校長 河村麻里先生インタビュー

児童増加に対応して設備面も充実。ICT教育を推進する/葛飾区立東金町小学校(東京都)


JR常磐線「金町」駅から徒歩約7分。「葛飾区立東金町小学校」では2019(令和元)年秋から行われていた新校舎の建設が終わり、2021(令和3)年9月から新校舎での学びがスタートしている。

今回は、河村麻里校長先生に、プログラミング教育の研究校として力を入れているICT教育や、改築によって変わった点、地域の魅力などについてお話を伺った。

「葛飾区立東金町小学校」河村 校長先生
「葛飾区立東金町小学校」河村 校長先生

児童数の増加で、より主体的・対話的な学びへ

――学校の概要および教育方針について教えてください。

「葛飾区立東金町小学校」新校舎の外観
「葛飾区立東金町小学校」新校舎の外観

河村校長先生: 本校は今年度で開校44年目を迎えます。校舎などの施設はもともとは当時同じ敷地内に併設されていた「金町中学校」のもので、金町第二団地ができたことによって児童数が増えたため、「東金町小学校」として開校しました。児童の増加に対応するために誕生した学校なんですが、その後だんだん児童数が減って各学年1クラスの単級校となりました。

そして私が赴任した4年前から、また増えてきています。現在は1~4年生が2クラスずつ、5~6年生が1クラスずつで、さらに特別支援学級があり、計330人の児童が学んでいます。赴任時は100人未満でしたから、かなりの勢いで増えていますね。来年度は1年生が5クラスになる予定です。

本校の教育目標は「なかよく 助け合う子」「進んで学び やり抜く子」「明るく 元気な子」で、それに加えて私は「誰にでも 居場所のある学校」というテーマを掲げ、子どもだけでなく保護者や教員など誰にとっても居場所のある学校づくりをめざしています。そして「人」という財産を駆使して、未来に活躍できる子、世界に羽ばたける子を育てていくのが夢なんです。

広々とした校庭
広々とした校庭

――児童が増えると、学びにも変化があるのでしょうか。

河村校長先生: 以前から、本校の児童には意見を出し合って話し合うのが苦手な子が多いと感じていました。これは小規模校、特に単級校に共通する課題なんですが、人間関係やクラス内での役割が固定してしまったり、いろんな人と接する機会が少ないために、新たな人間関係を築くのが苦手だったりするんですよね。児童が増えることで、そういった課題が解消されていくことを期待しています。もちろん小規模校にも、きめ細かい指導ができるなど良い面はありますが、学習指導要領にある「主体的・対話的で深い学び」のためには、たくさんの子の中で自己主張や対話を学べる環境は大事です。

「かつしかっ子学習スタイル」を全教室に掲示(写真は小学校1年生版)
「かつしかっ子学習スタイル」を全教室に掲示(写真は小学校1年生版)

――「かつしか教育プラン2019」とはどのような構想でしょうか。実際に行っている、子どもたちの可能性を伸ばす指導についてもお聞かせください。

河村校長先生: 「かつしか教育プラン2019」とは、2023(令和5)年度までの5年間における葛飾区の教育行政の方向性を示したもので、大きく4つの方針があります。この指針に基づいて設けられている「かつしかっ子学習スタイル」を、本校ではいつも目に入るよう全クラスに掲示しています。

また、先生全員が指導方法を示した「授業スタンダード」をしおりとして持っています。その上で、ICT機器を活用した教育やプログラミング教育を推し進め、縦割り班活動、通常学級と特別支援学級との交流などを実践しています。また、「東京ベーシックドリル」などチャレンジタイムを活用した学習や読書活動にも力を入れています。

機能性を高め、調べ学習や放課後の自習等にも対応した学校図書館
機能性を高め、調べ学習や放課後の自習等にも対応した学校図書館

明るく広々とした廊下
明るく広々とした廊下

プログラミング教育の研究校として、いち早く配信授業を実施

――GIGAスクール構想(※)の実現に向けて行っていることがあれば教えてください。 (※GIGAスクール構想:児童生徒対象に「1人1台端末」配布と「高速ネットワーク環境」を整備し教育のICT化を推進する国の取組み)

