地域に根差したISS認証校/豊島区立富士見台小学校 校長 渡邉和子先生
都心でありながら、富士山を望む高台の閑静な住宅街にある「豊島区立富士見台小学校」。インターナショナルセーフスクール(ISS)認証校としての取り組みをはじめ、さまざまな教育活動を展開し、子どもたちの主体性や確かな学力を育んできた。今年度も「豊島区教育委員会研究奨励校」に指定されるなど、東京都や区からの表彰や指定も数多い優秀校だ。第15代校長の渡邉和子先生に、同校の教育実践や地域の魅力について伺った。
建学の精神を受け継ぎよりよい学校へまい進
――まずは、学校の歴史や概要についてお聞かせください。
渡邉先生:本校は1950(昭和25)年、この地域にぜひ学校を作ってほしいという地域の方たちの願いを受けてできた学校です。富士山が見える地域にあることから、「豊島区立富士見台小学校」と名付けられました。校歌は作曲家の團伊玖磨先生の作曲で、子どもたちも大好きな曲です。
初代校長以来、「建てたときより美しく」という建学の精神を受け継ぎ、開校記念日には、この言葉に込められた「よりよい学校にしていこう」という思いを、子どもたちへ伝えています。研究が盛んなことは本校の特色のひとつで、「豊島区教育委員会研究推進校」として、これまでたくさんの教科で研究発表を行い、授業力向上に励んできました。
――教育目標や目指す学校像について教えてください。
渡邉先生:教育目標は、「元気いっぱい」「さわやか笑顔」「かがやくひとみで」「未知にチャレンジ」で、今年度は確かな学力の向上を意味する「かがやくひとみで」に重点を置いています。この目標のもと、「子ども一人一人が伸びる学校」「家庭・地域と共に歩む学校」「安全教育を推進し、発信する学校」という学校像を目指しています。
ウォークラリー気分で楽しく苦手を克服!
――朝のチャレンジタイムとはどのような活動ですか?
渡邉先生:本校では朝の15分をチャレンジタイムとして、さまざまな活動に取り組む時間にあてています。姿勢タイム1分間・読書タイム10分間・音読タイム4分間をセットに、低学年は読書タイムに読み聞かせをします。正しい姿勢をとることで、教師も子どもたちも1日を新しい気持ちでスタートできますし、読書で子どもたちの気持ちも落ち着きます。文字に慣れ、読み聞かせで聴く力がつき、音読によって声を出して読むことに抵抗感がなくなります。夏と冬には総まとめとして、各学年、学級による朗読発表を行いますが、子どもたちはかなり長い詩もしっかりと覚え、みんなの前で堂々と発表しています。
――スポーツへの取り組みも盛んだと伺っています。
渡邉先生:「体育朝会」では、長なわ跳びや持久走などに取り組みます。また、学期ごとに4~5日間行う「スポーツ週間」では、中休みに校庭と体育館を使って先生たちがゲーム要素を加えた運動コーナーを作ります。ボール投げの力をつける「ペットボトルスロー」や握力を高める「握力計・ぞうきん絞り」など、手づくりのアスレチックコーナーみたいな感じで、各コーナーをウォークラリーのように回る、子どもたちも大好きな取り組みです。
さらに、3月の土曜公開日には「全校スポーツデ―」を開催し、「体育朝会」や「スポーツ週間」などで取り組んできたスポーツすべてにチャレンジします。最後のクラス対抗長なわ跳びはたいへん盛り上がりますよ。毎回大勢の保護者が参観にみえ、一緒にスポーツにチャレンジするお父さん、お母さんもいらっしゃいます。
安全教育もエコ活動も子どもたちを主役に
――「東京2020オリンピック・パラリンピック教育アワード校」として、どのようにオリ・パラ教育に取り組んでいらっしゃいますか?
渡邉先生:オリ・パラ教育には昨年度から取り組み、今年度は「豊かな心と健やかな体の育成~地域に広げるオリンピック・パラリンピックマインド~」を研究主題としています。具体的には、都が重点を置く5つの資質のうち、「スポーツ志向」と「日本人としての自覚と誇り」の2点を選択し、地域連携を大切にしながら、総合や生活科など各教科の授業で展開しています。
「スポーツ志向」では、子どもたちがいろいろなスポーツへ興味を持ち、フェアプレイ精神を学べるような授業づくりをしています。本校はインターナショナルセーフスクール(ISS)認証校でもあるので、子どもたちがケガをしにくい体を主体的に作れるよう、理学療法士の協力のもと、「富士見台小バランス体操」も作成中です。
「日本人としての自覚と誇り」については、地域に手描き友禅や彫金、藤工芸など豊島区認証の伝統工芸士さんが大勢いらっしゃるので、こうした方たちに講師になっていただき、外国の方に紹介できるようになることも視野に、地域の伝統文化を学んでいます。
――インターナショナルセーフスクール(ISS)とは何ですか?
