子どもたちに“居場所”を提供する/港区立港南子ども中高生プラザ 伊東寛さん
子どもたちに“居場所”を提供する
大型児童センター「港区立港南子ども中高生プラザ」
近年、高層マンションの相次ぐ建設で人口増加が進んでいる港区「港南エリア」。このエリアは住宅地であると同時にビジネスの拠点でもあり、「子どもたちが安全に遊べる、居場所の確保」が課題だった。港区では、本館プラザと学童クラブ分室に分かれて運営されていたこれまでの「港区立港南子ども中高生プラザ」を、移転統合することで充実を図った。
今回は、港南中学校の隣に平成24年12月1日にオープンした「港区立港南子ども中高生プラザ」、愛称「プラリバ」にお伺いし、館長の伊東寛さんにお話を聞いた。
「児童館」と言えば公民館のような小規模なイメージがあったのですが、こちらは市民会館のように大規模なんですね。
全国各地の自治体には、児童福祉法に基づいた「児童館」という社会資源があります。ここはその中でも大規模なもので、「大型児童センター」と区分されています。「児童館」は法律上「0歳から18歳までの子どもとその保護者が利用できる」という施設で、大型と名が付いたとしてもその原則は同じです。
ただ、「プラリバ」の正式名称「港区立港南子ども中高生プラザ」が示すとおり、中高生を意識したものとなっています。これまでの「児童館」はどちらかというと小学生が中心というイメージがありましたが、ここでは、小学生のお子さんはもちろんですが「中高生の居場所づくり」という観点を意識しています。
いろんな方が利用されると思いますが、実際の利用状況はどのようになっていますか?
まず午前中は、主に未就学児とその保護者の方が多いですね。「プラリバ」には「子育てひろば」としての側面もあります。午前中は施設もスタッフも余裕がありますから、在宅で子育てされている方にコミュニケーションの場所を提供し、相談にも応じています。
基本的には自由に遊んでいただいていますが、0歳、1歳、2歳で同じくらいの月齢のお子さんが集まる、年齢別の「おひさまっこ活動」を企画しており、多くの方にご参加いただいています。
ただ、そうでなくても、いつでも行けば誰かがいたり、職員が対応したりしますので、気軽にいらしていただければと思います。
午後の早い時間になると、幼稚園帰りの親子が多くなります。お迎えの帰りにママ同士でお話をされたりとか、子どもたちの遊び足りないのをフォローするために訪れる方がいらっしゃいます。
小学校が終わる時間帯からは小学生の利用が増えますし、小学1年生~3年生を対象とした「学童クラブ」も始まります。学童クラブは、両親ともに就労していたり、病気などでご家庭での保育に欠けるお子さんが、小学校から直接来館し、おやつを食べたり、宿題をしたりしながら、過ごす場所となります。宿題の声かけはしますが、強制することはありません。あくまでも「安全な居場所の確保」が中心です。
学童クラブは基本的に5時半に帰りの会を行い、最終的には6時半までが利用時間となります。
学童クラブ以外にもたくさんのお子さんが遊びに来ますが、学校からの直接来館はできません。一旦帰宅後、ランドセルを置いてから、遊びに来てもらっています。
もう少し遅い時間になると、中学生、高校生が増えてきます。中高生の場合は、来る子は毎日来ますし、特別な目的を持って来る子が多いですね。
部活もなく、家も留守という子は職員と話すために来館しています。ほかにも、バンドの練習や、ローラースケート、ダンス、バスケットボールの練習などに通われる子も多いです。「目的利用」と「居場所」の2つの性格が強いと言えるでしょう。
児童館の利用時間は6時までのことが多いですが、中高生だと部活などもあって利用できる時間が短くなります。「プラリバ」は8時まで開館しているので、中高生の利用に適していると思います。あとは、音楽スタジオやローラースケート場などの施設が充実していることも魅力のひとつなのでしょう。
港区民以外は利用できないのでしょうか?事前に登録などは必要ですか?
事前に登録などは必要ありませんが、利用時は入口でお名前を書いていただいています。何度も利用される方にはQRコードを印刷した入退館カードによる入退館システムの利用をお願いしています。カードを作成しますと、入館と退館の際にカードを端末にかざすだけで手続きができ、記名する必要がありません。
学童クラブに関しては、保育園の入園審査のように保護者の就労状況などを点数化して入会の可否を判定しています。場合によっては「待機」になることもありますが、移転に伴い60名×4クラスの240名定員になりましたので、現時点では「待機」は発生していません。
それ以外は、基本的に子どもとその保護者であれば、どなたでも、いつでもご利用いただけます。近隣の品川区や大田区のお子さんでも、お友達がこの地域に住んでいるなどの理由で、遊びに来ることもあります。
館内の施設を簡単にご紹介いただけますか?
