心身共に健康で人間性豊かな生徒の育成を目指す

地域に支えられ、 調和のとれた子どもたちの育成を目指す/練馬区立貫井中学校 校長 熊野真司先生


練馬区立貫井中学校
校長 熊野真司先生

温かみのある地域に支えられ、
調和のとれた子どもたちの育成を目指す

西武池袋線「中村橋」駅を中心に、活気あふれる商店街と落ち着いた住宅街が広がる中村橋エリア。駅から徒歩10分程の場所に建つ「練馬区立貫井中学校」は2013(平成25)年に開校50周年を迎え、この地域の伝統校として親しまれている。今回は、この記念すべき年に同校に赴任された熊野真司校長先生に、学校の教育方針や魅力、街の子育て環境などについて、お話を伺った。

2013(平成25)年に開校50周年を迎えた歴史・伝統のある学校だとうかがいました。赴任された際の印象について教えてください。

練馬区立貫井中学校
練馬区立貫井中学校

1960年代、練馬区は急激な人口増加で大きく発展していました。本校は、こうした時代の1963(昭和38)年に、「練馬中学校」を母体に区内22番目の学校として開校しました。初代校長は、目指す学生像として一番に『努力する生徒』を掲げ、これが本日まで建学の精神として引き継がれています。 本校に赴任する前ですが、開校50周年の記念式典に来賓として私も出席しました。その時、非常に多くの地域の方々が参列していらっしゃったこともあり、“地域の方々に支えられている学校だな”という印象を強く受けました。

練馬区は学校選択制を導入していますが、生徒数や学区外からの通学状況はいかがでしょうか?

貫井中学校校名
貫井中学校校名

生徒数については、ここ数年ほとんど増減なく、各学年4クラスずつの12学級、生徒数400名前後を維持しています。その1割弱程度の子どもたちが学区外から通っているといった感じですね。ただ、学区外であっても、本校と隣接した学区で、本校の方が家から近いというような子どもたちも多いです。 保護者の方たちの中には、親御さんが本校出身で、その祖父母が母体校の「練馬中学校」などという方々も大勢いらっしゃいます。そういう意味でも“地域と共に在る学校”だといえると思います。

「貫井中学校」が掲げている教育目標や、熊野校長先生が教育について大切にされていることを教えてください。

貫井中学校教育目標
貫井中学校教育目標

本校は『よく考える人』『思いやりのある人』『実践する人』を教育目標に掲げています。校章のアブラナは、この地域の植物であると共に“十字花”という花が十字に咲く高等な植物であり、調和のとれた人間形成のシンボルです。特に、伝統を重んじながらも、これからの社会に生きていく国際感覚を持った子どもを育てたいと思っています。 また私はよく本校の職員や外部に対して、『文武両道の学校を目指す』ということを発信しているのですが、これは単に部活動と勉強を両立させるというだけではなく、礼儀作法やコミュニケーションといったものまでを含めて『総合的に学習していく』という意味を込めて、この言葉を使っております。

実際の生徒たちの様子はいかがですか。

貫井中学校男女像
貫井中学校男女像

まずは、“元気な挨拶ができる”ことが本校の生徒の大きな特徴だと思いますね。挨拶というのは人との出会いのきっかけであり、教員たちにとっては生徒たちの心の健康観察にもなります。 次に“マナーをしっかり守る”、“身だしなみに気をつける”ということも大切にしています。身だしなみというのは格好をつけることではなく、相手にどう思われるかであって、きちんとした行動をしようと生徒たちに教えています。本校の生徒たちを見れば、マナーや身だしなみの良さをわかっていただけるのではないでしょうか。

一方、休み時間などには、校庭で元気いっぱいに思い思いに遊んでいる姿や、庭園で楽しくおしゃべりしているほほえましい姿なども見受けられます。 一言でいえば、本校の生徒は“素直で明るくて元気”ということでしょうね。

学習面に関して特徴あるカリキュラムや工夫されていることはありますでしょうか?

数学については、1クラス約20名の少人数制で丁寧に授業を行い、もしつまずいているようだったら放課後の補習授業などで個別に指導・支援をしてすぐにそれをクリアできるような体制を作っています。また理科については、安全かつ効果的に実験ができるよう授業内のカリキュラムを整えるとともに、それを振り返るレポート提出など、理科に対する興味関心と理解を深められるような取り組みを行っています。

貫井中学校廊下
貫井中学校廊下

さらに、国語と英語も言語活動の基礎として重要ですので、この2科目についてはなるべく手厚く指導しようと、練馬区が区内の小・中学校に配置している「学力向上支援員」を要請して講師として入っていただき、チームティーチングで授業を行っています。 このほか、学校図書館の整備を進めて、授業の中でも図書室を使って授業をできるようにしています。また、学校図書館支援員が週2日ほど勤務し、授業に必要な図書の準備やサポートをしています。

学校行事や生徒会活動を生徒たちの自主的運営で行っているそうですが、具体的にはどのように運営しているのでしょうか?

