子どもの主体性を育む活動に注力。地域の人々とともに歩む/狛江市立和泉小学校(東京都)
2001(平成13)年、狛江第四小学校と狛江第八小学校がひとつになって開校した「狛江市立和泉小学校」。両校の児童や保護者、地域の方々から校名を募り、地名としても親しみのある「和泉」に決まり誕生しました。多摩川に近く、水と緑に恵まれた地である同校を訪れ、力を入れている取り組みや地域とのかかわり、狛江や国領周辺の魅力について、校長の鷲見真太郎先生にお話を伺いました。
子どもが主体となって考え・活躍する学校へ
――まずは「和泉小学校」の沿革や概要についてお聞かせください。
鷲見校長先生:狛江第四小学校と狛江第八小学校がひとつになって、2001(平成13)年に開校しました。ここ和泉には古い歴史があり、校区には兜塚古墳や、江戸時代につくられた石の鳥居が有名な伊豆美神社などがあります。10分ほど歩けば多摩川が流れる自然豊かな場所でもあります。校歌の歌詞にもこれらの名前が入っていて郷土愛が感じられますよ。
2023(令和5)年6月現在、18学級に528名の児童がいます。施設としては広い畑があるのが特徴でしょう。地域の農家さんの指導のもとに子どもたちが世話をしていて、いまはトウモロコシ、オクラ、ナス、トマトなどの夏野菜を栽培しています。収穫したものは給食で使っており、地産地消を推進するとともに食育にもなっています。
――教育目標と、特に力を入れて取り組んでいる教育活動を教えてください。
鷲見校長先生:今年度の学校教育目標は「考える力 共感する力 やり抜く力」としています。現在は委員会活動に力を入れて取り組んでいますね。きっかけは、以前から本校が取り組んでいるノーチャイムについて、低学年の児童や担任教諭から時間が分からなくて困ると声が上がったことです。
以前からもっと子どもたち主体の取り組みが必要だと考えていたため、児童の代表委員会に「どうすればいいか、みんなで考えよう」と提案しました。子どもたちが出した答えは、「ノーチャイムはやめたくない。ただ低学年には難しいし、1年生は毎年入って来る。少しずつ慣れるよう鳴らす回数をだんだん減らしていこう」というものでした。
そこで昨年度から、彼らが考えたとおりのチャイムを実施しています。大まかに言うと、1学期は始業開始、中休みと昼休みの終わりに鳴らします。そして2学期には始業のチャイムをなくし、3学期には完全ノーチャイムにします。低学年の子が時間に気づかなかったら、自分たち高学年や中学年が声を掛ければいいと。理にかなっていますし、自分たちが定めた目標だからこそ一層頑張れるのではないかと考えています。
これを機に、他の委員会でも活動内容を子どもたち自身に考えさせるようにしました。子どもたちは「自分たちの学校を、自分たちでつくる」という意識を持って、自分が所属する委員会は学校のために何ができるか、それぞれ活動内容を考えて実行しています。
ちなみに、委員会は高学年だけですが、中学年以下もクラス内の係活動で同じように頑張っています。読書や集会などに使っている15分ほどの朝時間を、週に1度委員会や係活動の時間に充てるようにしたため、活動によって休み時間を使う事もありません。
委員会はクラスを超えた活動ですので、ICTが非常に役立っていますね。子どもたちは1人1台タブレットを持っているので、狛江市が導入しているMicrosoftの「Teams」を使い、チャットルームに設けた各委員会のチャンネルやテレビ会議を通して意見交換をしています。
効率的に作業が進められ、子どもと教員の双方に良い影響があると考えています。意見交換が活発で盛り上がっているチャンネルを見ると、みんな放課後に実施していたりするんですよね。時間に縛られず、主体的に参加する意識が芽生えているのかなと感じています。
――課外活動や行事については、どんな取り組みをされていますか。
鷲見校長先生:子どもたちの意見を取り入れて、運動会を少し変えました。去年、どんな運動会にしたいかと聞いたところ、「以前のように、他学年の演技や競技をみんなで見たい」との意見がありました。コロナ禍では低・中・高学年で分けていたことが理由の1つですね。また、徒競走より綱引きや玉入れなどの競技をしたいという要望が多く、走るのが得意な子からはリレーをしたいという希望がありました。
これらの意見を反映させたほか、運営には係活動として子どもたちも関わってもらっています。教員が仕事を割り振るのではなく、子どもたちが自分で考えたことをやる形で、放送委員はアナウンス、集会委員は準備運動など、全委員会が何らかの形で関わることができました。
また、6年生の鼓笛は10年以上続く本校の特徴の一つです。秋の学習発表会で披露するほか、去年からは市民祭りでの市民パレードにも参加しています。運動会でも学年演技として披露しました。全校児童が集まって開催できたことで、下の学年の子たちも見ることができたのは良かったですね。
鼓笛だけでなく委員会活動なども含め、活躍している姿を見ることで、「6年生になったら自分がああいう立場になるんだ」と、近い未来像を描けると思うので。畑の世話をする担当は理科栽培委員会と給食委員会ですが、低学年の子の中には、「高学年になったら、絶対に理科栽培委員会に入るんだ!」と今から宣言している子もいますからね。
地域の人々に支えられながら、多様なつながりを活かせる環境
――地域住民との関わりなどを教えてください。