河村校長先生: 本校では、緊急事態宣言で登校できなくなった2020(令和2)年3月に、すぐオンライン(Zoom)による授業配信を行いました。これは東京都にも取材していただきました。前年度にプログラミング教育の研究校に指定され、先生も児童もタブレット端末の操作にある程度慣れていたこともあり、「学びを止めない」を合言葉に実践したんです。

2021(令和3)年4月には一人一台タブレット端末を配布し、新校舎での運営を開始した9月にはWi-Fi環境も整備され、2学期からは校内でのインターネット接続も可能になりました。先生方は、ICT支援員さんにチェックしていただきながら日々工夫して配信を行っています。

採光のために設けられた吹き抜け空間
採光のために設けられた吹き抜け空間

授業で使うワークシートはもちろん、宿題の配布や回収もタブレット端末で完結できますし、また、コロナ禍で保護者のみなさんに来ていただけなかった展覧会や音楽学習発表会などをWEB鑑賞できるようにしました。

ご家庭との連絡は保護者向け情報発信ツール「C4th Home & School」を使ってオンライン上でやり取りしています。今年の11月に予定されているプログラミング教育の研究発表では、取り組みの成果をお伝えしたいと考えています。今後は、タブレット端末に蓄積される個々の学習ログを、学力向上にどう活かしていくかを考えていきます。

児童の自発性にも良い変化

――本格的なICT教育(※)が始まってから、子どもたちに変化はありますか。 (※ICT教育:教育現場でタブレット端末やインターネットなどの情報通信技術を活用した教育手法)

河村校長先生: 人前では自己主張できない子も、タブレット上であれば自分の考えを言いやすいみたいで、しっかりした意見を発信できるようになったと思います。また、ワークシートを共有することで、そういう子の意見もクラス全員が知ることができるようになりました。これはICT教育の良い点だと感じています。また、先生が児童に教えるだけでなく、児童同士が教え合ったり、先生が児童の発想から学んだり、そういう場面が増えてきましたね。

2021(令和3)年9月、校舎を全面改築

――2021(令和3)年9月から新校舎での学校運営を開始されていますね。改築の経緯、改築事業によって変わった点、今後期待されることなどお聞かせください。

河村校長先生:葛飾区の方針で全面改築が決まりました。施設の状態や児童数の推移など、総合的に考慮された結果だと思います。まず改築によって快適な学習環境が整いました。室温をあまり変えずに空気の入れ替えができる「ロスナイセントラル換気システム」が導入されたので、省エネが期待できます。24時間換気なので、しょっちゅう窓を開ける必要もなくなりました。教室の壁には5年間もつ抗ウイルス・抗菌剤が塗布され、時代に合った学校になりましたね。

机周りがきれいに整えられた家庭科室
机周りがきれいに整えられた家庭科室

また、タブレット端末の利用を考慮して机が少し横に大きくなり、その分教室も横長になり、黒板は可動式になりました。児童も教員も、真新しい校舎をきれいに保つ努力をしています。今年(2022年)の9月には校庭の整備も終わり、すべての学校生活が新しい環境で送れるようになります。

さらに改築によって防災拠点としての機能が強化されました。本校は近隣住民の方の緊急避難場所でもあるので、備蓄倉庫や非常用電源設備はもちろん、集めた雨水を浄化してトイレなどに再利用できる雨水タンクもありますし、整備中の校庭にはマンホールトイレが設置予定です。

昇降口の近くにあるホールには可動式の仕切り板が備わっていて、非常時には負傷者のトリアージ(※)場所として使えます。

(※)トリアージ:災害発生時などに多数の傷病者が発生した場合に、傷病の緊急度や重症度に応じて治療優先度を決めること。

視界の開けた昇降口
視界の開けた昇降口

非常時には負傷者のトリアージ場所としても使えるホール
非常時には負傷者のトリアージ場所としても使えるホール

街の人の温かさ、豊かな自然が身近にある文教エリア

――幼保小連携教育に取り組んでいるとのことですが、具体的にはどのようなことを実践されていらっしゃいますか。

河村校長先生: ここ2年間はコロナ禍で規模は縮小していますが、毎年すぐ近くの「東江幼稚園」と交流会を開いています。春に5年生がメッセージカードを送り、秋に年長さんたちが本校に来るんです。5年生がいろいろな催しで歓迎し、学校を案内します。本校に入学する子どもたちは、およそ20の保育園や幼稚園から上がってきます。ですので、交流会を行わなかった他の園とは3月に引き継ぎ会を行い、新1年生が小学校生活に早く慣れることができるよう心がけています。

