校長 山岸隆行先生インタビュー

まち探検や挨拶運動など地域と共に歩む取組みを実践/川崎市立夢見ヶ崎小学校(神奈川県)


川崎市幸区には「加瀬山」という名で親しまれている丘があり、「川崎市立夢見ヶ崎小学校」はそのふもとにある。徒歩圏内に「新川崎」駅、「鹿島田」駅がある閑静な住宅地の中にあり、毎年行われているイベント「ドリームステージ」は、地元でも有名だという。着任3年目の山岸隆行校長先生に、学校の取り組みや地域の魅力について伺った。

山岸隆行 校長先生
山岸隆行 校長先生

6年間を通して音楽教育に力を入れている

――学校の概要および学校の教育方針について教えてください。

山岸校長先生:1984(昭和59)年創立の公立小学校です。今年度の児童数は383人で、通常学級が13クラス。特別支援級が3クラスとなっています。教育目標は「心身ともに健やかで 思いやりのある児童の育成」。この目標を達成するため、自ら考え進んで表現する「確かな学び」、規範意識と思いやりを持って進んで人と関わる「豊かな心」、「健やかな身体・子どもの安全」、「開かれた学校づくり」の4つを柱に取り組んでいます。

「川崎市立夢見ヶ崎小学校」正門
「川崎市立夢見ヶ崎小学校」正門

――特に力を入れて取り組んでいることがあれば教えてください。

山岸校長先生:音楽教育に力を入れているのが、本校の特色です。音楽の授業は、1・2年生はクラス担任と音楽専科の先生2人体制で教え、3年生からは音楽専科の先生が担当しています。音楽専科の先生が関わるのは3・4年生からという学校が多く、本校のように1年生から6年生まで音楽専科の先生が関わる学校はあまりないと思います。低学年のうちは手厚くサポートし、6年間計画的かつ継続的に指導するので、楽器演奏などが嫌いになる子がいないです。また、コロナ禍の現在は休止していますが、月に1度、体育館に全校生徒が集まって歌を歌う「音楽集会」を毎月行っています。音楽委員が季節に合った毎月の歌を決め、毎日クラスごとに朝の会で練習します。みんな楽しそうに取り組んでいますよ。

児童の作品が数多く展示された廊下
児童の作品が数多く展示された廊下

縦割り班の活動も重視し、定期的に行っています。低学年の子は上の学年の子たちの立ち振る舞いをよく見て自然と学びますし、上級生は下級生の面倒をみる意識が自然と育まれます。この「自然に」というところを大切にしています。言って分かることではないですからね。近年は時間割の都合でなくす学校も増えていますが、これからも続けていきたいと思っています。

また、「チャレンジ博士テスト」という漢字と計算の全校テストを年2回行い、達成者を表彰しています。「〇月〇日にテストをやります。ここからここまでが試験の範囲なので、各自勉強しておいてください」という中学校のようなスタイルが特徴です。自ら学ぶ姿勢を育てたいという想いから始まりました。基礎学力の強化にも役立っていると思います。

廊下横の広々とした空間にも、児童の制作物などが展示されている
廊下横の広々とした空間にも、児童の制作物などが展示されている

――2004(平成16)年から行っている「ドリームステージ」について、始められた経緯を教えてください。また、昨年12月に開催された今年度のステージについてお聞かせください。

山岸校長先生:「ドリームステージ」は、授業で学んだ成果を発表する学習発表会です。子どもが頑張る姿を保護者に見せたいとの想いから始まりました。こちらも、授業時数の確保のため近年は規模が縮小される傾向にありますが、本校では毎年全学年が参加して行う一大行事となっています。子どもたちも保護者の方々も非常に楽しみにしているので、コロナ禍でも発表時間を短縮するなど工夫し、昨年度と今年度は「ドリームステージmini」として行いました。

今年は全学年が、創作劇でした。例えば3年生の劇は、川崎市をテーマに市長さんや秘書の方を中心に話が展開しました。授業で学んだ各区の情報を盛り込み、歌で締めくくるというもので、先生の手腕にも感心しましたね。歌なしで行った昨年度は「子どもたちの歌を聴きたい」という声を多くいただいたので、歌えるようにした今年度は特に喜んでいただけました。子どもたちの歌声に涙を流す保護者もいらっしゃいましたし、「やっぱりゆめみの子たちの歌はすごい」との声もいただき、やって良かったと思いました。

コロナ禍で制限され、体験学習の重要性を再認識

――GIGAスクール構想の実現のために取り組んできたことがあれば教えてください。

山岸校長先生:川崎市では、今年度から一人一台のノートPCが配布されました。この構想はもともと、5年くらいかけて段階的に実施するという話だったので、準備が出来ていませんでした。コロナ禍で予定が前倒しになり、急な導入となって不安でしたが、若い先生方がしっかり対応してくださり、混乱なく導入できました。やってみるものですね。おかげでペーパーレス化も進みました。

――体験学習にはどんなものがありますか。また、子どもたちには体験学習からどんなことを学んでほしいと考えていらっしゃいますか。

山岸校長先生:例えば、2年生がおこなっている「まち探検」。学区内のお店や日吉の図書館などで働く人から話を聞くもので、今年はドリームステージで発表した劇の題材にしていました。4年生は福祉がテーマで、近隣の方に盲導犬を連れて来てもらったり、手話や車椅子を体験したりします。

