スペシャルインタビュー

アートと食で街を盛り上げる!まちづくりの試みを実践/しんゆりマルシェ実行委員会 稲垣 陽一さん・小島 龍彦さん

駅前には飲食店や銀行、ショッピングモールなどの生活利便施設、さらに周辺には複数の大学といった教育機関が立ち並ぶ、便利で暮らしやすい環境が魅力の新百合ヶ丘。都心まで電車で約30分というアクセスの良い立地にありながら、街には緑豊かな自然が残り、また「芸術のまちづくり」を掲げる市の方針の下、芸術関連の催しなども多々行われている。2014(平成26)年からスタートした「しんゆりマルシェ」も、アートをテーマにした街のイベントのひとつとして年々来客数を伸ばす人気の催し。今回は、そんな人気イベントの「しんゆりマルシェ実行委員会」の稲垣陽一さんと、小島龍彦さんに、しんゆりマルシェの魅力や上麻生エリアの魅力についてお話しを伺った。

学生も企画に参加。さまざまな世代が関わりあって運営されるまちの一大イベント

2015(平成27)年の「しんゆりマルシェ」の様子
2015(平成27)年の「しんゆりマルシェ」の様子

―最初に、「しんゆりマルシェ」が始まった経緯について教えてください。

稲垣さん:このあたりは昭和40年頃にできた比較的新しい街なのですが、当時からの住民は少しずつ高齢化も進んでおります。これから新たに移り住んできた若い世代の方たちに長く住んでもらうためには、多世代の方々が交流できる場が必要となってきています。「一般財団法人川崎新都心街づくり財団」では、近隣の大学の先生方に集まっていただき研究会を重ねて、大学生にも調査にあたって頂きました。その結果、東北・仙台の泉地区で学生が企画に参加するマルシェを行っている事例があり、これを参考として、2014(平成26)年に私たちも実験的にやってみよう、という話になりました。

「アート&クラフト」のゾーン
「アート&クラフト」のゾーン

―「アートと食の祭典」というテーマやイベントのカタチはどのように決まったのでしょうか。

稲垣さん:麻生区は「芸術のまちづくり」ということで、まちづくりの軸に「アート」を置いて色々な活動をしています。その流れを汲みつつ、「街で楽しむ」ことを主に屋外でのパフォーマンスやファミリー向けのワークショップなども取り入れました。また、この地域にはクラフト作家も多く住まわれているということで、その方々の作品を展示販売できる企画としました。「食」については、新百合ヶ丘周辺には農地も多く新鮮な野菜を生産する農家も多いことから、アートと食をコラボして何か新しいカタチにできないかと考え、テーマに組み込みました。

地元の農産物を購入できる「しんゆりファーマーズ」のゾーン
地元の農産物を購入できる「しんゆりファーマーズ」のゾーン

―どのように運営されているのでしょうか。

稲垣さん:主催は「しんゆりマルシェ実行委員会」、そして「新百合ヶ丘商店会」と「マプレ専門店街」が共催しています。さらに「麻生区」や「川崎市商工会議所」、「麻生観光協会」、「NPO法人しんゆり・芸術のまちづくり」の方々にも後援についていただき、協賛には地元企業の方々が多くいらっしゃいます。

また、マルシェそのものは「しんゆりマルシェ実行委員会」が企画していますが、運営には大学の関係者も多く参加しております。今年は12の大学の学生が、企画・運営に加え、パフォーマンスやワークショップに参加しております。また、会場のインフォメーションや美化活動、来街者の交通量調査などの運営にも参加しております。

大学生が企画したブースも多数。明治大学による「地域連携プロジェクト」の企画展示
大学生が企画したブースも多数。明治大学による「地域連携プロジェクト」の企画展示

地域交流型イベントとして、家族ぐるみで楽しめる点が魅力

―「しんゆりマルシェ」の見どころや、当日の楽しみ方を教えてください。

小島さん:地域のイベントにはさまざまなものありますが、「しんゆりマルシェ」の特徴はマルシェという言葉も通り、“市場的”である点でしょうか。当日は3会場に分かれてさまざまな催しが開かれるのですが、学生中心に開催するワークショップやゲームが楽しめる「アート&クラフト」のゾーン、「しんゆりキッチン」「キッチンカー」という飲食店が出店される食のゾーン、「しんゆりファーマーズ」という地域の農作物、名産品を販売するゾーンがあります。

