豊かな街の資源と独自の保育メソッドを活かす/ココファン・ナーサリー国領 矢原尚美園長先生


甲州街道の宿場町として江戸時代から栄えてきた国領エリア。昔ながらの商店街も残しつつ、駅前は再開発によってスーパーマーケットや行政窓口などが揃う便利な街へと生まれ変わった。その国領に開園して3年目、一歩ずつ地域に溶け込んでいる「ココファン・ナーサリー 国領」は、子どもたちの本来持っている力を生かす取り組みで、のびのび・すくすくと子どもたちが育っている。今回は園長の矢原先生に、日々の生活や取り組みについてお聞きした。

ココファン・ナーサリー 国領
ココファン・ナーサリー 国領

――園の概要を教えてください。

矢原先生:本園は2015(平成27)年4月に開園し、「ココファン・ナーサリー」のなかでも比較的新しい保育園です。現在は70名ほどの子どもたちが毎日元気に通っています。「子どもの養護と教育を両輪とした、子ども主体の心と体の育ちの支援」「子ども一人ひとりの認知・発達に応じた個別の発達支援」「地域社会すべての子育て家庭に対する様々な取り組みによる育児支援」を基本的な保育方針とし、先生たちは保育計画を年間・月間・週間とそれぞれのレベルで細かく立て、毎日の保育に取り組んでいます。

園長の矢原尚美先生
園長の矢原尚美先生

――園の1日の流れを教えてください。

矢原先生:園は朝7時から開いています。まずは1階の1歳児クラスの部屋で自由あそびをします。8時過ぎから準備各クラスに分かれ、9時からは朝の会、0~2歳児は軽くおやつを食べてから外遊び、室内遊び、クラス活動の時間になります。0歳児は一人ひとりの生活リズムに合わせて活動し、無理にスケジュールを組まないようにしています。

1~5歳児は遊びから帰ってきたら食事、オムツ替えやトイレ、着替えてお昼寝になります。お昼寝から起きたらおやつを食べて、その後降園時間まで自由遊びです。基本的に18時までのお預かりですが、ご希望があれば20時まで延長保育も行なっています。その場合は18時15分頃に補食や夕食を出しています。

園内の様子
園内の様子

――外遊びはどんなところへ行くのですか?

矢原先生:この辺りは公園がとても多く、特に近隣の多摩川住宅の中に「お山公園」「恐竜公園」「汽車公園」と子どもたちが愛称をつけて親しんでいる公園が点在しているので、天気がよければほぼ毎日遊びに出かけています。また4~5歳児になると少し長めの距離も歩けるようになりますので、大きなアスレチックが大人気の「前原公園」にもよく行きます。先日は子どもから「新しい公園ができたよ!」という報告を受け、まずは先生方と視察に行って安全性などの条件面も大丈夫だったので「緑の丘児童公園」をレパートリーに加えました。今でも数や種類はたくさんあるのですが、新しい公園を開拓したいと先生方と常にアンテナを張っています。

春の遠足の様子
春の遠足の様子

――毎日先生方がブログをアップされていると聞きました。

矢原先生:各クラス担任が午前の遊びの様子を写真に撮り、クラスごとに毎日発信しています。普段の園での様子が少しでも保護者の方々に伝わるといいなと思い、日々頑張ってもらっています。給食室のブログもあって、ご飯やおやつの写真、給食のメニューなども発信しています。

基本的にお昼寝の間にブログアップの作業は行うのですが、時々「お昼寝の間、先生方は何をしているんですか?」という質問を受けるので、少しご紹介すると……まずお昼寝の間は子どもの呼吸チェック(SIDSチェック)を、0歳児は5分おき、1~2歳児は10分おき、3~5歳は15分おきに実施しています。あとは子どもたちの様子を保護者の方に伝える連絡帳の記入や保育計画表の作成など、この時間を有効利用して事務作業などをしています。

園内の様子
園内の様子

――ココファン・ナーサリーとしての特徴はどんな部分ですか?

矢原先生:学研グループの保育園ですので、文字・数・知恵のオリジナルワークに週1回、子どもたちに無理のない範囲で取り組んでいます。「小学校入学前に名前が書けるようになる」など大きな目標もありますが、「きちんと座って話を聞けるようになる」という基本的な姿勢を身につけることを中心にしています。

学研独自の保育メソッド「学研アプローチ」に、「興味のあるときに興味のあるものを教えることが子どもの持つ力を最大限に伸ばす」、という考え方があります。教える側の人間が「○○歳になったから」「早く教えた方が有利だから」といった理由で、子どもの興味がないうちに教えようとしても徒労に終わることが多いんです。ですから担任はクラスの様子を見ながら、興味がわく時期を待ち、適した時期にスタートさせるようにしています。