練馬区立貫井中学校インタビュー
練馬区立貫井中学校インタビュー
部活動説明会の画像

生徒会活動ですと、例えば新入生歓迎会で新1年生に委員会活動や部活動を知ってもらうために、自分たちで紹介のための寸劇を考えたり、横断幕を作ったりと工夫しています。 また運動会では、当日の準備や進行、記録の計測など、すべて生徒たちが行います。各クラスの代表と、学年を組ごとに縦割りにした応援団長とで実行委員会を組織し、事前に教員たちが3年生を中心とに指導や助言を繰り返していく。そうした中、生徒たち同士で助け合い、3年生が下級生にやり方を伝えて行き、当日は各係長や団長の指示でみんなが動いていくという形で行っています。

貫井中学校グラウンド
貫井中学校グラウンド

失敗しても、自分たちで考えて乗り越えていく、ということを経験させて育てていく。勉強であれ、課外活動であれ、子どもたちが自主的に取り組めるようにするというのが本校のコンセプトです。教員たちがグラウンドに出て何かを指示をしたり、係として動いたりということは一切ありません。

特に活発な部活動や課外活動について教えてください。

貫井中学校トロフィー
貫井中学校トロフィー

現在8つの運動部と6つの文化部がいずれも活発に活動しています。
その中でも成績を残しているという点では、文化部では吹奏楽部ですね。2013(平成25)年は東京都の吹奏楽コンクールで銀賞を獲得したほどで、毎年金賞を目指して頑張っています。それだけでなく、地域の色々な催しで演奏活動をしていることで、地域からも高い評価を得ています。 運動部でいえば、ここ数年優秀な成績を上げているのが柔道部です。都大会ではずっと上位に食い込んでおり、今後も関東大会、全国大会を狙って活動を続けていきます。

地域との関わりは学校生活の中に取り入れられているのでしょうか?

貫井中学校木立
貫井中学校木立

ほとんど地域の子どもたちが通ってきているような学校ですので、自然と見守り活動というか、近隣の方たちが気軽に声をかけてくださいます。町会長が本校にみえることもありますし、我々も毎月町会に伺って学校の近況をお伝えし、敬老会で吹奏楽部が演奏するなど、いろいろな形で協力体制を作っています。

また、近隣に商店街がありますので、職業講話の講師に商店の方をお招きして、1・2年生に職業について語っていただきます。2012(平成24)年は魚屋さんが来て、子どもたちの目の前で魚をさばくのを見せてくれました。その際、地元の活性化のために商店街のお店で買い物をしてほしいというお話もあったそうですが、地域の在り方といったことも勉強できる良い機会になったようです。この他にも「富士見台商店街」と「中村橋商店街」の多くの方々に生徒たちの職場体験に協力していただいています。

練馬区立貫井中学校 英語読み聞かせボランティア
練馬区立貫井中学校 英語読み聞かせボランティア
 英語部の読み聞かせボランティアの画像

ボランティア活動としては、例えば、英語部の読み聞かせボランティアがあります。すぐそばの「貫井図書館」と連携して、小さいお子さんとお母さん方へ英語の絵本の読み聞かせをするという活動で、年3回程度開いています。また、地域清掃なども、子どもたちが率先して取り組んでいます。学校の中だけでなく、外で子どもたちが気づいたことがあれば、当たり前のことを当たり前にできるように教えていますので、構えなくても自然と地域に貢献できる生徒に育っていると思います。

オリンピック・パラリンピック教育推進校になったそうですが、どのような取り組みが行われているのでしょうか。

練馬区立貫井中学校 運動会の様子
練馬区立貫井中学校 運動会の様子
運動会の様子が分かる写真

オリンピック・パラリンピックの精神である『偏見や差別のない社会を構築し、心と体を鍛えていくこと』を目指して、学校教育全体でさまざまな取り組みを行う計画です。
先日行われた運動会では、子どもたち自身がオリンピック・パラリンピックの精神を取り入れていくことを考え、選手宣誓では「みんなで協力し、正々堂々と公平に競技しよう」と宣言されました。早くもオリンピック・パラリンピックの精神が子どもたちの心に根付き始めてきたと思います。