鷲見校長先生:コロナ禍が落ち着いて外部からも人を呼びやすくなったので、ゲストティーチャーを招いての出前授業も盛んに行っています。1年生なら、地域で昔遊びを教えているサークルの方々が来て駒遊びなどを教えてくださっています。また、狛江は絵手紙発祥の地でして、毎年6年生が講師の方に教わっています。さらに市内のPTA会長が能楽師の方なので能についての授業も行っていますね。
また、狛江市では農業も盛んなため、公立の小中学校は給食に使う野菜の多くを地元の農家さんに納入してもらっています。その農家さんが、2年生が生活課で育てているミニトマトの芽かき(不要な芽を取る作業)について指導に来てくださったりもします。
原爆体験を話しに来てくださる方もいますし、近くの社会福祉会館「あいとぴあセンター」からは、全ての人が共に競い合えるスポーツ「ボッチャ」を4年生に教えに来てもらったりしています。狛江市による地域史についての授業では、市内で発掘された土器や銅剣のレプリカなどを持参して教えてくださいますし、子どもたちは実に多くを地域の方々から学んでいます。
――小中連携教育や、地域運営学校としての取り組みを教えてください。
鷲見校長先生:狛江市がコミュニティスクールを導入したのは去年からですが、小学校6校、中学校4校と公立学校が計10校しかない小さな市ということもあって、以前から地域住民の結びつきも小中の連携も強かったですね。狛江市ではコミュニティゾーンを中学校の4学区に分けていて、本校は子どもたちが進学する「狛江市立狛江第三中学校」のコミュニティです。この2校は特に連携が強く、両校のサポートにほとんど同じ人たちが関わっているのが特徴です。
中心となっているのは児童のお父さんで構成される「おやじの会」です。数名は学校運営協議会のメンバーでもあり、お子さんの卒業後も協力してくださる方もいらっしゃいます。花火大会や肝試しなど、子どもたちが喜ぶ楽しいイベントをたくさん開いていて、他の学校のおやじの会のメンバーや福祉関係でお世話になっている方、市議会議員の方など地域のいろんな方が参加してくださり、非常に盛り上がります。
去年のドッジボール大会には120人くらいの児童が参加しました。夏に開かれる「狛江古代カップ多摩川いかだレース」という狛江市のイベントでも「おやじの会」が大活躍で、次の日曜から本校の中庭で本校と三中のイカダ作りを始める予定です。炊き出しやさまざまな防災体験を行って学校に泊まる「防災キャンプ」も予定されています。コロナ禍でここ数年は開催できなかったのですが、子どもたちが楽しみにしているので必ず実施したいですね。
――子どもたちの登下校時に配慮されている部分あれば、教えてください。
鷲見校長先生:PTAで、学校周辺の見回りを行っています。また、狛江市に登録している安全ボランティアの方々が登下校の見守りをしてくださっています。結構な数の方が見てくださっているので安心感があります。
自然豊かな環境に加え、2路線2駅を使える便利なベッドタウン
――狛江市、また国領エリアはどんな地域でしょうか。
鷲見校長先生:遺跡が多いのが特徴で、最近も学区内で古墳が見つかりました。白井造園さんの敷地にある「白井塚古墳」です。以前から古墳らしきものがあるとは言われていたのですが、最近明らかになりましたね。「狛江市立狛江第一小学校」の裏には和泉式土器の模型もあるんですよ。また、昔から農業が盛んな地域です。身近な野菜がたくさん作られていますが、中でも枝豆がおいしいですよ。
――狛江市・国領の地域の魅力をお聞かせください。
鷲見校長先生:日々の生活に必要なものがそろっていますので、暮らしやすい街だと思います。狛江は日本で2番目に小さい市で、コンパクトな街なので、大抵の用事が近場で済みますね。すべてが自転車圏内にある感覚です。我々教員も狛江市に来たら出張というとほぼ自転車移動になるので、学校にマイ自転車を置いている人もいます。この辺りは平たんなので移動も楽ですよ。
「国領」駅の方には「イトーヨーカドー 国領店」やショッピングセンター「ココスクエア」などがあり、買い物にも不自由はないでしょう。子どもたちもよく行っています。都合に合わせて小田急線「狛江」駅と京王線「国領」駅という2路線2駅を使えるので、交通も便利だと思います。
トンボ池公園と呼ばれている「前原公園」は、豊かな自然が魅力です。池にはヤゴがいて、夏から秋にかけてはたくさんのトンボが飛びかっています。本校では低学年の子たちが校外学習で行き、ボランティアスタッフの方から生態系についての話を聞いています。市の北部を縦断する細長い「野川緑地公園」も、子どもたちが慣れ親しんでいる場所です。草木や花にあふれ、近隣の人々の憩いの場になっています。
あとはやはり、多摩川の存在も大きいですね。川べりにある「狛江水辺の楽校」という施設がとてもいいところで、野鳥や昆虫、植物などについて、それぞれ詳しいボランティアの方々が教えてくださいます。本校では毎年4年生が行き、楽しみながら多摩川の自然について学んでいます。化石堀り体験もできますし、子どもにも大人気の場所です。
狛江市立和泉小学校
校長 鷲見真太郎先生
所在地 :東京都狛江市中和泉3-33-1
電話番号:03-3480-3881
URL:https://www.komae.ed.jp/ele/izumi/
※この情報は2023(令和5)年6月時点のものです。
子どもの主体性を育む活動に注力。地域の人々とともに歩む/狛江市立和泉小学校(東京都)
所在地:東京都狛江市中和泉3-33-1
電話番号:03-3480-3881
http://www.komae.ed.jp/ele/izumi/