来館したら、まずは事務室の脇にある入館名簿に記入をするか、カードをかざして入館の手続きをします。入口の横にあるカフェテリアのような場所は「図書ラウンジ」で、本を読んだり、ボードゲームをしたりと、ゆったりくつろいだりすることのできる場所となっています。こちらでは飲食も可能です。
その先にある「おひさまっこルーム」は、乳幼児と保護者の方のためのお部屋です。すべり台やプラレールなどの遊具があり、授乳スペースも備えていますので、小さなお子さんでも安心して遊べるかと思います。
2階は主に小・中・高校生向けのスペースになっています。受験勉強などもできる学習室、パソコンを自由に使える「パソコン室」、工作ができる「創作室」などがあります。
変わったところでは「音楽スタジオ」と「ダンススタジオ」でしょうか。こちらは防音もしっかりとした本格的な設備となっていますので人気が高いですね。予約して利用していただくようになっています。
3階は体育館と集会室があるほか、屋外スペースには「屋上広場」があります。体育館ではバスケットボール、ドッジボール、バドミントン、トランポリンなどのスポーツが行えますし、集会室にはクライミングウォールもあるんですよ。屋上広場も人気が高い遊び場で、ローラブレードやローラーホッケーができます。
イベントやプログラムも沢山企画されていますね。館独自のもの以外に、地域の人々や、企業との共同企画などもされていらっしゃるのでしょうか。
通常のプログラムとしては、ドッジボール、サッカー、一輪車、バスケットボール、クライミングなどのスポーツ系の企画や、料理、工作、映画などの企画などが定期的に行われております。
このほか、近くにある東京海洋大学と連携したプログラムもあり、今年度については「食を通して海洋環境を考えよう」という企画を考えています。この中では実際の料理人の方に魚を調理していただいてそれを食べたり、2日目には、海洋大学の船に乗って東京湾で魚の生態を観たりする予定です。
そのほか、企業の協力による企画もあります。たとえば、港南には大手電機メーカーの本社があり、企業の社会貢献事業の一環で太陽電池を作るワークショップなども行われています。
地域にお住いの方々のお力添えもいただいております。年配の方をお呼びして、読み聞かせの会を開いたり、折り紙を教えていただいたりもしています。
毎年恒例の「プラリバまつり」では、地域の皆様に焼きそばを焼いていただいたり、小学校や中学校のPTAの方にもたくさんご参加いただいてきました。
ある意味、地域のお祭りのようになっていますよ。
港南地域の「子育てのしやすさ」について教えてください。
最近は、保育園もかなり増えてきましたね。認可保育園だけでも、区立を含めて港南エリアには、港区立こうなん保育園・港区立たかはま保育園・ベネッセチャイルドケアセンター港南・ゆらりん港南保育園の4園があります。港区の待機児童対策としては、私立認可保育園の誘致や緊急暫定保育室開所の「計画の前倒し」などに取り組んでいます。
未就学児と保護者向けの「子育てひろば」に関しても、港南エリアには各地に設置されています。今年の4月には、港南4丁目に新設されるなど、より充実しています。「プラリバ」も、専門ではないのですがその機能をもっています。そういう意味では、子育てに関する社会資源はかなり充実しているエリアだと思います。
あと、小学校も新しく大規模なものとなっていますので、人口増にも対応できるものと思われます。
港南地域の「暮らしやすさ」、「街の魅力」についてお聞かせください。
そうですね、急激に人口が増えた地域としては、コミュニティを作ろうという気運が高いんだと思います。以前からこの地域にお住まいになっている、公共住宅、公営住宅、公団などの方などは、今ではご高齢の方が多いのですが、そういう方たちと、マンションに住まわれた若い世代の方との交流もさかんです。この近くの2000戸あるマンションでも、最近自治会ができましたし、新しいお祭りなども2年前から始まりましたね。
防災に関する取組みも、地域ぐるみで行われています。この地域には「港南防災ネットワーク」という組織がありまして、有事の際の対応を日常的に話し合っています。もともと小学校単位のエリアで「防災協議会」というものがあったのですが、港南地区では、住民・商店・企業なども含めた形でネットワーク化が進んでいるということですね。その点でも安心感が高く、そういった関わりを通じて、地域の団結力も強くなっているのでしょうね。
お祭りが増えてきているのも良い傾向だと思います。これは私個人の考えですが、タワーマンションは、隣同士の付き合いが少ないのではないでしょうか。でも子どもができたら、ご近所付き合いに無関心ではいられなくなると思います。そこに“地域のお祭り”というものがあれば、そこをきっかけに地域の輪に飛び込んでいけるんじゃないかな、と思いますね。
環境的な面では、まず、治安はとても良いと思います。不審者情報も少ないですし、道路が広くまっすぐに整備されていますから、見通しも良いです。公園や緑も多いですし、働く人も暮らす人も多い地域ですから、昼夜の人口の差も小さくて、寂しさも無いですね。
インフラの面でもこれから充実していくのではないでしょうか。区の総合支所もこれから新しくなりますし、泉岳寺新駅の話もありますね。将来的には東京都の経済特区になるそうですから、まだまだ新しい街並みが生まれるのではないでしょうか。都内でも有数の「将来性があるエリア」かと思います。
今回、話を聞いた人港区立港南子ども中高生プラザ 住所:東京都港区港南4-3-7 ※記事内容は2013(平成25)年4月時点の情報です。 |
子どもたちに“居場所”を提供する/港区立港南子ども中高生プラザ 伊東寛さん
所在地:東京都港区港南4-3-7
電話番号:03-3450-9576
開館時間:9:30~20:00
休館日:祝日、年末年始(12/31~1/3)
https://www.plaliba.com/