145年以上の歴史をもつ伝統校/「府中市立府中第一小学校」関修一先生
国道20号線に沿った場所に、広々とした芝生の校庭を抱えて建つ「府中市立府中第一小学校」。こちらは2018(平成30)年で創立から145年を数えるという、府中市内でも伝統校のひとつに数えられる。その広い学び舎にはおよそ950名の児童たちが学んでおり、いまもその数は増え続けているという。また、この小学校に入ると誰もが経験する「わかば鼓笛隊」が同校の象徴となっており、6年生たちが総勢100名以上の大部隊でさまざまなイベントに参加し、元気な演奏を響かせている。この歴史ある学校は21世紀のいま、どのような方向に向かおうとしているのか。校長の関修一先生にお話をうかがった。
開校145年を超える、地域に根付いた伝統校
――まず、学校の沿革について教えてください
関先生:本校は今年で145周年を迎えるという非常に古い学校です。府中市には同じような古い学校が3校ありまして、一小、四小、五小が今年、それぞれ145周年を迎えました。旧府中町にあった第一小、西府にあった第五小(の前身)、多摩村にあった第四小(の前身)、この3町村が合併した時に、府中町にはすでに第一から第三小まであったものですから、ほかの2校が四小、五小となりました。
本校のいちばんの特徴と言えば、1964(昭和39)年、オリンピックの年から活動が始まった「わかば鼓笛隊」かと思います。昔はリコーダーや鍵盤ハーモニカなども含めた活動でしたが、最近は全員が金管楽器または打楽器に取り組んでいます。6年生全員で編成している鼓笛隊で、本年度は6年生が143人がおりますので、非常に迫力があるバンドとなっています。
この鼓笛隊は、4月の「府中市民桜まつり」のパレード、9月の「交通安全パレード」、10月の「府中市民体育大会」のオープニングパレードなど、地域の活動にもたくさん参加しています。ですから地域にも非常に親しまれていますし、保護者やおじいちゃん、おばあちゃんの中にも、「私もわかば鼓笛隊でした」という方が大勢いらっしゃるんですよ。
――校舎の特徴について教えてください
関先生:ひとつ特徴的なのは芝生の校庭でしょうか。導入から7年目を迎えてようやく安定し、児童も芝生でのびのびと遊んでいます。
校舎は1階から3階の各階に、2教室分の広さをもった「ホール」という部屋がある点が特徴で、いろいろな形で活用しています。3階のホールはここ数年、児童数の増加で普通教室に転用していますが、1階のホールは「放課後児童教室」の府中市版である「けやキッズ」でも使っており、放課後には児童たちの居場所になっています。
――教育目標と、教育・学習に関する取り組みを教えてください
関先生:教育目標は「よく考える子、なかよくたすけあう子、つよいからだの子、心ゆたかな子」を掲げ、その視点からあらゆる教育活動を行っています。
本校は昨年度まで英語の研究校だったので、英語の専科の教員が配置されています。その教員が中心になって5・6年生の英語の授業をしているのが、ひとつ特色になっているとか思います。専科の英語教員がいるのは、現状では市内で本校だけです。また、(専科が担当しない)1年生から4年生までの英語についても、研究の成果を生かしながら、絵本を使った英語活動などを積極的に行っています。
これからという部分では、国語の研究を今年から始めておりますので、今後は「言葉の活動」の質も高めていこう、という方向で取り組んでいるところです。
多くのボランティアが支える活動、生まれる交流
――地域の方々や保護者との交流活動、協力体制について教えてください
関先生:地域の方については、本校への思いが非常に強い方が多く、協力的な方がたくさんいらっしゃいます。イベントなどもたくさん企画していただいていて、たとえば、夏休み明けに行う「肝試しの会」や、2月に行っている「豚汁を作る会」などは、地域の方が主催してくださっているものです。
府中市内には、中学校区ごとに「青少年対策健全育成委員会」という地域の方々で構成されたボランティア団体があります。この委員会がいろいろなイベントを開催してくださるのですが、本校は第一中と第四中のふたつの地区と関わりがあるので、イベントも2倍です。一地区ではドッジボール大会、駅伝大会などが開催され、四地区では鼓笛隊が「四地区音楽祭」に参加、7月に「早朝ラリー」という地域清掃の取り組みなどもしています。
PTA主催のものにも、夏休みの「科学体験フェスティバル」をはじめ、児童たちが楽しみにしているイベントがいくつかあります。それから、PTAに関しては鼓笛隊へのサポートがなによりも大きいです。近年は児童の数が増え、楽器が足りない状況も出てきていますので、PTAの方が鼓笛隊を応援する組織を作ってくださり、募金活動などもしてくださっています。毎年2月の鼓笛隊の「移杖式(いじょうしき)」という式典では、PTAから学校に、楽器を寄付をしていただくという場面もあります。
ボランティアの方の活動も活発で、園芸、図書、英語、芝生の整備など、多くの方が参加してくださっていますし、校外学習に行く時などの「見守りボランティア」の活動も盛んになっています。
本当にいろいろな方が関わってくださって、児童たちを見守ったり楽しませてくれたり、これは本当にありがたいことだな、と日々感じております。
――学校の運営にも、地域の人々が参画しているそうですね
関先生:府中市では学校ごとに「スクールコミュニティ委員会」が置かれています。本校でもその委員会の席で、学校と地域の代表の方が意見を交わしながら、学校の運営や取り組みついて、一緒に考えていっています。
また、今年度からはこのコミュニティ委員会を中心とした、地域座談会も開催する予定です。より地域に根づいた学校を目指していきたいと考えております。
――学校の周辺の幼・保・小・中との連携、交流について教えてください
関先生:小中連携については、府中市が施策として取り組んでいますので、第一中学校、第一小学校、第九小学校の3校で連携したイベントをいくつか行っています。教員レベルでは、各学期に1回、小学校の全教員が中学校に授業を見学に行ったり、逆に小学校の授業を中学校の先生に見ていただく、という取り組みを行っていますし、中学校の先生に来ていただく際には、小学生の授業に入って、担任とTT(チームティーチング)で授業をしていただくということも行っています。
本校は鼓笛の活動がありますので児童同士の日々の交流は難しい面があるのですが、今後は小中で一緒にあいさつ運動をするなどといった活動を検討しています。
幼保の連携については、幼稚園の児童たちに学校見学に来てもったり、幼保の先生方と小学校の教員とで積極的に情報交換を行ったりしています。
児童の笑顔を守るためにチーム一丸となって
――児童と接する時に、先生方が心がけていることは何でしょうか?
