林 美由紀さん、塙 綾子さんインタビュー

「羽田空港」や都心、横浜に近いポテンシャルを生かしたまちづくりが進む「川崎」駅周辺地区/川崎市まちづくり局拠点整備推進室(神奈川県)


2024(令和6)年に市制100年を迎える川崎市。都心や横浜方面への交通の利便性と「羽田空港」の玄関口としても大きなポテンシャルをもつ「川崎」駅周辺地区では、官民連携のもと魅力的なまちづくりが進められている。2021(令和3)年に開業した「KAWASAKI DELTA(カワサキデルタ)」や2023(令和5)年の開業に向けて工事が進められている「SUPERNOVA川崎」もまた、川崎に更なるにぎわいと活力をもたらす施設として注目を集めている。

今回は川崎市まちづくり局拠点整備推進室を訪ね、「川崎」駅周辺地区のまちづくりの概要についてお話を伺った。

川崎市まちづくり局 拠点整備推進室 林 美由紀さん(左)、塙 綾子さん(右)
川崎市まちづくり局 拠点整備推進室 林 美由紀さん(左)、塙 綾子さん(右)

1980年代以降、段階的に整備が進められている「川崎」駅周辺地区のまちづくり

――「川崎」駅周辺地区のまちづくりの概要について教えてださい。

塙さん まず川崎市の地図をご覧いただくと東西に細長い形状をしていまして、北は多摩川を挟んで東京都と隣接し、南もまた横浜市と隣り合っていることから、首都圏における拠点都市のひとつとして重要な役割を担っていることが分かります。

そこで本市では「川崎駅周辺地区」、「小杉駅周辺地区」、「新百合ヶ丘駅周辺地区」の3地区を広域拠点に位置づけ、隣接する都市へのアクセスの良さを活かしたまちづくりを進めています。

本日は「川崎駅周辺地区」のまちづくりについて、主に駅の西側を中心にお話させていただきます。

「川崎」駅の西側は、今でこそ「ラゾーナ川崎プラザ」や「ミューザ川崎」など駅前に新しい建物が建っていますが、以前は大規模な工場や老朽化した公的団地などがあり、また広い道路が無かったことなども課題としてありました。

2006(平成18)に開業した「ラゾーナ川崎」
2006(平成18)に開業した「ラゾーナ川崎」

1980年代に入ると駅前にあった工場の移転に伴う土地利用転換が進み、駅周辺の都市基盤整備を進めることになりました。パンフレットにもまちづくりの概要が分かりやすくまとめられておりますが、2006(平成18)年4月に「川崎駅周辺総合整備計画」が策定され、目指すべきまちづくりの方向性を示した基本方針等に基づいて段階的に整備が進められているところです。

近年の動きとしては、2003(平成15)年に「ミューザ川崎」という複合施設ができて、さらに2006(平成18)年には「ラゾーナ川崎プラザ」が開業したことによって駅周辺の街の雰囲気は大きく変わったと思います。

また直近の話題としては「ミューザ川崎」の隣の区画に、2021(令和3)年「KAWASAKI DELTA(カワサキデルタ)」がオープンしまして、さらに街のイメージが変わってきたかなと思います。このように広域拠点にふさわしいまちづくりを進めているのが「川崎」駅周辺地区になります。

2023年10月のオープンに向けて整備が進められている「SUPERNOVA川崎」

――「川崎駅西口大宮町地区 地区計画区域内の地区施設の整備活用事業」について概要を教えてください。

塙さん 「ミューザ川崎」のある地区が「川崎駅西口大宮町地区」と言いまして、1999(平成11)年の都市計画決定より計画的にまちづくりが進められています。

本日お話しさせていただく地区施設の整備活用事業は「KAWASAKI DELTA(カワサキデルタ)」の隣の区画のことで、当初から緑地を整備する計画だったのですが、駅からも比較的近く「ミューザ川崎」や「KAWASAKI DELTA(カワサキデルタ)」といった施設とも2階レベルで歩行者のネットワークが整備されていることから、もっと上手な活用の方法がないかということで議論が行われていました。

そこで民間の方のノウハウやアイデアを生かした整備ができないかということで公募を行いまして、ご提案いただいたのが株式会社ホリプロを代表企業とする共同企業体の計画です。

緑地というと一般的には平面の緑地をイメージされるかと思いますが、ご提案いただいたのは屋上に立体的な芝生広場を有する大小2つのホールを持った施設です。2022(令和4)年5月より工事が始まっていますが、先日ホリプロさんのプレスリリースが出まして、施設名は「SUPERNOVA川崎」になることが決まりました。スペルノーヴァというのはイタリア語で超新星という意味で、様々な新しい才能と出会えることを望んで名前がつけられたそうです。ホリプロさんのHPには外観のイメージなども掲載されており、2023(令和5)年10月15日のオープンに向けて整備が進められているところです。

