道徳教育への取り組みを通して育まれる子どもたちの自己肯定感/大田区立馬込小学校 校長 田村浩一先生
1878(明治11)年の開校より137年を迎える歴史と伝統のある「大田区立馬込小学校」。「大田区教育委員会教育研究推進校」として特別活動・道徳教育に取り組み、“褒めて、伸ばす”子どもたちの自己肯定感を育む働きかけが、児童も保護者も地域も教職員もみんなが“大好きな学校”と呼べる校風を生み出しているようです。今回は2015(平成27)年4月に校長として着任した田村浩一先生に「大田区立馬込小学校」の特色と地域の魅力についてお話を伺いました。
歴史と伝統を受け継ぐ小学校
――貴校の概要、教育方針について教えてください。
田村校長:「大田区立馬込小学校」は、1878(明治11)年の開校より137年を迎える歴史と伝統のある学校です。児童数は2015(平成27)年4月に新入生98名を迎え、各学年2~3クラスの全17学級545名です。
2015(平成27)年度の教育方針については当校のHPでもご覧いただけますが、「児童も保護者も地域も教職員もみんなが“大好きな学校”を目指す」ことを学校経営の基本テーマとして掲げ、「健康な子ども」、「心の豊かな子ども」、「考える子ども」の3つを教育目標とし、なかでも「心の豊かな子ども」を重点目標としています。
子どもの自己肯定感を育む特別活動・道徳教育への取り組み
――大田区教育委員会教育研究推進校の指定を受けているそうですね。
田村校長:「大田区立馬込小学校」では「大田区教育委員会教育研究推進校」として平成26年、27年と2年間にわたり、「自信をはぐくむ あたたかな学校」を主題に掲げ、主に特別活動と道徳教育を通じた研究に取り組んでいます。
つい先日、研究発表を終えたばかりですが、子どもたちに根付いた“思いやり”の心が普段の生活にも随所にあらわれているように感じられます。当校では“たてわり班”による特別活動も積極的に取り入れているのですが、高学年のお兄さん、お姉さんが低学年の子どもたちの面倒をみることは日常的に行われていることですし、男女が協力して物事に取り組む光景もよく見られ、2年間の取り組みが今まさに良い流れとなってあらわれているようです。
特別活動や道徳教育に取り組むようになった経緯としては、授業中に自信をもって発言できなかったり、モジモジして手を挙げられなかったりという光景がたびたび見受けられたため、子どもたちの自尊感情や自己肯定感、自己有用感を育むことの必要性を感じたということがあります。そこで、学級会などで皆が意見の言いやすい環境をつくり上げる特別活動を行うようになりました。
「大田区教育委員会教育研究推進校」の指定を受ける2年ほど前から“褒めて、育てよう”という自己肯定感を育む働きかけは行われていましたが、「自分がみんなの役に立っているんだ」とか「こういったことができるんだ」という実感を得られることで、結果的に普段の授業へも積極的に取り組むようになり、学力の向上にも結びついているようです。
体力作りや、基礎学力の向上を目指す取り組み
――特色ある取り組みについて教えてください。
田村校長:「大田区立馬込小学校」ならではの取り組みとしては、始業前の8時15分から行う「馬込小マラソンタイム」や、8時30分からの「読書タイム」、「国語タイム」、「算数タイム」と朝時間をフルに活用していることがあげられます。
当校では朝の集会がある日を除き、週3回8時15分から「馬込小マラソンタイム」を実施しています。ラジオ体操からはじまり、全学年の子どもたちが一緒になって3分間校庭を走るのですが、健康的な心身を養う体力づくりに役立っています。
また体力づくりという点では“5種目チャレンジ検定”も代々続く取り組みで、「竹馬(鉄馬)」、「一輪車」、「鉄棒」、「登り棒」、「うんてい」の5種目にそれぞれ合格基準を設け、5種目すべてをクリアすると賞状の授与が行われます。さらに検定の合格者にはより高い基準を設けた「特別表彰」検定もあり、子どもたちの意欲を高めながら体力づくりを推進しています。
――学習面で独自の取り組みはありますか。
田村校長:大田区のステップ学習ドリルに加え、東京都教育委員会が作成した「東京ベーシックドリル」も取り入れています。全問正解しないと次のステップへと進めない仕組みになっており、子どもたちも意欲をもって取り組んでいます。他にも、本校独自の取り組みとしては、算数が苦手な児童を対象に、放課後の時間を使って、教員がついて丁寧に補習を行う「算数パワーアップタイム」という取り組みもあります。
また、2013(平成25)年に整備された屋上の芝生広場では、ビオトープでの自然観察学習や、馬込特産の“半白キュウリ”を栽培、収穫し学習に生かすなど幅広く活用されています。常に開放されているため子どもたちにとっての憩いの場にもなっているようで、区内でも珍しい恵まれた環境だと思います。
歴史と伝統により培われてきた誇るべき学校の取り組みを生かしつつ、子どもの自己肯定感を育むあたらしい取り組みにチャレンジすることで、より良い学校づくりを進めていきたいと思います。
“人”の良さを感じられる街に支えられて
――馬込エリアの魅力について教えてください。
田村校長:これまで大田区内をはじめ江東区や八丈島の学校でも学校運営を通して多くの子どもたち、また保護者の方々と接してきましたが、この4月に着任して感じたのは「大田区立馬込小学校」にはおだやかな性格の子どもが多いなということでした。
また保護者や地域の方々も教育に関心が高く学校運営にも協力的ですし、地域とともに歩んできた歴史と伝統のある学校ならではの気風に魅力を感じました。私自身も池上本門寺のあたりに20年ほど住んでいますが、“人”の良さを感じられる素晴らしい地域だと思います。
学校と地域とのつながりという点では、学校の西側にある「馬込八幡神社」で行われるお祭りはこの地域ならではのイベントです。当校の子どもたちも各町会の山車をひいたり、神輿を担いだりと多くの子どもたちが参加しています。
また「大田区立馬込小学校」は同窓会の組織がしっかりとしていて、4月下旬に開催される同窓会主催の「くすのき祭」では、フリーマーケットや模擬店、売店などが揃い、多くの人で賑わいます。さらにPTA主催の「ともがき祭」といったイベントもあり、11月の秋空のもとふかしたお芋をいただきながらみんなで遊びます。
――これから入学を検討しているご家族や地域の方へのメッセージをお願いします。
田村校長:「大田区立馬込小学校」では引き続き「大田区教育委員会教育研究推進校」として取り組んできた道徳教育の成果を生かしていく予定です。
この取り組みに際して現場の先生方とも“叱るのではなく、できたときに褒める”ことを徹底して行ってきました。しかも、ただ褒めるのではなく、「やったね〜! よくできたね〜!!」などと子どもたちもややびっくりするくらいのリアクションを工夫することで、自己肯定感を育むきっかけをより分かりやすく伝えてこられたと思います。子どもを叱るのは簡単ですが、褒めるというのは案外むずかしいものです。ぜひご家庭においても“褒める”ことを積極的にしてみてください。
大田区立馬込小学校
校長 田村浩一先生
東京都大田区南馬込1-34-1
TEL:03-3773-3965
http://magome-es.ota-school.ed.jp/
※この情報は2015(平成27)年11月時点のものです。
道徳教育への取り組みを通して育まれる子どもたちの自己肯定感/大田区立馬込小学校 校長 田村浩一先生
所在地:東京都大田区南馬込1-34-1
電話番号:03-3773-3965
http://magome-es.ota-school.ed.jp/