異年齢の交流と地域の関わりが、やさしく豊かな心をはぐくむ「さいたま市立文蔵小学校」
「さいたま市立文蔵小学校」は、さいたま市の南端部、蕨市と川口市に隣接した場所にある小学校。陽当たりの良い校内はいつも明るい雰囲気に包まれ、昼休みともなれば、広い校庭はたちまち子どもたちの笑顔と歓声で満たされる。このような良好な環境が維持されているのは、校舎の立地条件の良さもさることながら、地域の人々と保護者の理解・協力があってこそ。今回は学校の特徴をはじめ、地域やPTAとの関わり、文蔵エリアの魅力などについて、校長の西畑孔夫先生にお話を聞いた。
――文蔵小学校の沿革について教えてください
西畑先生:本校は今から46年前、周辺の人口の急増に対応して開校した小学校です。開校当初は校舎の建築が間に合わずに、現在の文化センターのある場所にあった、移転したばかりの「南浦和中学校」の旧校舎を利用して開校しました。開校した年の秋から現在の場所に移転しました。
教育目標には、「かしこく、やさしく、たくましく」という言葉を掲げ、自分で考え正しく判断をして行動できる子、やさしく思いやりのある行動のできる子、ねばり強く物事に取り組む子、ということを、目指す児童像としています。
その目標に向けて、日々全職員が協働体制で取り組んでいますが、教員同士の仲が良くないと良い教育活動はできないと考えていますので、教員同士が一体となって子どもたちを指導する、ということを大事にしています。
ですから本校は職員同士の仲がとても良いですし、何かがあれば、何でも相談しあえるような間柄があります。ベテランの教員はより良い判断ができますから、それをもとに若手を指導していますし、若手は新しい知識とフットワークの良さを強みに指導を行っています。お互いの良い所を持ち寄って、尊重し合いながら教育活動を行っており、このチームワークの良さが、本校の一番の強みであると思っています。
――教育活動に関して、特に力を入れている部分を教えてください
西畑先生:ここには古くからの地名である「文蔵」という言葉がありますので、学校としても図書や国語などの教育に力を入れている伝統があります。最近は特に、国語力の向上に力を入れて研究に取り組んでおり、自分の考えを表現する思考力、判断力、表現力といったものを高めていきたいと考え、重点的に取り組んでいます。
お互いの意見を伝え合って、指摘を受け止め、交流すれば、自分の思考が軌道修正され、考えが高まります。さらにその考えを「発信」していくことで、全体がさらに高まっていく、という流れも生まれます。「伝え合う」ということは、やがて子どもたちの「生きる力」になっていく、とても大事な力だと思っています。
また、本校の特徴のひとつに「たて割り」、つまり異年齢の交流を大事にしているという点があります。業間や昼休み時間にも、異年齢で遊ぶ時間を作っていますし、児童は集団登校をしていますので、そこにも近所の子ども同士の異年齢の関わりが生まれ、子どもの感性や心をより豊かに育むものになっていると考えています。読書活動についても、下級生の子どもたちに、上級生に読んでもらいたい本のリクエストを聞いて、それを受けて、上級生が下級生の教室に行って読み聞かせをする、という活動もしています。
集団登校については、地域の子ども会が編成した組み合わせに基いて、各班のまとめ役の方に毎朝送り出しをしていただいています。そのグループの最上級生がリーダーになって学校まで連れてくる、という形です。下校についても、これは1、2年生だけなのですが、集団下校の形をとっており、特に1年生は4、5月については保護者の方に付き添いという形でご協力をいただいています。
――地域の方や保護者との連携、協働の様子について教えてください
西畑先生:本校は地域と密接に連携をしている学校で、地域の方も学校に対していろいろな形で心を砕いてくれています。特に育成会や子ども会が関わっている場合が多く、たとえば5月の「たくましい文蔵っ子のつどい」という行事では、昔あそびや車いす体験などを、地域の方が主催してくれています。
PTAについても、10月末にはPTAが主催する「文蔵小まつり」というものがあり、地域とPTAの方が露店を出したり、グランドゴルフをやったり、車いす体験などのいろいろな体験の機会を作ってくれています。子どもたちだけではなく、ご家族や地域の方も楽しみにされている毎年恒例のイベントです。
また、「サポーター制度」というものを通して、緑化や水やり等で協力してくれたり、夕方の学校で校内を見まわってくれたり、イベントなどの運営を手伝ってくれたりと、本当にいろいろな場面で協力いただいている頼もしい存在です。
――学校行事で特に力を入れているもの、盛り上がるものは何でしょうか?
