世界に通じる次世代リーダーの育成に取り組む/神奈川県立横浜翠嵐高等学校 佐藤到校長


「横浜」駅の北、小高い丘の上の住宅街にある「神奈川県立横浜翠嵐高等学校」は、学力向上進学重点校に指定され、世界に通用する人材を育てている。予備校に行かなくてもいい、学校だけで完結する進路指導が行われ、神奈川県中から多くの学生が受験する人気の進学校だ。そんな「神奈川県立横浜翠嵐高等学校」について佐藤到校長先生にお話を伺った。

戦後とともに歩み、受け継がれる教訓

校門
校門

100年前というと1913(大正2)年。その年に学校の設置が決まり、翌年の1914(大正3)年に開校しました。当時は「県立第二横浜中学校」という名前でしたが、それから校名が2回変わり、現在の「神奈川県立横浜翠嵐高等学校」になったのは1950(昭和25)年4月のことです。戦後とともに歩んできた学校ということになります。定時制が設置されたのは1964(昭和39)年で、2014(平成26)年に、ちょうど50年を迎えました。

初代校長 滝沢又市先生
初代校長 滝沢又市先生

「翠嵐」という言葉は、樹木の青々とした様を表す漢語であり、それが本校の「翠嵐」を示す語源となっています。初代校長の滝沢又市先生は「平凡主義」という教育方針をずっと掲げており、それが今に語り継がれ、上に大をつけて「大平凡主義」という校訓が脈々と息づいています。当たり前のことを当たり前にできる人間に育てたいというのが滝沢先生のお考えでした。そして今の時代、「翠嵐生の当たり前とは何か」を考えさせています。「当たり前」のレベルをいかに高めていけるか、私がいつも生徒に話していることです。この学校は自由な校風で、自主自立を掲げていますが、その背景にあるのは「平凡主義」という方針です。

文武両道に通ずる環境づくり

バドミントン部 練習風景
バドミントン部 練習風景

本校の全日制に通う生徒は、勉強と部活を両立させることから、平日は1日、土日はどちらか1日を活動休止にしていますが、部活の加入率は90%を超え、とても活発に活動しています。定時制は「全国高等学校定時制通信制体育大会」という全国大会があり、バスケットは神奈川県大会で優勝、バレーボールも全国大会に出場し、バドミントンは神奈川県の選抜チームの中に、本校の生徒が1人メンバーに入っており、全国で準優勝という快挙を成し遂げています。陸上も個人で全国6位と実績があります。

キーワードは「グローバル人材」

赤本
赤本

「学力向上進学重点校」は2007(平成19)年から始まりました。県内では18校が指定されており、その中でもアドバンス校というのは18校をけん引する役目ということで、本校と「神奈川県立湘南高等学校」の2校が指定されています。

個別学習ブース
個別学習ブース

取り組みの目的は、学問をとおして人間的な成長や、国際社会で生き抜いていく力をつけていくということです。その道を究めるにはまだまだ甘いかもしれませんが、その過程で多くのことを学んでいます。 具体的には、校内に自習室を完備し、一人ひとりの個人ブースを2教室で約60台整備し、自学自習を推進しています。朝7時から夜7時まで開いています。近年予備校に通う学生も多いですが、本校では、予備校にあるものは既に学校にあるという考えのもと、予備校に行かなくていい進路指導を行っています。土曜日は休みですが、土曜講習を行っています。毎週ではないですが、自由参加で90%以上の生徒が参加しています。授業については95分授業を基本としていて、求められている知識だけでなく、思考力や判断力をつけさせるような授業を取り入れています。また、外部模試を導入し、分析も学校で行っています。教員が分析でき、一人ひとりに応じた進路指導を行っているので、予備校に行かなくてもしっかり力をつけることができます。

