校長 坂口栄二先生インタビュー

公共施設併設で地域ぐるみの“学社融合の教育”を実践/志木市立志木小学校


2003(平成15)年に公民館、図書館と複合施設化を実現し、“学社融合の教育”を展開する「志木市立志木小学校」。1874(明治7)年の開校より145周年を迎える市内でもっとも歴史ある小学校のひとつで、伝統と先進性を併せ持った特色ある教育活動に注目が集まっている。教室と廊下との間に壁がないオープンスクールの新校舎や、「いろは遊学館」、「いろは遊学図書館」と名付けられた公共施設を活用した取り組みなど、「志木市立志木小学校」校長の坂口栄二先生を訪ね、“学社融合の教育”の実際や学校の特色などについてお話を伺った。

創立145周年を迎える志木市内でもっとも歴史ある小学校のひとつ

公共施設が併設された「志木市立志木小学校」
公共施設が併設された「志木市立志木小学校」

――まずはじめに、「志木小学校」の歩みや、現在の学校の概要・特色についてご紹介ください。

坂口校長先生:「志木市立志木小学校」は1874(明治7)年の開校で、市内では「志木市立宗岡小学校」とならんで145周年を迎えるもっとも歴史のある小学校です。公民館の「いろは遊学館」、市立図書館の「いろは遊学図書館」と一緒になった現在の複合校舎は2003(平成15)年3月に竣工したもので、県内はもとより全国でも数少ない“学社融合の教育”を展開しています。

本校は一見すると公立の小学校には見えないガラス張りの施設ですが、もともとは学校の近くにあった公民館と図書館が老朽化に伴って建て直されることになった流れから、学校と一緒に建てられたら良いのではないかという話になり整備がスタートしたようです。

今回お話をうかがった坂口栄二校長先生
今回お話をうかがった坂口栄二校長先生

本校の学校経営におけるグランドデザインには、学校地域教育目標と“地域”という二文字が入っていて、地域の中で子どもたちを育てるのと同時に、地域を大切にする子どもたちを育成しようということで、「明るくあいさつのできる子」「意欲的に学ぶ子」「思いやりのある子」「地域を大切にする子」の4つを教育目標に掲げています。

ガラス張りで、太陽光が広がる明るい施設
ガラス張りで、太陽光が広がる明るい施設

児童数は2019(令和元)年5月21日現在749名24学級で、市内で一番規模の大きい小学校です。推計によるとマンションの建設などにより今後も学区内の子どもの数は増えていくようです。本校に着任して3年目になりますが、子どもたちは何事にも一生懸命取り組む素直な子が多いなというのを感じています。

教室と廊下の間に壁がないオープンスクール仕様の新校舎

壁のない開放的な教室が特色のひとつ
壁のない開放的な教室が特色のひとつ

――新しい校舎の特色や設備等についてお教えください。

坂口校長先生:新しい校舎は“壁のない学校”いわゆるオープンスクールになっています。教室と廊下との間には壁がなく、教室の隣には同じくらいの広さのオープンスペースも設けられていて、学年の集会や発表用資料の作成等に活用されています。

また各階に“チャレンジコーナー”と名付けられた小さい図書コーナーも設けられています。図書館に行かなくても本が読め、授業の合間に調べものをしたい時など学習意欲を高める環境が整っています。

学校内の畑で野菜の収穫体験も
学校内の畑で野菜の収穫体験も

地下2階には体育館があります。一般の方にも貸出せるよう設計されているため、空調が完備されているうえバスケットコートが2面とれる広々とした空間となっています。さらに屋上には畑もあります。屋上で栽培した野菜の収穫体験や、収穫した野菜を給食でいただくなど、食育にも力を入れています。

地域の方々とのふれあいが身近にある複合施設

――複合施設として整備された校舎の特色や、それを活かした教育活動などについてお教えください。

坂口校長先生:公民館、図書館といった公共施設と一緒になったことで、教育的なメリットが多く得られるようになりました。たとえば、「いろは遊学図書館」を学校の図書館として利用していますが、3年生になると館長さんから図書館の使い方を教わります。公共施設の使い方を教えてもらえるのもメリットのひとつです。

校内の様子
校内の様子

また、昼休みに利用したり、登下校の際に返却ができたり、図書館の職員の方に読み聞かせをしていただいたり、高学年は図書委員会の委員会活動として貸出し業務を体験させてもらったりと、本や読書が身近になりました。