ブラスバンドのパレードの様子
ブラスバンドのパレードの様子

また、ステージカーが来たり、バグパイプの奏者や地元の中学生のブラスバンドと一緒に街中をパレードしたりもします。ステージカーでは、地元の中学校が参加をしてダンスパフォーマンスをしたりしますので、こういった多彩な催しを見ながら、あるいは食べ歩きながらというのが楽しみ方のひとつではありますね。

稲垣さん:マルシェはフランス語で“地元の名産物などを直売する”という意味をもつ言葉ですが、「しんゆりマルシェ」は“地域交流型”のイベントとしてのマルシェなんですね。ですので、物を売り買いするという要素は比較的少なくて、ワークショップや演芸といった家族ぐるみで来て楽しんで頂けるイベントになっています。

東京都市大学のワークショップ「パラソルでアートをつくろう」
東京都市大学のワークショップ「パラソルでアートをつくろう」

―「しんゆりマルシェ」を開催するようになって、街にはどのような変化がみられますか。

小島さん:一昨年は2万7,000人、昨年は3万4,000人と来場者も年々増えていますし、「マルシェって楽しいよね」という声が挙がってきていますので、市民の皆さんの中ではかなり定着しつつあります。

稲垣さん:今までは年配者の方対象のイベントが多く、特に若い世代の方が主体的に楽しむイベントが少なかったので、その点でも喜ばれているのではないかと思います。このエリアには若い方も多く住んでいらっしゃいますが、東京都心へ出かけてしまい地元への関心が薄いのですね。しかし、こうしたイベントへの参加を通して少しずつ地元への意識が育ってきているといいますか、興味を持つきっかけになる流れはできてきている気がします。

玉川大学の「ミツバチ巣箱の実験観測」
玉川大学の「ミツバチ巣箱の実験観測」

―イベントを通じた地域への想いをお聞かせください。

小島さん:やはり、新百合ヶ丘という街を好きになってもらい、「楽しい街だよ」という認識を定着させたいと考えています。マルシェ自体は開催当日のみのものではありますが、その後に「アフターフェス」というワインの試飲会や街歩きツアーといった企画も「しんゆりマルシェ」のイベントの一環の流れという形で行っていますので、いろいろと楽しめると思います。私たち実行委員会が携わる範囲はアフターフェスまでなのですが、マルシェ終了後には「kirara@アートしんゆり」という有名なイルミネーションの点灯が11月から2月までありますので、継続しての街のイベントを楽しんでいただきたいと思います。

新しさと伝統が共存する、これからの発展に期待できる街に

―上麻生エリアの魅力や、今後の課題とはどのようなところでしょうか?

小島さん:麻生区自体というのは古いエリアなので、駅周辺には有名な歴史あるお寺などもありますし、新しく生まれたイベントだけでなく、だるま市など伝統的なお祭りがあったりもします。近くには学校などもたくさんありますし、若い世代に十分に暮らしやすい街だと思います。

稲垣さん周辺にマンションなどが増えていることもあり、若い方々も定着してきていますが、街のインフラとしてはまだ十分ではない部分もあります。比較的新しい街なので、新しい人たちに住んでいただき、住んでいる方々が望むような魅力のある街にしていくことがこれからの課題だと思いますね。

学生をはじめ、若い出展者や参加者の姿も多い
学生をはじめ、若い出展者や参加者の姿も多い

―これから上麻生エリアに住む人にメッセージをお願いします。

小島さん:都会と田舎が入り混じっているような田園風景があるエリアで、住みやすい所だと思いますし、是非若い人たちにも来ていただきたいなと思います。

稲垣さん:都市性もある街だけれども一方で自然もあって豊かですし、昔ながらの伝統も生きた、魅力がある街だと思います。これからもその魅力を引き継ぎながら、発展させていきたいですね。

(有限会社ソフトウェアデザイン内)
しんゆりマルシェ
しんゆりマルシェ

しんゆりマルシェ実行委員会

稲垣 陽一さん(右)
(一般財団法人川崎新都心街づくり財団 専務理事)
小島 龍彦さん(左)
(新百合ヶ丘商店会 会長)
URL:http://shinyurimarche.jp/
※この情報は2016(平成28)年9月時点のものです。

アートと食で街を盛り上げる!まちづくりの試みを実践/しんゆりマルシェ実行委員会 稲垣 陽一さん・小島 龍彦さん
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