「SUPERNOVA川崎」パース図  引用元:株式会社ホリプロ プレスリリース
「SUPERNOVA川崎」パース図  引用元:株式会社ホリプロ プレスリリース

「羽田空港」と直結するポテンシャルを生かした川崎の玄関口にふさわしいまちづくり

――次に「京急川崎駅周辺地区まちづくり整備方針」について概要を教えてください。

林さん 「京急川崎」駅周辺地区のまちづくりですが、これまでお話しした「川崎」駅周辺地区のまちづくりとは分けて整備方針を立てていまして、概要は市のHPからもご覧いただけるようになっています。

「川崎」駅周辺地区は以前から段階的に整備が進められて来たのですが、「京急川崎」駅周辺地区については大規模な土地利用転換といったものが行われず、また道路などの都市基盤も十分では無かったため、建物の更新や土地利用転換といったことがあまり進んでこなかったという状況があります。

「京急川崎」駅前の様子
「京急川崎」駅前の様子

一方で、「京急川崎」駅は「羽田空港」と直結する川崎の玄関口というポテンシャルがありまして、より戦略的にまちづくりを進めていくべきというところから2015(平成27)年に「京急川崎駅周辺地区まちづくり整備方針」が策定されました。

内容としてもっとも重要なのは「羽田空港」直結というポテンシャルを生かして、ビジネスや観光など国内外から人が集まり交流する広域拠点として機能を充実させることで、川崎の玄関口にふさわしいまちづくりを進めていきましょうといったことが方針として盛り込まれています。

また民間と行政が連携して効果的にまちづくりを進めることで、新たな魅力や価値を創出し魅力ある都市づくりを目指しています。民間開発事業の進捗に合わせて道路などの基盤整備を行うなど、官民連携することで、土地の整備と基盤整備を効率的かつ計画的に進めていくという考え方です。

このように官民連携して進める整備誘導の考え方についても市のHPに資料がありますので、ぜひご覧ください。

新しい機能が増えることにより新しい価値観が生まれ多様性が広がる

――「川崎」駅周辺地区が今後どのように変わっていくか、どのような暮らしの変化が期待できるかお聞かせください。

林さん 個人的な回答にはなりますが、昨年オープンした「KAWASAKI DELTA(カワサキデルタ)」や今後開業する予定の「SUPERNOVA川崎」といった施設のように、都市として新しい機能が少しずつ増えてきているのを感じます。

これまで川崎に来なかった人も、新しい機能が増えたことによって川崎に行ってみようとか、住んでみようとか、働いてみたいという方もどんどん増えていく可能性が広がっているのかなと思います。そういう人が増えてくると、人と人との交流とか新しい価値観も生まれ、総じてそれをにぎわいと言うのかなと思いますが、そういうものが今後どんどん生まれてくるのかなと思います。街として発展し、新しい価値観が生まれて多様性が広がっていくと良いなと私は思います。

さまざまな形で、更なる街の発展が計画されている
さまざまな形で、更なる街の発展が計画されている

――「KAWASAKI DELTA(カワサキデルタ)」の歩行者空間も電車を見られる素敵なスポットでしたが、その先にホリプロさんの施設ができるのは今から楽しみですね。

林さん 今日お話ししたようなまちづくりの方針というのは、一見するとかたい内容のものだと思いますが、実際に目に見えるかたちとして良いものが出来上がってくると、まちづくりがどういう思いで進められているのか感じていただけるかなと思います。

これまで駅前のイメージと言えば、大きな建物がひしめき合っている印象が強くありますが、社会状況の変化や時代のニーズなどに応じてまちづくりの考え方というのも少しずつ変化しています。例えば、コロナ禍になって人と人とがおたがい距離をとることが求められるようになったことで、まちづくりを進めるうえでも都市の中の公共空間というのをとても大事なことだと考えるようになりました。

昨今、ウォーカブルなまちづくりという言葉を聞きますが、車ではなく人目線で街を作っていこうといった方向性があります。そういう視点を持って駅前の空間づくりや民間さんにもご協力いただきながらより多様性をもって使えるような空間を作っていくことが今後重要視されていくのかなと個人的には思っています。

気さくに快く、川崎市への思いをお話いただいた
気さくに快く、川崎市への思いをお話いただいた

塙さん そうですね、「SUPERNOVA川崎」ももともとは緑地にする計画だったものが民間の方との協力によって新しい価値が生まれます。おそらくホリプロさんもこの街にインスピレーションを感じて手を挙げていただいたかなと思いますが、新しい方が入って来て新しい価値が生まれ、また新しい人を呼び込むといったかたちで好循環を生み出せるととても理想的だなと思います。