そのほかにも、公民館、図書館との連携授業として「命をまもる授業」を実施していただいています。昨年は動物写真家の方、一昨年はパラリンピックに出場した選手の方のお話を聞くなど、小学校だけではできないような経験をさせていただきました。

校内の様子
校内の様子

1年生の生活科では、公民館の「いろは遊学館」のサークル活動を見学させていただき、4年生は「いろは大学」の方々と一緒に音楽の授業をしました。また、特別支援学級の子どもたちは地域のサークルの方に教えていただく機会がありました。このように、地域の方々とのふれあいが身近にあるということがこの施設のもっとも大きな特色です。

“機械と人の目で安全を守る”ガラス張りの複合施設

――公共施設と一緒になることで防犯や安全面の対策はどのようにしていますか?

坂口校長先生:全国でもめずらしい施設なので、他県はもとより海外からも多く視察にいらっしゃいますが、一番多く質問をいただくのは安全面や防犯に関する対策についてです。

一般の方が利用する公共施設と一緒なので不審者が入りやすいのではと感じている方が多いようですが、それとは逆に公民館や図書館に来ている地域の人たちに見守っていただけることで、未然に危険を回避することにつながっています。

建物の構造と人の目で安全を見守る
建物の構造と人の目で安全を見守る

もちろん防犯カメラによる機械警備の導入や警備員の常駐という対策もしています。コンセプトは“機械と人の目で安全を守る”です。そのためのガラス張りなんです。教室には壁が無いので授業の様子も見えますし、一般の方が使っている公民館の部屋もガラス張りなので、こちらからも誰が来ているか見えるんです。閉鎖されていない感じ、それが“学社融合の教育”における特徴です。

交通の要衝として栄えた歴史ある地域ならではの協力体制

――地域や保護者の方との連携、協力体制についても教えて頂けますでしょうか?

坂口校長先生:志木市はもともと江戸と川越を結ぶ舟運が盛んで、江戸時代から交通の要衝として栄えてきた街ですが、3代、4代と古くからこの地域に住んでいる方も多く、「志木小学校」に対する思い入れの強い方もたくさんいらっしゃいます。一方、駅前の大きなマンションには東京への転勤などで全国から移り住んでくるご家庭も多いです。

歴史を感じる志木の街並み
歴史を感じる志木の街並み

2年生が生活科の授業で地元商店街のお店に見学に行かせていただいたり、3年生になると職業体験として店番や接客などを体験させていただいたりもしています。

また1年生と2年生、特別支援学級の子どもたちは、秋になると「慶應義塾志木高等学校」の敷地にお邪魔して「秋見つけ」をするためにどんぐりを探したりと、地域のご理解、ご協力をいただきながら学校運営をしております。

慶應義塾志木高等学校
慶應義塾志木高等学校

現在の校舎になってからは特色ある学校として注目を集め、本校の学区にわざわざこのエリアに引越してくるご家庭もいらっしゃるほどで、地域や保護者の方からの期待は大きいと感じております。

学校の雰囲気や複合施設の特色を実感できる「いろはふれあい祭り」

志木駅周辺の様子
志木駅周辺の様子

――最後に、貴校や志木エリアに関心がある方へ一言お願いいたします!

坂口校長先生:「いろはふれあい祭り」というイベントが2019(令和元)年の10月18日(金)、19日(土)、20日(日)の3日間にわたって開催されます。志木小PTAによるバザーや、「いろは遊学館」「いろは遊学図書館」の作品展示、「志木小学校」の先生もパフォーマンスに挑戦するなど、のべ1万人を超える来場者にお越しいただいているイベントです。

初日は開会式となります。午後からはミュージックフェアが予定されていて、2年生が歌声を披露します。もちろん一般の方もお越しいただけるイベントなので、ぜひ本校の雰囲気や複合施設の特色を実際にご覧いただければと思います!

志木市立志木小学校 坂口校長先生
志木市立志木小学校 坂口校長先生

志木市立志木小学校

坂口栄二校長先生
所在地:埼玉県志木市本町1-10-1
電話番号:048-471-0111
URL:http://www.shikisyo.ed.jp/
※この情報は2019(令和元)年8月時点のものです。

公共施設併設で地域ぐるみの“学社融合の教育”を実践/志木市立志木小学校
所在地:埼玉県志木市本町1-10-1 
電話番号:048-471-0111
http://www.shikisyo.ed.jp/