環境に配慮した「エコスクール」で、主体性と学び合いを育てる/杉並区立荻窪小学校(東京都)
五日市街道と青梅街道に囲まれた杉並区宮前の閑静な邸宅街。そのなかに位置する「杉並区立荻窪小学校」は、地域の要請を受け、およそ70年前に誕生した学校だ。学んでいる子どもたちは、現在700名以上。杉並区の中でも大規模な小学校のひとつである。
今回はそんな「杉並区立荻窪小学校」の教育理念や、「エコスクール」として取り組む特色ある活動などについて、2017(平成29)年から校長を務める西脇裕高先生にお話を伺った。
2021(令和3)年に創立70周年を迎えた「荻窪小学校」
――貴校は2021(令和3)年で創立70周年を迎えられたそうですね。今日までの沿革をご紹介いただけますでしょうか。
西脇校長先生:おっしゃる通り、本校は1951(昭和26)年に開校し、昨年度で70周年を迎えました。創立にあたっては、当時周辺の子どもの数が増えて、もともと近隣にあった小学校がいっぱいになってしまったため、地域の方から「この辺りに新しい小学校を作ってほしい」という声が挙がり、民間の土地を提供していただいて建てられたということです。
以前は現在の校地の北西、現在の「大宮体育館」の場所に校舎がありましたが、前の校地は校庭をあまり広くとれず、児童数もさらに増えて手狭になってきたことから、2009(平成21)年に現校地に移転新設してきました。
――移転後の新しい校舎は、環境に配慮されている特徴的な建物だと聞きました。
西脇校長先生:はい、大変環境のことを考えた設計になっており、「エコシステムの校舎」と呼んでいます。設計段階から日本建築学会の方や環境の専門家に入っていただいて、「いかに環境にやさしい校舎にするか」ということを真剣に考え、非常に手間とコストをかけて造られた自慢の校舎です。
また、この新校舎になってからは、校舎の造りだけでなく学校自体の方針としても環境教育に力を入れた「エコスクール」を掲げ取り組んでおり、現在に至るまで、本校の大きな特色の一つになっています。
エコシステムを備えた校舎や、「荻小環境学習プログラム」が環境意識を育む
――「エコスクール」としての校舎の特色、環境教育の内容をお聞かせいただけますでしょうか。
西脇校長先生:まずは本校舎の「エコシステム」のついて紹介します。たとえば、近年の気候変化もあり、今ではさすがにエアコンが各教室に設置されていますが、本校舎が建った10年以上前はそうではなかったため、学校の地下に大きな空間を設けて、地下の冷えた空気を全館に循環させるという形で、自然の涼しさを取り入れながら夏を快適に過ごせるようにしていました。こちらは「クールヒートトレンチ」という仕組みですが、地下にこれほどの設備がある小学校はほかに無いのではと思います。
また、ベランダが広くとられている点も特徴的です。このベランダの「ひさし」の部分がかなり大きく作られていて、夏の上からくる日光は遮り、冬の横からくる光を取り入れるという仕組みになっています。昔の「かやぶき屋根」のような考え方ですね。これによって教室の中に夏の直射日光が当たることもなく、隠れた「エコ」になっています。
ほかにも、体育館の屋根や壁が緑化されていたり、校舎のいたるところで奥多摩産の木材を使用していたり、雨水を集めてトイレや散水用の水に利用していたりと、さまざまな点で“自然にやさしい校舎”となっています。
―校舎自体が環境教育の題材にもなっているわけですね。
西脇校長先生:そうですね。ですから本校は移転時から特に環境学習に力を入れていて、「荻小環境学習プログラム」というものを独自に行っています。この中では、各学年で外部のゲストティーチャーを招いてお話を聞いたり、この校舎自体を生かして環境を学んだり、いろいろな取り組みをしています。
たとえば、高学年は「杉並区小中学生環境サミット」という環境学習の成果発表やディスカッションの場に毎年参加しているのですが、そこに参加した児童が「私はずっと、環境のことを考えるのは当たり前のことだと思っていた。」なんて話をしている場面を見ると、きっと環境保全や環境への配慮を身近にしているこの校舎のおかげだな、と感じたりしますね。
子どもたちが主体的に「問いをもち、考え、話し合う授業」で「美しい心」を育てる
――続いて、貴校の教育目標についてもお聞かせいただけますでしょうか。
西脇校長先生:本校の教育目標は「美しい心の子ども、深く考える子ども、たくましく生きる子ども」です。この3つの中でも「美しい心を育てる」は目標として最も大切にしています。幸い、現在の本校の子どもたち同士がすごく良い関係にあり、どの学年・学級も非常に落ち着いていると感じますが、普段の授業でも、休み時間や課外授業の中でも、この「美しい心」という言葉は常に意識をしています。
たとえば本校では、「主体的に学ぶ」ということについて校内研究のテーマにもしており、全教科で取り組んでいます。これが結果として、「心を大切にする教育」ということにもつながると思っています。
具体的には、「問いをもち、考え、話し合う授業」という言葉を授業のキーフレーズにしており、子どもたちが各々に“はてな”をもち、それについて自分自身で考え、調べ、友達と話し合い、時にはグループを作って取り組んだりして、お互いに「学びあう」ことをしよう、というものですね。そしてこの「学びあう」ということは、同時に、「お互いのことをわかりあう」ことでもあるわけです。授業を通じて、子どもたち同士がひとりひとりの考え・意見を尊重し理解しようとすることは、「美しい心がつながっていく」という循環を生んでいくと思います。
――校長先生から見て、「荻窪小学校」の子どもたちの印象はいかがですか?