渡邉先生:インターナショナルセーフスクール(ISS)とは、体と心のケガとその予防に取り組む学校を、「ISS認証協働センター」が推奨する国際認証制度です。豊島区では「豊島区立朋有小学校」に次いで、本校が2016(平成28)年2月に認証されました。
認証審査の際にポイントとなるのが、子どもたちの主体的な活動です。本校では、各学級にISS係がいるほか、セーフスクール委員会を含む8つの委員会の委員長が集まってISS代表者会議を開き、ISSについて各委員会で上がった議題を議論します。
校長もISS代表者会議の子どもたちと一緒に給食を食べて、活動の様子などを聞く機会を設けています。子どもたちは主体的にどんどんいい意見を出してくれるようになり、放送委員会はお昼の放送で「今日の安全ポイント」を紹介したり、運動委員会がISSジャケットを着て校庭に立って危険な行為をしている子どもたちを指導するなど、各委員会でも子どもたちの視点が変わってきました。
授業や地域とも連携し、安全教育では、学年ごとにテーマに沿って学習を深めています。5年生の国語では、地域の人たちと一緒に話し合い活動をする「しゃべり場in富士見台」でSNSについて話し合い、SNS使用のルール作りをしました。さらに、子どもたちが授業で学んだことは、必ず全学年が近くの区民ひろばで発表し、地域の方に啓発できるようにしています。
――環境教育も盛んだと伺いました。
渡邉先生:都心だからこそ環境の大切さを学ぶ「都市型環境教育」を進めています。ビオトープは「千川には昔ホタルがいたので、もう一度ホタルを飛ばして、おじいちゃん、おばあちゃんを喜ばせたい」という児童の発案から、生まれました。5年生とエコ委員会を中心に、子どもたちが草を刈って穴を掘り、専門家の力も借りながら2013(平成25)年に完成。毎年6月になるとホタルが飛び、地域公開のホタル観賞会では毎年400人ほどの方が訪れ、昨年度からは5年生が説明・案内するという試みも始まりました。
――その他、特色のある取り組みについて教えてください。
渡邉先生:区独自の「小・中学校補修支援チューター事業」を活用した「富士見台小スキルアップ・スタディ」は、3~6年生の希望者を対象に放課後に算数を勉強する時間です。子どもたちがタブレットを使って学習を進め、都や文科省から見学の方がみえるぐらい、高い評価をいただいております。
縦割り活動も盛んで、1~6年で15人ぐらいの班を作って、月1回縦割り遊びと縦割り給食をする日を設けています。縦割り班で全校遠足へ出掛けたり、校庭で調理師さんが作ってくれたお弁当を食べる青空給食もあります。
都心でありながら江戸情緒が感じられるエリア
――地域の方や保護者とはどのように連携していらっしゃいますか?
渡邉先生:PTAの活動のひとつに、「ブックナビゲーター」があります。係に立候補した方が目白図書館から本を選び「100冊文庫」として、各教室に本を借りてきてくださいます。また、朝の時間に子どもたちに読み聞かせをしてくださいます。地域の方は「子ども110番」など、見守り活動にもたいへん協力的です。また、毎月10日の「ノーテレビ・ノーゲームデー」は、PTAの発案で始まったもので、家族ぐるみで取り組んでもらっています。活動の目的や意義を伝えようと、発足当時のPTA会長さんが年に1回、子どもたちに授業をしにきてくださいます。
地域の方たちとの連携にはとくに力を入れ、安全教育や3世代交通安全教室、区民ひろばなど、さまざまな場面で地域とつながりがあります。秋には同窓会主催のサンマ大会があるのですが、地域の方に作っていただいた焼台の上で、先生たちや卒業生たちがサンマを焼きます。本校の子どもたちは無料券をもらえて、ご家族で食べにいらっしゃる、人のつながりがある、あったかな地域だと思います。
――校長先生からご覧になる南長崎エリアの魅力はどのようなところでしょうか?
渡邉先生:マンガの聖地であり、伝統工芸が盛んで、子どもたちは地域の歴史を身近に感じられます。「南長崎花咲公園」は四季折々の花も見事ですし、手塚治虫らが住んでいたトキワ荘を再現してミュージアムを作る計画があるなど、この先も楽しみな街です。池袋まで歩いて20分ほどですが繁華街からは離れているので、すごく落ち着いた雰囲気が広がります。目白通り沿いには練馬や新宿を通る路線バスも走っていて、子どもたちは池袋や練馬に塾や習い事で通っているようです。
「椎名町」駅前の長崎神社の例大祭では、各町会からお神輿が出て、出店がずらっと並びます。そのすぐ近くにある金剛院では、豆まきと商人まつりも開催され、お寺カフェもオープンしました。都心にいながら、江戸情緒が感じられ、文化に親しめる地域は珍しいのではないでしょうか。子育ての情操教育にはぴったりの地域なので、一度外に出て、結婚を機に戻って子育てしていらっしゃる方も多いですよ。
「ノーテレビデー・ノーゲームデー」発足当時のPTA会長である大野さんにも伺いました
――立ち上げ当時の背景と思いについてお聞かせください
大野さん:学校が週休2日制になった当時、お母さん方から子どもたちの自由時間への心配の声が上がるようになりました。ちょうどその頃、新聞で「ノーテレビデー・ノーゲームデー」に取り組む小学校の紹介記事を読み、PTAで話し合いを重ね、子どもたちのために取組をはじめました。学校のメディア研究事業とも重なったことで、2003(平成15)年にスタートし、今では子どもたちが主体的にプロジェクトに取り組む姿に、本当に嬉しく思っております。
――この街に住むことを検討していらっしゃる方へメッセージをお願いします
大野さん:「豊島区立富士見台小学校」は、さまざまな取組が子どもたちの心を育てることにつながっている、とてもいい学校だと思います。南長崎という地域も、安心して子どもたちを育てられる地域です。学校でサンマ大会があるようにとてもアットホームで、公園も多く、お子さんの成長に良い環境だと思いますよ。
豊島区立富士見台小学校
校長 渡邉和子 先生
所在地:東京都豊島区南長崎1-10-5
電話番号:03-3953-6472
URL:http://toshima.schoolweb.ne.jp/hujimidai_e/
※この情報は2017(平成29)年5月時点のものです。
地域に根差したISS認証校/豊島区立富士見台小学校 校長 渡邉和子先生
所在地:東京都豊島区南長崎1-10-5
電話番号:03-3953-6472
http://toshima.schoolweb.ne.jp/hujimidai..