鉄道の高架化によって東西一体となったまちづくりに注目が集まる足立区竹の塚エリア/足立区役所(東京都)
東武鉄道による宅地開発、UR団地の整備によって住宅地として発展してきた足立区竹の塚エリア。鉄道の高架化によって2022(令和4)年3月には“開かずの踏切”が解消される計画で、東西一体となったまちづくりや、待機児童ゼロを実現した取り組みにいま注目が集まっている。今回は足立区役所を訪ね、竹の塚エリアのまちづくりの取り組みや鉄道の高架化事業、子育て支援の取り組みなどについてお話を伺った。
足立区独自のまちづくりの取り組み「エリアデザイン」
ーー「竹の塚エリアデザイン計画」の概要と現状、今後の予定などについて教えてください。
上島さん(エリアデザイン推進室):まずエリアデザインというのは民間活力の誘導や区有地等の活用を効果的に行って、魅力的なまちの将来像を描くことで区のイメージアップを図る足立区独自のまちづくりの取り組みです。まちづくりを進めるにあたって都市計画マスタープランというものがあり、その下にエリアデザインが位置付けられているようなイメージで、それに基づき具体的な計画が進められています。
現在、「綾瀬・北綾瀬」「六町」「江北」「花畑」「千住」「西新井・梅島」「竹の塚」の7つのエリアが対象になっており、本日は「竹の塚エリアデザイン計画」について簡単にご紹介させていただきます。
齋藤さん(エリアデザイン推進室):「竹の塚エリアデザイン計画」は東武伊勢崎線「竹ノ塚」駅を中心とした半径1kmほどの地域を対象とした計画で、東側は日光街道(国道4号線)から西側は都市計画道路の補助253号線(愛称名:大師北参道)のあたりまでを範囲としています。
注目すべきは鉄道の高架化によってこれまで東西に分断されていたまちが一体化するという点ですね。東西に行き来しやすくなることで人の動きも変わると思いますし、東西一体となったまちづくりを進めるチャンスだと捉えています。
今後の予定としては2022(令和4)年度から2024(令和6)年度まで3年程度の取り組みの方針を示し、その後まちの動きが見えてきた段階でエリアデザインを策定することになりました。当初は2021(令和3)年度に計画を策定する予定だったのですが、駅の東側にあるUR団地のストック再生事業について具体的な計画が示されていないことや、鉄道高架化後の高架下利用、西口駅前交通広場の暫定利用についても引き続き協議を進めていく必要があると判断し方針を変更することにしました。
オンラインを活用したアンケートを実施し、今後のまちづくりに生かす
――竹の塚のまちづくりに関するアンケートも実施されたそうですね。
齋藤さん:竹の塚のまちづくりに関する住民の方の意向を把握するために2021(令和3)年6月1日から30日にかけてアンケートを実施しました。コロナ禍ということもありオンライン説明会を中心に、WEB上でアンケートも回答いただくようにしました。
これからのまちづくりについて考えるため若い方や子育て世帯の声も聞きたいと思い、近隣の小学校7校にもチラシを配り周知を行いました。その結果、1ヶ月間で1,000近い回答をいただき、普段なかなか声を聞くことのできない若い方のご意見も伺えたように思います。
オンライン説明会で配信した動画やアンケート結果をまとめた「竹の塚意向調査結果報告書」は区のHP(https://www.city.adachi.tokyo.jp/sesaku/2021takenotsuka-infosession.html)からもご覧いただけますので興味のある方はぜひご覧ください。
ちなみに配布したチラシ(https://www.city.adachi.tokyo.jp/documents/52260/takeposter.jpg)には竹の塚のまちづくりがひと目でわかるようなイラストが描かれています。例えば駅前にはURの団地があり、昔ながらの商店街が買い物にも便利です。また区画整理によって整備された駅の東側には公園もあって過ごしやすい地域です。
一方、イラストの左側つまり駅の西側には戸建ての住宅がたくさんあり、東側とは性格の異なるまちが広がっています。駅からちょっと離れると「西伊興」という地域にはお寺がたくさんありますし、「舎人」には農地が残っている場所もあります。そしてこれらが鉄道の高架化によって一緒になるというのがイラストで表現されています。
2022(令和4)年3月に踏切が解消され、新駅舎も誕生