校庭の一角にある田んぼで稲刈りを行う
校庭の一角にある田んぼで稲刈りを行う

体験学習の意義は、座学では得られない感覚的な学びにあります。例えば5年生の米作り体験では、田植え、稲刈り、脱穀など一連の作業を通じて、お米を育てて食べられるようにするには長い時間が必要だと身をもって知るわけです。また、田植えひとつ取っても、実際に泥の中を歩いて中腰で作業して初めて、重労働だと分かります。写真や動画を見て説明を聞くだけでは、実感を伴って理解することはできません。子どもたちには、体験を通していろいろ感じ、気づき、物事への理解を深めてほしいと思います。

窓が大きく、昇降口には自然光がたっぷり降り注ぐ
窓が大きく、昇降口には自然光がたっぷり降り注ぐ

今年度は緊急事態宣言で夏休み明けから教育活動に制限がかかり、子どもたちにとって不自由な日が続きました。でも10月以降に体験学習を再開したら、明らかに子どもたちの顔つきが変わりました。とてもいい表情で、体験学習の重要性を再認識しました。

地域住民の協力や近隣校との結束が大きな力

芝生もある、広々とした校庭
芝生もある、広々とした校庭

――新川崎エリアはどんな地域でしょうか。地域住民とのかかわりなど教えてください。

山岸校長先生:川崎市幸区の人々には、地域の子は地域で守り育てようという意識が強いと感じます。学区内の3町会を中心とした通学路での旗振り誘導などをはじめ、多くの方が力を貸してくださっています。毎週来てくださるボランティア団体「おはなしたまてばこ」は昨年、文部科学大臣賞を受賞しました。手遊びや音楽を取り入れた読み聞かせや紙芝居などで、子どもたちを楽しませてくれています。地域には体験学習でもお世話になっている人も多く、子どもたちも外で会ったときに挨拶を交わしているようです。

また、近隣の学校同士も協力し合っています。例えば南加瀬小、小倉小、南加瀬中、本校の4校は毎月一回、各学校へそれぞれの教員やPTAの代表が別の学校をまわり、正門脇で子どもたちに挨拶をしています。地域全体でみんなを見守っているというメッセージになるでしょうし、小学校の教員が中学校に行けば卒業生に声をかけることもできます。

初代PTA会長が植樹したケヤキが、学校のシンボツルツリー
初代PTA会長が植樹したケヤキが、学校のシンボツルツリー

――地域の方々による見守りがあるとのことですが、安全な登下校ために学校で実践されていることはありますか?

山岸校長先生:学区が狭いので、災害時以外の集団登校は行っていません。幹線道路の「尻手黒川線」を渡ってくる子が50人くらいいますが、ここ以外に車通りの多いところはありません。また、独自に通学路の安全マップを作り、児童に配布しています。毎年一回親子で通学路をまわって危ないと感じた場所を教えてもらい、都度更新しています。

ゆったり暮らせてのびのび遊べる 新川崎エリア

「新川崎」駅
「新川崎」駅

――周辺の教育環境や、子どもたちの進学の傾向などについてお聞かせください。

山岸校長先生:塾に通っている子も珍しくないと思いますが、どのご家庭もゆったり暮らしを楽しんでいる感じがします。学校は放課後も午後3時50分まで開放していますが、残って遊んでいる子どもをよく見かけます。私立を受験する子は4分の1程度いらっしゃいます。その一方で多くは地元の公立中学校に進学します。親御さんも本校の卒業生が多く、親子揃って通われてる家族も多くおります。

加瀬山にある「夢見ヶ崎動物公園」
加瀬山にある「夢見ヶ崎動物公園」

――新川崎エリアの魅力をお聞かせください。

山岸校長先生:静かな住宅街ですね。本校の学区内でいうと、小さなお店がたくさんあり、昔ながらの雰囲気が残っていると感じます。駅周辺には大きなスーパーがあるので普段の買い物には困らないですし、尻手黒川線沿いは飲食店がたくさんあるので選び放題です。公園も多いので、子どもたちも遊び場には事欠かないでしょう。住環境、子育て環境は申し分ないと思います。

子どもたちが「百段階段」と呼ぶ、学校の裏手にある階段
子どもたちが「百段階段」と呼ぶ、学校の裏手にある階段

おすすめスポットは、なんといっても町のシンボルである「加瀬山」です。校庭のすぐ先に、子どもたちが「百段階段」と呼んでいる階段があり、私たちはいつもそこからのぼっています。広場があって、芝生があって、動物園があって、いつ行っても地域の人がのんびり過ごしています。上は見晴らしが良く、富士山も見ることができますよ。

専科教員による指導や音楽集会など 音楽教育に注力する「川崎市立夢見ヶ崎小学校」
専科教員による指導や音楽集会など 音楽教育に注力する「川崎市立夢見ヶ崎小学校」

川崎市立夢見ヶ崎小学校

山岸隆行 校長先生
所在地:神奈川県川崎市幸区南加瀬 2-13-1
電話番号:044-599-1246
URL:https://kawasaki-edu.jp/2/113yumemigasaki/
※この情報は2022(令和4)年1月時点のものです。

まち探検や挨拶運動など地域と共に歩む取組みを実践/川崎市立夢見ヶ崎小学校(神奈川県)
所在地:神奈川県川崎市幸区南加瀬2-13-1 
電話番号:044-599-1246
https://kawasaki-edu.jp/2/113yumemigasak..