日常にマリンスポーツがある暮らしを届ける/ウインドサーフィンプロショップ DUCK 岩下哲也さん


幕張新都心から車で5分ほどという好立地にあり、「都心から最も近いウインドサーフィンゲレンデ」として知られる検見川の浜。年間を通じて良い風が吹き、初心者から上級者まで幅広く楽しめるということで、休日ともなれば多くの愛好家が集う。
その地で30年以上もの間、ウインドサーフィン専門のショップ&スクールとして愛されているのが「ウインドサーフィンプロショップ DUCK」である。今回はこちらの現・店長で、「検見川ビーチ連盟」の代表も務め、検見川の浜のサーファーを束ねる“アニキ”的な存在の岩下哲也さんにお話を聞いた。

気候もよく、ウインドサーフィンを楽しむのに適した環境の検見川浜

―岩下さんはどのようなきっかけで検見川浜に来られたのでしょうか?

ウインドサーフィン自体は、18歳で勝浦にある体育大学に進学した時に始めたんです。検見川浜に住み始めたのは、25歳の時にこの店の初代オーナーにたまたま誘われてたことがきっかけです。今私が50歳なので、ここに来て今年で25年になりますね。現在はこうして独立して自分の店をやっています。

「ウインドサーフィンプロショップ DUCK」
「ウインドサーフィンプロショップ DUCK」

―「ウインドサーフィンプロショップ DUCK」はどのようなコンセプトのお店でしょうか?

基本的にこの辺りはウインドサーフィンが可能なゲレンデとして開かれた浜なので、今でもウインドサーフィンを目当てに来る方が多いんです。「ウインドサーフィンプロショップ DUCK」はそういう方々に対して、初心者向け体験スクールから、技術的な指導、レンタル、機材の預かり、メンテナンス、欲しくなったという場合には販売まで、全般的なサービスを提供しています。検見川の浜でウインドサーフィンの専門店はうちだけです。

レンタルも、販売も行う
レンタルも、販売も行う

ウインドサーフィンは、通常のサーフィンとはちょっと違って、自分の身体だけじゃ乗れないんですよ。「セイル(帆)」をはじめとして、必要なパーツがすごく多い。だから壊れた時にもすぐに対応できるように、浜前にショップが必要なんですね。ひとつの部品が壊れたら、その日は何もできなくなっちゃうので、うちの店ではリペア関連の商品、例えばビス類などを充実させています。

店内、リペアに必要な商品がずらりと並ぶ
店内、リペアに必要な商品がずらりと並ぶ

―検見川浜は、なぜサーフィンではなくウインドサーフィンが盛んなのでしょうか?

一番の魅力はやっぱり、風でしょうね。夏場にここはいい風が吹くんです。午後になると陸と海の温度差で起きる「サーマルウインド」という風なんですが、特に5月ごろから8月ごろは、外房や湘南よりも強く吹きます。
また冬場であっても、外房や湘南などのほかのゲレンデだと風がほとんど入らないんですが、ここは吹くんですよ。波があるところにサーファーが集まるように、風があるところにウインドサーファーが集まりますから、ここには1年中人が来ています。

ウィンドサーフィンを楽しむ人々
ウィンドサーフィンを楽しむ人々

内房だとほかに富津なども有名ですが、ここは都心からも近いし、駐車場に1日停めても500円程度ですし無料のところもあります。夏も海水浴場にはならないということもあって、とても安全で使いやすいんですね。
最近はウインドサーフィンのほかに、サーフボードの上に立ったまま乗り、オール(パドル)を使って漕ぐ「スタンドアップパドル」というのが流行っているので、それをやる方も増えています。

楽しみ方を教え、楽しむ人たちをつなげる

―まったくの初心者でも、対応していただけるのでしょうか?