関先生:これは私の個人的な教育理念なのですが、「笑顔あふれるみんなの学校」という言葉をスローガンにしています。教員に対しても、笑顔のためには「みとめて、ほめて、はげまし育てる」ということが大事だといつも話をしております。そういったスタンスで、すべての教育活動に取り組んでいます。
――今後の学校経営のビジョンを教えて下さい
関先生:大規模な学校のため、細かなところに目が届きにくいという課題があることは事実です。その課題を乗り越えるためには、やはり「チーム」で取り組むことが大事だと思っています。たとえば「学年」というチーム、「低・中・高」というチーム、委員会をはじめとした仕事のチームなど、さまざまなチームが連携・協力して学校を動かす、「チーム学校」というというものを目指しています。
さらには、今までお話したような、地域の皆さん、PTAの皆さんも一緒になって学校に関わって地域全体で児童たちを育てていける、そんな学校を目指していきたいと思っています。
利便性と文化、歴史のバランスがとれた街
――府中エリアの魅力についてお聞かせください。
関先生:一つ目は都心へのアクセスが非常にいいという点です。京王線にライナーができて通勤も非常に快適になったと聞いていますし、最近の大きく変わったところですね。
二つ目は、その便利さがありながら、緑が非常に多いという点かと思います。本校のすぐ近くには「府中公園」がありますし、桜通りやけやき通りといった並木道もあります。少し行けば「府中の森公園」もありますし、多摩川沿いの緑も素晴らしい、本当に緑が多い地域だと感じでします。
三つ目は、文化施設が充実しているという点です。本校の近くには「中央文化センター」がありますし、「ルミエール府中」という中央図書館もあります。それぞれ、とても充実した活動もしていますから、児童たちが楽しめる場面も多いかと思います。
また、「大國魂神社」が近くにあるので、行事に参加しながら、伝統に触れる機会も多いかと思います。先日も、5月の連休中に「くらやみ祭り」が開催され「子ども神輿」や山車行列のおはやしに、本校の児童たちも大勢参加していました。それぞれの地域にお囃子のグループがありますから、そこに入れば、お祭りで活躍する機会もあるかと思います。「大國魂神社」では年間を通じていろいろな行事がありますので、参加するのも楽しみのひとつだと思います。
――最後に、校長先生の「おすすめのスポット」を教えてください。
関先生:今の一番を上げるなら「郷土の森博物館」のプラネタリウムでしょうか。こちらが2018(平成30)年5月にリニューアルしたばかりで、五藤光学研究所という、府中市内にあるプラネタリムの製作会社が作ったプラネタリウムなんです。これは非常にいいものができたと思っています。
あとは「府中の森公園」の中にある「府中市立府中美術館」でしょうか。市町村レベルで美術館を持っているのは非常に珍しいと思います。企画展も含め、市内に住む小中学生であれば無料で観覧できますし、ワークショップなどもよく行われます。
ほかにも探してみれば、親子で楽しめるような場所はたくさんあるかと思いますし、少子高齢化と言われているこの時代に、府中市は人口が増え続けていますから、それも「住みやすさ」のひとつのバロメーターになっているのかな、と思います。
府中市立府中第一小学校
統括校長 関修一 先生
所在地:東京都府中市寿町2-6
電話番号:042-361-9001
URL:http://www.fuchu01s.fuchu-tokyo.ed.jp/
※この情報は2018(平成30)年5月時点のものです。
145年以上の歴史をもつ伝統校/「府中市立府中第一小学校」関修一先生
所在地:東京都府中市寿町2-6
電話番号:042-361-9001
https://www.fuchu-tokyo.ed.jp/fuchu01s/