都内ではめずらしい「ホタルの見られる学校」、 家庭・地域との連携を大切にした教育環境づくり/大田区立矢口西小学校 校長 櫻井恍夫先生
都内ではめずらしい「ホタルの見られる学校」、
家庭・地域との連携を大切にした教育環境づくり
多摩川からもほど近い閑静な住宅地で、90年以上もの歴史を刻み、数多くの子どもたちを送り出してきた大田区立矢口西小学校。過去10年間ほどの間には学区内に高層マンションが幾つも竣工したことから、今や大田区内でも有数のマンモス校となっている。今回はこちらで校長を務められている、櫻井恍夫先生にお話をお伺いすることができた。
まず、矢口西小学校の概要についてご紹介をお願いします。
矢口西小学校は、1920(大正9)年、荏原郡矢口村立尋常小学校として開校してから、今年で93年目を迎えます。本校の前身は、1822(文政5)年に豊岡和潮(わちょう)が村人に懇願されて開いた豊岡塾でした。その後、金子家塾に継承され、現在に至っています。本校の礎は、江戸末期に築かれ、地域の子供は地域で育てるという意志が受け継がれています。
2013(平成25)年度、児童数は892名で大田区では2番目に大きな学校です。この背景には、多摩川沿いのマンションに引っ越してこられたお子さんが非常に多いということがあります。最も多いときには、1000人以上になりました。これからは、少し落ち着いていくのではないかと思います。学区は、下丸子と矢口の一部で、環状8号線から多摩川までの範囲です。
学校の教育目標についてお教えください。
本校の教育目標は、「考える子」「感じる子」「きたえる子」の3つです。それは、今でも変わりません。「明るく楽しい学校」「安全・安心な学校」「きれいな学校」「規律ある学校」を大切に、子供たちと向き合っています。
一方で、「家庭で育ち、学校で学び、地域に生きる」という目標も持っています。最近は、こちらにも力を入れています。大田区では、今、「地域の力、教育力」を学校に生かしていこうと考えています。本校でもその指針に沿った教育をすすめています。「家庭、学校、地域」の3者が一つになった教育環境をつくりだそうということです。
大田区の学校では、地域の力で学校教育を支援していただく仕組みとして、「学校地域支援本部」というものを学校ごとに設置しています。本校でも、昨年度に設置されました。その兼ね合いもありまして、今後は家庭で育った子どもたちを学校で学ばせ、地域で生き生きと活躍させる、といったことにも力を注いでいきます。
「学校地域支援本部」とは、何をされる組織なのでしょうか?
「学校地域支援本部」とは、保護者や地域の方々の中からコーディネーターをお願いし、町会長さん、自治会長さんにも応援に入っていただいています。「学校で何かをやりたい」と言った時に、地域の方からゲストティーチャーやボランティアなどをお願いし、ご協力をいただくものです。
「学校地域支援本部」のことを私たちは「スクールサポート矢口西」と呼んでいます。たとえば、本校は1学年当たり4クラスまたは5クラスあります。地域の見学や行事などで校外へ出かける時なども担任の先生方だけでは大変です。そこで、保護者の皆様や地域の方に引率補助などをお願いして安全を確保させていただいています。これもスクールサポートの活動の一つです。
このほかにも、こま回し、けん玉、あやとりなど、昔遊びを教えていただくボランティア、地域の歴史を学ぶ授業のゲストティーチャー。図書の整理をしていただく「図書ボランティア」、外国語活動の授業のサポーターとして入っていただく「英語ボランティア」など、さまざまな形で関わっていただいています。今後は、パソコンのサポートボランティアなど、子供たちの教育活動を充実させる展開を予定しています。
保護者の方にとってはPTAとスクールサポートの2つに関わっていただいており、負担をおかけしてしまっているところもあります。「地域の方が持っている特別な知識や技術を学校教育のために生かしていく」という取り組みは、高い評価をいただいています。これからも地域の力をお借りしながら、学校経営をすすめてまいりたいと思います。
「ホタルの見られる学校」としても有名だとお聞きしました。
はい。本校は都内でも数少ないホタルのいる学校です。敷地の一角にホタルを育てているビオトープがあるのです。出来上がったのは、5年前です。以前から、地域の方が子供たちにホタルを見せてあげたいという思いがあり、学校の敷地の一部でホタルを育てていました。その地域の人たちの願いを教育委員会が受け止め、ホタルのさとを造ってくださったのです。毎年6月から7月になると、源氏ホタルと平家ホタルが飛ぶようになります。ご近所の方はもちろん、遠方から毎年鑑賞会を楽しみにお出でくださる方がいます。
学習プログラム面での特色、特徴的な伝統やイベントなどはあるでしょうか。
児童数の多い学校ですので、活動の場所や時間の確保などの理由から、特別な学習プログラムを組みにくい現状があります。区の施策となっている「習熟度別指導」や幼稚園・保育園との連携、近隣中学校や小学校との小中一貫教育などは、忠実に行っています。児童数が多いといろんな友達と知り合えますので、そんな点も本校ならではのメリットかなと思います。
イベントについても同様で、学級数が非常に多いので、活動する場所や時間もなかなか取りにくいのが現状です。羽田のあたりに出かけて行う「干潟体験」や、毎年6月に行われる「学びの森集会」などはユニークかもしれません。
特色ではないかもしれませんが、校舎の前にある“しいの木”は開校当初から学校のシンボルとなっているものでして、地域の皆様にも大事にしていただいています。学校のおたよりにも、「しいの木だより」という名前を使っているくらいですし、学校の通用門には「あんず門」「しいの木門」「さくら門」など樹木の名前が付いていて、子どもたちに親しまれています。
今後の学校経営の方針について、校長先生がお考えのところをお聞かせください。
地域の方のご協力で「ほたるの里」も出来ましたし、こういったものを今後も大事に守り続けて、卒業生や地域の人にも、気軽に訪れてもらい、身近に感じてもらえるような学校にしたいですね。
また、近隣にキヤノンさんやイナバ物置さんなど、有名企業の本社もありますので、今後は企業さんとの新しい関係も築いていきたいと思っております。地域の方の力をお借りしながら、生かしながら、学校教育を特色あるもにできれば良いですね。
最後に、学区域になっている地域、西矢口の魅力について教えてください。
まず、交通の便が非常に良いですね。都心にも、横浜にも出やすくて、蒲田まで出れば東海道線も使えます。車でも環状八号線や第二、第三京浜もあり、どこに行くにも移動しやすい立地です。安全面でも、矢口西地域は青少年対策委員会の活動がさかんでして、子どもを見守る目がとても厚く、温かい地域だと思います。物騒な事件なども少ないですしね。
環境面では、近くには多摩川がありますし、街路樹などの緑も多くて、とても良いのではないでしょうか。街並みも落ち着いており、子どもたちも安全に通学できますし、周辺には住宅街も企業もマンションもあって、バランスの良い地域だと思います。
今回、話を聞いた人大田区立矢口西小学校 校長 櫻井恍夫先生 所在地:東京都大田区下丸子1-7-1 ※記事内容は2013(平成25)年4月時点の情報です。 |
都内ではめずらしい「ホタルの見られる学校」、 家庭・地域との連携を大切にした教育環境づくり/大田区立矢口西小学校 校長 櫻井恍夫先生
所在地:東京都大田区下丸子1-7-1
電話番号:03-3759-9621
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