世田谷区立塚戸小学校 校長先生 インタビュー

地域と共に子ども達を育む創立141年目を迎える伝統校/世田谷区立塚戸小学校 校長 永山満義先生、学校運営委員 中島肖子さん


1875(明治8)年の創立より141年目を迎える歴史と伝統のある「世田谷区立塚戸小学校」。児童数 1,077名を数える世田谷区内でもっとも規模の大きい学校で、保護者・地域・学校が連携した“地域運営学校”としてさまざまな取り組みを実施しています。屋上の田んぼで行われる「稲作体験」をはじめ、「防災教育」にもつながる避難所体験「サバイバルキャンプ(1泊2日)」、炭火でパンを焼いて食べる「あそぼうパン」など、子ども達の興味関心を引く取り組みにも注目が集まっています。今回は「世田谷区立塚戸小学校」の校長として5年目を迎える永山満義先生と学校運営委員のひとりとして学校運営をサポートする中島肖子さんに、学校の歴史や特徴、地域運営学校としての取り組みなどについてお話を伺いました。

学校運営委員会と協力して進める地域に開かれた学校づくり

世田谷区立塚戸小学校
世田谷区立塚戸小学校

――まず、「塚戸小学校」の概要について教えてください。

永山校長:「世田谷区立塚戸小学校」は1875(明治8)年の創立より141年目を迎える歴史と伝統のある小学校です。2016(平成28)4月現在、児童数は30学級1,077名。世田谷区内でもっとも規模の大きい小学校となっています。

また、2009(平成21)年には“地域運営学校”としての指定を受け、校長を含む10名の学校運営委員を中心に、世田谷区の教育ビジョンとして掲げられている「地域と共に子どもを育む学校」を目指した取り組みも行っています。

――“地域運営学校”について教えて頂けますか。

永山校長
永山校長

永山校長:世田谷区では1997年(平成9)年に区内の小・中学校すべてに“学校協議会”を設置し、“開かれた学校づくり”を目指して地域と共に子どもを育てる教育を推進してきました。2016年(平成28)年4月現在、小学校63校、中学校29校の計92校すべてが“地域運営学校”としての指定を受け、保護者・地域・学校がひとつになってさまざまな取り組みを行っています。

“地域運営学校”には“学校運営委員会”が設置され、校長を含む10名が学校運営委員として選任されています。今日のインタビューに同席いただいた中島肖子さんも学校運営委員のひとりで、「地域のことなら私よりも中島さんに話を聞いた方がよく分かる!」と思い、相談したらかけつけてくれました。

学校運営委員の中村さんと永山校長
学校運営委員の中村さんと永山校長

学校運営委員会は学校の応援団と表現されることも多く、学校と地域、保護者とのあいだの情報交換を促してくれます。日々の学校の様子を地域や保護者の方にわかりやすく伝えるパイプ役です。月に1度の運営委員会は、年度ごとに校長が作成する学校経営方針の承認の場にもなっています。日々の学校の様子などを聞き、学校行事や授業等で何かお手伝いできることがあるかを考え、必要に応じて地域の方にお伝えして、力をお借りします。

校庭の様子
校庭の様子

授業のお手伝いとしては、例えば5年生の社会の授業の稲作体験では、地域の上祖師谷郷土研究会の皆さんの協力をいただき、5月の田植えに始まり、11月には稲刈り、脱穀の体験授業をコーディネイトしています。日頃の田んぼの管理も学校運営員で行っています。PTA主催のサバイバルキャンプという5・6年生の希望者を募る防災宿泊体験のお手伝いもします。地元の自治会、消防署を始めとした地域のあらゆる団体の100名以上の大人の協力をいただきます。消火器体験、担架訓練はじめ、さまざまな防災訓練とお楽しみとして怖い話しや学校探検も行っています。

このように、学校運営委員の役割は、学校の教育活動の充実にはなくてはならないものであり、学校運営委員会は現場の教師にとって“応援団でありコーディネーター”としてとても頼りになる存在です。

日々の教育にうるおいをもたらす“塚戸チャレンジ”

「稲作体験」を行う屋上の田んぼ
「稲作体験」を行う屋上の田んぼ

――“塚戸チャレンジ”について詳しく教えてください。

中島さん:学校運営委員主催で年間を通して塚戸チャレンジという行事も5~6回くらい開催しています。前述の稲作体験での藁を利用した藁細工体験始め、運動会前の走り方教室、また塚戸版逃走中というおもしろい取り組みもあります。黒いサングラスに黒いスーツをまとった「おやじの会」のハンターたちが子どもたちを追いかけます。運動能力の低下が指摘される子どもたちが、思いっきり走ったり、追っかけたりと楽しみながら体力向上ができる機会を提供したいと考えています。子どもたち、学校、地域を楽しく豊かに繋げていくのが役割です。

永山校長:私もサングラスをかけ、スーツ姿で参加しました。大人も子ども達と一緒になって楽しめるこの企画に、たいへん魅力を感じました。こういった地域行事は、国語や算数のような教科教育とはまた異なり、日々の教育にうるおいをもたらす貴重な取り組みだと感じています。