――鉄道高架化事業について工事の進捗や完成予定などについてもお聞かせください。
影山さん(鉄道立体推進室):東武伊勢崎線「竹ノ塚」駅を中心とした約1.7kmを事業範囲とし、鉄道を高架化する事業を進めています。「竹ノ塚」駅には南北にそれぞれ踏切があり、赤山街道と駅北側区道に踏切が設置されています。
工事に着手する前まではピーク時で1時間あたりの踏切遮断時間が58分、つまり1時間でわずか2分しか踏切が開いていないような状況があり、“開かずの踏切”として慢性的な渋滞を引き起こしていました。
そこで2011(平成23)年12月に事業認可を取得し事業を進めてきましたが、2022(令和4)年3月にいよいよ踏切が無くなります。資料「東武伊勢崎線(竹ノ塚駅付近)連続立体交差事業の概要」(https://www.city.adachi.tokyo.jp/documents/31418/gaiyou.pdf)の施工順序図をご覧いただくとよくわかるかと思いますが、この事業では上下の急行線と上下の緩行線(普通列車)、「竹ノ塚」駅始発の電車が折り返すための引上げ線(2線)を高架化する予定であり、そのうち上下急行線の2線はすでに高架化しています。
2022(令和4)年3月には上下の緩行線が高架化され、その後引上げ線高架化工事等を進め、2023(令和5)年度末に事業が完了する予定です。
「竹ノ塚」駅周辺地区まちづくり連絡会が編集している「まちづくりニュース」に、透明な素材のパネルや木目調のデザインを採用した新駅舎のイメージ図が紹介されています。
もともとは一般的な駅舎だったのですが、2018(平成30)年度に駅を利用する方を対象としたアンケートを実施し、「明るい」、「シンプル」、「自然的」といったご意見をいただき、地域の方にとって親しみの湧くようなデザインにいたしました。
また駅舎内の仕様につきましても「多機能トイレを増設し、広くして欲しい」、「エレベーターを広くして欲しい」、「改札幅を広くするなど動線に配慮して欲しい」などと言ったご意見をいただき、現在のような仕様になっています。
なかでもトイレが充実しており、多機能トイレの他にもおむつ替えコーナーや授乳室、子ども用の小さいトイレも設置する予定です。また女性トイレにはパウダーコーナーを設け、男性トイレも円形のデザインを採用しています。
「子育てサロン」を通じた地域の子育て支援の取り組み
――足立区の子育て支援の取り組みについてお聞かせください。
矢野さん(地域のちから推進部住区推進課):本日は私たちが担当している「子育てサロン」を中心にご紹介させていただきます。まず「子育てサロン」というのは0歳から3歳児のお子さんとその保護者を対象にした施設で、親子で安心して自由に遊ぶことができるスペースです。
足立区の子育てサロンは大きく3つのタイプに分かれまして、「商業施設等内の子育てサロン」と「拠点型子育てサロン」、「児童館子育てサロン」があります。このうち「商業施設等内」と「拠点型」には保育士資格などを持つ専門の職員が常駐し、子育ての悩みごとや相談にも応じています。
また、竹の塚地域には「拠点型」が4か所あり、「竹ノ塚」駅近くの保健センター内にある「子育てサロン竹の塚」とギャラクシティの中にある「子育てサロン西新井」、六月町にある「子育てサロン六月」、総合スポーツセンター内にある「子育てサロン東保木間」の4つの施設を中心に地域の子育て支援に取り組んでいます。
「子育てサロン竹の塚」については保健センターの休日診療所の待合スペースで運営させていただいていることもあり、土日に開設できないということで今後「商業施設等内」のサロンを整備できないかと検討を進めているところです。
ある調査結果によると竹の塚エリアは0歳から3歳児のお子さんを自宅で養育しているご家庭が他の地域と比べて多いことがわかりました。つまり保育園等の施設に預けずにある程度の年齢までは自宅で子どもを養育しようという考えのご家庭が多いということを示しており、「子育てサロン」の役割もますます重要になってきます。
足立区は2021(令和3)年4月に「待機児童ゼロ」を実現し、子育てしやすいまちとしても注目されておりますので、「子育てサロン」につきましても保護者の方が育児に不安を感じたり孤立感を感じたりということをなるべく軽減できるように引き続き取り組んでいきたいと思います。
新たな取り組みとしてスタートした「おうちde子育てサロン」
――コロナ禍における取り組みなどはいかがでしょうか?
