下町情緒が残るあたたかな地域に見守られ、伝統と先進を学びに取り入れる/深川第七中学校 校長 堀越勉先生
おだやかな雰囲気が漂う住宅地に囲まれた1959(昭和34)年創立の「江東区立深川第七中学校」。学校の敷地と地域とを隔てる校門を設けずに、地域の大人たちによって子どもたちを見守る、地域に開かれた学校運営も実現している。今回は2016(平成28)年4月から校長として着任した堀越勉先生を訪ね、学校の特色ある取り組みや、地域の魅力などについてお話を伺った。
地域のおだやかな雰囲気があらわれている中学校
――まず、「深川第七中学校」の概要、特色について教えてください
堀越校長:「江東区立深川第七中学校」は1959(昭和34)年の創立より57年目を迎える地域に根差した学校です。商業施設で賑わう「錦糸町」駅 から歩いて10分ほどの距離にも関わらず、首都高をくぐったあたりから街の雰囲気ががらりと変わり、おだやかな雰囲気の住宅地に囲まれています。
校舎に入るときにお気づきになったかと思いますが、本校には校門がありません。防犯上の対策として玄関に防犯カメラは設置していますが、このエリアは犯罪の発生件数も少なく地域の目が行き届いた安全な地域のため、珍しい現在の設計が採用されています。
生徒数は2016(平成28)年4月現在で239名となっており、各学年2、3クラスの小規模校です。今年は「江東区立毛利小学校」と「江東区立東川小学校」を卒業した計78名の新入生を迎え、26人×3クラス編成で運営しています。
学校の特色については、4月に着任したばかりなのでまだ把握しきれていない点も多いのですが、“落ち着いている”というのが第一印象です。学校周辺も昔ながらの商店街や古くからこの地域に住んでいる方も多く、地域の落ち着いた雰囲気がそのまま学校にもあらわれているようです。
全校生徒が句帳を持って取り組む“俳句教育”
――貴校ならではの、特色ある取り組みについても教えてください
堀越校長:本校ならではの取り組みのひとつに、全学年で取り組む“俳句教育”があります。内容としては、毎週火曜日の朝に俳句を詠む「朝俳句」や、全校生徒が句帳を持って3年間を通じて俳句創作を続けたり、ゲストティーチャーや本校の教員による「句会」も開いたりしています。
江東区には松尾芭蕉や現代俳句の祖とされる石田波郷が住んでいたという歴史的な背景もあり、俳句を言語力・表現力を高めるためのひとつの試みとして捉え、2011(平成23)年度には「江東区中学校俳句部」も設立されました。「深川第七中学校」はその拠点校としての役割を担っており、月に一度、第2土曜日になると区内の中学生およそ20名が集まります。指導者にはテレビで俳句の解説などを行うプロの俳人や詩人、研究者など専門家にお越しいただき、句会への参加や俳句甲子園などにも挑戦しています。
ほかにも、近くに「猿江神社」という神社があるのですが、運動会で“猿江音頭”というこの地域ならではの踊りを披露するのが恒例となっていて、毎年、地域の婦人会のみなさまから指導をいただいています。
また、こちらは学校の行事ではありませんが、真夜中の東京をひと晩中歩き続ける“ナイトウォーク”というイベントもあり、青少年の健全育成に携わる地域の方の協力をいただきながら「深川第七中学校」と「深川第四中学校」の2校が参加しています。「猿江恩賜公園」をスタート地点に、「東京スカイツリー」や「雷門」、「上野恩賜公園」などおよそ50kmをひと晩かけて歩き続けます。開催も今年で8回目を迎え、ほかでは味わえないその達成感と友だちや仲間と過ごす一夜は一生の思い出になると評判のようです。
「言語能力向上拠点校」としての取り組み
――東京都教育委員会が指定する「言語能力向上拠点校」の取り組みについても教えてください
堀越校長:「言語能力向上拠点校」とは、「古典文学の音読や暗唱、説明や討論等の言語活動を取り入れた授業の実施など、伝統的な言語文化の理解や、社会生活に役立つ言語の技能の育成を重視した具体的な取組を推進する」ことを目的に、東京都教育委員会の指定を受け研究に取り組む学校を指します。
本校は、2014(平成26)年度に拠点校としての指定を受け、「主体的に学び、考え、表現する生徒の育成~教科・領域における言語活動の充実を通して~」とテーマを掲げ、2年間の校内研究に取り組みました。内容としては、「教科」と「領域」とに分かれ、後者では「弁論大会」や「新聞・タウン誌作り」、先に述べた本校ならではの「俳句教育」もそこに盛り込まれています。
また特定の「教科」に絞らずに、課題の工夫や、生徒の考えを促すような問いの工夫、生徒の自由な発想や意見を述べる機会としての小グループでの話し合いなど、さまざまな取り組みが行われました。
「毛利小学校」「東川小学校」「深川第七中学校」の3校が連携して取り組む「ICT教育環境整備支援事業(推進校)」
――2016(平成28)年度より「ICT教育環境整備支援事業(推進校)」としての指定も受けましたが、どのような内容でしょうか?
堀越校長:「ICT教育環境整備支援事業(推進校)」としての指定を受けたことで、タブレットパソコンなどの導入が決まりました。また特徴的なのは、学区域にある「毛利小学校」、「東川小学校」と本校の3校が連携して取り組む新たな試みで、本年9月の機材搬入を前に地域をあげた取り組みとして具体的に検討を重ねています。
今後、学校のホームページも今年度内に全面リニューアルする予定もありますし、本校の新しい取り組みなどについては公式ホームページでも順次公開していきたいと考えています。
恵まれた環境で、強豪・卓球部をはじめ部活動も活発
――生徒たちの部活動への取り組みなどはいかがでしょうか?
堀越校長:運動部はソフトテニス部、サッカー部、卓球部、バレーボール部、バスケットボール部があり、どの部も普段の練習や大会など熱心に活動していますよ。本校の施設の特徴として、体育館が、1階の「小体育館」とそのうえの「大体育館」の2階建てになっています。ですので、各部が練習スペースを制限したりすることなく思い切り活動することができます。
特に本校の卓球部は伝統ある強豪部でして、江東区内でトップレベルで、関東大会などへの出場も常連です。部の担当教員はもちろんですが、全国レベルの技術をもった卒業生がコーチとして指導に来てくださるなど、生徒たちをサポートしてくれています。また、文化部では音楽部と演劇部があり、学内での発表やコンクールに出場するなど活発に取り組んでいますよ。
義理と人情とお節介の間柄で、古き良き時代のまちの良さを感じる
――住吉エリアの地域の魅力についてもお聞かせください
堀越校長:地域がおだやかで落ち着いていることは先ほどもお伝えしましたが、学校周辺は大通りに面していないため車通りも少なく、路地裏に昭和の面影を感じさせる町並みが残っているのが、この地域ならではの魅力だと想います。
また、地域の人も人間関係が良い意味で昔ながらと言いますか、義理と人情の間柄で、古き良き時代のまちの良さというのを感じます。地域の大人たちによる見守りや学校運営に対する協力的な姿勢にも感謝しています。
江東区立深川第七中学校
校長 堀越勉先生
所在地 :東京都江東区毛利1-14-1
TEL :03-3631-5990
URL:http://www.koto.ed.jp/fuka7-chu/
※この情報は2016(平成28)年4月時点のものです。
下町情緒が残るあたたかな地域に見守られ、伝統と先進を学びに取り入れる/深川第七中学校 校長 堀越勉先生
所在地:東京都江東区毛利1-14-1
電話番号:03-3631-5990
http://www.koto.ed.jp/fuka7-chu/