オーナーシェフ 磯部繁樹さんインタビュー

主役は料理ではなくお客様自身。常連さんが愛する店/にっぽん料理 nonona 野々菜(神奈川県)


平塚の名店中の名店と言える「にっぽん料理 nonona 野々菜」。素材の味が引き出された品々は、思わずうなりたくなるほどの美味しさだ。そんなこだわりの料理を提供しながらも、お客様が楽しむ時間を主役に、料理はそのための潤滑油であると笑顔で言い切るオーナーシェフの磯部さん。店内はどこか凛としたものがただよう一方で、肩肘を張らず、自然体でいられる空間で、常連さんが通うお店であることもうなずける。お店のこだわりや磯部さんの思いについて、お話を伺った。

日本料理ではなくにっぽん料理。堅苦しくなく楽しんでいただけるように

――2004(平成16)年に開業されたそうですね。開業にいたる経緯と、平塚をその地に選ばれた理由を教えてください。

磯部さん:料理人を目指したのは、フレンチの料理人だった父の影響が少なからずあるのかもしれません。しかし父と同じフレンチの道に進めば、ずっと比較されつづけると思ったので最終的には日本料理を選びました。10代で料理の世界に入り、小田原、熱海、下田、東京の西麻布でも働きました。そして平塚のある居酒屋で店長をしていたときに、いい結果を出すことができて自信がつきました。いつかは日本料理の店を出したいと気持ちが、今独立しようという気持ちに変わったのです。

当初から、地元・小田原で店を出しているイメージが湧かず、かといって東京でもないなと。10代のときからよく知っていた平塚を大人になってから訪ねると、当時と同じようにとてもいい街だなと感じ、最終的に平塚を選びました。

開業に至る経緯を語る磯部さん
開業に至る経緯を語る磯部さん

――「にっぽん料理 nonona 野々菜」という屋号についてですが、“日本料理”ではなく、“にっぽん料理”とされたのはなぜですか?

磯部さん:もともとは“日本料理”と表記するつもりだったのですが、義理の母に“それだと格好が良過ぎないか”と(笑)。同じ頃、バレーボールのワールドカップをテレビで見ていたら、会場から“にっぽん!”と大きな声援が聞こえてきました。この方が、堅苦しい感じがなくていいかもしれないなと思ったのです。

“野々菜”については、これはもう妻による鶴の一声ですね(笑)。真ん中の字を取ったら野菜になります。当時、野菜を売りにしている店はまだ少なく、この屋号にして、美味しい野菜を出せばきっと喜んでもらえるだろうなと。現在は契約農家さんにお願いして送ってもらっています。そのなかには平塚の方もいますよ。

料理は会話の潤滑油。お客様に笑顔で帰っていただきたい

――料理に対するこだわりと、おすすめの一品について教えてください。

磯部さん:季節に関係なく、旬の野菜を味わっていただく「炊きあわせ」を最初にお出ししています。常に心がけているのは、料理を出しながら、いかに自らも一緒に食べている感覚に近づけるかということです。一般的に会話というのは、あくまでもお客さんと作り手との間の潤滑油といったイメージですが、私はその逆で、料理こそ会話の潤滑油だと思っています。ですから会話の妨げにならないような料理、提供の仕方が特に大切です。

炊き合わせ
炊き合わせ

言うまでもありませんが、料理に力を入れないということではありません。日々上達したいという気持ちは持ちつづけています。つまり“こだわりのこの料理をぜひ食べてみて”という一方的な姿勢ではないということですね。お客さんが笑顔で店を出ていかれることを最大の目標とし、そのためにどうあるべきかを常に考えています。私にとって最大の褒め言葉は、エンターテイナーと言われることです(笑)。

――日本酒やワインだけでなく、アルコール類も幅広く取り揃えているようですね。また、お酒の持ち込みも可能だと伺いました。

磯部さん:日本酒は口開けすると時間とともに味が落ちていきますから、300mlの飲み切りサイズを中心に据えています。私が他所であまり日本酒を飲みたいと思わないのは、いつ口開けしたのか分からなものが出てくるからです。日本酒はよく“悪酔いする”と言う人がいますが、鮮度のいいものだとそうなることはまずありません。

お酒の持ち込みについては、特にワインの場合、コレクションされている方もいらっしゃいます。そういう方は、いつ誰とどの料理と合わせるかを大切にされますし、私もその気持ちがよくわかりますから、自然とこのようなかたちになりました。

お店に並ぶワイン
お店に並ぶワイン

暮らしやすい平塚の街で地元の皆さんに支えられながら

――どのような方がいらっしゃいますか?

磯部さん:地元の方が中心で、9割近くが常連さんです。当店に限った話ではないのですが、コロナ禍による影響も少なからずありました。そのような状況のなかで、常連さんが多いということに随分助けられました。大半が予約で、それぞれ満足していただきたいので満席にすることはまずありません。年代層としては、平均50代くらいだと思います。

目にも美しい品々
目にも美しい品々

――平塚エリアで仕事をされること、また住むということについて聞かせてください。

磯部さん:冒頭でも申し上げましたが、若いときから平塚はいいイメージの街でした。住み始めてから特によかったのが、早朝の「平塚なぎさプロムナード」です。人通りの少ない土・日曜日は清々しいとさえ感じます。電線がないので開放感があり、道幅も広いのに交通量が少なく静かです。家路につくとき、きれいな月が出ていたら、そのまま海まで行ってしまいたくなるくらいです。実際の生活面でも、自動車がなくても生活できますし、坂道もほとんどないので自転車で過ごせるというのも平塚の特徴ですね。

にっぽん料理 nonona 野々菜

オーナーシェフ 磯部 繁樹 さん
所在地 :神奈川県平塚市八重咲町25-27 2F
電話番号:0463-23-7601
URL:http://slowfood-nonona.fine7.com/
※この情報は2022(令和4)年2月時点のものです。

主役は料理ではなくお客様自身。常連さんが愛する店/にっぽん料理 nonona 野々菜(神奈川県)
所在地:神奈川県平塚市八重咲町25-27 2F
電話番号:0463-23-7601
営業時間:11:00~13:00、18:00~21:30 L.O.
定休日:日曜日(月曜日祭日のときは月曜日)
http://slowfood-nonona.fine7.com/