最初の緊急事態宣言が出たときは「子育てサロン」も休室することになり、電話による相談窓口の体制を整えることにしました。「電話で声を聞かせてね」とか「悩みがあったら教えてね」と。
「家にいてください」「外出しちゃダメですよ」と言われれば言われるほど、子育てもどうしたら良いか分からなくなって行き詰まってしまった親御さんも多くいたと思います。
また他のお子さんと会って比べることもできないので「うちの子って順調に発育しているのかな?」と不安を感じていた親御さんも多くいたと思います。やっぱり子育てをしている親御さんは外の世界と隔てちゃいけないよねという思いがあり間もなくサロンを再開することにしました。
時間枠を設けて予約制や人数制限を行ったうえで運営し、通常のかたちではありませんでしたが、どうにか親御さんたちを受け入れて来られたと思います。
他にコロナ禍ではじめた取り組みとしては、「動画deあだち」というYouTubeの公式チャンネルの中で「子育てサロン」のスタッフが日頃やっている手遊びやダンス、絵本の読みきかせを映像にしてご自宅でも「子育てサロン」とつながっているような経験のできる動画を配信させていただきました。
「おうちde子育てサロン」(https://www.city.adachi.tokyo.jp/citypro/ouchidekosodatesaron.html)は区のHPからもご覧いただけますので、ぜひお楽しみください。
読み語りの動画を制作し、絵本の読み聞かせの大切さを伝える
――「あだち絵本シアター」という読み語りのイベントも人気のようですね。
「あだち絵本シアター」というのは、民間企業からの寄付により「子育てサロン」や商業施設などで2018(平成30)年度から取り組んでいる読み語りのイベントです。絵本に親しむ体験を通して絵本の好きな子どもを増やすことを目的とした事業で、大人も子どもへの絵本の読み語りの大切さに気づく特色ある取り組みです。
コロナ禍になりイベントが開催できない状況が続いていましたが、読み聞かせのプロとして知られる「聞かせ屋。けいたろうさん」と株式会社KADOKAWAさんにもご協力をいただいて、「はじめて絵本の選び方」と「絵本でスキンシップ」という2本の動画を制作させていただきました。
「あだち絵本シアター(https://www.city.adachi.tokyo.jp/toshokan/topics/2021yomikataridouga.html)」
2020(令和2)年度にリリースし、これまでに4,000回以上もの視聴をいただいています。単純に絵本を読み語るだけの動画ではなくて、親御さんが子どもに読んで聞かせることが大事ですよと。またそのコツとしてこういう風に読み語ると良いですよといったアドバイスを織り交ぜた内容にしているのも特徴です。
地元の期待値も高い将来に向けて大きく変わるまち
――これから竹の塚エリアに住むことを検討している方へメッセージをお願いします。
上島さん:通勤通学のことを考えると、「竹ノ塚」駅は始発駅なので選ぶポイントのひとつかなと思います。
齋藤さん:そうですね。エリアデザインで地域の方にアンケートをした際も、始発駅が魅力だと言う方が多くいらっしゃいました。
上島さん:今後、高架下利用や西口駅前交通広場の整備計画もありますので、ますます駅周辺がきれいになって魅力的なまちになるのではないかと思います。
影山さん:高架化事業について地元の方から工事の進捗に関する問い合わせをいただくのですが、最近はどんなまちになるのかというところにも注目されていて、高架下利用について問い合わせをいただくこともあります。
今後エリアデザインで高架下利用についても協議が進められて行くかと思いますが、これからどんどん変わっていくまちとして地元の方の期待も大きいのかなと思います。
矢野さん:以前、職場が「竹ノ塚」駅の近くにありまして、まちなかに公園がいくつもあってすごく雰囲気が良いところだなと感じていました。少し歩けば「元淵江公園」という大きな公園もあって、いろんな公園があるのも魅力的だなと。
醍醐さん(地域のちから推進部住区推進課):「元淵江公園」と言えば毎年12月から1月にかけて行われる「光の祭典」のイルミネーション会場として知られています。昨年に引続きコロナの影響によりイルミネーションの規模を縮小し、公園では実施しないようですが、代わりに自宅などで楽しめる「デジタルイルミネーション」を実施しているようです。詳しくは、足立区観光交流協会のホームページをご覧ください。
足立区役所
地域のちから推進部住区推進課事業担当 醍醐和可子さん
地域のちから推進部住区推進課事業担当係長 矢野恵子さん
エリアデザイン推進室エリアデザイン計画担当係長 上島誠さん
エリアデザイン推進室エリアデザイン計画担当係長 齋藤敦さん
鉄道立体推進室竹の塚整備推進課立体化担当係長 影山英将さん
所在地 :足立区中央本町一丁目17番1号
電話番号:03-3880-5111
URL: https://www.city.adachi.tokyo.jp/index.html
※この情報は2021(令和3)年11月時点のものです。
鉄道の高架化によって東西一体となったまちづくりに注目が集まる足立区竹の塚エリア/足立区役所(東京都)
所在地:東京都足立区中央本町1-17-1
電話番号:03-3880-5111
開庁時間:8:30~17:00 ※第4日曜日9:00~16:00に一部窓口を開庁
閉庁日:土・日曜日、祝日、年末年始(12/29~1/3)
https://www.city.adachi.tokyo.jp/