園の先生による読み聞かせの様子
園の先生による読み聞かせの様子

――国領園ならではの取り組みがあれば教えてください。

矢原先生:月に1回、「花育」と称して生け花の先生をお呼びし、花に親しむ時間をつくっています。2歳は一輪挿し程度、3歳はメインのお花とかすみ草程度、4歳ではもう少し花材を増やし、5歳では大人とほとんど変わらない花材を使用します。年長さんになるとお花の選定や切り方から花を回して顔を探す姿など、生け花の基本的なことは習得していると感じます。卒園記念では陶芸教室へ行き、自分で花器をつくり、そこに花を生けるのですが、大人顔負けの立派で美しい作品を完成させます。四季折々の花に触れられますし、花の種類も覚え、生け花を中心に親子の会話が広がっているようです。

また、花育の先生のアドバイスで2Lのペットボトルを切った簡易植木鉢で朝顔も育てはじめました。花に興味を持つ子どもが増えたこともあり、種から育てる挑戦もしています。こういった日々の取り組みは、各園に任されているので、先生方と相談して子どもの興味が向くものを選び、伸ばしていきたいと思っています。

子どもたちの作品
子どもたちの作品

――食育の時間にも力を入れていらっしゃると聞きました。

矢原先生:給食室にいる栄養士が国領で生まれ育った人で、農家の方を紹介してもらって、田植えや収穫などの体験をさせてもらっています。田植えは先日終わったのですが、子どもたちは元気に泥んこになりながら楽しんでいました。園の周辺には田んぼはあまりなく、貴重な体験となりました。秋の収穫も楽しみです。

また、月1回行われている「食育」の時間も大切にしていて、小さい子たちはキャベツを手でちぎったり、クレープやクッキーなどの簡単なお菓子をつくったり、大きな子たちは栄養のお話を聞いたり、先日はスズキの解体を見せたりしました。泳いでいる魚と食べている魚がまだ結びつかない子どもが多いなか、「命をいただいて自分たちは生きているんだ」という感謝の気持ちが少しでも生まれればと思い、実施した活動でした。栄養士から、いただきますの意味や食べる・食べられる関係の話をしてもらい、子どもたちには少し難しいかなと思いましたが、真剣に話を聞き、何か感じていたようです。

食育にも力を入れている
食育にも力を入れている

――近隣の福祉施設訪問など、多世代交流にも積極的ですね。

矢原先生:学研グループはもともと「ココファン」というサービス付き高齢者向け住宅を設立し、その後保育事業として「ココファン・ナーサリー」を立ち上げたので、子どもと高齢者の交流には積極的なんです。同じ建物内に高齢者向け住宅、保育園、病院、住宅などが集まり、多世代が交流しながら生活できる複合拠点にも取り組んでいます。この近くにはたまたま「ココファン」がなかったので、近所にある福祉施設に直接お願いしに行き、訪問させてもらっています。今では子どもたちの訪問を楽しみにしてくださっている方も増え、徐々に交流の輪が広がっています。

園内の様子
園内の様子

――調布市は地域、行政、園のつながりが強いエリアだと感じていらっしゃるとか?

矢原先生:はい。調布市では毎月、「民間施設長会」という市内の私立保育園の園長会が開かれています。地域ごとに分科会もあり、小さなグループになって近隣の園長先生たちと話し合う時間も設けられています。そこでは先輩園長先生たちの話が聞けたり、悩み事が相談できたりと、普段はなかなかない、貴重な機会をいただいたいます。

そのお陰で、私と市役所担当者、調布市、近隣保育園、この全てが日頃からつながり、何か起きてもすぐに相談できる環境とスピーディに物事が進む人間関係も整っているともいえます。人間同士、顔を合わせて話す以上のベストなコミュニケーションはありませんし、特に「保育」という迅速で適切な判断が求められる現場で、この仕組みは実に心強いです。

園内の様子
園内の様子

――今後、園として取り組みたいことなどはありますか?

矢原先生:開園3周年を迎え、これまでも少しずつ自分たちらしさを育ててきましたが、今年度は近隣の子育て家庭のサポートなど、「地域の子育て支援」に力を入れていきたいと思っています。具体的には、夏に外部から講師の先生をお呼びして子育て講座を開き、在園児のみならず地域の子どもたちとその保護者にも園に足を運んでもらいたいと思っています。

――国領の街の魅力を教えてください。

矢原先生:駅前に生活のために必要なものが全て揃う環境で、暮らしやすいと思います。それなのに静かで治安がよくて、とにかく住んでいる人たちが温かいです。花育のためのお花の買い物に子どもたちと行く際も、消防署の方たちもみなさんよく声をかけてくださって有難いです。先ほどもお話しましたが公園も緑も多いので、子育てしやすい環境だと思います。

園長先生
園長先生

ココファン・ナーサリー国領

園長 矢原尚美先生
所在地:東京都調布市国領町7-17-3
電話番号:042-490-3230
URL:http://nursery.cocofump.co.jp/nursery_school/kokuryou/
※この情報は2017(平成29)年6月時点のものです。

豊かな街の資源と独自の保育メソッドを活かす/ココファン・ナーサリー国領 矢原尚美園長先生
所在地:東京都調布市国領町7-17-3 
電話番号:042-490-3230
http://nursery.cocofump.co.jp/nursery_sc..