子ども達が主体的に学習するための工夫が必要

地域とともに子ども達を育む創立より141年目を迎える伝統校
地域とともに子ども達を育む創立より141年目を迎える伝統校

――授業への取り組み方について教えてください。

永山校長:2015(平成27)年度の校内研究として「意欲をもって主体的に学ぼうとする児童の育成~協働的な活動の指導の工夫~」をテーマに揚げました。これまで国語や社会など特定の教科に絞って研究に取り組んだこともあったのですが、子ども達が主体的に学習することの大切さをあらためて感じ、あえて特定の教科に絞らずにすべての教科に通じる研究課題としました。

廊下
廊下

教師は授業を通じて子ども達に指導します。しかし、勉強は学校だけでするものではありません。これだけ変化の激しい世の中では、つねに新しいことを学び続けなければなりません。いわゆる“生涯学習”です。そのためには、子ども達自身が自ら考えたり、進んで学んだりする力を身につけさせることや、児童の意欲関心を育てることが大切となってきます。その手立ての一つとして、地域教材を工夫したり、地域のゲストティーチャーに協力による“体験”を通じた学習の機会を設けたりすることが挙げられます。5年生の稲作体験もそのひとつです。

また、2年前には「自ら危険を予測し、回避する児童の育成」というテーマで“安全教育”にも取り組み、本校で全国安全教育研究大会を開催しました。北海道から沖縄まで、全国から約500名の方々が参加し、防災、防犯、交通安全等などについて研究を深めました。その時にも、地域の方々や後で述べるTAPの方々のご協力をいただきました。

“地域がしっかりしている”のが何よりの魅力

学校周辺の落ち着いた環境
学校周辺の落ち着いた環境

――学校周辺の地域の魅力についてお聞かせください。

永山校長:私は「世田谷区立塚戸小学校」の校長と「塚戸幼稚園」の園長を兼任していますが、どちらの保護者の方も小学校や幼稚園にたいへん協力的です。地域の連携力も強く、ご近所同士のつながりも深く、ひと昔前の東京の良さを引き継いでいるような地域です。

学校の周りは大型マンションや住宅が多く、とても閑静です。また近くには「世田谷区立千歳中学校」「都立芦花高等学校」や保育園があり、“文教地区”と呼ぶのにも相応しい落ち着いた地域です。

学校運営委員 中島肖子さん
学校運営委員 中島肖子さん

中島さん:学校の周りの住宅地には小さな公園がいくつもあり、放課後や休日などには子ども達のいこいの場所となっています。習い事や買い物など「千歳烏山」や、「千歳船橋」、「祖師ヶ谷大蔵」「成城学園前」方面を利用する場合もあり、生活圏は広範囲にわたっています。

また、世田谷区ではすべての区立小学校で「BOP(ボップ):Base Of Playing」という放課後の遊び場が設けられているため、校内で安全に過ごすこともできますので、親として安心です。さらに2007(平成19)年には塚戸安全パトロール隊(TAP)が発足し、現在20代から80代までの90名程の地域の方々が子どもたちの見守り活動をしてくれています。登下校や放課後の見守りを始め、学校授業のボランティアなど「できるときに・できるひとが・できる範囲で」をモットーに緩やかに関わってくれています。保護者でもない、先生でもない、そんな地域の大人の存在は子どもたちにとってとても大切です。揃いの青いジャンパーを来たTAPのメンバーが「おはよう」と声をかけます。自然な挨拶が生まれています。時には、悩み事を相談したりする場面も見られます。

コミュニケーション能力が育まれる大規模校ならではの良さ

校庭の桜
校庭の桜

――最後に、これから「世田谷区立塚戸小学校」へ入学を検討しているご家族にメッセージをお願いします。

永山校長:本校は1,000人を超える大規模校です。だから何をやるにも迫力があります。特に秋に実施される運動会は、昭和時代を思わせるような熱気と興奮に包まれます。人数が多いので。子ども達はお互いに切磋琢磨しながら学び合ったり良さを認め合ったりしています。異学年の交流も盛んで、高学年は低学年を優しく見守り、低学年は高学年を頼っています。隣接する併設幼稚園との交流や、学期始めの集団登校など、年齢を超えたコミュニケーション能力の育成にも力を入れています。

子どもの人数が多いということは、教職員の数も多いということです。本校は「すべての教職員ですべての子どもたちを育てる」という経営方針のもとで、たくさんの目で子ども達の豊かな人間性を育てています。まさに、温かい保護者や地域に見守られながら子ども達一人一人が伸び伸びと育っていくことのできる「大規模だけどアットホーム」な学校です。

世田谷区立塚戸小学校

校長 永山満義先生
学校運営委員 中島肖子さん
所在地 :東京都世田谷区千歳台6−7−1
TEL :03-3300-5166
URL:http://www.setagaya.ed.jp/tsudo/
※この情報は2016(平成28)年4月時点のものです。

地域と共に子ども達を育む創立141年目を迎える伝統校/世田谷区立塚戸小学校 校長 永山満義先生、学校運営委員 中島肖子さん
所在地:東京都世田谷区千歳台6-7-1 
電話番号:03-3300-5166
http://school.setagaya.ed.jp/tsudo/