西脇校長先生:一言で言うと“賢い”子が多い印象です。やはり地域が落ち着いていて、教育熱心なご家庭も多く、学ぶことに対して前向きな姿勢があるのだろう、と思います。だからこそ、子ども同士が「学びあう」となった時に、ちゃんと学びに向かうことができ、学習面でもいい循環が生むことができるのではないでしょうか。
地域の方々に学び、近接する「宮前中学校」との交流も
――周辺地域との交流についてご紹介いただけますでしょうか。
西脇校長先生:地域との交流に関しては、ここ数年はコロナでいろいろと制限があった時期も長かったのですが、その間にも、ゲストティーチャーという形で地域の方をお招きして学習をするということは継続してきました。
特に環境学習に関する部分では、本校の向かい側にある「宮前公園」で、季節ごとの公園内の自然について、2年生が地域の環境ボランティアの方に教えていただいています。また、この環境ボランティアの方には、本校の「環境委員会」が行っている堆肥づくりや校内のビオトープの整備などにもご協力をいただいています。
――地域のお祭りが小学校で開催されていると聞きました。
西脇校長先生:近くの児童館主催の「あきまつり」が本校の校庭を使って開かれます。本校の子どもたちも、地域の保育園も、町会の方や子育て関係のボランティアの方々も参加する地域の行事で、保育園の子たちがお神輿で参加してくれたりととても盛り上がりますよ。
――学区内の小中連携の取り組みなどはいかがでしょう?
西脇校長先生:本校はすぐ近くの「杉並区立宮前中学校」との連携になりますが、6年生が中学校の授業体験をさせてもらったり、クラブ紹介を聞くという活動はずっと継続しています。また「宮前中学校」は合唱祭が盛大で、そこで金賞をとった子どもたちが本校に来てくれて、高学年の子たちに合唱を聞かせてくれるという交流もしています。中学生のこうした姿を見て、「すごいな」とか「かっこいいな」と感じてくれているようで、いい影響が出ているなと思っています。
街も、人も、落ち着いた環境が魅力の杉並区宮前
――校長先生から見て、杉並区宮前の環境はどのような魅力があると思いますか?
西脇校長生:子育てや教育という視点からだと、まずはこの街の雰囲気が魅力のひとつですね。ここは地域的には昔からの戸建ての家が多い住宅地で、集合住宅にしても閑静で、住んでいる方々がほんとうに落ち着いて暮らしているので、子どもたちも落ち着いて生活できる環境だと思っています。
それから地域にお住まいの「人」も魅力ですよね。穏やかな方が多いですし、いろんな分野でご活躍の、専門性の高い方、見識の高い方が多いようにも思います。コミュニティスクールの会合で集まっていただいた時などは、すごくそのように感じますね。これも子どもたちに良い影響を与えていると思います。
また、生活する環境としては、体育館や図書館などの公共施設も近くにありますし、一方で「春日神社」という歴史のある神社もあり、便利で文化的なものもある点が、住み心地がいいのではと思います。それから、「荻窪」駅からこの地域へのバスの本数はすごく多く、公共交通はけっこう使いやすいと思います。特に朝夕は多いので、時刻表を気にしなくても大丈夫です。
自分がもしこれから子育てをするのなら、この街を選びたいなと思うほど、良い地域だと思いますよ。
杉並区立荻窪小学校
西脇裕高 校長先生
所在地:東京都杉並区宮前2-13-18
電話番号:03-3333-6628
URL:https://www.suginami-school.ed.jp/ogikuboshou/
※この情報は2022(令和4)年12月時点のものです。
環境に配慮した「エコスクール」で、主体性と学び合いを育てる/杉並区立荻窪小学校(東京都)
所在地:東京都杉並区宮前2-13-18
電話番号:03-3333-6628
http://www.suginami-school.ed.jp/ogikubo..