脱炭素社会の実現に向けた取り組みに注目が集まる川崎市

――「川崎」駅周辺だけでなく川崎市全体のまちづくりのポイントとなる点や、川崎市として今後の注目するポイントなどがあればお聞かせください。

林さん ひとつは環境に配慮したまちづくりの推進という部分は今後ますます重視されると思います。

塙さん 「KAWASAKI DELTA(カワサキデルタ)」でもカーボンニュートラル都市ガスを導入して、脱炭素社会の実現に向けた取り組みが進められています。今後、大規模な土地利用転換をする時はそういった取り組みを一緒に実現していきませんかといったお声かけをすることになるかなと思います。

脱炭素社会の実現に向けた取り組みとしては、臨海部で民間の企業さんと連携をして二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みが本格的に始まったほか、溝口の周辺でも民間の企業さんと協力して脱炭素に向けて取り組む「脱炭素アクションみぞのくち」といった官民連携した取り組みがあり注目を集めています。

南幸町は駅に近く便利な地域で商店街があるのも魅力のひとつ

――川崎市南幸町エリアの魅力についてお聞かせください。

塙さん 南幸町は駅に近く便利な地域で商店街があるのも魅力のひとつだと思います。駅前に出れば大抵のものはそろうと思いますし、地元の商店街に足を運んでいただいてお気に入りのお店を見つけていただくのも楽しみのひとつかと思います。路地裏にも個性的なお店があるんです。

あとは町内会の活動にも力を入れて取り組んでいらっしゃって、毎年8月になると女躰神社の例大祭があるのですが、それに合わせて商店街でもお祭りが行われているそうです。地元の方が地域を盛り上げようという気運がとても高い地域だと思います。

お気に入りのお店を探すのも楽しい「川崎南河原銀座 ハッピーロード」
お気に入りのお店を探すのも楽しい「川崎南河原銀座 ハッピーロード」

林さん 駅前は何でもそろうので買い物にはとても便利で、個人的にもよく買い物に来たりしています。

私たちの部署では公共空間の有効活用も取り組みのひとつとして進めさせていただいておりまして、「川崎」駅東口駅前広場において「カワサキよりみちサーカス」という実証実験を行っています。キッチンカーによる飲食物の提供や雑貨などの物販、歌手や芸人さんなどパフォーマンスをする方なども集まって年1回程度行われています。

「カワサキよりみちサーカス」などの実証実験も行われている「川崎」駅東口駅前広場
「カワサキよりみちサーカス」などの実証実験も行われている「川崎」駅東口駅前広場

もともと駅前に散乱するゴミや落書きといった課題を解決するために始まった取り組みですが、自分たちの街を良くしていきたいという思いで集まってくださる方が多く、地域には川崎愛の強い人が多いなという印象を持っています。

「地元が川崎です」とか「川崎のことが好きでみんなと一緒に川崎で楽しみたい」といったことを言ってくださる方が本当に多くて、地域を良くしたいとか川崎に来て欲しいという思いで取り組みが根付いているのはすごいことだなと思います。

交通の利便性に加え、新旧合わせた多様なまちの魅力をもつ「川崎」駅周辺

――最後に、これから川崎市南幸町エリアにお住まいになる方々に向けてメッセージをお願いします。

塙さん 「川崎」駅周辺地区では「羽田空港」や東京、横浜に近い便利なポテンシャルを生かして川崎の玄関口にふさわしいまちづくりを進めているところです。実際に住んでいただいて、便利さや快適さ、またこれから街が成長する様も体感していただけると大変ありがたいです。

林さん 私も同じで川崎は横浜に行くにも東京に行くにも便利なところが魅力だと思います。あと駅前には新しい施設やお店がたくさんありますが、駅から少し離れると昔ながらのお店も残っていて、ちょっと裏路地に入ったところに個性的なお店があったり、新しくリノベーションした施設で切子体験ができるような施設もあったり。新旧合わせた多様な魅力があるというのも街の魅力かなと思います。

神奈川県川崎市川崎区・川崎市役所
神奈川県川崎市川崎区・川崎市役所

川崎市まちづくり局 拠点整備推進室
川崎駅周辺整備推進

所在地:神奈川県川崎市川崎区宮本町1
電話番号:044-200-3027
URL:https://www.city.kawasaki.jp/500/page/0000140036.html
※この情報は2022(令和4)年10月時点のものです。

「羽田空港」や都心、横浜に近いポテンシャルを生かしたまちづくりが進む「川崎」駅周辺地区/川崎市まちづくり局拠点整備推進室(神奈川県)
所在地:神奈川県川崎市川崎区宮本町1 
電話番号:044-200-2111(代表)
開庁時間:平日 8:30~17:00
     第2・第4土曜 8:30~12:30(区民課・保険年金課の一部業務を開庁)
閉庁日:土曜、日曜、祝日、年末年始(12/29~1/3)
http://www.city.kawasaki.jp/