笑顔で気持ちの良いあいさつが飛び交う学校を目指して。地域に根ざした「世田谷区立八幡山小学校」
豊かな自然環境に恵まれた閑静な住宅地に位置する「世田谷区立八幡山小学校」。1960(昭和35)年の開校より今年で63年を迎える歴史のある学校だ。地域や保護者とのつながりも強く、地域運営学校として成熟した取り組みが行われている。 今回は、2021(令和3)年度に着任した山村 晃一校長先生を訪ね、学校の概要や特色ある取り組み、地域や保護者とのつながりについてお話を伺った。
1960(昭和35)年の開校より60年以上の歴史がある地域の学校
――「八幡山小学校」の歴史や概要についてお聞かせください
山村校長先生:本校は1960(昭和35)年の開校で63年の歴史があります。現在の校舎は1999(平成11)年に建て替えられたもので、一般的な校舎とは異なる特色あるつくりになっています。教室も壁の無いオープンスクールの設計で、学年や授業内容に応じて自由に空間を使えるのも特徴です。
本校に着任して3年目になりますが、10年前に隣の学区の「上北沢小学校」の副校長をしていたこともあり、本校にはたびたび足を運んでいました。また、本校と上北沢小は兄弟校のような関係で地域もつながっているため、当時お世話になった町会長さんや地域の方ともまたお会いすることができて、私にとって馴染みのある場所に戻って来たという感覚です。
保護者、地域ともに学校の教育活動に関心が高く、熱心に協力してくださるのが特徴です。地域に学校をつくりたいと願う住民の方たちが自ら学校の設立に関わって来たという背景もあり、自分たちの学校という思い入れが強くあるのだと思います。また、保護者の中にも本校の卒業生が多く、そういう意味でも地域と保護者、学校が密接につながっていると思います。
――現在の学級数、児童数についても教えてください。
山村校長先生:児童数は2023(令和5)年4月現在518名、17学級で運営しています。2019(令和元)年頃と比べると増加傾向にあり、現在の校舎は最大18学級の仕様なので、算数のような少人数指導を行うとすでに教室はいっぱいですね。
また、学区内で宅地の開発も進んでいまして、今後さらに児童数が増える見込みです。そのため2023(令和5)年度の夏休みを利用して教室数を増やすための改修工事を行う予定です。増築ではなく校舎内にあるスペースを教室に転用する計画で、近い将来の学級増に備えます。
コロナ禍でも運営の仕方を工夫して取り組んだチャレンジスクール
――特色ある取り組みや教育活動について教えてください。
山村校長先生:私が校長として着任したのがまさにコロナ禍だったため、それまで行っていた行事やイベントなどは他の学校と同じく中止や延期を余儀なくされました。しかし、なんでもかんでも中止にするのではなく、できることをやれる範囲でやって行こうという姿勢で取り組んで来たこともあります。
例えば、学校運営委員会の主催で行っていたチャレンジスクールは、それまで地域の方を講師に招いて実施していたのを、教員や学校運営委員会の有志で協力して行うようにしました。以前はハンドベルやチアリーディング、ショートテニス、クラシックバレエなどさまざまな講座が行われ、2日間で約300名もの子どもたちが参加するほどのイベントでした。地域とのつながりがよく分かる本校ならではの特色あるイベントです。
今年は、制限等も徐々に緩和されていくと思いますので、少しずつ活動の幅を広げて行くつもりです。
――コロナ禍で進展したICTの取り組みについてはいかがでしょうか?
山村校長先生:ICTについては一人1台iPadがありますので、すでに特別なものではなく、特に高学年は日常的に使うようになっています。昨年まではリアルとオンラインの併用で授業を行っていましたが、学年や授業内容によってはオンラインだけでは難しい部分もあり、また、子どもたち自身も学校に来て対面で授業を受ける方が楽しいということで、緊急時以外はオンラインで授業を行うことは無くなりました。
――2023(令和5)年度の取り組みで注目すべき点についてお聞かせください。
山村校長先生:学校のホームページにも学校経営方針として掲載していますが、2023(令和5)年度のキャッチフレーズは「笑顔であいさつ 花の学校 八幡山小学校」です。まず、あいさつをしっかりできるように、気持ちの良いあいさつが飛び交うような学校にしていこうと伝えています。
また、花については以前から取り組んでいる本校の特色のひとつで、正面玄関のけやきの下にも綺麗な花が咲いていますが、美しい花々に囲まれた落ち着いた環境で、笑顔で気持ちの良いあいさつを交わすそんな学校を目指しています。
もうひとつは体力づくりに関することです。本校の教育目標にも「進んで体をきたえる子」とありますが、コロナ禍で明らかに子どもたちの体力が落ちていると気づくこともあり、意識的に身体を動かすような取り組みを進めています。
本校では毎週金曜日の中休みに全学年みんなで身体を動かす「金スポ」という取り組みがあり、教員も一緒になっていろんな活動をしています。今はちょうど長縄跳びに挑戦しているところです。
今年は「あいさつ」と「体力づくり」この2つに力を入れて取り組んでいきます。
地域行事や教育活動が再開するいま、お互い顔のわかる関係づくりから始める
――他に注目すべき取り組みはありますか?
