国立を代表するパティスリー「レ・アントルメ国立」。 マダムに聞く、お店と国立の魅力。/レ・アントルメ国立 オーナー 魵澤さんご夫妻
レ・アントルメ国立
オーナー 魵澤さんご夫妻
国立を代表するパティスリー「レ・アントルメ国立」。
マダムに聞く、お店と国立の魅力。
JR「国立」駅からまっすぐに伸びる大学通り。「一橋大学」を過ぎて少し行った左手側に、ひっそりと「レ・アントルメ国立」がある。東京都下でも指折りのスイーツ激戦区と言える国立市。そこで駅から徒歩10分以上も離れた場所にありながら、日々、多くのお客さんを集めているこの店は、知名度、味、品揃え、接客サービスと、どれをとっても国立でトップレベルの店と言えるだろう。
この店のオーナーは魵澤(えびさわ)信次シェフ。今回はお店で「マダム」と呼ばれ親しまれているシェフの奥さまに、「レ・アントルメ国立」のコンセプトやシェフの思い、街の魅力を聞いた。
なぜこの街、国立に店を持つことになったのでしょうか?
もともとこの店を開く前に、シェフがこの近くのステーキ屋さんでアルバイトをしていたんですよ。そこで働いている時に、この街は立川でもない、国分寺でもない、「国立に住んでいる」という意識が高い方が多い地域だということを思ったそうなんですね。
それから自分のお店を出すとなった時に、シェフは自分がやってきたフランス菓子を受け入れてもらいやすい環境だということ、それから、他のどの街よりも緑が多いということも気に入って、国立を選んだそうです。最初の店は今の店からすぐ近く、交差点の反対側にある、ステーキ屋さんが所有していたビルの地下の物件だったんですよ。
独立して初めての店舗が駅から遠く、しかも地下というのは、大変だったのではないでしょうか?
私たちの店は1993(平成5)年の開業で、実は当時すでに国立市内にはスイーツ店が20軒ほどあって激戦区だったところに、後発として入ったんですね。業界の先輩の方々からは「なぜそんな場所に」と散々言われたそうなんです。駅からはかなり歩きますしね。
でも、この辺りは都心にお勤めの方が多い地域ですので、都心の味をご存知の方、本物を知っていらっしゃる方が多いということは思っていまして、味が良ければ、駅から遠くても受け入れてくださるのではないかと、シェフは思ったようですね。
シェフは駅前の店で、「電車があるから急いで買わなきゃ」というスタイルにはしたくなかったそうなんですね。その点でここはちょうど駅と駅の中間で、休日になるとゆっくり散歩をされる方が多いような場所ですから、シェフは最初から駅前ではなく、この大学通り沿いの場所を探していたそうですよ。
こちらに移転したのはいつごろ、どんな理由からだったのでしょうか?
ここに移転したのは13年前くらいですかね。もともとこの建物では、ここの地主さんが小樽のガラスを売る店を開いていたんです。でも、もうご高齢でお店をやめるということで、その時に私たちにお声がけいただいたんです。できればこの素敵な建物を生かしてほしいという話もあったので、梁(はり)などはそのまま残しつつ、洋菓子店として使いやすいように建物を改良してオープンしました。
やはり和風の建物に洋菓子店というのが珍しいようで、外国のお客様も多くいらっしゃいますよ。中国や台湾、ロシアなどからお菓子屋さんや飲食業界の団体の方々などが、お見えになったこともありますし、映画やドラマのロケでも時々使っていただいています。
商品については、生菓子から焼き菓子、チョコレートまで幅広い品揃えですが、ポリシーや素材のこだわりなどがあれば教えてください。
品揃えについては、種類がかなり多いお店だと思います。個人店で毎日こんなにたくさんの種類のパンが並んでいるというのは、珍しいんじゃないでしょうか。フランスでは、一軒の洋菓子店に行けばそれでパーティーができてしまうようなスタイルというのが、いい洋菓子店のステータスなんですね。やはりシェフとしては「フランスでやってきたこと、見てきたことをできるだけ伝えたい」ということを常に思っておりまして、こういった品揃えになっています。フランスの洋菓子店と比べても、非常に似ていると思いますよ。
生菓子については、シェフの頭の中にレシピが2~3千種類もあるようなので、季節感を取り入れながら、形、色、シュー生地、ムース系、タルト系、チョコレート系という風に、バランスを考えながら揃えています。ですからショーケースの中身は毎日のように変わりますね。
その中でも定番はモンブラン、シュークリーム、エクレア、サバランあたりでしょうか。これは毎日置いているし、人気が高いですね。あとはチーズケーキですね。タルトだったり、スフレだったりといろんな構成があるわけですが、これもその時のシェフの気分次第です。
実は、シェフはお惣菜も時々作るんですよ。グラタンやドフィノア、リエット、ローストビーフなんかですね。桜の時期やイベントの時などには、そういったものも作って皆さんに召し上がっていただいています。
面白いものでは、ガレットデロワという新年に食べられるフランス伝統のパイがあるんですが、パイの中に陶器の人形が入っていて、それが当たった人はその日一日王様・王女様になれるという習慣があるんですね。ですからうちでもお正月の営業の時には、そのパイと王冠をセットにして販売しているんです。
そういう風にお菓子と行事というのはもともと結びつきがあって、文化に根付いているものですから、美味しさだけではなく付随する文化も伝えたい、というのがシェフの思いです。
チョコレートも種類豊富に置かれていますね。
チョコレートは普通の店では冬だけだと思いますが、うちでは通年置いています。ご存知の通り、日本ではあまり夏にチョコレートは売れないんですが、売れないものも置いていないと、お客様にインプットされませんから、特に生チョコについては、年間通して必ず置くようにしています。トリュフは冬限定です。
最近監修などの仕事も多く多忙なシェフを支えて、いま現場を仕切ってくれている卒業生がとても力があって、特にチョコレートが得意なんですね。パリでナンバーワンのショコラティエで、長く二番手をやっていた人ですから、きっと近いうちに有名なシェフになりますよ。
色鮮やかなマカロン、これもシェフの自慢ということですが。
そうですね。マカロンもうちが先駆者の一人だと思います。マカロンは全部で12種類あり、この色鮮やかな感じもフランスと同じです。実は箱や包材も全てシェフのデザインなんですよ。
紅茶を扱っているのも珍しいですね。
紅茶については、私が日本紅茶協会のインストラクターの資格を持っていますので、ケーキに合う良質なものを選んで揃えています。季節感も取り入れて、桜や秋ぶどうの紅茶、クリスマスティーといった季節限定のものも置いています。
焼き菓子、お茶、ケーキ、ジャムなどは組み合わせて、ご進物にお使いになる方も多いですね。会社関係でしたらティーバッグなどが便利かと思いますし、ご自宅向けでしたら茶葉を買っていただいてティータイムにゆっくり楽しむというのも良いかなと思います。デイリーな贈り物から、お歳暮やお中元まで、幅広くご利用があります。
どんなお客様が来店されていますか?
