本格派というのは、こういうお店のことを言うのだろう。
天ぷら専門店の矢吹である。この地に店を構えたのが、1974(昭和49)年というから、ゆうに35年の歴史を刻んできたことになる。ご主人は、かつて銀座の天ぷらの名店・天一で修行を重ねてこられた方。当時は休みもなく、技術を身につけるのに必死だった、と修行時代を振り返って語られる。
そんな本物の技術をもってして、仕上げられる天ぷらとは果たしてどれほどのものなのか。さっそくいただくことにした。コースは松・竹・梅・桜と4種類あるが、一番人気という梅を注文する。
車エビである。ぷりぷり、などと陳腐な表現をしたくないくらいに、新鮮である。素材の仕入れはご主人がするそうだが、その素材のよさをしっかり活かしながら、からっと揚げられていることに、ご主人のもてなしの心を感じさせられた。
こちら、しいたけの肉詰めである。天一で初めてこういう天ぷらをつくった頃のことを、ご主人は知っているそうだ。肉厚のしいたけと具の肉が、ともに驚くほどジューシーだ。
きすの天ぷらである。何の変哲もない天ぷらに見えるかもしれないが、食すれば違いが明らかにわかる。きすって、こういう味なんだ、そしてこんなに美味しいものなのだと、おもわず背筋が伸びる思いであった。
イカのしそ巻きと、アスパラだ。イカとしそがこれほどまでにマッチするものとは、夢にも思わなかった。アスパラも、まるで今、畑で採りいれてきた言わんばかりの新鮮さである。
わかりにくいかもしれないが、こちらはホタテとナスである。ホタテもナスも、その素材がこういう味である、ということをわからせるがために揚げられているような気がしてくる。
こちらは穴子だ。ほくほくする、という表現がまさにぴったり。衣のサクサク感も、そのほくほくにぴったりとマッチしている。
さらにはブロッコリーだ。ブロッコリーが天ぷらに合うというのは、これを食すればすぐにうなずくことができるであろう。
しめは、かき揚げ丼である。普通にかき揚げだけで食べさせてもらうこともできるが、あえて丼にしてもらった。これがまた、こんなかき揚げ丼、食べたことない、と感動するくらいうまいのである。
ちなみに、酒蔵へ製造を依頼してつくっているという、羽黒山というオリジナルの日本酒を筆頭に、お酒の種類も豊富である。これがまた、うまかった。35年以上の歴史を刻んでこられたのは、ご主人が来客者に対し、本気でおいしい天ぷらを食べてもらいたい、と思う気持ちが支えてきたのだろう、と体と舌で体感することができた。
※本文中のメニュー・価格等は取材時のものです。変更している場合がありますのでご了承ください。
矢吹
所在地:東京都杉並区高井戸東3-28-24
電話番号:03-3334-0070
営業時間:11:30~14:00、17:00~21:00
定休日:木曜日