山村校長先生:2023(令和5)年度からいろんな行事やイベント、教育活動も本格的に再開していくことで、地域と密着した活動が始められるかなと思っています。
本校の子どもたちは学校の近くにある「八幡山八幡社」を中心とした町会の地域行事にも参加するため、節分祭や夏のお祭りなどいろんな活動を通して地域の方ともお会いする機会が増えると思います。そこで、今年度の取り組みのあいさつも含め、子どもたちが地域の方と積極的に関われるような土台づくりをしたいと思っています。
具体的な取り組みとしては、2023(令和5)年5月の全校集会に防犯活動やわんわんパトロールなど学校のために活動してくださっている地域の方々をお招きして子どもたちと顔合わせをしました。この顔合わせ自体も4年ぶりになりますね。
新聞などで取り上げられていますが、地域の方が子どもにあいさつしたところ、知らない人に声をかけられたと思い110番した、というような事例も実際にあるため、そういうことにならないためにもお互い顔のわかる関係づくりから始めようと思います。
コロナ禍を経験して分かったことですが、例年当たり前のようにやってきたことが、一度ストップしてしまったことで、あいさつひとつとってみても元に戻すことの大変さを感じています。だからこそ地域と学校とのつながりも含め、その価値、有り難さを再認識しているところです。
桜上水エリアは教育熱心な地域ですので、地域の方に再び学校に目を向けていただく機会でもありますし、子どもたちにとっても地域の活動へと戻る良い機会なので、このチャンスを逃すわけにはいかないと思っています。
チャレンジスクールやゲストティーチャーなど地域とつながる「地域運営学校」
――「地域運営学校」の取り組みについてもご紹介いただけますでしょうか?
山村校長先生:世田谷区内の公立学校には、全て学校運営委員会が設置され、地域運営学校として運営が行われています。いわゆるコミュニティースクールと呼ばれるものです。本校は2007(平成19)年に「地域運営学校」に指定され、毎月1回、運営委員の方々と学校運営についての話し合いを重ねています。
また、チャレンジスクールも学校運営委員会の主催ですし、地域の方をゲストティーチャーとして招いてお話いただく6年生のキャリア教育など、地域と学校をつなぐ重要な役割を担っていただいています。
キャリア教育の様子は玄関にポスターを掲示していますが、学校の近くにある「東京都医学総合研究所」や京王電鉄、八幡山駐在所の駐在さんに来ていただいたこともあります。また、今年は子どもたちが研究所に伺ってDNAに関する最前線の研究についてお話しいただくような機会もあり大変貴重な経験になりました。
他にも去年から復活した取り組みのひとつに、八幡山町会のお囃子体験があります。3年生を対象にした特別授業で、「八幡社」へ見学に行ったり太鼓を叩いたりします。これも地域とつながる本校ならではの特色ある取り組みだと思います。
保育園、幼稚園、小学校、中学校が連携して取り組む「みどりの学び舎」
――世田谷区が取り組む「みどりの学び舎」についても教えていただけますでしょうか?