西畑先生:11月に「心をつなぐ音楽会」という名前で音楽会を開いており、例年、近くにある文化センターのホールを使っています。学年ごとに練習してきた音楽を披露するだけではなく、教員も舞台に立ち、毎年たくさんの保護者や地域の方も来られる行事です。
持久走記録会も本校の伝統行事で、毎年11月に行っています。校庭だけではなく学校の外に出ていくコースを取っているので、コース上の見守りや誘導については、PTAの方々に協力していただいています。街の中を走りますから、地域の方々のご理解とご協力が必要な行事となっていますが、その理解と協力があるからこそ、伝統としてずっと継続できているのだと思います。
――校舎の構造や、施設面について特徴があれば教えてください
西畑先生:各学年の廊下に「ミニブックワールド」というコーナーがあります。これがあることで、子どもたちは休み時間などちょっとした時間にも、気軽に本に触れることができます。もちろん図書室は別にありますから、蔵書数はとても多くなっています。
――中学校との連携、卒業生の様子について教えてください
西畑先生:さいたま市では小中一貫教育を進めており、本校も小中連携のモデル校のひとつとなっています。夏休みに小中学校の教員の合同研修会を行ったり、中学生の社会体験事業の受け入れなどもしています。また、子どもたち同士でも、生徒会と児童会で合同のあいさつ運動をしたり、いじめについて考える小中合同の討論会を開いたりと、いろいろな連携やつながりを持っています。
小学生から中学生になるにあたって「中一ギャップ」はどうしても出てきます。ですが、社会に出てからもさまざまなギャップがありますから、それを乗り越えるための訓練だと考えています。適度なギャップを子どもたちが無理なく乗り越えて、自分の成長の糧にするためにも、この一貫教育の取り組みは有効だと思っていますので、今後はさらに、関係づくりの機会を増やしていきたいと考えています。
ちなみに、さいたま市では毎年10月に「つぼみの日」ということで、中学校に小学生が訪問する日を設けています。そこでは部活見学や授業見学をしたり、生徒会や先生方から中学校の説明を受けたりということをしています。6年生の秋になって、目の前に迫ってきた中学校生活に対しての不安を、少しでも軽減していくことができていると思います。
小中連携以外にも、幼稚園や保育園との交流も盛んに行っています。1年生が幼稚園と保育園の子どもを招待して、小学校の説明をするということを年に何回か行っているほか、幼稚園や保育園の先生が小学校に体験に来たり、小学校の教員が体験に行ったりという形で、お互いの理解を図っています。
――私立の学校に進学する子どもたちは、どのくらいの割合いるのでしょうか?
西畑先生:毎年変わるものですので具体的な数字は難しいですが、昨年度の実績としては、12%前後ぐらいでした。近くにある「さいたま市立浦和中学校」も入学試験がありますが、こちらへ進学する子どもたちもいます。
――最後に、この文蔵地域の魅力について教えてください
西畑先生:静かで落ち着いた環境が魅力で、地域の方も地域愛がすごく強い方が多いです。地域で子どもを育てるという意識が強く、いろいろな面で学校に関わってくださるので、非常にありがたいと感じています。駅にも比較的近いですし、駅までのバスの便も多いですし、生活にも便利な地域かと思います。
本校はケヤキの木がシンボルになっています。大王松(だいおうしょう)という松の木はもともと、南浦和中だった(開校当初の)場所にあったものを移してきたそうなんです。ほかにもたくさんの木々に囲まれていますが、これらも開校の時に地域の方がこぞって寄付してくださったものということで、地域の方々の愛情にも、豊かな緑の木々にも囲まれて、本当に素晴らしい学習環境がある地域だと思います。
さいたま市立文蔵小学校
校長 西畑孔夫(よしお)先生
所在地 :さいたま市南区文蔵5-16-29
電話番号:048-863-0721
URL:http://buzo-e.saitama-city.ed.jp/
※この情報は2017(平成29)年11月時点のものです。
異年齢の交流と地域の関わりが、やさしく豊かな心をはぐくむ「さいたま市立文蔵小学校」
所在地:埼玉県さいたま市南区文蔵5-16-29
電話番号:048-863-0721
http://buzo-e.saitama-city.ed.jp/