ウインドサーフィンもスタンドアップパドルも、初めての方から大丈夫ですよ。スクールもおひとりから対応しています。うちは火曜日が定休日なんですが、それ以外の日はいつでも受け付けているので、お好きな時間に予約をして来ていただけます。仲間同士で来ていただいても大丈夫ですが、平日は私が1人で教えているので、ウインドサーフィンに関しては4人くらいが限界です。スタンドアップパドルについては5人まで大丈夫です。

初めての人は無理せず、スタンドアップパドルから入るのもいいと思いますよ。レンタルもしていますし、今は空気で膨らますタイプのボードもありますから。ほら、これなんて持ち歩くときは背負えるサイズなんですけれど、膨らませばこんな大きくなるんです。
ウインドサーフィンは風を相手にしているのでヨットに近く、バランスが云々と言うよりは、セイルの扱いにコツが必要です。そこが最初はちょっと難しいかな、と思います。それから、同じ浜でもコンディションは日々変わるんですね。春には春の風があるし、夏には夏の風があるし、風向きが季節によって変わるので、そこが難しいところであり、すべてのコンディションでの乗り方を習得するには、1年ぐらいはかかりますね。

合同スクールの様子
合同スクールの様子

スポーツは自分の身体の感覚で覚えていくものだと思いますが、サーフィンは最もそうだと思います。ただ、ウインドサーフィンは操作をすることで動くという理論的な部分もあるので、運動が得意な人じゃなくても伸びていきやすいと思います。そこもまた、楽しいところかもしれないですね。

お店では、単にメンテナンスやスクールだけでなく、すでにやっている人と、始めたばかりの人をつなげるお手伝いにも力を入れています。海に来たら挨拶ができる人がいて、何かあったら店に知らせてくれるような、そんなコミュニケーションづくりを大切にしています。ウインドサーフィン自体も楽しいものですが、そこに行けば仲間がいる、ということがあれば、もっと楽しいものになりますよね。

何度も繰り返し練習することで感覚を体に覚えさせていく
何度も繰り返し練習することで感覚を体に覚えさせていく

マリンスポーツを安全に楽しむための活動

―岩下さんは「検見川ビーチ連盟」の代表もなさっているそうですが、どのような活動をされているのでしょうか?

「検見川ビーチ連盟」は検見川の浜を訪れた方が海を楽しめる環境づくりのためにボランティアでやっています。人出が集中する時期に「ビーチクリーン」という清掃活動をしたり、毎年近くにある児童福祉施設の子どもたちを招待して、マリンスポーツを教えたりしています。そのほか、千葉市が開催している「検見川ビーチフェスタ」でも、マリンスポーツの体験教室を担当しています。

ビーチクリーンの様子。大人だけでなく子どもたちも参加
ビーチクリーンの様子。大人だけでなく子どもたちも参加

2012(平成24)年には千葉市緑政課協力のもと、今後の検見川浜のマリンスポーツ活性化のために「レスキュー艇Eddie(エディー)」を配備しました(※)。以降、検見川浜での深刻な海難事故はゼロになり、今もその記録を更新中です。検見川浜を訪れるすべての人たちの安心と安全を守っていくことも、大切な活動だと思っています。 連盟の構成員は、ウインドサーフィンを教える仕事をしている仲間たちで、自分を含めて6人ほどです。みんなそれぞれにお店やスクールを持っているので、手伝ってくれそうな仲間も連れてきてくれて一緒に活動しています。

※「レスキュー艇Eddie」についての詳細は下記にてご覧ください
http://k-b-u.jp/eddie1/

「検見川ビーチフェスタ」のマリンスポーツの体験教室の様子
「検見川ビーチフェスタ」のマリンスポーツの体験教室の様子

―なぜそのような連盟をつくろうと思われたのでしょうか?

マリンスポーツは都内など遠くから人が来ますよね。でも海浜公園の利用者はほとんどが近隣の人だったりするので、できれば静かな公園であってほしいと思っていたりもします。そこをうまく共存していかない限りは、ウインドサーフィンが禁止というような話になってしまいます。僕らはそこを一番危惧し、そうならないようにするには何をすれば良いかと考えました。

「レスキュー艇Eddie(エディー)」と活動に参加するボランティアの皆さん
「レスキュー艇Eddie(エディー)」と活動に参加するボランティアの皆さん

そしてウインドサーフィンに来ている方たちに対して「こういう風に浜を使ってください」とか「もっとこうしよう」といったマナーアップの呼びかけを、自分たちが主体となってしようということになりました。そうすれば、もし近隣から行政が苦情を受けたとしてもまず私たちにその情報が届きますよね。そういった存在になれればと思ったんです。問題が起きても自分たちの手で解決していければ、うまく共存していけると思います。
そもそもこの海自体は、本来は誰のものでもないんですよね。みんなで一緒に海を、浜を楽しめるように、いい意味での“ローカルルール”をつくっていく、そんな想いで活動しています。

