araigohukuten.co.jp/