貫井中学校図書館
貫井中学校図書館

オリンピック・パラリンピックが開催されると、多くの国の方がいらっしゃいます。その時、子どもたちには、おもてなしの心で接し、日本の伝統文化を伝えてほしいと考えています。そこで、英語の授業では会話能力を高める取り組みを行います。京都・奈良を訪問する修学旅行の中でも出会った外国の方と親交を深める機会が作りたいですね。おもてなしには他人を理解し、思いやる心も大切です。そのため、学校図書館にオリンピック・パラリンピック特集コーナーを設け、日本と世界の文化を比較できるようにする予定です。

もうひとつの柱となるのが、体を鍛えることと、子どもたちに将来の夢を描いてもらうことです。体を鍛える点では、日本の伝統でもある武道を重視し、特別に講師の方にいらしていただき、チームティーチングで柔道を指導しています。また、オリンピアンをお招きして、講演会をしてもらうことも考えています。実際にメダルに触れたり、生の声を聞いたりすることで、夢を膨らませてほしいと思っています。

小中一貫教育推進の観点から近隣小学校との連携を図っているともうかがいました。

練馬区立貫井中学校
練馬区立貫井中学校

本校の連携校となる小学校は2校あります。本年度はそれぞれの小学校に本校の先生が出向いて、小学校の授業の流れを把握し、どのように中学校につなげていくか肌で感じることに取り組むことにしました。また、小学校と中学校の交流として、小学生の部活動の体験をしてもらったり、中学校の見学をしてもらったりする計画を進めています。

貫井中学校校章写真
貫井中学校校章写真

小学生と中学生の交流はすでに実施している取り組みもあります。リトルティーチャーと呼んでいますが、中学生が小学校に行って英語を小学生に教える取り組みをはじめました。また、生徒会活動の一環として、中学生が小学生に中学校の説明をすることもやっています。さらに、「貫井中学校」のいいところについて各学年の生徒から集めた声を一覧にして、小学校の5・6年生や先生に配布する「貫井中大好きプロジェクト」という取り組みも行いました。こうした活動で中学校の雰囲気を感じてから入学した今年の1年生は、昨年の1年生に比べるとすんなりと中学校生活に溶け込んでいるように感じます。

校舎や校内設備についてはいかがでしょう。

貫井中学校庭園
貫井中学校庭園

校舎については内装・耐震工事などを進め、生徒たちが清掃を一生懸命行っていることもあって、中はとてもきれいで快適に整っているかと思います。建て増しをした部分があるので、コの字型のような構造になっているのが特徴です。1994(平成6)年に完成した体育館と武道場など、大きくて立派な施設が整っています。図書館は数年前に改築したばかりで、4階から1階に移し、新刊本を揃えるなど蔵書を充実させ、見やすいレイアウトを工夫したり、本の内容を簡単に紹介するポップを作るなど生徒たちが利用しやすい環境を整えました。
正門右手の庭園にある東屋風のモニュメントは開校40周年記念に地域からいただいたもので、わら葺きの屋根は地元の職人さんの手づくりです。

最後に、熊野校長先生が思われる、中村橋エリアの魅力について教えてください。

サンツ中村橋商店街
サンツ中村橋商店街

じつは、私は高校まで富士見台のすぐ隣の杉並区井草で育ったので、この辺りまではよく歩いて来ていました。当時から活気ある商店街が線路沿いに続いていましたよ。 本校に赴任してから、歩いてみたのですが、商店街は活気があるままだし、なんとなくノスタルジックな懐かしい雰囲気も未だにある。そうした温かみを感じられる地域だと思っています。 さきほどお話しましたように、商店街や町会がすごく協力的でいろいろな形で支援してくださるので、人との繋がりがとても多い地域ではないかと思います。心を育てるのは人との関わりだと思いますので、子育てにはとても向いている街なのではないでしょうか。

貫井中学校長先生近影
貫井中学校長先生近影

今回、話を聞いた人

練馬区立貫井中学校

校長 熊野真司先生

練馬区立貫井中学校
所在地:東京都練馬区貫井2-14-13
電話番号:03-3990-6412(職員室) 03-3990-6411(事務室)
URL:http://www.nukui-j.nerima-tky.ed.jp/

※2015(平成27)年6月実施の取材にもとづいた内容です。 記載している情報については、今後変わる場合がございます。

地域に支えられ、 調和のとれた子どもたちの育成を目指す/練馬区立貫井中学校 校長 熊野真司先生
所在地:東京都練馬区貫井2-14-13 
電話番号:03-3990-6412(職員室)、03-3990-6411(事務室)
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