ホールから見える給食室
ホールから見える給食室

――周辺の教育環境についてお聞かせください。

河村校長先生: 本校の横の通りは“スクールストリート”と呼ばれ、「東金町中学校」、「半田小学校」、「金町中学校」、「花の木小学校」、とたくさんの学校があります。そういった場所柄の影響か、「金町」駅周辺には学習塾が多く、本校にも通っている児童がたくさんいます。以前は中学受験をするような子は少なかったんですが、大規模なマンションが新しく建ち始めてから増えてきましたね。習い事に通っている子も多く、スイミングクラブや体操クラブなどの教室もたくさんあります。子どもたちの話を聞いていると、バレエ教室や有名なダンススクールもあるみたいですよ。

下校後は習い事や学習塾に行く子どもが多い
下校後は習い事や学習塾に行く子どもが多い

近くの「東京理科大学葛飾キャンパス」には、区民に開放された図書館や、子どもたちが楽しみながら科学に親しめる科学教育センター「未来わくわく館」がありますし、充実した教育環境だと思います。

葛飾区科学教育センター「未来わくわく館」
葛飾区科学教育センター「未来わくわく館」

――地域と連携して行っていることがあれば教えてください。

河村校長先生: 毎年5月最後の日曜日に、地域の方と一緒に学校周辺の清掃活動を行っています。また、コロナ禍でこの2年間は参加できていませんが、金町地区で行われる地域行事にも参加しています。特に、4年生から6年生の児童からなる器楽クラブはいつもお声がけいただいて演奏に行っていました。ほかにも、江戸川河川敷で行われるマラソン大会や葛飾郷土かるた大会にも参加していました。

子どもたちの活気があふれる街

――最後に、金町エリアの魅力をお聞かせください。

河村校長先生: 初めて「金町」駅で降りたとき、本校への道が分からなくて困っていたら、バス停にいたシニアの方々が声をかけて教えてくださったんですよ。金町の人の温かさを感じましたね。本校の昔の風景の話や、「東京理科大学葛飾キャンパス」が建っているのは三菱の工場跡地であることなどを地元の方から聞くにつけ、歴史のある地域なんだと感じます。

同時に、理科大生の存在には活気や文教エリアの雰囲気を感じます。理科大と一体化した「葛飾にいじゅくみらい公園」は子どもたちの良い遊び場ですし、自転車に乗れば自然環境に恵まれた「水元公園」もすぐです。園内には2年前に「葛飾区東金町運動場 スポーツクライミングセンター」が新設され、本校は昨年度から全学年ボルダリング体験に行っているんですよ。子どもたちの活気があふれる未来が明るい街だと思います。

「水元公園」
「水元公園」

「葛飾にいじゅくみらい公園」の運動場
「葛飾にいじゅくみらい公園」の運動場

地域に根差し、地域とともに育つ学校づくりを大切にする創立148年の「高崎市立塚沢小学校」
地域に根差し、地域とともに育つ学校づくりを大切にする創立148年の「高崎市立塚沢小学校」

葛飾区立東金町小学校

校長 河村麻里先生
所在地:東京都葛飾区東金町1-33-1
電話番号:03-3627-1411
https://school.katsushika.ed.jp/swas/index.php?id=higashikanamachi_e
※この情報は2022(令和4)年3月時点のものです。

 

児童増加に対応して設備面も充実。ICT教育を推進する/葛飾区立東金町小学校(東京都)
所在地:東京都葛飾区東金町1-33-1 
電話番号:03-3627-1411
https://school.katsushika.ed.jp/swas/ind..