遠くから来る方もいらっしゃいますが、やっぱり地域の方が中心ですね。中でも20~30代で、小さなお子さんをもつお母様世代が多いと思います。ほかには、会社関係でご進物が必要になってお使いいただくという方は男女ともに多いです。お年寄りの方もいらっしゃいます。週に3~4回来店される、近くにお住まいのおじいちゃんがいて、「そんなに食べて大丈夫?」なんて笑って話していたりしますよ。
「地域一番店」が目標ということですね。
「地域一番店を目指す」というのは、シェフがいつも言っている言葉なんです。今は都心に行けばもっと素敵なきれいなお菓子が並ぶお店はたくさんありますし、周りの街を見てみても、スイーツ店がない街なんてないですよね。
そんな状況の中で、奇をてらったことをしても仕方がないですから、それよりは本当に美味しいお菓子、見た目もシンプルなお菓子を出せれば良いと思っています。見た目よりも味で勝負、そういうお店でありたいなと思います。
最近、「国立」駅に近い場所にバウムクーヘン専門店をオープンされましたが、そちらの特徴を教えてください。
新しくギフト専門店もやりたいね、ということで作ったお店が「キッチンバウム」です。シェフは特にチョコレートが得意なので、チョコレートをより幅広く展開したかったのと、ここのお店(本店)はデイリーな感じですので、もう少しフォーマルな、ギフトに対応できる店を作りたかったんです。
そこでチョコレートだけではなく何か新しい特色も持たせたいと考えた時に、バウムクーヘンって嫌いな方はあまりいないじゃないですか。でもオーブンが特殊なので家では作れないですよね。だから、バウムクーヘンなんです。
種類もいろいろあって、お抹茶や桜のバウムを作ったり、いろいろ新しい取り組みもしています。チョコレートについては、本店ではあらかじめパックに詰めた形で販売していますが、あちらではバラ売りもしていますので、贈る相手に応じて、またお客様のご気分次第で、自由に詰め替えできるようになっています。
ご夫婦でこの近くにお住まいということですが、国立の住み心地、魅力について教えて下さい。
お店のオープンからなので22~23年住んでいますが、その間にもマンションが次々にできて、国立の景色はだいぶ変わりましたね。
その中でも変わらない魅力というのはやはりありまして、まず街全体が文教エリアですから、公立で評判のいい学校が多くあるのは魅力でしょうね。小、中、高、大と、全て国公立で行けてしまいますからね。子どもを育てる環境としては本当に素晴らしいところではないかと思います。
その一方で、高齢者がゆっくりと暮らすにもとても良い場所ですね。都心までわざわざ行かなくても大抵のことはまかなえますし、この緑があるロケーションというのは個人で作れるものじゃないのですからね。ケーキ屋仲間からも「こんな良いところに店を出せるのは本当に羨ましい」とよく言われていますし、いろんな方が「素敵な街ね」「いいところね」とおっしゃいます。都心には無い洗練された感じ、とでも言うのでしょうか。ギラギラしていない、少しクラシックで上質な街だと思います。
これから国立に住みたいという方に向けて、何か一言をお願いします。
ぜひ国立に来て、ゆっくりと時間が流れるという生活を愉しんでいただきたいですね。国立は大きな通りからちょっと裏に入っても、いろいろ面白いお店がありますし、いろんな魅力が詰まっています。あとはやはり皆さん生活に余裕があって、人生を楽しんでいる方が多いと感じますね。だから人があくせくしていないし、街の雰囲気も穏やかでゆっくりとした時間が流れているのだと思います。
今回、話を聞いた人
レ・アントルメ国立
オーナー 魵澤さんご夫妻
■レ・アントルメ国立
住所:東京都国立市東2-25-50
営業時間:10:00~19:00/定休日:水曜日
URL:http://www.les-entremets.com/
■キッチンバウム
住所:東京都国立市東1-17-7 コスモ国立1F
営業時間:10:00~19:00/定休日:水曜日、その他不定休あり
※2015(平成27)年4月実施の取材にもとづいた内容です。 記載している情報については、今後変わる場合がございます。
国立を代表するパティスリー「レ・アントルメ国立」。 マダムに聞く、お店と国立の魅力。/レ・アントルメ国立 オーナー 魵澤さんご夫妻
所在地:東京都国立市東2-25-50
電話番号:042-574-0205
営業時間:10:00~19:00
定休日:水曜日
https://www.les-entremets.com/