山村校長先生:世田谷区では小学校と中学校が連携する「みどりの学び舎」という取り組みを進めています。いわゆる小中連携教育です。本校は「緑丘中学校」を中心に「上北沢小学校」、「経堂小学校」とつながっているほか、近年は保育園や幼稚園ともつながって保幼小中連携で取り組みを進めています。
具体的な取り組みとしては、本校に入学する予定の保育園、幼稚園の園児たちが学校の様子を見に来たり、本校の5年生が幼稚園に行って子どもたちと交流したりするなど、これまでの取り組みを生かした活動になります。また、中学生になると職場体験で地域の保育園、幼稚園に行くこともあるため、「みどりの学び舎」としてひとつのつながりができることは、子どもたちにとっても良いことだと思います。
私は「世田谷区立八幡山幼稚園」の園長も兼任しているのですが、昨年から保育園にも声をかけて、「みどりの学び舎」は保育園、幼稚園を合わせて6園になりました。具体的には「船橋東保育園」、「上北沢保育園」、「松沢保育園」も世田谷区が運営する公立保育園です。「小さなおうち保育園」、「みんなのおうち保育園」といった私立保育園も一緒になって、今後もさらに増える可能性があります。世田谷区では今後、保幼小中の連携がさらに進んでいくものと思われます。
自然環境にも恵まれた落ち着いた雰囲気の生活環境
――学校周辺の生活環境の魅力についてお聞かせください。
山村校長先生:毎朝「八幡山」駅から商店街を抜けて学校まで歩いて来ているのですが、「松沢病院」の広大な緑や住宅街も落ち着いた雰囲気で住みやすい地域だと思います。2年生の行事でもある「まち探検」で子どもたちと一緒に歩いたこともあるのですが、駅前の商店街にある個人商店や公共施設、児童館も身近なところにあって魅力的だと思いました。
余談ですが、本校には“モカちゃん”という名前のうさぎがおり、子どもたちに大人気です。そのモカちゃんが地元の成城警察とコラボレーションして、詐欺や犯罪から身を守るための啓発シールになりました。先日新聞にも取り上げていただいたのですが、こういったところでも地域と学校がつながる恵まれた環境だと思います。
――他に地域とのつながりが伝わるようなエピソードはございますか?
山村校長先生:そうですね、本校の学校の特色のひとつと言っても良いかと思いますが、学校から歩いて3分ほどの距離にある八幡山駐在所の警部補がほぼ毎日のように学校に来てくれます。まるで職員の一員のような存在で、子どもたちも大好きです。
学校とのつながりはかれこれ10年近くになるそうで、卒業生が会いに来たり、保護者も学校に相談できないようなことを相談したりといったつながりもあるそうです。以前、3年生が学校自慢でそのことを取り上げたり、地域とのつながりがよく分かります。
「八幡山公園」や「やまぶき公園」など身近なところに公園が点在
――学校周辺でおすすめのスポットなどはありますか?
山村校長先生:ひとつは「八幡山幼稚園」の隣にある「八幡山公園」です。本校の子どもたちも多く集まっているようです。また「やまぶき公園」という小さな公園もあるのですが、身近なところに公園が点在しています。「八幡山」駅と学校との間にも「松沢けやき公園」という場所がありまして、歩道の一画を憩いの場として整備したようです。
「松沢病院」の周りを一周するとだいたい2kmありますが、大学の学生さんたちのランニングコースにもなっていて、朝夕の時間帯は学生の姿を多く見かけます。
地域の方にとってもお散歩コースにちょうど良い距離感で、周回コースを利用した地域行事もあります。上北沢まちづくりセンターが主催するイベントのひとつで、地域の安全を知ることを目的としています。当日は上北沢小と合同で1年生、2年生が親子でウォークラリーに挑戦します。
「将軍池広場」をスタート、ゴール地点にして親子で一周するのですが、途中にはチェックポイントもあって、「東京都医学総合研究所」や「松沢病院」など各施設の職員の方が出迎えてくれます。これも地域とのつながりを感じられる取り組みですね。
――最後にこれからこの地域に住む方へメッセージをお願いします。
山村校長先生:繰り返しになりますが学校周辺の地域は落ち着いた雰囲気で、子どもたちにとって伸び伸びと過ごせる恵まれた環境だと思います。地域に根ざした学校として運営されている公立学校の良さを生かし、笑顔で気持ちの良いあいさつが飛び交うようなそんな学校づくりを目指して行きます。
世田谷区立八幡山小学校
校長 山村晃一先生
所在地 :東京都世田谷区八幡山1-14-1
電話番号:03-3302-2618
URL:https://school.setagaya.ed.jp/hama/
※この情報は2023(令和5)年5月時点のものです。
笑顔で気持ちの良いあいさつが飛び交う学校を目指して。地域に根ざした「世田谷区立八幡山小学校」
所在地:東京都世田谷区八幡山1-14-1
電話番号:03-3302-2618
http://school.setagaya.ed.jp/hama/