教室風景
教室風景

ただ進学実績を出すことだけが、本校の目的ではありません。キーワードは「グローバル人材・次世代リーダー」を育てていくことです。国際社会全体で考えて解決していかなければいけない問題が年々増えていますよね。そういう時に物怖じせずに自分の考えを自分の言葉で相手に伝えられるような人間を育てたいと考えています。国際交流という点については、アメリカのメリーランド州の学校と姉妹校交流を提携しており、相互交流を1989(平成元)年から続けています。英語が得意な生徒ばかりが行くのではなく、全生徒が派遣選考の対象です。できなくても、失敗しても構わない。要は自分の考えをしっかり持って、アメリカ人と世界平和について議論するなど、そのような人間を育てたいのです。また本校の近くには「神奈川朝鮮中高級学校」があり、翠翔祭(文化祭)では民族衣装で踊りを披露してくれるなど、交流を深めています。

地域に開けた翠翔祭

生徒会室の様子
生徒会室の様子

本校特有の行事はありませんが、体育祭や文化祭(翠翔祭)には力を入れています。体育祭は土曜日に開催するので、卒業生や保護者の方も見に来られます。文化祭も地域の方にも開放していて、2015(平成27)年は2日間で7,500人の方が来校されました。文化祭は、文化系の部活動の発表やクラスや有志団体による企画(模擬店、ゲーム、劇など)で大いに盛りあがり、体育祭は誕生月で分かれた赤、白、黄、緑の4つの組が、騎馬戦や棒倒しなどの各種競技、応援、ダンス、パネルで競い合います。

礼儀正しく、のびのび育つ生徒へ

廊下
廊下

神奈川県は学区がないので、本校は平塚や川崎、相模原の方から通う生徒もいます。「横浜」駅から歩いてくる生徒、ブルーラインやバスに乗ってくる生徒など多方面から通ってきますね。印象については、おかげさまで地域の皆さんからの評判はよく、あいさつやマナーは好評をいただいています。礼儀正しく、勉強や部活動をともに頑張る文武両道の生徒が多いですね。

地域に貢献できる学校に

住宅街風景
住宅街風景

「横浜」駅からこれだけ近いにもかかわらず、高台で緑が多く、落ち着いた静かな環境です。子育てや教育環境にはとても適している地域だと思いますね。住んでいる方々が非常にあたたかく、先日、正門の前に営業の車が止められて、バスが通れなくなってしまったところ、近所の方がナンバーを控えてくださり、営業の会社に連絡をしてくれました。そうした地域全体でこの街を作っていこう、守っていこうという方が多いように思います。昔は学区があったため、この地域には本校出身者の方がたくさんいらっしゃいます。地域の方は本校に対して、とても愛着を持ってくれており、学区がなくなった今でも温かく見守ってくださっています。

小学校と連携して取り組む「地域貢献デー」

学生と校舎
学生と校舎

これは神奈川県の取り組みですが、年に1回「地域貢献デー」を設けて、地域のために生徒が活動をすることになっています。坂を下りると「横浜市立三ツ沢小学校」がありますが、町内会も含めて合同で毎年地域清掃を行っています。

「翠嵐」にふさわしい環境

青々とした樹木
青々とした樹木

まさに「翠嵐」という名前の由来です。樹木の青々とした様子をたたえる言葉「翠嵐」にふさわしい場所だと思います。近所に「三ツ沢公園」があり、また横浜F・マリノスのホームグラウンドでもあって、本当にいいところです。

校長
校長

神奈川県立横浜翠嵐高等学校

佐藤 到 校長
神奈川県横浜市神奈川区三ツ沢南町1-1
045-311-4621
http://www.yokohamasuiran-h.pen-kanagawa.ed.jp/zen/zen.html
※この情報は2015(平成27)年9月時点のものです。

世界に通じる次世代リーダーの育成に取り組む/神奈川県立横浜翠嵐高等学校 佐藤到校長
所在地:神奈川県横浜市神奈川区三ツ沢南町1-1 
電話番号:045-311-4621
https://www.pen-kanagawa.ed.jp/yokohamas..