避難訓練の様子
避難訓練の様子

マリンスポーツはもちろん、生活環境も抜群

―岩下さんは検見川の浜のすぐ近くにお住まいということですが、「海がある暮らし」の楽しみ方を教えてください。

この辺りは海沿いにずっと海浜公園が広がっていますから、ランニングをしている人も多いですし、スポーツは何でもしやすい環境じゃないでしょうか。だからスポーツを楽しむのは本当におすすめです。
特にマリンスポーツ。スタンドアップパドルもフィットネス効果が高いものなので、日常的にやればいい運動になると思いますよ。空気で膨らませるタイプなら自転車で持ち運べるので、一式背負って行って、浜が空いている朝一番に海を満喫するというのも面白いですね。
ウインドサーフィンの場合、朝は風がないのでそういうのは難しいですが、夏場は日が長いので平日に仕事が終わった後、夕日を見ながらウインドサーフィンとか、そういうライフスタイルも優雅でいいんじゃないでしょうか。
遠くに住んでいるとどうしても海に行くのが「1日仕事」になりますけれど、近くに住んでいれば「午前中は海に行って、午後は家族で買い物」とか、その逆もできますよね。昼を食べて、午後から海に行って楽しんで、帰って夕食を食べて……こんな暮らしも当たり前にできますよ。住んでいれば波や風が一番いい状態の時に、確実に乗れますしね。これは検見川浜のように海が近くにあるところに暮らす特権だと思います。

―マリンスポーツ以外の面で、検見川浜エリアにはどんな魅力があるでしょう?

「ちょっと行けば何でもある」というのは、やっぱり便利ですよね。幕張にはイオンモールやアウトレットもあるし、コストコもある。食品を買いに行くにしても、近くにスーパーが充実しているし、駐車場もたっぷりあります。

イオンモール幕張新都心
イオンモール幕張新都心

それから、高速道路がすごく便利なんですよ。京葉道路も湾岸線もあって、湾岸千葉から乗れば「成田空港」まで渋滞なし、40分で確実に着きますからね。都心方面も湾岸線なら空いていて、どこに出かけるのも帰ってくるのも楽です。そういう面が非常に便利ですね。それに、治安もいいと思いますね。子どもも安心して歩かせられます。

あとは、私自身も意外に思っているんですけれど、海が近いのに塩害が全然ないんですよ。おそらく外洋の海よりも塩分濃度が低くて波しぶきも少ないから、塩が住宅地まで運ばれないんでしょうね。車も全然さびません。

―検見川浜エリア周辺で、岩下さんのおすすめスポットを教えてください。

もちろん浜が一番ですが、ほかにも海沿いにサイクリングロードがあって、花見川の源流付近まで行けるようになっているので、そこなんかはいいですね。上流に上がっていくと護岸もしていないし、街並みもだんだん時代が昔に戻っているみたいで、自然を感じられるルートになっています。片道1時間半ぐらいだったかな。親子で走っても楽しみやすい道だと思いますよ。
あとは、検見川の浜は西を向いているので、冬場は毎日みたいに富士山が見えて最高ですね。夕日の“ダイヤモンド富士”も見られますよ。

DUCK店長 岩下哲也さん
DUCK店長 岩下哲也さん

ウインドサーフィンプロショップ DUCK

店長/検見川ビーチ連盟 代表
岩下哲也さん
所在地 :千葉県千葉市美浜区磯辺3-14-5
TEL :043-279-8630
URL:http://www.duck-wsf.com/
■検見川ビーチ連盟
URL:http://www.k-b-u.jp/
※2016(平成28)年9月時点の情報です。 記載している情報については、今後変わる場合がございます。

日常にマリンスポーツがある暮らしを届ける/ウインドサーフィンプロショップ DUCK 岩下哲也さん
所在地:千葉県千葉市美浜区磯辺3-14-5
電話番号:043-279-8630
営業時間 平日 9:30~19:00 土日祝日 9:00~19:30
http://www.duck-wsf.com/